34 / 45
VOL.34 やっぱり調理人を勧めたい
しおりを挟む
クーヘンの店に来て、一番先にしたのはゴミの片付け。
回収業者の男性に仕分けを教えてもらいつつ、単に衣類は衣類、食器は食器と分けてはいたがやり直しになった。だが、ゴミ屋敷となってしまうと必要な時に探しても見当たらないので新しいのを買ってしまう。
そんな品がいくつもあり、クーハンは「縛って置いておこう」としたのかロープも沢山出て来た。回収業者の男性はその時に「ロープは不用品とも言われることがあるんだけど、あると便利だから」と捨てずに置いておけと言ったのだ。
ただ、形あるものは何時かは壊れる。握った時にボロボロに粉が出て来るようになったり、奇妙なぬめりを感じるようになったら捨てろと言った。
店に戻ったオリビアは取っておいたロープを引っ張り出した。
「何をするんだ?」
「説明は会合でするわ。ねぇ。ロープって皆持ってるの?」
「まぁ…持ってない人も多いとは思うけど商売してるやつは持ってるよ。荷車に載せた後で縛っておかないと荷台で荷物が動いてしまうし」
「そう。全員じゃなくていいわ。取り敢えず…この冬を乗り切らないと」
「雪で消火するんじゃないんだろ?」
「消火するわよ?だからロープが必要なの。でも何事も無くが一番いいけど、仕掛けて来ると解っていて何の対策をしないままってのは…私が嫌なの」
「ふーん…そうか。じゃ、俺は俺のできる事をしようかな。丁度甜菜糖も先日幾つか届いてるしさ」
「甜菜糖で何を作るの?」
「お楽しみだ。なんだろうな~って考える楽しみも甘みを増すからな」
クーヘンは調理場に行くと寸胴を取り出して水で洗い始めた。
寸胴を使うという事は会合に来るであろう人数分の何かを作ろうとしているのだ。
オリビアはそんなクーヘンを見て思う。
――やっぱり、お菓子作りじゃなく調理人を目指した方がいいんじゃ?――
「見たら楽しみが半減する!」と言ってクーヘンは何を作っているのか見せてはくれない。不思議な事に甜菜糖を使ってるんだろうなとほんのり甘い香りはするのだが、他の香りがしない。
何かを寸胴で煮ているのか煮込んでいるのか。それは判るが中身は不明。
煮込み料理をするには圧力鍋も使わないので先日の「野菜ほろほろシチュー」ではなさそうだ。
――なにかしら。気になるわぁ――
夕食を調理する時も寸胴の蓋は閉じたまま。
どうやら寸胴の中身は夕食とは関係ないらしい。
しかし小麦粉とバターを炒めていると思ったら具材なのか。追加した後からすごく空腹を感じさせる良い香りが家屋の中に充満してきた。
――飯テロと聞くけど、調理中の香りからして攻め込まれている気がするわ――
ぐぅぅ…。オリビアの腹の虫が限界を知らせる鳴き声を出したころ、夕食が出来上がったとクーヘンが声を掛けてくれた。
「今日の夕食はなーんと!!カリーだ!」
「カリー?すんすん…良い香りね。香りだけでお腹が空いちゃう」
「スパイスを合わせると面白いって聞いたからさ。小麦粉とバターをしっかり炒めて鳥ガラのスープと魚の出汁を加えてさ、クミンとかシナモンとかターメリック。他にもあるけど香辛料を混ぜ合わせたのを加えてさらにじっくりゆっくり炒めるんだ」
「香辛料?そんなに使ったの?でも‥甘い気がするんだけど」
「蜂蜜とリンゴの擦りおろしも入れたからね。で、隠し味に…バナナと珈琲を入れたんだ。ちょっとだけどな」
「バナナ?バナナの味はしないけど…すんすん…珈琲…珈琲なのかしら。香りがある気もするわ」
「美味しければなんでもいいんだよ。さ、食べよう」
スープになったカリーにパンを浸してパクリ。
スパイスも効いているがパンがどんどん進む。いつもは1個しか食べないが今日は3個も食べてしまった。そのパンもクーヘンのお手製である。
――どう考えても調理人よね――
夕食が終わり、食器を片付ける。寄り合い所に行く時クーヘンの手にはあの寸胴があった。
「寸胴持ってるから手を繋げないけど、滑るなよ?」
「クーヘンさんも気を付けてね。熱いんでしょう?」
「まぁな。俺は慣れてるから平気だ。さぁ行こうか」
