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クラリスの大掃除
クラリス・タッド・ルシテアは今、23年生きて来て初めての経験をしている。
質屋に来ているのだ。
引っ越しをするにあたり色々と処分する品々が出たのである。
クラリスの荷物は比較的少ない。
ベッドは枠もマットも女子寮に付属しているものだしクローゼットとは別に下着などの小さなものを収納していた引き出し付き家具も造り付けで動かす事も出来ない。
掛け敷きにリネンも全て支給品。嵩張るものは持っていく必要がない。
いや、もっていけば窃盗罪になってしまう。
立場上、王宮での夜会に出席をする事はあるがドレスはレンタルで済ませて来たので嵩張るドレスは持っていない。そのような場に身に着ける宝飾品も勿論レンタルである。
私服もさほど多くはなく、この際だからときっちりとしたドレスコードのある店には入店できないが街歩きするにも、まぁまぁの店に入店するにも問題ないだろうと思われる物2点と、カジュアルなものを部屋着も兼用で3点をトランクに詰め込み、あとは質屋や布の買取店に持ち込む。
それでも売れ残ったものは明日、下着類と共に最後の掃除という役目を与えるのである。
物は元々少ないとは思っていてもいざ片づけや掃除を本格的に始めると出てくるものである。
そう、押し入れ、納戸、物入にしている空間に「こんなに物があったの!?」というアレだ。
引っ張り出してみると8畳間を埋め尽くすほどの物が出てきたりする経験は誰もが持っているだろう。
通常は購入しない大判のゴミ袋が幾つもパンパンになる経験である。
その大半は、「冬(夏)にも使うし」「まだ使えるかも」「あ、懐かしい!まだ使える(着られる)かな」そして一番当時の己を猛省するのが「次の不燃物の日まで置いとくしかないか」とそのままになった粗大ごみ。
ちなみにクラリスにはそれはなかった、いやあったか。
それは、「ニルスと別れた」から発生したゴミである。
そう、元カレから贈られた品などもう必要がないのである。思い出?そんなものは2年間を思い出しまた酒で記憶を失ってしまうトリガーになりかねない。棄てるが一番だ。
そう、【捨てる】ではなく【棄てる】である。
ニルスから2年の間に贈られた【品々】を持って質屋に来ているのである。
「あのぅ、これを買い取って頂きたいのですけど」
「そこのトレイにどうぞ。保証書や箱があるなら割増しになるよ」
「あ、あります。ついでにその時の包装紙とリボンも」
「それは買い取れないな」
当たり前である。
クラリスはそんなものまで取っておいた事に頬を染める。
店主に惚れたわけではない。誰もがそうだと思うが、恥ずかしさからである。
大量に持ち込んではいない。質屋に持ってきたのは最初の誕生日にもらったネックレスと2回目の誕生日にもらった髪飾り。そして士官となったニルスが奮発して買ってくれた懐中時計だ。
「うーん…ネックレスと髪飾り、懐中時計の3つで…2千ペルかな」
意外に…いや、高値がついたとクラリスは思った。
1ペル=1円と考えて頂いて問題はない。おおよその物価も同じと思って頂きたい。
秘密だがクラリスの月給は手取り額で40万ペルほど。
23歳という年齢を考えると、恐ろしい程の高給取りである。
きっと夕焼け空をバックに小高い丘で動物たちが
【いいな、いいな~人間っていいな~】と歌う事だろう。
ちなみにニルスは手取りは17万ペル前後。標準である。士官になる前が13万なので増えてはいる。
クラリスと付き合いだしてから徹底した金銭管理をされたおかげでニルスは年3回の賞与も管理され2年で250万ペル程の貯金があるが、クラリスはゼロの数が違う事は容易にお判り頂けるだろう。
そんなニルスから貰ったものなので処分料を払わないといけないかも?と思いつつだったがコンビニスイーツを贅沢買い出来る2千ペルには大満足である。
「半年以内ならその2千ペルを持ってくれば多少利息は払ってもらうけど買い戻せるよ」
「いえっ!そんな考えは微塵もないので大丈夫です」
「そうかい?じゃ、まぁこれはお代の2千ペルだ」
「ありがとぉ~」
「この包装紙とリボンはこっちで捨てておくがいいかい?」
「そんな事もしてくださるの?」
「まぁ、ゴミ箱に捨てるだけだからサービスにもならんがね」
「とんでもないですわ!今なら送料無料!よりも嬉しいですわ」
2千ペルを財布に入れるとクラリスは買い物に出かける。
下着を総入れ替えするため専門店に行って可愛い下着を選んでいく。
間違ってはいけない。
【可愛い下着】と【セクスィな下着】は違う。
クラリスはお尻も隠れるおばちゃん下着が本当は好きなのである。
早ければ15年ほどで訪れる更年期障害に備えて尻を冷やしたくないのである。
セクスィな下着を見て思わず
「着ている自分を鏡で見て、肝を冷やしそうだわ」
と素直に感じる。尻だけではなく肝まで冷えるセクスィな下着に用はない。
そんな売り場に思わず目を奪われ、足を止めてしまったクラリスに店員が囁く。
「男性用もございますよ」
好奇心は猫を殺す。判っていても怖いもの見たさは誰でも持ち合わせている。
イケナイ!ダメだ!と思っても煩悩には逆らえない。
「これなんか最近よく出ているんですよ」
店員さんに悪気はないのだろう。
きっと「よく出ている」というのは「売れている」それは判っているのだ。
しかし!これは!
