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第12話 世の中の割り算
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グラシアナが負傷してからの王宮は少し混乱をしていたが、ロペ公爵家に戻ったあとは更なる混乱が広がっていた。
一向に決まらないクリスティアンの相手。
男爵位まで手を広げて令嬢を探すのだが、クリスティアンの年齢が既に27歳。
令嬢に求める物が多すぎるのだ。
1つ目
子供が最低3人は出産できる年齢であること
2つ目
妃教育を早々に履修すること
3つ目
未婚であること
この条件をクリアするのに1つ目の条件で早々に躓いた。
初潮を迎える10代前半からなんとか3人を出産出来る年齢なら30代前半。
医療が確立されておらず、6,7人に1人の高い割合で出産の最中や産後産褥の癒えが悪く儚くなる女性も多い。
それをクリアしたとしても、今まで散々に「イメルダ嬢が婚約者では?」などと陰口を叩いて来た貴族達は自分たちにそのお鉢が回ってくるとなれば他人事だと笑っていられない。
現国王も愚王だが、それに輪をかけて賢さの真逆に位置する上に婚約者を蔑ろにして他の女を侍らせる王太子に自分の娘を嫁がせたいと考える者はいない。
「これじゃ子供を産ませるためだけに嫁がせるようなものだ」
おまけにグラシアナですら王妃教育を終えるまで15年かかっている。
現王妃がその手前、王太子妃教育を終えるのに17年、その後王妃教育を終えるのに5年で合計22年。どれだけグラシアナが優秀だったのか。
下手をすれば2つ目の条件をクリアするのに悪阻で苦しむ妊娠中も寝る間も惜しんで教育を受けねばならない。他人なら痛くもかゆくもないが娘となれば話が違う。
結婚をする為の最低年齢が定められていないのをいいことに貴族達はこぞって娘を結婚させてしまい「夫43歳、妻は生後3か月」という夫婦まで誕生した。
議会も令嬢の選定をするにも該当者が片手に満たないとなれば選ぶに選べない。
何より王太子のクリスティアンが「シアじゃなければ結婚しない」と言い張るのだからお手上げだ。
議会がそれらの何よりも頭を抱えているのはそれまで「決まった」と言えば大人しく従っていたロペ公爵が月末には完全引退し、息子のエリアスが当主となる事が決定している事だった。
エリアスはかなり強気で「再任はあり得ない。そちらで勝手にやってくれ。もし再任となっても従う事はない」と議会の決定にまるで従う意思がないし、グラシアナは自分の名前を教えてもらわねばならない状況と聞いて重い空気が議場に立ち込めていた。
★~★
国王は可愛い息子クリスティアンに問いかける。
「お前はイメルダが良かったのではないのか?」
クリスティアンは即答する。
「イメルダは はとこ なんだ。それ以上の関係じゃない!」
しかし国王の元に齎されている報告書の数々は「それ以上の関係」を物語っている。
「イメルダにはドレスや宝飾品を買ってやってるじゃないか」
「報酬だよ。シアだって予算からドレスを作っているじゃないか」
広くとらえれば「出所が同じ」なのだからイメルダにだけ買ったわけじゃないと言いたいのだろうが、それが通用すると考えているクリスティアンに国王も頭を抱える。
「何の報酬だ」
「そ、それは‥‥朝、起こして貰ったり小旅行や観劇なんかに付き合わせた報酬だよ。これでも出来るだけ経費を掛けないように最小限で済むように工夫はしたんだ」
言葉に間違いはない。国王の手元にある報告書はクリスティアンの言葉を肯定はしている。
朝は週に3、4回イメルダがやって来て、寝ているクリスティアンに添い寝をするようにして起こしていたとあるし、観劇も広めのBOX席ではなくペア席という「お2人様席」
グラシアナを誘っての観劇は12人用の広めのBOX席だった事を考えれば確かに料金は半額以下。ただ、2人きりなのでそれを周囲がどう見たかは別問題。
小旅行も2泊3日だがこちらも経費節約なのか宿泊した部屋はツインルームで1部屋。
グラシアナと遠くに視察に行った際は従者も多かった事もあるがそれぞれが個室だった。
こちらも王太子が婚約者ではない女性と1つの部屋で宿泊した事実を周囲がどう見るかは別問題。
国王が頭を抱えているのはオルタ侯爵家からも「責任を取れ」と言ってきている事。
イメルダは負傷の責任を追及されて連日の聴取に疲れてしまい、気を病みそうなので「好きな事をさせて、ストレスを発散させている」とあるが、周囲は通常では?としか見ていない。
それでも国王がクリスティアンが可愛いのと同じく、オルタ侯爵夫妻も第一子であるイメルダを殊更に可愛がっていてそのイメルダが「こうなったのはクリスのせい!クリスに責任を取ってもらうわ」と言っているのだと唾を飛ばして国王に詰め寄った。
勿論イメルダも片手如何にしか残っていない候補者の中に名前はある。
「妃はイメルダ。補佐として3、4人の側妃を外交用などに据えるしかないか」
教育を1人に負担させてしまえば時間がかかるが、得意分野で分けてしまえはいい。
1人で20年かかるのなら5人で4年。何ならこの際側妃を10人にすれば2年で妃教育が終わる。
外交用と言っても小難しい折衝などは文官や事務次官が行うし、王妃や王太子妃など所詮飾りなのだ。「座って笑っていればいい簡単な仕事」と割り切って最低限のマナーや所作をクリアすればそれでいい。
