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第45話 天下御免の侯爵家、参る?
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国王が連行されていくとショーは我に返ったようにシシリーを突き飛ばした。
「きゃぁ。なにぃ?痛たぁい」
状況が飲み込めていないシシリーの隣で立ち上がり、何処に行こうと言うのか逃げ出そうとしたショーの肩を騎士が掴んだ。
「座りたまえ。先ほどのようにじゃれ合っていてもいいんだ」
「あ、あの…俺…」
「シシリーは私たちにとっては手に負えないやんちゃな王女でね。引き取り先があって良かったよ」
「すみませんっ!俺にはイリーナっていう婚約者がいるんです!」
「はっはっは。今更何を言ってるんだ?王女が臣籍降嫁するんだ。何も問題はない。(くいっ)」
王太子は言葉を終えると手振りで騎士に指示を出した。
「シシリー。真実の愛、おめでとう」
「まぁ!お兄様。祝ってくださるのね。ありがとう」
「身分差があるからな。私にしてやれるのはお前を伯爵家に嫁がせることだけだ。他は何もしてやれないが真実の愛なんだ。こうやって兄と妹の会話も最後になるが元気でな」
「えぇ!大丈夫よ」
逃げ出さないよう騎士に囲まれたショーだったが、体の何処も拘束をされていないのを良いことにリサの前に飛び出してきたかと思うとリサの手を掴むべく手を伸ばしてきた。
バシッ!!
「私の妻に触れるな」
――妻?!あ、レンタル奥様中だった。スマイル、スマイル――
「妻だって?知ってるんだぞ?実家に戻されてるじゃないか。夫婦でも何でもないだろうが!」
「あら何時でもどこでも一緒にいるのが夫婦だなんて素敵ね。寝泊まりが別だからと言って否定する程の事ではないと思うけど?」
「強がりを言うな。子爵家程度のお前じゃ侯爵家の夫人は務まらないと名ばかりの結婚なんだろう?天下の侯爵家が契約結婚。随分な醜聞だな」
「契約結婚?いいえ。違うわ。私たちは…(ムギュギュ)」
リサはレンダールの手で口を覆われてしまった。
レンダールはショーを睨みつけるが直ぐに鼻で笑った。
「伯爵家の当主になるんだったな。発言には気を付けた方がいい。契約結婚であろうがなかろうが侯爵家に喧嘩を売っているに等しいんだからな」
「侯爵さんか。ハッ。こっちは王女が臣籍降嫁するんだ。発言に気を付けた方がいいのはどっちなのか。よーく考えた方がいいんじゃないか?」
「そうしよう。結論が出るまでゆっくり考えさせてもらう事にするよ」
今度こそ部屋から出されたショーだったが、見送った王太子は本当にシシリーをショーと結婚させる手続きを初めてしまった。
「良いんですか?」
リサは心配になり隣のレンダールに問うと少し前の答えも合わさった言葉を返してくれた。
「良いんだ。シシリー王女は王族だからね。臣籍降嫁を決定できるのは殿下しかいないんだ」
「え?さっき国王陛下が…」
「リサ。知らなかったのか?先代の陛下は先ほど病が原因で身罷られたじゃないか」
――えぇっ?!もしかしてワインってそう言う事?!――
「で、でも…」
王妃殿下がいるのでは?と言おうとして止めた。
王太子が部屋に入って来た時、「公爵とワインの選定に手間取って」と言っていた事を思い出した。
「つ、つまりは…」
「そう言う事かな?」
――怖っ!怖すぎるでしょ――
「権力を持つって事はそう言うのとセットなんだよ。責任を取るためにトップは暮らしが保証されてるんだ。遅きに失した感は多分にあるが…今度は殿下が頑張ってくれるさ。その為に私は見届け人になるんだから。ね?殿下」
王太子は書類を認めながら、バツが悪そうに笑った。
帰りの馬車でレンダールに「どうして私を連れてきたのか」とリサは問うた。
王太子と話は出来ていたようなので国王、王妃が病死となるのは決定だったはず。
ならリサが行く必要はなかったのでは?と思ったのだ。
「シシリー王女を私に押し付けようとしていたのは解っただろう?」
「そうですね。そんな事言ってましたけど」
「殿下も私も知っていたのはそこまでなんだ。モナ伯爵子息の事を知ったのはあの場なんだ。だから予定では私にシシリー王女を押し付けて来たところに殿下が…って流れだったんだが想定外は起きるものだ。王妃殿下の診断に時間がかかった事で殿下が遅れた、そして…正直私ではなくモナ伯爵子息とシシリー王女を結婚させると言い出したのが意外だった、だから事業を分けろとか言い出したんだろうけどね」
「でも」とレンダールはリサの手を握る。
――え?何?なんかあるの?――
「私の揺るがない決意。聞いてくれたよね?」