飲み屋ミナミと飲み屋キタにも声を掛けて数人で歩いて寄り合い所に行く。
既にやって来て寄り合い所の中には壁に背を預けて丸まっている人もいる。
不思議なもので、壁は外の冷気、外気に近いので寒いのに皆壁側にいる。部屋の中央だけがぽっかりと空いているのだ。寒い寒いと言いながら温かいであろう中央に誰もいない不思議。
クーヘンはその中央にズンズン進んで行って、木箱の上に寸胴を置くと申し訳ない程度に食器を置いてある給湯室からカップの入った木箱を抱えて戻って来た。
回収業者の男性に仕分けを教えてもらいつつ、単に衣類は衣類、食器は食器と分けてはいたがやり直しになった。だが、ゴミ屋敷となってしまうと必要な時に探しても見当たらないので新しいのを買ってしまう。
そんな品がいくつもあり、クーハンは「縛って置いておこう」としたのかロープも沢山出て来た。回収業者の男性はその時に「ロープは不用品とも言われることがあるんだけど、あると便利だから」と捨てずに置いておけと言ったのだ。
ただ、形あるものは何時かは壊れる。握った時にボロボロに粉が出て来るようになったり、奇妙なぬめりを感じるようになったら捨てろと言った。
店に戻ったオリビアは取っておいたロープを引っ張り出した。
「何をするんだ?」
「説明は会合でするわ。ねぇ。ロープって皆持ってるの?」
「まぁ…持ってない人も多いとは思うけど商売してるやつは持ってるよ。荷車に載せた後で縛っておかないと荷台で荷物が動いてしまうし」
「そう。全員じゃなくていいわ。取り敢えず…この冬を乗り切らないと」
「雪で消火するんじゃないんだろ?」
「消火するわよ?だからロープが必要なの。でも何事も無くが一番いいけど、仕掛けて来ると解っていて何の対策をしないままってのは…私が嫌なの」
「ふーん…そうか。じゃ、俺は俺のできる事をしようかな。丁度甜菜糖も先日幾つか届いてるしさ」
「甜菜糖で何を作るの?」
「お楽しみだ。なんだろうな~って考える楽しみも甘みを増すからな」
クーヘンは調理場に行くと寸胴を取り出して水で洗い始めた。
寸胴を使うという事は会合に来るであろう人数分の何かを作ろうとしているのだ。
オリビアはそんなクーヘンを見て思う。
――やっぱり、お菓子作りじゃなく調理人を目指した方がいいんじゃ?――
「見たら楽しみが半減する!」と言ってクーヘンは何を作っているのか見せてはくれない。不思議な事に甜菜糖を使ってるんだろうなとほんのり甘い香りはするのだが、他の香りがしない。
何かを寸胴で煮ているのか煮込んでいるのか。それは判るが中身は不明。
煮込み料理をするには圧力鍋も使わないので先日の「野菜ほろほろシチュー」ではなさそうだ。
――なにかしら。気になるわぁ――
夕食を調理する時も寸胴の蓋は閉じたまま。
どうやら寸胴の中身は夕食とは関係ないらしい。
しかし小麦粉とバターを炒めていると思ったら具材なのか。追加した後からすごく空腹を感じさせる良い香りが家屋の中に充満してきた。
――飯テロと聞くけど、調理中の香りからして攻め込まれている気がするわ――
ぐぅぅ…。オリビアの腹の虫が限界を知らせる鳴き声を出したころ、夕食が出来上がったとクーヘンが声を掛けてくれた。
「今日の夕食はなーんと!!カリーだ!」
「カリー?すんすん…良い香りね。香りだけでお腹が空いちゃう」
「スパイスを合わせると面白いって聞いたからさ。小麦粉とバターをしっかり炒めて鳥ガラのスープと魚の出汁を加えてさ、クミンとかシナモンとかターメリック。他にもあるけど香辛料を混ぜ合わせたのを加えてさらにじっくりゆっくり炒めるんだ」
「香辛料?そんなに使ったの?でも‥甘い気がするんだけど」
「蜂蜜とリンゴの擦りおろしも入れたからね。で、隠し味に…バナナと珈琲を入れたんだ。ちょっとだけどな」
「バナナ?バナナの味はしないけど…すんすん…珈琲…珈琲なのかしら。香りがある気もするわ」
「美味しければなんでもいいんだよ。さ、食べよう」
スープになったカリーにパンを浸してパクリ。
スパイスも効いているがパンがどんどん進む。いつもは1個しか食べないが今日は3個も食べてしまった。そのパンもクーヘンのお手製である。
