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仕事がなくなる
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10日後、シリウスが戻って来るかと思ったが、
シャロンの勤務時間のうちに着替えを取り戻っただけのようで
顔を合わさない日が続いてしまった。
今日こそは・・と意気込んだが、かなり疲れ切って戻るシリウスに
話しかけることが出来なかった。
その間も、ボランティア会場にはカリナは現れなかったが
何故か市場の従業員たちが噂を始めた。
「シャロンさん、気を付けた方がいいよ」
「何をです?」
「妙な女がワーグナーさんの恋人だって触れ回ってるんだ。
勿論誰も信じちゃいないけどな」
「まぁ、申し訳ありません」
「シャロンさんが謝る事じゃないよ。それにあんな娼婦崩れなんか
誰も相手にもしていないしな」
聞けば、従業員の男性陣がよく行く飲み屋にここ3,4か月
出没するようになり、安い春を売るのだとか。
そして決まって
「アタシの息子はね、ワーグナー班長の子供なのさ
嫁さんとの間に子供がいない?そりゃ畑が悪いからね」
そうやって酔っぱらって大声で触れ回るカリナを
常識のある人は遠巻きに見ていた。
だが、火のない所には煙は立たないと面白半分な者もいれば
長年一緒に居る事を知っているだけに、
子供好きなシリウスの婚外子なのでは・・と囁く者もいた。
噂は最初に聞いた状態では人の耳には入らない。
伝達していく上で、訳の分からない装飾をされてしまう。
貴族だけではなく庶民も噂は好きなのだ。
特に身近な人間のゴシップは本人を目の当たりにできる分だけ
広がるスピードも範囲も広いのだ。
それが本当なのか嘘なのかは別問題なのだ。
カリナにボランティア会場で罵られて約5か月後、
シャロンは市場の管理人に呼び出されてしまった。
「シャロンさん、貴女がそんな人じゃないってのは判ってるんだ」
管理人は本当に申し訳なさそうにシャロンに話す。
シャロンも身に覚えがない、潔白だとは言え噂には悩んでいた。
その噂は
【シャロン・ワーグナーは市場の金を横領して男遊びをしている】
【シャロン・ワーグナーは騎士団の連中を禁呪の魅了で篭絡している】
【シャロン・ワーグナーはボランティアで孤児院の子を虐待している】
どんどんと尾ひれがついて、より細かく、より真実味を帯びるような
言い回しをされるようになっており、
噂は消えそうになるとまた再燃して人々の黒い嗜好を喜ばせた。
そんな中、売上金が合わないという事件が起きてしまう。
結果的には3日後、お釣りを渡し忘れていた仲介業者が
原因だったのであるが、シャロンが売上金を横領したと噂が流れた。
しかし、金銭トラブルが付加価値を上げてしまい、
ひいては市場の管理体制を問う声まで出てくる始末となった。
「シャロンさん、どうだろう少し長めの休暇を取るとか」
「いえ、これ以上ご迷惑はおかけできません」
「判ってるんだよ。これが悪意に満ちた噂だと、だけど・・」
「えぇ。お金を扱う商売ですから、わかっておりますわ」
「2、3か月休暇を取って休んでいればいいんだよ。
ちゃんとその間の休業補償はする」
「いいえ、そんな。甘えるわけにはいきません。ですが
再就職する時はよろしくお願いいたします」
管理人は申し訳ないと何度も頭を下げながら、最後にシャロンに聞く。
「この事・・ワーグナー班長は知ってるのかい?」
「判りませんわ。この所忙しいらしくてあまり帰らないので」
「そうか、いや、私ももしこの噂について聞かれれば
シャロンさんは被害者なのだと声を上げさせてもらうよ。
もちろん班長さんにも十分に説明させてもらうよ」
「ありがとうございます。お世話になりました」
こうして6年ほど勤めた市場を退職したシャロン。
ーーきっと何処に行っても噂は付きまとうわねーー
市場を出ると、今日は休みだという元同僚が待っていた。
「シャロンさん!今日はパーッと行きましょう!」
「ウフフ・・貴女はいつも元気ですのね」
「ヤダなぁ、私だって悩んだり~困ったり~ってしますよ」
いつも元気いっぱいの同僚が羨ましいと思うシャロン。
市場の仕事が無くなれば、数か月は貯金を崩せばいいが
それも大してあるわけでもなく、生活の危機に直面するのだ。