「あのぅ…これって 出ます よね?」
「大丈夫なんですよ~。先端は隠れますから」
それでいいのか?と考えるクラリスに追い打ちをかける店員さん。
「履いている、つけているを感じさせないんですよ」
――感じるもなにも全裸と相違ないですよね――
奥の深い男性用下着。
ブリーフ派だった兄が初めてトランクスを着用した時に言っていた「スース―する」とはこの事なのだろうかと遠い日を思い出す。
買い物した袋を抱えて寮に戻って、明日は掃除である。
そして明後日はここを出る。5年間ほぼ寝るだけのような部屋でも多少の愛着がある。
寝る前にコーヒーを飲もうかと手にしたマグカップを見て考える。
ニルスとお揃いで購入し愛用してきたマグカップ。
「入れ歯の洗浄に使えるかな‥‥」
フルフルと首を横に振る。
【そのうち使う時が来る】と言うものはゴミなのだ。
入れ歯になるのは下手をすると半世紀後である。
きっと自分はインプラントをするだろう。ミ●キーやハイ●ュウを避ければ大丈夫だ。
クラリスは【不燃物・陶器】と仕分けしたゴミ袋にマグカップをいれた。
質屋に来ているのだ。
引っ越しをするにあたり色々と処分する品々が出たのである。
クラリスの荷物は比較的少ない。
ベッドは枠もマットも女子寮に付属しているものだしクローゼットとは別に下着などの小さなものを収納していた引き出し付き家具も造り付けで動かす事も出来ない。
掛け敷きにリネンも全て支給品。嵩張るものは持っていく必要がない。
いや、もっていけば窃盗罪になってしまう。
立場上、王宮での夜会に出席をする事はあるがドレスはレンタルで済ませて来たので嵩張るドレスは持っていない。そのような場に身に着ける宝飾品も勿論レンタルである。
私服もさほど多くはなく、この際だからときっちりとしたドレスコードのある店には入店できないが街歩きするにも、まぁまぁの店に入店するにも問題ないだろうと思われる物2点と、カジュアルなものを部屋着も兼用で3点をトランクに詰め込み、あとは質屋や布の買取店に持ち込む。
それでも売れ残ったものは明日、下着類と共に最後の掃除という役目を与えるのである。
物は元々少ないとは思っていてもいざ片づけや掃除を本格的に始めると出てくるものである。
そう、押し入れ、納戸、物入にしている空間に「こんなに物があったの!?」というアレだ。
引っ張り出してみると8畳間を埋め尽くすほどの物が出てきたりする経験は誰もが持っているだろう。
通常は購入しない大判のゴミ袋が幾つもパンパンになる経験である。
その大半は、「冬(夏)にも使うし」「まだ使えるかも」「あ、懐かしい!まだ使える(着られる)かな」そして一番当時の己を猛省するのが「次の不燃物の日まで置いとくしかないか」とそのままになった粗大ごみ。
ちなみにクラリスにはそれはなかった、いやあったか。
それは、「ニルスと別れた」から発生したゴミである。
そう、元カレから贈られた品などもう必要がないのである。思い出?そんなものは2年間を思い出しまた酒で記憶を失ってしまうトリガーになりかねない。棄てるが一番だ。
そう、【捨てる】ではなく【棄てる】である。
ニルスから2年の間に贈られた【品々】を持って質屋に来ているのである。
「あのぅ、これを買い取って頂きたいのですけど」
「そこのトレイにどうぞ。保証書や箱があるなら割増しになるよ」
「あ、あります。ついでにその時の包装紙とリボンも」
「それは買い取れないな」
当たり前である。
クラリスはそんなものまで取っておいた事に頬を染める。
店主に惚れたわけではない。誰もがそうだと思うが、恥ずかしさからである。
