辺境伯のお嫁様

cyaru

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魅了を投了

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スチュワートを先頭にして、キャンティは先ず、特別室に向かいます。

特別室にはリンダの両親が先に入室していますね。
見張り役と思われるヤットコさんが何やら言われているようです。

「君たち、これは許されない事だ。わかっているのかね」
(フン・・お前の方が許されねぇだろうが)

「そうですわ。次期夫人の両親であるわたくしたちに何たる仕打ち。
 あとで三つ指ついても許しませんよッ」
(三つ指は・・別にお前に輿入れするわけじゃねぇし)

話し声が聞こえますね。
くぁ~面倒しかないところだわよ・・キャンティ表情に丸出しですよ?

「あのスチュワート様?」
「なんでしょう?あと、わたくしの事はスチュワートと。
  適任者がいないのとまだ正式に辞職したわけではないのですが、
 心はもう・・はぁぁ♡」
(心はもう・・って色々と面倒くさい人ですわね・・)

で、その期待してますワン♪という顔っ!
ついでに胸元まで軽く握ったグーを・・犬ですか、犬ですわ、犬ですね。
これは・・思考と視覚と切り離さなければいけませんわね。
軽く頭痛を感じるキャンティ。

「で、特別室は確か、情を交わした女性の親御様・・でしたわね」
「えぇ。そうです。本来は来月のエメロード祭まで泳がせるつもりでしたが
 これだけ冠水してるんですから、もう充分泳いだでしょう。
 ガツンとやっちゃってください」

ですが・・・この香り?匂い?は何でしょうか。
どこかでクンクンしたことがあるような・・んーどこだったか?
キャンティ、鼻をクンクンさせながら歩いてますね。

「スチュワートさん、何か匂いませんか?」
「えっ!?やっぱりわかります?雨で窓が開けられないので
 臭いって言われたらヤダなぁと思いまして、アロマしましたよ!」

得意げに何を言ってるんだが・・アロマキャンドルなら髪の毛に
点火&着火してあげますのに。
しかし・・クンクン・・この香りは・・。

「やっぱり香ってますかねぇ・・洗濯しても動くと香るらしいんですよ」
(だから!違うって!誰が年が倍以上の男の臭いをかぐのよ!)

「違いますわ!スチュワートさんの使った香りはオレンジ・・柑橘系。
 ですが、先程から匂っているのは甘い・・カラメルの中に
 さらに砂糖を・・はっ!」

咄嗟にキャンティ、スチュワートの背後から抱き着き、
方向転換させてますよ??

「うわっ・・結構積極的・・いえ、どうされました?」
「どうもこうもないわ!部屋の中には誰がいますの!?」
「部屋には・・今はヤットコだと思いますが」
「直ぐに!部屋から出しなさい!」

キャンティはドレスのポケットからハンカチを取り出し、
何やら魔法をハンカチにかけて、スチュワートに渡します。

「えっ・・これをわたくしに??宝物に・・(バコっ)」

スチュワートの鳩尾にキャンティのボディがさく裂してますね
しかし、スチュワートは何か違う痛み?を感じてますよ。

「はうっ!・・あぁ・・この痛み・・」
「バカ言ってる間に!早くヤットコさんを連れてきなさい!」

何時からこんなお馬鹿さんになったんだろう?と考えるわたくし。
あ!ヤットコさんが来ましたわ!

「奥様、どうしたんですか?」
「ヤットコさん、何もありませんか?気分は?・・・ってこの臭い!」

ハッと口を押えても遅いですわ!
あなた!昨日!カツオのたたきをニンニクで食べましたわね?
ん・・・そうか・・ニンニク・・

「ヤットコさん、あの部屋には情を交わした女性の親御さんがいるのよね?」
「そうです。男性が父親、女性が母親です」

あのぅ・・聞かなくてもそこはわかりますよ。
というか、わからなかったら色んな意味で大変でしょう?
わたくしも!あのご夫婦も!面倒じゃないの!パパがママでママがパパ・・
あぁ、どうでもいいですわ!

「すぐに!調理室へ行って、料理長にニンニクをすりおろして
 もらって、ここに持ってきて頂戴っ!」
「キャンティ様?ニンニク?そのまま食べると結構キますよ?」

目が点・・とはまさにこの事ですわ!食べるわけがないでしょう!!
ニンニクは、こってり系のラーメンに入れるのがわたくしのセオリー!
あぁ、それも今はどうでもいいですわ!

10分ほどでしょうか?ボオルを抱えてヤットコさんが走ってきます。
あぁ・・あれほど廊下は走ってはダメといったのに!
転んだら、ニンニクのすりおろしをぶちまけちゃうでしょうが!

「奥様・・お持ちしましたが・・スプーンでいきます??」
「だからー!食べるんじゃないんですってば!」

強烈なニンニク臭が立ち込める廊下。
息をするのも苦しいですわ!

「さぁ、行きますわよ!」
「え?気付けに食べるんじゃないんですか?まさか!ニンニクは飲み物??」

いい加減にしないと目薬代わりに摩り下ろし汁を入れるわよ!

ガチャリ

わたくしは、ヤットコさんを手で制して部屋に入りましたわ。
中の二人をゆっくりと探索魔法で探ります。

「なるほど・・そういう事ね」

ツカツカと部屋に入るキャンティの後ろをニンニクの入ったボオルを抱えて
ヤットコも入室します。

「ヤットコさん、そのハンカチをニンニクのボウルに入れて頂戴」
「え?なんでまた?」
「この方・・魅了の魔法を使ってらっしゃるわ。そうでしょう?」

ニヤリと笑うキャンティに、両掌を上に、軽く上げる・・・

「バレたのは初めてですよ。流石・・と言ってもいいでしょうか?」
「えぇ・・初めてお目にかかるはずですわ」
「貴女の噂は聞いていますからね」
「どうでもいいわ!申し訳ないけれど死んで頂くわ。
 魅了の魔法は禁呪である事はご存じよね?この辺境の地で何をしようと?」
「フフッフ・・・アッハッハ、こんな田舎!なんの興味もないわ!
 魅了をかけた女を伯爵にあてがって、その影響を見ていたんだよ。
 いやぁ・・傑作だ。経由するだけであんな簡単にかかってくれるなんてな!」

インキーンタムーシ子爵はどうやら、禁呪である魅了の魔法をリンダに使い、
リンダを経由してヴィヴィアンにどう影響するか実験をしてたようですよ。

「ヤットコさん、そのボオルを!」
「え?だから!スプーン入れてない・・」

ヤットコの言葉が終わる前に、ボウルをひったくるキャンティ。
そしてボオルの中からハンカチを取り出すと、ヤットコとスチュワートの
顔をベッタベッタと拭きますよ?

「なっ!なにを・・ウプっ・・臭い!」

ニンニクの臭いと刺激にスチュワート目が開いてませんっ!
グッ・・失敗だったわ!まぶた周りは避けるべきだったわ!

「さぁ!ヤットコさん!スチュワートさんっ!子爵を押さえて!」

その声にヤットコとスチュワートはインキーンタムーシ子爵に
飛び掛かり、うつ伏せにして押さえつけます。

「申し訳ないけど、辞世の句は詠ませてやれないわ」

キャンティはボウルにグッと手を入れるとニンニクを掴んで
インキーンタムーシ子爵の鼻!口にねじ込みます。

その様子にさすがのスチュワートも自分も・・とは言い出せませんが
きっとサーベィなら・・・やめておきましょう。

「グほっ・・ゲエッ・・」

「子爵から離れて!」

キャンティの言葉にヤットコとスチュワートが離れますね。
でもスチュワートまだ目が・・まともに開けられずヨロケていますね。

「ディスアピア~サスピ妖魔消滅シャス」

「フグガァ・・ゴフッ・・ギョアァァー!!」

インキーンタムーシ子爵がオレンジ色の炎に包まれ、
のたうち回っていますよ。

「ヒッ・・ヒエェェー!!たっ助けて・・あぁぁ!」

リンビョーット夫人のドレスにオレンジの炎が燃え移ります。

「奥様・・消してあげないと!!」
「大丈夫。単に魅了されていただけなら何ともないわ。
 この炎で焼かれるのは、闇の取引をした命の抜け殻だけ・・」

しかし・・リンビョーット夫人・・焼けてますけど?

「あらら・・夫婦揃って闇に手を染めちゃってたのね・・」

燃え尽きた炎、灰も何も残っていません。あら不思議?

「奥様・・何も残っていませんけど・・」
「えぇ、闇の取引をするとこうなるって事・・久しぶりにみたわね」
「と、いう事は、娘も??」
「可能性は高いと思いますわ。ですが・・経由したと言うので
 娘の方は魅了は全く使えない、ザルの役割なのかも知れませんわね」

「で?ニンニクは何故?」

ニコリと笑うキャンティ。

「ヤットコさんがあまりにも息が臭いから、より臭いものなら
 大丈夫かなーとか?」
「え?そんな理由で鼻の孔にまで詰めたんですか?」
「いいえ?刺激もあると、嬉しいだろうなぁって?
 さぁ、情を交わした女性を片づけて、プリン作るわよぉ!」

顔をニンニクタオルで拭かれた2人。
プリンの甘さを想像して吐きそうになったのは秘密ですわ!
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