婚約破棄を強要されたら甘い日々が始まりました

cyaru

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VOL.15  大掃除開始

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その日からオリビアとクーヘンのゴミ掃除が始まった。

「先ずは…売り場から片付けましょう」

「売り場には何もないよ」

「あるわよ。先ず売り場を掃除してスペースを作って、調理器具とかを箱に入れて置いておく。ここに有るものだって全部がゴミじゃないでしょう?片付ける間は寝室にもなるし、掃除の間だけ売り場と居住スペースは入れ替えよ」

「そうか。荷物を仮置きするんだな」

「そういうこと。だから捨てるのは本当に要らないもの。さ、必要なものを纏めて運んできて。私はその間に売り場にある木箱なんかを隅に寄せておくわ」

「うん…あの…」

「何?」

「ありがとう。それから教会やここに来てからも偉そうなことを言ってごめん」

「いいのよ。誰だって打ち込んでいる事を非難されたりしたらカッとなるわ。気にしてないし、私も言い過ぎたところはあったわ。ごめんなさい。あと、暫く住まわせてくれるんでしょう?」

「あぁ、それは勿論だ」

「ありがとう。宿屋の泊まり方も解らなくて。神父様に頼んだ修道女を募集してる教会も直ぐには見つからないでしょうし、片付け終わって、お菓子作りも教えてもらう頃になれば見つかるでしょうから助かるわ」

「宿屋の泊まり方が判らない?修道女?どういうことだ?」

「そういう話は夕食の時でもいいでしょう?さ、片付けましょう」


二手に分かれ、クーヘンは必要なものを山となったゴミから引っ張り出しからの麻袋に入れていく。

オリビアは売り場に行き、コードネームGに細心の注意を払いながら木箱を寄せ、掃き掃除をしていく。

途中で気が付いてくれたのか、クーヘンがこれまた建付けの悪い窓を開けてくれたことで埃が舞っていた売り場に冷たい風が吹き込んできた。


日が暮れはじめてもクーヘンが売り場に持ってきた麻袋は2つだけ。
自分のモノなのにかなり苦戦をしているのだろう。

オリビアは木箱を並べたり、重ねたりで溜まった埃を掃き出し、簡易の寝台代わり2つとテーブルを1つ。椅子用の木箱も2つを確保しつつ、掃除を進めた。

「今日はここまでかしらね」

一息ついて雑巾を引っかけた桶の隣に箒を立てかけてオリビアはクーヘンの元に向かった。

クーヘンはゴミに埋もれながら「もう荷物はないから」とこれまで適当に詰め込んできた麻袋の中身をひっくり返して分別していた。

「どうしたんだ?」

「もう日も暮れたから夕食を買いに行こうと思って」

「もうそんな時間か。そう言えば暗くなってるな。晩飯か‥そうそう!出てきたんだ」


ゴミばかりかと思ったが、麻袋の中には知らない間に銅貨が紛れ込んでいたようで、ひっくり返した事でクーヘンは銅貨を15枚見つけたと手のひらに置いてオリビアに見せた。

「これだけあれば大衆食堂でなんか食える。お礼に奢るよ」

「何言ってるの。お店は休み、再開するにしても材料費とか必要なのよ?自炊は基本。外食なんてとんでもないわ」

「堅実なんだな…」

「私も手持ちがそんなにある訳じゃないし、天から降って来るものでもないのを知ってるだけよ」


オリビアは「稼ぐ」術をまだ知らない。なので現時点で出来る事は出費を抑えること。
折角の調理場があるのだ。菓子作りを中断している今、日常の料理を作っても咎められる事はない。

2人分なら自炊の方が安くつくことも使用人たちを観察している時に知った事。
王宮や侯爵家でも賄いはあるけれど賄いをアテするとありつけない事もある。使用人たちはパンなど手軽に食べられるものを前日の夕食の残りと共に持ってきて食費を浮かせていた。

給料日前はどの使用人も「やりくりが大変」と先ず出費を極限までしない!と意気込んでいるのを小耳に挟んでいた。

2人が近所の小さな商店街に買い出しに行くとクーヘンがよく買っているのか声を掛けて来てくれる。

「へぇ。彼女?やるねぇ」

「そう言うんじゃねぇよ!」

「照れるなって。ほい!おまけだ。傷んでるけどもってけ。ここを削げばまだ食えっからさ」

客が落としたのか一部潰れてぷにぷにになったリンゴをおまけで持たせてくれる店主。
その他にも切り身を取ってしまって骨だけになった魚の残骸なども「スープの出汁にしなよ」と無料で貰えた。

肉屋でもすじを取った部分を「ちょっと残ってるから削ぎなよ」とすじ肉の残骸を頂いた。

ほぼ余り物やおまけの食材。その中に芽が出てしまったジャガイモもあってオリビアはジャガイモを手に取った。

「ふふっ。私、芋の皮むき。好きなの」

「へっ?得意じゃなく?」

「得意ではないわ、好きなの」

ってんなぁ」

「あら?芋のも結構美味しいのよ?」

「そのじゃねぇよ」

「知ってますよーだ」

「ちぇっ!揶揄いやがって!」


微笑むオリビアは手にした籠に視線を落とす。
そんなオリビアを見てクーヘンが頬を赤らめた事は知らない。

「寒いの?頬が赤いわ。そうよね…今日は寒いものね」

「俺は…アツいけどな」

「そうなの?体温高いのね。羨ましいわ」

ちげぇよ…誰のせいだと…」

「何か言った?」

「なんも言ってねぇよ。帰ろうぜ」

白い息をポワポワさせながら2人の帰って行く後ろ姿を見て魚屋の店主は冬本番を迎え雪が降りそうな空を見上げた。

「春が近いねぇ」
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