辺境伯のお嫁様

cyaru

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救出作戦の救世主

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狭くて暗い地下ピットに入っていく自衛団と憲兵団の面々。

先に降りた者が足元や周りを魔石ランプで照らします。
浸水の名残か、くるぶしまで、まだ水が残っていますね。

最期にマンホールから下りてきたシビルエンジニャンの部下が言います。

「直進すると、人通孔じんつうこうがありますんで!その先なら水は少ないと思いますよー
 左右は壁に見えますけどー地中の梁ですからーその向こう側にも
 こんな空間がありますよぅー。人通孔を通らないといけませんけどねー」

3つ目の人通孔をくぐった時、シビルエンジニャンの部下が違和感を訴えます。

「あれ?変だなぁ・・なんでこんな所にベニヤ板があるんだろう?」

その声に自衛団の男が応えます。

「ふむ・・変だな。このベニヤ板、反りがないぞ・・新しいな」
「でもこんなサイズ、あのマンホールからは入れられないですよ」
「と、いう事は・・」

自衛団の男は魔石ランプで周囲を照らしてキョロキョロ。

その頃、ル―ヴェル一味は慌てています。

「おいっ!誰か向こうのマンホールから入ってきたぞ」
「結構な人数がいるぞ・・憲兵じゃないのか?」
「くそっ・・仕方ない、逃げるぞ」
「でもあのガキや女どもはどうするんだ」
「捨てていく!逃げるのが先だ。商品はまた仕入れればいい!急ぐぞ!」

自衛団や憲兵団の入ってきたマンホールとは違う出口に向かいます。
ほっほぅ・・よく頑張りましたねと言いたくなるような大きな穴を
床に開けていますね。
隠しておいたハシゴを架けて、まさに登ろうとした時、声が聞こえます。

「いましたぁ!子供です!女性の方もいますよー!」
「どっちだ!」
「こっちです!5つ目の人通孔を抜けたら、両側に人通孔がある空間が
 ありますんでぇ!それの向かって右側ですぅ!」
「子供らは無事かー!」
「寝てますぅー!全員縛られて寝ていますぅー」
「何人だっ!何人いる!」
「隅まではまだ見えませーん!7名は確認済ですぅー」

5つ目の人通孔付近は水がないですね。
とても歩きやすいですが、大声を出すと響いてしまうので耳が痛いですねぇ。

ル―ヴェル一味は先頭を上がるル―ヴェルが被せておいた
カムフラージュの板を持ち上げていますね。

「おいっ!ガキどもが見つかった!早くしろっ」
「わかってる!ちょっと待て!くそっ!持ち上がらねぇっ!」
「馬鹿野郎!持ち上げるんじゃねぇよっ!横にズラすんだよっ!」
「あ、そうか!すまんっ」

1人目であるル―ヴェルが床の上に這い上がってきます。
そして・・うわっ!それは酷いよ!ル―ヴェル!何やってんの!

2人目が床に手を置いた瞬間、ル―ヴェルは思いっきり踏みつけてます。
そして、手を足で床から外そうとしていますよ。

「なっ!何をしやがるッ!」
「お前らとはここでお別れだ。ちゃんと罪を償うんだぜ!」
「なっ・・裏切る気か!くそっ!」
「裏切る??まさか・・お前らは最初から使い捨てなんだよッ!(ガッ)」

そう言うとル―ヴェルは2人目の頭を思いっきり踏みつけます。
思わず痛さに、2人目はハシゴから手が離れ、落ちてしまいましたよ。
続く、3人目も巻き込みながら落ちてしまいました。

ガラガラっ!ドザッ!ドザッ!(ギギギギ・・・)

「おい!こっちで音がしたぞ!行くぞっ!」

「ヤバい!早く上がれ!」
「うわっ!あの野郎・・蓋をしやがったッ」
「と、兎に角登れ!板はズラせばいいだろう!」

そういうと、転がり落ちた2人はまたハシゴを急いで登ります。
しかし・・板がズレてくれません。

「早くしろッ!」
「わかってるってッ!だけど・・・クソッ板がズレ・・ねぇんだよッ」
「お前のズラみたいにズラせ!」
「なっ!違う!俺のはズレないっ!俺は編み込み式だっ!」

板で苦戦する2人を憲兵団の1人が見つけます。

「いたぞー!ここだー!ゴキブリが2匹いるぞー」

その声に次々に現れる自衛団と憲兵団の男たち。

「大人しく降りてこい・・今のうちだぞ」

「仕方ない・・クソっ!ル―ヴェルの野郎・・覚えてろ・・」
「降ります!投降しますんで・・何もしないでぇ・・」

ちょろっと下を見ると、憲兵団の男が、忍者がするようにニンニンって
感じで両手の人差し指だけを立てていますよ。
あれは・・・俺の背後を取るな!っと警戒せねばならない
使い古されているけれど、大技であるカン●ョーではないですか!
憲兵団なのに小学低学年ですかっ!

降りてきた2人を手早く縛っていく自衛団。
マンホールよりも大きな穴のようなので、1人が登っていきますね。

「うーん・・これは上にモノを乗せてるな・・
 開きませーん!この板の上に何か乗せてるようでーす」

「壊せないかっ!」
「無理ですねー、下にあったベニヤと違って、強化石膏ボードみたいですぅ」
「強化石膏ボードだと!まさか!」
「そのまさかですぅ~。スーパーハードってタイ●ーボードのシール有ですぅ」
「それは無理だな・・壊せるシロモノじゃない!一先ず降りてこーい」

「どうします・・」

男たちは困っていますね。
そこにシビルエンジニャンの部下がそぉーっと手を挙げます。

「上に上がって、僕、案内できますけど??」
<<えっ!!>>
「まさか!お前、こいつらの仲間じゃないだろうなっ!」
「ち、違いますよ。僕はしがない一般公務員です。ただ・・」
「ただ・・副業で誘拐もしてるのか?」
「いえいえ!ちょっと空間認識能力はあるんで、上でも下でも歩けばわかるんですよ」
「凄い能力だな・・」
「いえいえ!UFOキャッチャーでちょっと得するだけですよ」

元来たマンホールまで戻った数名とシビルエンジニャンの部下。
おっと、シビルエンジニャンは下りなかったんですね。

「うわっ!課長ずるいです!降りてないなんて!」
「ずるくない!上にも誰かいないとダメだろう!」
「それもそうですね・・んー・・じゃ、こっちですよ!」

シビルエンジニャンの部下に先導されて歩く面々
一つの部屋まで来ましたね。ドアが開いたままです。
きっとル―ヴェルが逃走した名残なんでしょう。

「ここですね。ほら・・ボードがありますよ!」
「本当だ!タイ●ーボードのスーパーハードだ!」
「うわぁ・・事務机を引っ張ったんですねぇ。こりゃ下からは持ち上がらないですね」

「だけど・・お前凄いなぁ・・」

褒められるシビルエンジニャンの部下(出番はもうない)
得意げに腰に手を当ててますね!

「エッヘン!とりま、僕は救世主!メシアって呼んでください!」
「・・・・・・・」

誘拐された子供たちを保護したあと、ル―ヴェルを探す面々。

ル―ヴェル・・・お前は本当に腐ってるな!
作者の怒りも爆発しそうですよ。
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