愛なんて要りません

cyaru

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第16話  名指ししないで

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屋敷の中って昼間っからこんなに殺伐としてたっけ?そんな事を思いつつ今日は午前中だけで仕事を切り上げて午後は貴族院に離縁の事前手続きに行こうと思い戻ってきたら。

「奥様、何とかしてください!」
「なんとかって、それ私の仕事?」

縋ってきたのはマリエンたちに賄いすら「勝手に食べるな」と制限をした使用人。
優しくしてやる理由なんて微塵もないんだけど。

それに奥様はもうリオーナさんにお任せしたし、裏口しか利用しないからサロンの前を通る事も無かったけど、趣味を疑う内装になってるって事はリオーナさんがちゃんと仕事をしてるって事でしょうに。

大事な用事があるし、一応リオーナさんには自分の部屋と裏口の行き来だけと断りを入れている以上行きたくはないけど「早く、早く」とせっつかれて背中を押されたら前に進むしかない。

面倒だなと思いつつ部屋に入れば…

なんでブレン伯爵はリオーナさんの髪を掴んでるの?

状況が把握できない私にティナさんがそっと耳打ちしてくれた。

「奥様、世の中には苦痛や痛みを伴う愛情表現ってあるそうですよ」
「何処情報?誰情報?」
「まぁ…いろいろと」

その色々が知りたい気もするけど、私としては至って普通なので愛を表現するのに暴力を使うってのは御遠慮願いたいところ。

部屋に入った事にリオーナさんが何故か私を指さす。

(いえいえいえ。仲間入りする気はないので存分に!ご自由にどうぞ~)

プレイヤーになる気もないけど、リスナーになる気もない。
人には向き不向きと言うものがあって…。

少将混乱したところにブレン伯爵の声が聞こえてきた。


「ビビアン!安心してくれ」

(名指ししないでぇ)

そういう趣味はないから安心どころか、恐怖と気持ち悪さで心拍数が爆上がりよ?

「ど、どうぞ。お邪魔しましたわ。オホホ」

半歩後ろに引いたけど従者が掴んだ腕で2歩前に前進する羽目になってしまった。
フェードアウトしようとしてるのに腕を掴むんじゃないわよ!

そこにリオーナさんまで私をご指名する始末。

「ちょっと!説明してよ!言ったわよね。私を女主人にするって!」

(それは語弊があるわね。仕事を譲るとはいったけど任命権は私にはないわ)

「アンタからちゃんと言ってよ!」

こうなってしまった以上、いつかは通る道。私は覚悟を決めた。
心の中は「あ~面倒くさい」だけど。

「取り敢えずは、話をするのに髪を掴む必要はないと思うので…ブレン伯爵様、宜しいでしょうか?」
「あぁ」

(あら?素直~)

てっきり「貴様が指図するな」とか言うかと思えば。明日は地面から雪が降るかしら?

この場を仕切って良いのか判らないけれど、立ち話もなんですし?と、ソファに誘導したけれどどうしてブレン伯爵は私の隣に座ろうとするの?貴方は向かいでイチャコラーブするのがセオリーでしょうに。

あちらの経験がまだない私でも、歴代のお相手やリオーナさんとブレン伯爵が昼間から庭でチュッチュしてたのは知っているし、季節問わず夜は窓全開で盛りの付いた獣のような声で子作りに励まれていたのは知ってる。

隣同士に座るだけでしょう?
フッ。今更初心を装って取り繕わなくてもいいのに。


「ビビアン。安心してくれ。この女はもう二度と君を煩わせることはない」
「リュー!!別れないんだから!絶対に別れないっ!」
「黙れ。貴様とはもう終わりだ」

(あ~。予想はしてたのよね。離縁の日までリオーナさんが真実の愛の相手でいられるかどうかは不確定だと思ってたし)

正直、気持ちとしては「リオーナさん、もうちょっと頑張ってくれなきゃ」だけど、ブレン伯爵がダメだと言うのならリオーナさんも数えてみれば半年近いし、もう次の相手が決まっているって事でしょうね。ご愁傷様だわ。

「あのぅ。別れようがヨリを戻そうがどうでもいいので2人で話し合ってくださいます?」
「ビビアン、何を言ってるんだ?」
「何って…リオーナさんで6人目の真実の愛ですもの。7人目、8人目が出て来ても驚きもしませんし、正直…勝手にやってくださいって思ってます」
「勝手にって…嫉妬しないのか?腹は立たないのか?」

(気持ち悪いなとは思うけど)

そういう関係もだけど縋るような目で私を見るブレン伯爵。今の貴方が最高に気持ち悪いって思うんですけど?
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