婚約破棄を強要されたら甘い日々が始まりました

cyaru

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VOL.34  やっぱり調理人を勧めたい

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クーヘンの店に来て、一番先にしたのはゴミの片付け。

回収業者の男性に仕分けを教えてもらいつつ、単に衣類は衣類、食器は食器と分けてはいたがやり直しになった。だが、ゴミ屋敷となってしまうと必要な時に探しても見当たらないので新しいのを買ってしまう。

そんな品がいくつもあり、クーハンは「縛って置いておこう」としたのかロープも沢山出て来た。回収業者の男性はその時に「ロープは不用品とも言われることがあるんだけど、あると便利だから」と捨てずに置いておけと言ったのだ。

ただ、形あるものは何時かは壊れる。握った時にボロボロに粉が出て来るようになったり、奇妙なぬめりを感じるようになったら捨てろと言った。

店に戻ったオリビアは取っておいたロープを引っ張り出した。

「何をするんだ?」

「説明は会合でするわ。ねぇ。ロープって皆持ってるの?」

「まぁ…持ってない人も多いとは思うけど商売してるやつは持ってるよ。荷車に載せた後で縛っておかないと荷台で荷物が動いてしまうし」

「そう。全員じゃなくていいわ。取り敢えず…この冬を乗り切らないと」

「雪で消火するんじゃないんだろ?」

「消火するわよ?だからロープが必要なの。でも何事も無くが一番いいけど、仕掛けて来ると解っていて何の対策をしないままってのは…私が嫌なの」

「ふーん…そうか。じゃ、俺は俺のできる事をしようかな。丁度甜菜糖も先日幾つか届いてるしさ」

「甜菜糖で何を作るの?」

「お楽しみだ。なんだろうな~って考える楽しみも甘みを増すからな」

クーヘンは調理場に行くと寸胴を取り出して水で洗い始めた。
寸胴を使うという事は会合に来るであろう人数分の何かを作ろうとしているのだ。

オリビアはそんなクーヘンを見て思う。

――やっぱり、お菓子作りじゃなく調理人を目指した方がいいんじゃ?――


「見たら楽しみが半減する!」と言ってクーヘンは何を作っているのか見せてはくれない。不思議な事に甜菜糖を使ってるんだろうなとほんのり甘い香りはするのだが、他の香りがしない。

何かを寸胴で煮ているのか煮込んでいるのか。それは判るが中身は不明。
煮込み料理をするには圧力鍋も使わないので先日の「野菜ほろほろシチュー」ではなさそうだ。

――なにかしら。気になるわぁ――


夕食を調理する時も寸胴の蓋は閉じたまま。
どうやら寸胴の中身は夕食とは関係ないらしい。

しかし小麦粉とバターを炒めていると思ったら具材なのか。追加した後からすごく空腹を感じさせる良い香りが家屋の中に充満してきた。

――飯テロと聞くけど、調理中の香りからして攻め込まれている気がするわ――


ぐぅぅ…。オリビアの腹の虫が限界を知らせる鳴き声を出したころ、夕食が出来上がったとクーヘンが声を掛けてくれた。


「今日の夕食はなーんと!!カリーだ!」

「カリー?すんすん…良い香りね。香りだけでお腹が空いちゃう」

「スパイスを合わせると面白いって聞いたからさ。小麦粉とバターをしっかり炒めて鳥ガラのスープと魚の出汁を加えてさ、クミンとかシナモンとかターメリック。他にもあるけど香辛料を混ぜ合わせたのを加えてさらにじっくりゆっくり炒めるんだ」

「香辛料?そんなに使ったの?でも‥甘い気がするんだけど」

「蜂蜜とリンゴの擦りおろしも入れたからね。で、隠し味に…バナナと珈琲を入れたんだ。ちょっとだけどな」

「バナナ?バナナの味はしないけど…すんすん…珈琲…珈琲なのかしら。香りがある気もするわ」

「美味しければなんでもいいんだよ。さ、食べよう」

スープになったカリーにパンを浸してパクリ。
スパイスも効いているがパンがどんどん進む。いつもは1個しか食べないが今日は3個も食べてしまった。そのパンもクーヘンのお手製である。

――どう考えても調理人よね――


夕食が終わり、食器を片付ける。寄り合い所に行く時クーヘンの手にはあの寸胴があった。

「寸胴持ってるから手を繋げないけど、滑るなよ?」

「クーヘンさんも気を付けてね。熱いんでしょう?」

「まぁな。俺は慣れてるから平気だ。さぁ行こうか」

飲み屋ミナミと飲み屋キタにも声を掛けて数人で歩いて寄り合い所に行く。
既にやって来て寄り合い所の中には壁に背を預けて丸まっている人もいる。

不思議なもので、壁は外の冷気、外気に近いので寒いのに皆壁側にいる。部屋の中央だけがぽっかりと空いているのだ。寒い寒いと言いながら温かいであろう中央に誰もいない不思議。

クーヘンはその中央にズンズン進んで行って、木箱の上に寸胴を置くと申し訳ない程度に食器を置いてある給湯室からカップの入った木箱を抱えて戻って来た。
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