そもそもで王家が「血だけ繋げばいい」存在なのだからこの際、妃となるものに今までのような重責は必要ないのでは?世の中、そんな単純な割り算で事が済むはずがないが国王も議会もそうするしかない空気を感じ取っていた。
一向に決まらないクリスティアンの相手。
男爵位まで手を広げて令嬢を探すのだが、クリスティアンの年齢が既に27歳。
令嬢に求める物が多すぎるのだ。
1つ目
子供が最低3人は出産できる年齢であること
2つ目
妃教育を早々に履修すること
3つ目
未婚であること
この条件をクリアするのに1つ目の条件で早々に躓いた。
初潮を迎える10代前半からなんとか3人を出産出来る年齢なら30代前半。
医療が確立されておらず、6,7人に1人の高い割合で出産の最中や産後産褥の癒えが悪く儚くなる女性も多い。
それをクリアしたとしても、今まで散々に「イメルダ嬢が婚約者では?」などと陰口を叩いて来た貴族達は自分たちにそのお鉢が回ってくるとなれば他人事だと笑っていられない。
現国王も愚王だが、それに輪をかけて賢さの真逆に位置する上に婚約者を蔑ろにして他の女を侍らせる王太子に自分の娘を嫁がせたいと考える者はいない。
「これじゃ子供を産ませるためだけに嫁がせるようなものだ」
おまけにグラシアナですら王妃教育を終えるまで15年かかっている。
現王妃がその手前、王太子妃教育を終えるのに17年、その後王妃教育を終えるのに5年で合計22年。どれだけグラシアナが優秀だったのか。
下手をすれば2つ目の条件をクリアするのに悪阻で苦しむ妊娠中も寝る間も惜しんで教育を受けねばならない。他人なら痛くもかゆくもないが娘となれば話が違う。
結婚をする為の最低年齢が定められていないのをいいことに貴族達はこぞって娘を結婚させてしまい「夫43歳、妻は生後3か月」という夫婦まで誕生した。
議会も令嬢の選定をするにも該当者が片手に満たないとなれば選ぶに選べない。
何より王太子のクリスティアンが「シアじゃなければ結婚しない」と言い張るのだからお手上げだ。
議会がそれらの何よりも頭を抱えているのはそれまで「決まった」と言えば大人しく従っていたロペ公爵が月末には完全引退し、息子のエリアスが当主となる事が決定している事だった。
エリアスはかなり強気で「再任はあり得ない。そちらで勝手にやってくれ。もし再任となっても従う事はない」と議会の決定にまるで従う意思がないし、グラシアナは自分の名前を教えてもらわねばならない状況と聞いて重い空気が議場に立ち込めていた。
★~★
国王は可愛い息子クリスティアンに問いかける。
「お前はイメルダが良かったのではないのか?」
クリスティアンは即答する。
「イメルダは はとこ なんだ。それ以上の関係じゃない!」
しかし国王の元に齎されている報告書の数々は「それ以上の関係」を物語っている。
「イメルダにはドレスや宝飾品を買ってやってるじゃないか」
「報酬だよ。シアだって予算からドレスを作っているじゃないか」
広くとらえれば「出所が同じ」なのだからイメルダにだけ買ったわけじゃないと言いたいのだろうが、それが通用すると考えているクリスティアンに国王も頭を抱える。
「何の報酬だ」
「そ、それは‥‥朝、起こして貰ったり小旅行や観劇なんかに付き合わせた報酬だよ。これでも出来るだけ経費を掛けないように最小限で済むように工夫はしたんだ」
言葉に間違いはない。国王の手元にある報告書はクリスティアンの言葉を肯定はしている。
朝は週に3、4回イメルダがやって来て、寝ているクリスティアンに添い寝をするようにして起こしていたとあるし、観劇も広めのBOX席ではなくペア席という「お2人様席」
グラシアナを誘っての観劇は12人用の広めのBOX席だった事を考えれば確かに料金は半額以下。ただ、2人きりなのでそれを周囲がどう見たかは別問題。
小旅行も2泊3日だがこちらも経費節約なのか宿泊した部屋はツインルームで1部屋。
グラシアナと遠くに視察に行った際は従者も多かった事もあるがそれぞれが個室だった。
こちらも王太子が婚約者ではない女性と1つの部屋で宿泊した事実を周囲がどう見るかは別問題。
国王が頭を抱えているのはオルタ侯爵家からも「責任を取れ」と言ってきている事。
イメルダは負傷の責任を追及されて連日の聴取に疲れてしまい、気を病みそうなので「好きな事をさせて、ストレスを発散させている」とあるが、周囲は通常では?としか見ていない。
それでも国王がクリスティアンが可愛いのと同じく、オルタ侯爵夫妻も第一子であるイメルダを殊更に可愛がっていてそのイメルダが「こうなったのはクリスのせい!クリスに責任を取ってもらうわ」と言っているのだと唾を飛ばして国王に詰め寄った。
勿論イメルダも片手如何にしか残っていない候補者の中に名前はある。
「妃はイメルダ。補佐として3、4人の側妃を外交用などに据えるしかないか」
教育を1人に負担させてしまえば時間がかかるが、得意分野で分けてしまえはいい。
1人で20年かかるのなら5人で4年。何ならこの際側妃を10人にすれば2年で妃教育が終わる。
外交用と言っても小難しい折衝などは文官や事務次官が行うし、王妃や王太子妃など所詮飾りなのだ。「座って笑っていればいい簡単な仕事」と割り切って最低限のマナーや所作をクリアすればそれでいい。
そもそもで王家が「血だけ繋げばいい」存在なのだからこの際、妃となるものに今までのような重責は必要ないのでは?世の中、そんな単純な割り算で事が済むはずがないが国王も議会もそうするしかない空気を感じ取っていた。
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