――どう考えても調理人よね――
夕食が終わり、食器を片付ける。寄り合い所に行く時クーヘンの手にはあの寸胴があった。
「寸胴持ってるから手を繋げないけど、滑るなよ?」
「クーヘンさんも気を付けてね。熱いんでしょう?」
「まぁな。俺は慣れてるから平気だ。さぁ行こうか」
飲み屋ミナミと飲み屋キタにも声を掛けて数人で歩いて寄り合い所に行く。
既にやって来て寄り合い所の中には壁に背を預けて丸まっている人もいる。
不思議なもので、壁は外の冷気、外気に近いので寒いのに皆壁側にいる。部屋の中央だけがぽっかりと空いているのだ。寒い寒いと言いながら温かいであろう中央に誰もいない不思議。
クーヘンはその中央にズンズン進んで行って、木箱の上に寸胴を置くと申し訳ない程度に食器を置いてある給湯室からカップの入った木箱を抱えて戻って来た。
763
あなたにおすすめの小説
離婚するはずの旦那様を、なぜか看病しています
鍛高譚
恋愛
「結婚とは、貴族の義務。そこに愛など不要――」
そう割り切っていた公爵令嬢アルタイは、王命により辺境伯ベガと契約結婚することに。
お互い深入りしない仮面夫婦として過ごすはずが、ある日ベガが戦地へ赴くことになり、彼はアルタイにこう告げる。
「俺は生きて帰れる自信がない。……だから、お前を自由にしてやりたい」
あっさりと“離婚”を申し出る彼に、アルタイは皮肉めいた笑みを浮かべる。
「では、戦争が終わり、貴方が帰るまで離婚は待ちましょう。
戦地で女でも作ってきてください。そうすれば、心置きなく別れられます」
――しかし、戦争は長引き、何年も経ったのちにようやく帰還したベガは、深い傷を負っていた。
彼を看病しながら、アルタイは自分の心が変化していることに気づく。
「早く元気になってもらわないと、離婚できませんね?」
「……本当に、離婚したいのか?」
最初は“義務”だったはずの結婚。しかし、夫婦として過ごすうちに、仮面は次第に剥がれていく。
やがて、二人の離婚を巡る噂が王宮を騒がせる中、ベガは決意を固める――。
ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…
ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。
一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。
そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。
読んでいただけると嬉しいです。
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
魔法が使えなかった令嬢は、婚約破棄によって魔法が使えるようになりました
天宮有
恋愛
魔力のある人は15歳になって魔法学園に入学し、16歳までに魔法が使えるようになるらしい。
伯爵令嬢の私ルーナは魔力を期待されて、侯爵令息ラドンは私を婚約者にする。
私は16歳になっても魔法が使えず、ラドンに婚約破棄言い渡されてしまう。
その後――ラドンの婚約破棄した後の行動による怒りによって、私は魔法が使えるようになっていた。
呪いを受けたせいで婚約破棄された令息が好きな私は、呪いを解いて告白します
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私キャシーは、夜会で友人の侯爵令息サダムが婚約破棄された場面を目撃する。
サダムの元婚約者クノレラは、サダムが何者かの呪いを受けたと説明をしていた。
顔に模様が浮き出たことを醜いと言い、呪いを受けた人とは婚約者でいたくないようだ。
サダムは魔法に秀でていて、同じ実力を持つ私と意気投合していた。
呪いを解けば何も問題はないのに、それだけで婚約破棄したクノレラが理解できない。
私はサダムの呪いを必ず解き、告白しようと決意していた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる