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叱られる令息
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バシッ!ドゴッ!!ガタタターン!!ガシャン!!
「だ、旦那様っもうおやめくださいませっ!」
「これ以上はお坊ちゃまが死んでしまいます!!」
使用人たちが必死になって侯爵を宥め、怒りを鎮めようとしています。
怒り狂う侯爵の目の前には殴られて、鼻からは鼻血を、口の中を切ったのか口元にも血が流れています。
騎士団長を賜り、討伐の際の右足のケガを理由に惜しまれつつ引退をして、
誰も引き受けたがらない見習い騎士の指導員を数多くの勲章を賜った過去を捨ててかって出た侯爵。
侯爵はローゼとの婚約解消に怒っているわけではありません。
時の流れで言えば、バコーンっと拳を振り下ろした今はローゼが領地に旅立って5年と言う月日が経っています。
目の前のライドは17歳。学園の高等部2学年(皆様の世界でいう高校2年)
王太子殿下の側近候補として学園での生活は監視をされています。
しかし、そんな事は知らされていないライド。
側近としての仕事はしていれば良いと1点を除いては十分な合格点でした。
しかし、その1点が‥‥父の侯爵の怒りを爆発させてしまっています。
「よりにもよって、殿下の前で決闘騒ぎとは!!侯爵家に泥を塗る気か!!」
「そんなつもりは毛頭ございませんっ!私は!私は彼女を!アマディラを望んだだけです!」
侯爵は息子ライドの髪を力任せに掴み、顔を上にあげさせます。
「アマディラと言ったか。男爵令嬢の!!」
「はいっ!身分違いは十分に判っています。ですが!ですが!認めてください父上!!」
掴んだ髪を投げるかのように乱暴に手を離す侯爵は執事の差し出した封筒から書類を取り出すと。ライドの前に放り投げます。
目の間に散らばる書類と父の顔を交互に見るライド。
「ライド、誰にでも間違いはある。今回の事、王太子殿下はお前の心次第で余興とすると言ってくださった。その書類に目を通してしかと答えよ」
散らばった書類を手に取り、目を落とすと見知った名前がずらずらと書かれています。
何枚もに渡って表で時系列ならべられていたのは、妻にと決闘まで申し込んで臨んだアマディラの情事の相手だと理解をした時は目の前が真っ白に。
その中には勿論自分の名前もある。思わず息を飲んだのは、1日に情交をした相手が3,4人と言う日が何日もある事である。
そして自分と同じ日に性交をしていた男の名前には机を並べる公爵家の次男や伯爵家の嫡男の名前もある。
「読みながら聞け。そのアマディラという女。王太子殿下に言い寄った令嬢がいるとの報告で中等部の頃から調査が入っている。魅了の術を使ったかと思われたが‥‥ライド。残念だ。単に色香にやられただけとはな。
名前をよく見てみろ。王太子殿下と魔術師団長の子息、宰相候補の子息の名前はないであろうが。
お前だけだ。側近候補として殿下の側にいる者で色香に迷ったのはお前だけだ。
高等部では禁呪返しの腕輪は殿下はされておられたが、中等部ではしていない。アマディラが殿下に言い寄ったのは中等部だ」
ふぅと大きくため息を一つ吐いて侯爵は続けます。
「お前はドレイン伯爵家のシェマヴィレローゼ嬢との婚約はドレイン伯爵家の当時の伯爵夫妻が離縁したものだと思っていると思うが、それは表向きだ。本当の理由はお前の不貞だ。伯爵家は我が侯爵家が辱められるであろう痴態を敢えて隠し、伯爵家の離縁が理由だと言ったのだ」
グシャリと書類を握り、震える手でライドは父である侯爵に問います。
「こ、これは‥‥本当の事なのですか」
「嘘だと思うか?よくその握った紙を見てみろ」
そう言われるとライドは紙に目線を落とします。よく見るとどれも王家の透かしがあります。
思わず不敬に当たると握った手を離します。
「それは王家が調査をした報告書だ。内容に虚偽はない。読んだようだからお前に再度聞く。
アマディラを妻に迎え、この侯爵家を出ていく。これが1つ目の案だ。
もう一つは、アマディラと手を切り、心を入れ替え、儂の決めた令嬢と婚姻する。どちらが良い」
書類を読む前なら!!アマディラの裏の顔を知る前なら前者をためらいなく選んでいただろうと思うライド。
しかし、知ってしまった今はアマディラとの事は悔まれてならない。
だが、後者を選らべば一生自由のない、いや意思のない生活になるだろうと思うと選べません。
「どちらにする。儂は知っていると思うがあまり長く返事を待つ人間ではない。まして問うているのは己の行いについて今後どうするかだ。決められないなら儂が決めてやるがどうだ」
父の言葉に、自分を切り捨てる選択肢を感じ取るライド。
「ア、アマディラとは‥‥もう関係を絶ちます。側近でいさせて頂けるのならこの身を、命を殿下に捧げます」
「そうか。後悔はないか」
「ありません」
「婚約者はこちらで決めておく」
「あの、その件だけは待ってください」
「お前の意見が通ると思うか」
「ぐっ‥‥思いません」
「部屋に戻れ」
