婚約破棄を強要されたら甘い日々が始まりました

cyaru

文字の大きさ
18 / 45

VOL.18  オリビアの素性を知る

しおりを挟む
「何かいい考えでも?」

「ダメ元になるんだけど…誰か知り合いでスピア伯爵家。繋がりがある人いない?」

「スピア伯爵家?…俺はないな。ハンスは?」

「あるかも…あ、でもどうだろうな」

「あるのね?あるのね?あるのねぇぇぇ?!」

オリビアはハンスの肩に手を置いてブンブンと前後に揺さぶる。

「うぁうぁ!!ちょ、ちょっと!!世界が揺れる!!」

「揺らすのよ!甜菜てんさいで世界を揺らすの!」


ハンスは繋がりがあると言っても、スピア伯爵家に消耗品を納品している商会に弟が勤めていて「お得意さんなんだ」というのを聞いたことがある程度だった。

「ないわけじゃないわ。ねぇ、ハンスさん。その商会…臨時で私を雇って貰えないかしら。あ、でも雇用は面倒ね。弟さんがスピア伯爵家に行く時に手紙を渡して貰えないか聞いてくれる?」

「何かあるんですか?っていうか…伯爵家に手紙って‥」


実はオリビア。まだクーヘンにも自身の詳しい経歴を話した事はなかった。

クーヘンも初日の修道女になるとか宿屋への泊まり方を知らないの言葉でどこかの貴族の娘かな?とは思ったがオリビアの着ている服は粗末なものだったし、貴族の令嬢が箒で掃除をしたり、荷車を押したりするとは思わなかった。

ましてクーヘンの家で勿論疚しいやましい事は何もないが、一緒の部屋(@寝台は別)で貴族令嬢が寝たりするとは思えなかった。

ゴミの処分費など立て替えてくれているので、金は持っているとは思ったけれどどこかから調達したりもしていないし、どこかの家の従者が尋ねて来たこともない。

クーヘンとしては貴族令嬢だろうけど没落した低位貴族の娘だろう。
金は親から「これで生きていけ」と手切れ金。そんな考えしかなかった。


だから伯爵家に手紙を渡してくれと頼むオリビアが不思議な生き物に見えた。

==時々、私が女王みたいな勘違い女はいるだろうけど==

いるのだ。世の男性は全て自分の虜なのだと勘違いしている女が。
ただ、オリビアはそういう類の女性とは違っていると思ったのだが。


「隠していたわけじゃないけど…言わなかったのなら隠してたと同じかな。実は私、オリビア・ポルトーって以前は姓があったの」

<< はっ?! >>

これにはクーヘンもハンスも大いに驚いた。
ポルトー家と言えば1家しかない。侯爵家だ。

そして聞いたことがあった。第1王子レスモンドの婚約者はポルトー家のご令嬢だと。
クーヘンとハンスは目が合う。2人の目に見えるのは冷や汗ダラダラの向かい合った友人だ。

「まさかな?」

「そのまさかだったら…ドスル?」

「まさかでも何でもないわ。ポルトー家の爵位は侯爵。そして私はつい先日まで第1王子の婚約者だったの」

<< はぁーっ?! >>

「驚かないで。今は婚約者も侯爵令嬢も廃業してるし‥あ、廃棄処分かな。えへへ」

==驚かない奴がいたら国宝だよ!==


「大丈夫。レスモンド殿下から婚約破棄を言われて教皇様に婚約は解消で認めて頂いたの。元お父様には出て行けって言われているし、今はただのオリビアよ」

<< 教皇様っ?! >>

==全然 ”ただの” 女性じゃねぇんだけど?==


クーヘンは現在生きた心地がしない。
まるで他人事とばかりにさらりと言いのけているが、次期王妃とも言われたオリビア。
掃除もゴミの仕分けもさせてしまった事に首にじっとりと嫌な汗が噴き出る。