それを考えると暗い気持ちになるのも当然と言えるのであった。
シャロンの勤務時間のうちに着替えを取り戻っただけのようで
顔を合わさない日が続いてしまった。
今日こそは・・と意気込んだが、かなり疲れ切って戻るシリウスに
話しかけることが出来なかった。
その間も、ボランティア会場にはカリナは現れなかったが
何故か市場の従業員たちが噂を始めた。
「シャロンさん、気を付けた方がいいよ」
「何をです?」
「妙な女がワーグナーさんの恋人だって触れ回ってるんだ。
勿論誰も信じちゃいないけどな」
「まぁ、申し訳ありません」
「シャロンさんが謝る事じゃないよ。それにあんな娼婦崩れなんか
誰も相手にもしていないしな」
聞けば、従業員の男性陣がよく行く飲み屋にここ3,4か月
出没するようになり、安い春を売るのだとか。
そして決まって
「アタシの息子はね、ワーグナー班長の子供なのさ
嫁さんとの間に子供がいない?そりゃ畑が悪いからね」
そうやって酔っぱらって大声で触れ回るカリナを
常識のある人は遠巻きに見ていた。
だが、火のない所には煙は立たないと面白半分な者もいれば
長年一緒に居る事を知っているだけに、
子供好きなシリウスの婚外子なのでは・・と囁く者もいた。
噂は最初に聞いた状態では人の耳には入らない。
伝達していく上で、訳の分からない装飾をされてしまう。
貴族だけではなく庶民も噂は好きなのだ。
特に身近な人間のゴシップは本人を目の当たりにできる分だけ
広がるスピードも範囲も広いのだ。
それが本当なのか嘘なのかは別問題なのだ。
カリナにボランティア会場で罵られて約5か月後、
シャロンは市場の管理人に呼び出されてしまった。
「シャロンさん、貴女がそんな人じゃないってのは判ってるんだ」
管理人は本当に申し訳なさそうにシャロンに話す。
シャロンも身に覚えがない、潔白だとは言え噂には悩んでいた。
その噂は
【シャロン・ワーグナーは市場の金を横領して男遊びをしている】
【シャロン・ワーグナーは騎士団の連中を禁呪の魅了で篭絡している】
【シャロン・ワーグナーはボランティアで孤児院の子を虐待している】
どんどんと尾ひれがついて、より細かく、より真実味を帯びるような
言い回しをされるようになっており、
噂は消えそうになるとまた再燃して人々の黒い嗜好を喜ばせた。
そんな中、売上金が合わないという事件が起きてしまう。
結果的には3日後、お釣りを渡し忘れていた仲介業者が
原因だったのであるが、シャロンが売上金を横領したと噂が流れた。
しかし、金銭トラブルが付加価値を上げてしまい、
ひいては市場の管理体制を問う声まで出てくる始末となった。
「シャロンさん、どうだろう少し長めの休暇を取るとか」
「いえ、これ以上ご迷惑はおかけできません」
「判ってるんだよ。これが悪意に満ちた噂だと、だけど・・」
「えぇ。お金を扱う商売ですから、わかっておりますわ」
「2、3か月休暇を取って休んでいればいいんだよ。
ちゃんとその間の休業補償はする」
「いいえ、そんな。甘えるわけにはいきません。ですが
再就職する時はよろしくお願いいたします」
管理人は申し訳ないと何度も頭を下げながら、最後にシャロンに聞く。
「この事・・ワーグナー班長は知ってるのかい?」
「判りませんわ。この所忙しいらしくてあまり帰らないので」
「そうか、いや、私ももしこの噂について聞かれれば
シャロンさんは被害者なのだと声を上げさせてもらうよ。
もちろん班長さんにも十分に説明させてもらうよ」
「ありがとうございます。お世話になりました」
こうして6年ほど勤めた市場を退職したシャロン。
ーーきっと何処に行っても噂は付きまとうわねーー
市場を出ると、今日は休みだという元同僚が待っていた。
「シャロンさん!今日はパーッと行きましょう!」
「ウフフ・・貴女はいつも元気ですのね」
「ヤダなぁ、私だって悩んだり~困ったり~ってしますよ」
いつも元気いっぱいの同僚が羨ましいと思うシャロン。
市場の仕事が無くなれば、数か月は貯金を崩せばいいが
それも大してあるわけでもなく、生活の危機に直面するのだ。
それを考えると暗い気持ちになるのも当然と言えるのであった。
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