侯爵様、契約妻ではなくレンタル奥様です

cyaru

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第43話  バカにしないでよ!そっちのせいでしょ!

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周囲の事など全く意に介していないシシリー王女とショーは国王との距離が半径2m以内だと言うのにチュッチュとリップ音をさせて口づけを交わしている。

元々常識のない男だなとリサはショーの事を思っていた。
節操を求める方がおかしいとレンダールはシシリーの事を評価していた。

常識も節操もない2人が出合い、出会った瞬間に真実の愛で結ばれた。
「どこで出会ったの?」と聞きたい気もするが聞いてしまうと人に戻れなくなる気がしてリサは想像する事もやめた。

「シシリーに同行して帰国した騎士には口止め料も含んで金子を握らせた。口外する事はないだろう」

国王は気落ちした声を出した。

――え?本気で言ってるの?――

リサは冗談だよね?と本気で思う。金で黙らせるなんて金を出す側の希望的観測に過ぎない。
相手に弱みを握らせて何がしたいんだろうとも。

レンダールはリサに耳元で囁いた。

「陛下は自分が良ければそれでいいんだ。後先の事を考えるならこの状況があり得ないだろう?」

「それもそうね」

納得はしたが、ならどうして呼ばれたのかが判らない。
それはレンダールも同じだった。

国王がレンダールの顔を見て溜息交じりに登城させた理由を語り始めた。

「帝国との事は聞いておるだろうが、実はカモク侯。そなたにもう一度婚約をしてもらい、領地でシシリーと暮らしてもらえればと考えていたんだが」

「御冗談が過ぎます。私にはリサと言う何にも変え難い愛する妻がいるのです。陛下が勅命を出したとて私が受け入れることはありませんし、何故領地に引き籠もらねばならないのです」

「先代には私から話をして再度当主になって貰うつもりだったんだ」

「ハッ。バカバカしくて話にになりません。そもそも代替わりはその家で決める事。陛下と言えど口出しは出来ませんよ?臣下がなんでも忠実に動くと思っているのなら早々に王太子殿下に玉座を明け渡す事をお勧めします」


――ほぉ?侯爵様って陛下にもこんな強い物言いするんだ?――

リサには新たな発見でもあった。
あの仏頂面ならまぁ、偉そうな物言いはするだろうなとは思ったけれど年齢は23歳。まだ若輩者の域は出ていないしペコペコはしていなくても当たり障りなく、付かず離れずで臣下してますよ!とそんな感じかと思っていたのだ。

「だが、帰って来てみればどうだ。節操もなく時も場所も弁えずこの通り盛りの付いた獣だ」


「はぁ」呆れて溜息も付いて国王はシシリー王女とショーを見た。
2人はお互いしか見えていないようで口づけは休止タイムなのかじゃれ合い始めていた。

――うん。確かに獣ね。理性がないんだもの――

これを見せたかったから呼んだのなら本当に救いのない国王。国王こそさっさと代替わりをして欲しいものだと思ったら、本題はこれからだった。


「聞けばそなたの家と細君の家。かなり業績を伸ばしているそうではないか」

「それが何か関係御座いますか?」

「大ありだ。シシリーにはあの男の家に降嫁させる。しかし調べさせてみればモナ伯爵家だったか。先代の年金を予算に組み入れなければ経営も経ちぬかぬ家だ。目立った事業もない」

「だからこちらの事業をさせろと?」

「元婚約者ではないか。聞けば細君も以前にはモナ伯爵家あの者と婚約をしていたのだろう?これも何かの縁だ」

「馬鹿にしないでいただきたいっ!何もないなら陛下が土産を持たせればいいでしょう。そもそもで元婚約者と仰いますが私の婚約は白紙。婚約そのものがなかったのです。そして妻の婚約は破棄。モナ伯爵家有責の破棄です。こちらに責があるのならまだしも。今の現状を招いているのはそちらの責でしょうが!」

「そうなんだが、そこをなんとか。この通りだ」

国王はレンダールとリサに頭を下げたが聞き入れられるものではない。

場所貸しのレンタルも、品を貸すレンタルも。そして元々の回収も。
侯爵家の事業だって下さいといわれて、はいどうぞと差し出せるものではない。

まして当人の2人は国王に話をさせて我関せず。油揚げを搔っ攫うトンビのほうがまだ自分で突入してくる分仕事をしている。

リサは憤るレンダールの手にそっと手を重ねた。

「リサ…すまない。大きな声をだして怖かったか?」

リサを見ると優し気な表情になるレンダールだったが、リサはこの程度では怯まない。
ガッと立ち上がるとダンッ!!

国王との間にあるソファーテーブルに片足を載せた。
お行儀が悪いなんてこの際どうでもいい。

――ショーのようなクズに従業員を預けられるものですか!――
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