ハンスも現在生きた心地がしない。
ケロッと言い放っているが、話しかけるどころかこんな至近距離に居ていい部類の人間ではないのがオリビア。
傷んだリンゴを渡してしまった。しかも毒味もせずに。
明日には捕縛され、城の壁に吊るされている気がして妻子との思い出が走馬灯となって押し寄せる。

「やだなぁ。何もありませんよ。身分もないないなーい♪だけど、ダメ元で使えるかも知れない肩書は使ってみてもいいかなーって」

「なにを…」

「何ってスピア伯爵って一度会った事があるの。塹壕処理部隊が帰還した時の慰問会でなんだけど、慈善事業をしている家よね。貧しい人の就業支援とか。で、この甜菜てんさいよ。先の戦争で塩湖を失ったけど、ソルムティ王国は元々塩は採れていた国。甜菜てんさい糖を作って塩と交換輸入をしたらどうかなって思うのよ。加工するのに人手は必要でしょう?スピア伯爵は人は余ってるけど仕事がない。ハンスさんはこの甜菜てんさいを何とかしたい。我が国は塩を安価で手に入れたい。あら?WINWINのWINだわ」

「そ…そうデスネ…」

クーヘンとハンスの脳内には「ウィンゴーン」教会の弔いの鐘の音が響いた気がした。
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

離婚するはずの旦那様を、なぜか看病しています

鍛高譚
恋愛
「結婚とは、貴族の義務。そこに愛など不要――」 そう割り切っていた公爵令嬢アルタイは、王命により辺境伯ベガと契約結婚することに。 お互い深入りしない仮面夫婦として過ごすはずが、ある日ベガが戦地へ赴くことになり、彼はアルタイにこう告げる。 「俺は生きて帰れる自信がない。……だから、お前を自由にしてやりたい」 あっさりと“離婚”を申し出る彼に、アルタイは皮肉めいた笑みを浮かべる。 「では、戦争が終わり、貴方が帰るまで離婚は待ちましょう。   戦地で女でも作ってきてください。そうすれば、心置きなく別れられます」 ――しかし、戦争は長引き、何年も経ったのちにようやく帰還したベガは、深い傷を負っていた。 彼を看病しながら、アルタイは自分の心が変化していることに気づく。 「早く元気になってもらわないと、離婚できませんね?」 「……本当に、離婚したいのか?」 最初は“義務”だったはずの結婚。しかし、夫婦として過ごすうちに、仮面は次第に剥がれていく。 やがて、二人の離婚を巡る噂が王宮を騒がせる中、ベガは決意を固める――。

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

時岡継美
ファンタジー
 初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。  侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。  しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?  他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。  誤字脱字報告ありがとうございます!

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

魔法が使えなかった令嬢は、婚約破棄によって魔法が使えるようになりました

天宮有
恋愛
 魔力のある人は15歳になって魔法学園に入学し、16歳までに魔法が使えるようになるらしい。  伯爵令嬢の私ルーナは魔力を期待されて、侯爵令息ラドンは私を婚約者にする。  私は16歳になっても魔法が使えず、ラドンに婚約破棄言い渡されてしまう。  その後――ラドンの婚約破棄した後の行動による怒りによって、私は魔法が使えるようになっていた。

呪いを受けたせいで婚約破棄された令息が好きな私は、呪いを解いて告白します

天宮有
恋愛
 伯爵令嬢の私キャシーは、夜会で友人の侯爵令息サダムが婚約破棄された場面を目撃する。  サダムの元婚約者クノレラは、サダムが何者かの呪いを受けたと説明をしていた。  顔に模様が浮き出たことを醜いと言い、呪いを受けた人とは婚約者でいたくないようだ。  サダムは魔法に秀でていて、同じ実力を持つ私と意気投合していた。  呪いを解けば何も問題はないのに、それだけで婚約破棄したクノレラが理解できない。  私はサダムの呪いを必ず解き、告白しようと決意していた。

処理中です...