「決意…あぁ!臣下ならなんでも言う事を聞くと思ったら大間違い!って奴ですね」
「そこじゃない」
「あ!婚約がダメになったのはそっちのせいだ!ってところですか?」
「そこでもない」
「他に何かあったかしら…」
ガタゴトと馬車は無言になったレンダールと「帰ったら騎士団長さんに連絡しないと」着ぐるみの事で頭がいっぱいのリサを乗せて走って行った。
「きゃぁ。なにぃ?痛たぁい」
状況が飲み込めていないシシリーの隣で立ち上がり、何処に行こうと言うのか逃げ出そうとしたショーの肩を騎士が掴んだ。
「座りたまえ。先ほどのようにじゃれ合っていてもいいんだ」
「あ、あの…俺…」
「シシリーは私たちにとっては手に負えないやんちゃな王女でね。引き取り先があって良かったよ」
「すみませんっ!俺にはイリーナっていう婚約者がいるんです!」
「はっはっは。今更何を言ってるんだ?王女が臣籍降嫁するんだ。何も問題はない。(くいっ)」
王太子は言葉を終えると手振りで騎士に指示を出した。
「シシリー。真実の愛、おめでとう」
「まぁ!お兄様。祝ってくださるのね。ありがとう」
「身分差があるからな。私にしてやれるのはお前を伯爵家に嫁がせることだけだ。他は何もしてやれないが真実の愛なんだ。こうやって兄と妹の会話も最後になるが元気でな」
「えぇ!大丈夫よ」
逃げ出さないよう騎士に囲まれたショーだったが、体の何処も拘束をされていないのを良いことにリサの前に飛び出してきたかと思うとリサの手を掴むべく手を伸ばしてきた。
バシッ!!
「私の妻に触れるな」
――妻?!あ、レンタル奥様中だった。スマイル、スマイル――
「妻だって?知ってるんだぞ?実家に戻されてるじゃないか。夫婦でも何でもないだろうが!」
「あら何時でもどこでも一緒にいるのが夫婦だなんて素敵ね。寝泊まりが別だからと言って否定する程の事ではないと思うけど?」
「強がりを言うな。子爵家程度のお前じゃ侯爵家の夫人は務まらないと名ばかりの結婚なんだろう?天下の侯爵家が契約結婚。随分な醜聞だな」
「契約結婚?いいえ。違うわ。私たちは…(ムギュギュ)」
リサはレンダールの手で口を覆われてしまった。
レンダールはショーを睨みつけるが直ぐに鼻で笑った。
「伯爵家の当主になるんだったな。発言には気を付けた方がいい。契約結婚であろうがなかろうが侯爵家に喧嘩を売っているに等しいんだからな」
「侯爵さんか。ハッ。こっちは王女が臣籍降嫁するんだ。発言に気を付けた方がいいのはどっちなのか。よーく考えた方がいいんじゃないか?」
「そうしよう。結論が出るまでゆっくり考えさせてもらう事にするよ」
今度こそ部屋から出されたショーだったが、見送った王太子は本当にシシリーをショーと結婚させる手続きを初めてしまった。
「良いんですか?」
リサは心配になり隣のレンダールに問うと少し前の答えも合わさった言葉を返してくれた。
「良いんだ。シシリー王女は王族だからね。臣籍降嫁を決定できるのは殿下しかいないんだ」
「え?さっき国王陛下が…」
「リサ。知らなかったのか?先代の陛下は先ほど病が原因で身罷られたじゃないか」
――えぇっ?!もしかしてワインってそう言う事?!――
「で、でも…」
王妃殿下がいるのでは?と言おうとして止めた。
王太子が部屋に入って来た時、「公爵とワインの選定に手間取って」と言っていた事を思い出した。
「つ、つまりは…」
「そう言う事かな?」
――怖っ!怖すぎるでしょ――
「権力を持つって事はそう言うのとセットなんだよ。責任を取るためにトップは暮らしが保証されてるんだ。遅きに失した感は多分にあるが…今度は殿下が頑張ってくれるさ。その為に私は見届け人になるんだから。ね?殿下」
王太子は書類を認めながら、バツが悪そうに笑った。
帰りの馬車でレンダールに「どうして私を連れてきたのか」とリサは問うた。
王太子と話は出来ていたようなので国王、王妃が病死となるのは決定だったはず。
ならリサが行く必要はなかったのでは?と思ったのだ。
「シシリー王女を私に押し付けようとしていたのは解っただろう?」
「そうですね。そんな事言ってましたけど」
「殿下も私も知っていたのはそこまでなんだ。モナ伯爵子息の事を知ったのはあの場なんだ。だから予定では私にシシリー王女を押し付けて来たところに殿下が…って流れだったんだが想定外は起きるものだ。王妃殿下の診断に時間がかかった事で殿下が遅れた、そして…正直私ではなくモナ伯爵子息とシシリー王女を結婚させると言い出したのが意外だった、だから事業を分けろとか言い出したんだろうけどね」
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