辺境伯のお嫁様

cyaru

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呼び出し音と保留音

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本邸から、奥様の様子を見てくると言って出てきたスチュワート。
別邸でキャンティに土下座で頼んでいます。

「お願いでございますっ。わたくしはもう帰るところがありませんっ」

困りましたわね・・泊めると言ってもこの小さな別邸。
ご存じだとは思うのですが、埃だらけで大掃除をしたほどですのよ?
ベッドだって大工仕事でわたくしが作ったものですし・・。
シーツもボロだったのを何とか洗って使っているのに。
何より、ベッドは1つしかありませんし。

寝室以外の部屋は、この部屋と・・調理場・・おトイレ、湯あみの部屋だけ。
泊めてあげる部屋がありませんわねぇ。
クライゴウトの小屋は今はラブリーラブラブな2匹だし。

「スチュワート様、お気持ちはわかるのですが
 何故こうなっているのです?
 理由も解らず、ただ、辞めた、泊めろと言われましても困りますわ」

うーん・・スチュワートさん、土下座をやめませんわね。
ますます困りましたわ。
それに外に放り出すと言ってもこの雨と風・・
どうしてこの伯爵家はわたくしに面倒ごとしか持ってこないのでしょう。
わたくしからはさしてお願いはしておりませんのに。

「スチュワート様、いい加減にしてくださいませね」
「はいぃぃ」

恐る恐るという感じで頭をあげるスチュワートさん。
わたくし、頭が痛くなってきましたわ。
こんな時、普通のご令嬢は気を失ったりしますのかしら?
あぁ、ダメですわ。そんな相手に隙を見せる真似はわたくしには無理!

「あの・・キャンティ様・・」
「はい?・・まぁ、そんな恰好では何も話せませんから
 椅子にお座りになってくださいまし」

立ち上がり、椅子に座りなおすスチュワート。

「お茶が冷めましたわね。淹れなおしましょう」
「いえ、飲みます。大丈夫です」
「そう、・・で?何がどうで、こうなったんですの?」

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ピンポンパンポ~ン♪ スチュワート説明中 ピンポンパンポ~ン♪
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「そうでしたの・・それは大変でしたわね」
「いえ、お話をしたら少し・・落ち着きました」
「落ち着いたところで、戻る気はないのでしょう?」
「えぇ、微塵もございません」

うーん・・本気で困ったわね。正直別邸は人は要らないのよねぇ
スチュワートさんは魔法の事は知っているけれど・・
兎に角、眠る場所がここにはないんですのよ。そもそもの話ですわ。

ちらりとスチュワートさんを見ると、期待でいっぱいなキラキラアイズ。
はぅぅ~、そんな乙女みたいな目をされてもねぇ・・。
そうだ!ちょっと相談してみましょう。

「スチュワート様、ちょっとお待ちくださいませね」

そういうと、キャンティは調理場にある魔道具に向かいます。

「確か・・相手に連絡する時は青いボタンを押すのよね。
 通話が終わるか、相手が出なければ赤いボタン・・」

青いボタンをポチ!

テンテケテンテン♪テレッテテンテン♪

「何よ・・この妙な音・・趣味を疑うわランバートさん」

テンテケテンテン♪テレッテテンテン♪

「いないのかしら・・」(プッ)
「はい~こちらギルド商会です~アリシアがお受けいたしま~す」
「あ、あら?アリシア様?ごきげんよう。キャンティですわ」
「キャンティさん?あら?伝言の件ですか?」
「いえいえ、その件はわかりました。在庫はあるのですぐご用意できますわ。
 それとはちょっと違うんですが、頼みたい事がございまして・・」
「え?もうできたんですか!ありがとうですぅぅ!
 それでご注文なんですかね?受けられますけど入荷はこの嵐で
 遅れると思いますがいいですかー!」

なんだか、リアルで会うよりもPOPな感じなのね・・新鮮だわ。

「いえ、ギルドの方でお仕事とか今晩泊まれる宿などないかなと」
「え?キャンティさん契約どうするんですか?辞めちゃうんですか」
「わ、わたくしじゃございませんの」
「違いますか・・そうですねぇちょっと待ってくださいね」

テンテケテンテン♪テレッテテンテン♪
テンテケテンテン♪テレッ

「ハイ、変わりました。ランバートです」
「あぁ、ランバートさん、ごきげんよう。キャンティですわ」
「えーっと仕事ですか?」
「わたくしではありませんが、どこか雇ってくれるところ・・ないですか?
 できれば住み込みで」
「うーん・・住み込みですか。探せばあるかも知れませんが
 この嵐でしょう?今日、明日って急ぎは無理ですよ」
「そうですか・・では、宿泊するところなどは?」

仕事はないのかぁ・・まぁこの天候だから急には無理よねぇ
でも泊まれる場所は・・空きがないかしらねぇ・・

「キャンティさん、ちょっとですねぇ」

え?女性?ちゃうちゃう!女性ちゃいますわ!
おっと・・それは言ってなかったですわね

「あの、詳しい話は転移でもしてお話しますが、
 泊まるのは男性ですわ。ご存じでしょう?スチュワート様なの」
「へっ?あの伯爵様ンとこの家令さん?」
「え、えぇそうですの、どこか泊まる場所ありません?」
「今日あたり宿のほうもバタバタしてますからね
 ですが・・とりあえずこっちに飛べます?」
「はい、大丈夫ですわ」
「じゃ、ギルドの方に飛んでください」
「わかりましたわ」

プップーップー・・あら?ランバートさんが切ってくださったのね。
とりあえずは、行きましょうか。

「スチュワート様、カバンを持って小屋においで下さいまし」
「はっはい!わかりました。今行きます」

カバンを持ってスチュワートさんがやってきました。

「ギルドに行きますわ」
「転移魔法・・ですか?」
「えぇ。掴まってくださいまし」

わたくしとスチュワートさんはギルドに転移をいたしましたわ。
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