父に礼をして部屋から退室します。殴られて折れた歯を吐き出し手に取ります。
グッと折れた歯を握りしめたライドでした。
「だ、旦那様っもうおやめくださいませっ!」
「これ以上はお坊ちゃまが死んでしまいます!!」
使用人たちが必死になって侯爵を宥め、怒りを鎮めようとしています。
怒り狂う侯爵の目の前には殴られて、鼻からは鼻血を、口の中を切ったのか口元にも血が流れています。
騎士団長を賜り、討伐の際の右足のケガを理由に惜しまれつつ引退をして、
誰も引き受けたがらない見習い騎士の指導員を数多くの勲章を賜った過去を捨ててかって出た侯爵。
侯爵はローゼとの婚約解消に怒っているわけではありません。
時の流れで言えば、バコーンっと拳を振り下ろした今はローゼが領地に旅立って5年と言う月日が経っています。
目の前のライドは17歳。学園の高等部2学年(皆様の世界でいう高校2年)
王太子殿下の側近候補として学園での生活は監視をされています。
しかし、そんな事は知らされていないライド。
側近としての仕事はしていれば良いと1点を除いては十分な合格点でした。
しかし、その1点が‥‥父の侯爵の怒りを爆発させてしまっています。
「よりにもよって、殿下の前で決闘騒ぎとは!!侯爵家に泥を塗る気か!!」
「そんなつもりは毛頭ございませんっ!私は!私は彼女を!アマディラを望んだだけです!」
侯爵は息子ライドの髪を力任せに掴み、顔を上にあげさせます。
「アマディラと言ったか。男爵令嬢の!!」
「はいっ!身分違いは十分に判っています。ですが!ですが!認めてください父上!!」
掴んだ髪を投げるかのように乱暴に手を離す侯爵は執事の差し出した封筒から書類を取り出すと。ライドの前に放り投げます。
目の間に散らばる書類と父の顔を交互に見るライド。
「ライド、誰にでも間違いはある。今回の事、王太子殿下はお前の心次第で余興とすると言ってくださった。その書類に目を通してしかと答えよ」
散らばった書類を手に取り、目を落とすと見知った名前がずらずらと書かれています。
何枚もに渡って表で時系列ならべられていたのは、妻にと決闘まで申し込んで臨んだアマディラの情事の相手だと理解をした時は目の前が真っ白に。
その中には勿論自分の名前もある。思わず息を飲んだのは、1日に情交をした相手が3,4人と言う日が何日もある事である。
そして自分と同じ日に性交をしていた男の名前には机を並べる公爵家の次男や伯爵家の嫡男の名前もある。
「読みながら聞け。そのアマディラという女。王太子殿下に言い寄った令嬢がいるとの報告で中等部の頃から調査が入っている。魅了の術を使ったかと思われたが‥‥ライド。残念だ。単に色香にやられただけとはな。
名前をよく見てみろ。王太子殿下と魔術師団長の子息、宰相候補の子息の名前はないであろうが。
お前だけだ。側近候補として殿下の側にいる者で色香に迷ったのはお前だけだ。
高等部では禁呪返しの腕輪は殿下はされておられたが、中等部ではしていない。アマディラが殿下に言い寄ったのは中等部だ」
ふぅと大きくため息を一つ吐いて侯爵は続けます。
「お前はドレイン伯爵家のシェマヴィレローゼ嬢との婚約はドレイン伯爵家の当時の伯爵夫妻が離縁したものだと思っていると思うが、それは表向きだ。本当の理由はお前の不貞だ。伯爵家は我が侯爵家が辱められるであろう痴態を敢えて隠し、伯爵家の離縁が理由だと言ったのだ」
グシャリと書類を握り、震える手でライドは父である侯爵に問います。
「こ、これは‥‥本当の事なのですか」
「嘘だと思うか?よくその握った紙を見てみろ」
そう言われるとライドは紙に目線を落とします。よく見るとどれも王家の透かしがあります。
思わず不敬に当たると握った手を離します。
「それは王家が調査をした報告書だ。内容に虚偽はない。読んだようだからお前に再度聞く。
アマディラを妻に迎え、この侯爵家を出ていく。これが1つ目の案だ。
もう一つは、アマディラと手を切り、心を入れ替え、儂の決めた令嬢と婚姻する。どちらが良い」
書類を読む前なら!!アマディラの裏の顔を知る前なら前者をためらいなく選んでいただろうと思うライド。
しかし、知ってしまった今はアマディラとの事は悔まれてならない。
だが、後者を選らべば一生自由のない、いや意思のない生活になるだろうと思うと選べません。
「どちらにする。儂は知っていると思うがあまり長く返事を待つ人間ではない。まして問うているのは己の行いについて今後どうするかだ。決められないなら儂が決めてやるがどうだ」
父の言葉に、自分を切り捨てる選択肢を感じ取るライド。
「ア、アマディラとは‥‥もう関係を絶ちます。側近でいさせて頂けるのならこの身を、命を殿下に捧げます」
「そうか。後悔はないか」
「ありません」
「婚約者はこちらで決めておく」
「あの、その件だけは待ってください」
「お前の意見が通ると思うか」
「ぐっ‥‥思いません」
「部屋に戻れ」
父に礼をして部屋から退室します。殴られて折れた歯を吐き出し手に取ります。
グッと折れた歯を握りしめたライドでした。
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