大量に持ち込んではいない。質屋に持ってきたのは最初の誕生日にもらったネックレスと2回目の誕生日にもらった髪飾り。そして士官となったニルスが奮発して買ってくれた懐中時計だ。
「うーん…ネックレスと髪飾り、懐中時計の3つで…2千ペルかな」
意外に…いや、高値がついたとクラリスは思った。
1ペル=1円と考えて頂いて問題はない。おおよその物価も同じと思って頂きたい。
秘密だがクラリスの月給は手取り額で40万ペルほど。
23歳という年齢を考えると、恐ろしい程の高給取りである。
きっと夕焼け空をバックに小高い丘で動物たちが
【いいな、いいな~人間っていいな~】と歌う事だろう。
ちなみにニルスは手取りは17万ペル前後。標準である。士官になる前が13万なので増えてはいる。
クラリスと付き合いだしてから徹底した金銭管理をされたおかげでニルスは年3回の賞与も管理され2年で250万ペル程の貯金があるが、クラリスはゼロの数が違う事は容易にお判り頂けるだろう。
そんなニルスから貰ったものなので処分料を払わないといけないかも?と思いつつだったがコンビニスイーツを贅沢買い出来る2千ペルには大満足である。
「半年以内ならその2千ペルを持ってくれば多少利息は払ってもらうけど買い戻せるよ」
「いえっ!そんな考えは微塵もないので大丈夫です」
「そうかい?じゃ、まぁこれはお代の2千ペルだ」
「ありがとぉ~」
「この包装紙とリボンはこっちで捨てておくがいいかい?」
「そんな事もしてくださるの?」
「まぁ、ゴミ箱に捨てるだけだからサービスにもならんがね」
「とんでもないですわ!今なら送料無料!よりも嬉しいですわ」
2千ペルを財布に入れるとクラリスは買い物に出かける。
下着を総入れ替えするため専門店に行って可愛い下着を選んでいく。
間違ってはいけない。
【可愛い下着】と【セクスィな下着】は違う。
クラリスはお尻も隠れるおばちゃん下着が本当は好きなのである。
早ければ15年ほどで訪れる更年期障害に備えて尻を冷やしたくないのである。
セクスィな下着を見て思わず
「着ている自分を鏡で見て、肝を冷やしそうだわ」
と素直に感じる。尻だけではなく肝まで冷えるセクスィな下着に用はない。
そんな売り場に思わず目を奪われ、足を止めてしまったクラリスに店員が囁く。
「男性用もございますよ」
好奇心は猫を殺す。判っていても怖いもの見たさは誰でも持ち合わせている。
イケナイ!ダメだ!と思っても煩悩には逆らえない。
「これなんか最近よく出ているんですよ」
店員さんに悪気はないのだろう。
きっと「よく出ている」というのは「売れている」それは判っているのだ。
しかし!これは!
「あのぅ…これって 出ます よね?」
「大丈夫なんですよ~。先端は隠れますから」
それでいいのか?と考えるクラリスに追い打ちをかける店員さん。
「履いている、つけているを感じさせないんですよ」
――感じるもなにも全裸と相違ないですよね――
奥の深い男性用下着。
ブリーフ派だった兄が初めてトランクスを着用した時に言っていた「スース―する」とはこの事なのだろうかと遠い日を思い出す。
買い物した袋を抱えて寮に戻って、明日は掃除である。
そして明後日はここを出る。5年間ほぼ寝るだけのような部屋でも多少の愛着がある。
寝る前にコーヒーを飲もうかと手にしたマグカップを見て考える。
ニルスとお揃いで購入し愛用してきたマグカップ。
「入れ歯の洗浄に使えるかな‥‥」
フルフルと首を横に振る。
【そのうち使う時が来る】と言うものはゴミなのだ。
入れ歯になるのは下手をすると半世紀後である。
きっと自分はインプラントをするだろう。ミ●キーやハイ●ュウを避ければ大丈夫だ。
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