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第30-2話 別れの夜会③-②
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カシャーン!と音がして一部の貴族が音のしたほうを振り返る。
侯爵家であり、留学生のホームステイ先でもあるコール侯爵は見知ったリヴァイヴァールと共に入場してきたステラを見て、手にしていたワイングラスを落としてしまった。
「あれは・・・何故だ?あのメガネの野暮ったい娘はどうした?!」
叫んでみるが誰もコール侯爵に視線を向けることはなかった。
留学生も先にブレイドルが最敬礼をステラに行うと、残りの留学生もステラに対し同じ位置に並ばぬよう一歩引き最敬礼を行う。
国王が入場の声に再度会場が大きくざわめきで揺れた。
国王と共に入場をしてきた王族はは第一王子のみで、続いて入場したのはモーセット王国の辺境伯夫妻そして次期辺境伯と言われているツィンコリドーだった。
気がつけば従者が「留学生・送別会」を示すプラカードなどを撤収していく。
なにか起こったのか、いや、始まるのか。貴族たちの反応は2つに別れた。
今の状態を知っている者と、知らなかった者。知らなかった者は王妃の実家である公爵家とその派閥に属する貴族達だった。
「皆の者。今日は良く集まってくれた。国王として礼を言う。
会の始まりの前に、最期の仕事をさせてくれ」
「最期の仕事?!」貴族たちが顔を見合わせる中、第2王子アドリアンとコール侯爵家のアリスが後ろ手に縛られて連行されてきた。
「この2人は友好国であるモーセット王国王女、ステラリア・モーセット殿に対し暴行、暴言の不敬行為を行った。モーセット王国は友好国。その友好国の王族に対しての行いは看過できるものではない。2週間外牢で周知の上、斬首刑とする」
「ま、待ってください!私はなにも!何もしていません!したとすればアリスだけです!」
「往生際が悪い。王族なら何をしても許されると思ったか。突き飛ばし、足払い、王女殿下は負傷されてしまった。お前の極刑ごときで侘びになると思うな」
「そんな・・・あれはカルボス男爵家の・・・」
「男爵家であれば何をしても良いと?愚の骨頂だな。例え平民であろうと横暴な振る舞いが許されると思うな」
従者がステラの元にメガネとウィッグを持って来る。ステラは銀髪を後ろに靡かせるとウィッグを簡単にかぶり、眼鏡をかけた。アドリアンの顔色から色が失われていく。
隣のアリスに至ってはそれだけではなく、会場入りする前にも暴行を働こうとした。兵士の目の前でもあり言い逃れは出来なかった。
たとえそれがエスコートをしてきたリヴァイヴァールに向けてのものだとしても、吐いた言葉は飲み込めない。アリスはもう抵抗する気力も失っていた。
「それからもう1人。コールはおるか!」
「は、はい。陛下。ここにおります」
まさかあの野暮ったい少女が王女だなんて思いもしなかった。こうなればアリスを切り捨てて逃げ切るしかないと踏んだコール侯爵は国王の前に人を掻き分けて出てくるといの一番に告げた。
「この女は当家とはなんの関りも御座いません。ですが、事情があり王女殿下を当家で預かれなかったこと、ここに深くお詫びをする所存に御座います」
「うむ。解った。娘を籍から外す。つまり婚約も無かった事になるという事だ。速やかに婚約を確約として融資された金はトレサリー子爵家に返金をするように」
「へ、返金?!いえ、あの・・・」
「婚約がないのだ。それとも娘がいると嘘をついてまだ婚約を続けるとでも?」
「そう言う事では・・・しかしですね…返金を‥」
「そうかそうか。一両日中に行うか。良い心掛けだ。それはそうとそなたの子息。この度第1王子のサイオスが近衛として抱えるそうだ。近衛は城に住まいを与える。弟もおったな。弟は地方文官として功績を認め子爵家を授けた。侯爵家と子爵家、相容れぬ中となるが、この先は夫婦水入らず。仲良く、末永く2人で暮らすが良い」
「そんな‥‥お待ちください!陛下!話を!」
「もう終わった。そなたに割く時間はないのだ。決定を伝えたのだから速やかに実行するよう。誰か!侯爵は住み家も変わらねばならぬ忙しい身だ。直ぐに屋敷に送り届けるよう」
妻と2人だけで暮らす事は構わない。愛する女性なのだ。願ったり叶ったりと言えよう。
しかし、この先は宝飾品どころか食べるものすら買う金も無い。住み家も追われ住む場所も無い。「陛下!今一度猶予を!」叫ぶ侯爵だったが、会場の外に抓みだされてしまった。
侯爵家であり、留学生のホームステイ先でもあるコール侯爵は見知ったリヴァイヴァールと共に入場してきたステラを見て、手にしていたワイングラスを落としてしまった。
「あれは・・・何故だ?あのメガネの野暮ったい娘はどうした?!」
叫んでみるが誰もコール侯爵に視線を向けることはなかった。
留学生も先にブレイドルが最敬礼をステラに行うと、残りの留学生もステラに対し同じ位置に並ばぬよう一歩引き最敬礼を行う。
国王が入場の声に再度会場が大きくざわめきで揺れた。
国王と共に入場をしてきた王族はは第一王子のみで、続いて入場したのはモーセット王国の辺境伯夫妻そして次期辺境伯と言われているツィンコリドーだった。
気がつけば従者が「留学生・送別会」を示すプラカードなどを撤収していく。
なにか起こったのか、いや、始まるのか。貴族たちの反応は2つに別れた。
今の状態を知っている者と、知らなかった者。知らなかった者は王妃の実家である公爵家とその派閥に属する貴族達だった。
「皆の者。今日は良く集まってくれた。国王として礼を言う。
会の始まりの前に、最期の仕事をさせてくれ」
「最期の仕事?!」貴族たちが顔を見合わせる中、第2王子アドリアンとコール侯爵家のアリスが後ろ手に縛られて連行されてきた。
「この2人は友好国であるモーセット王国王女、ステラリア・モーセット殿に対し暴行、暴言の不敬行為を行った。モーセット王国は友好国。その友好国の王族に対しての行いは看過できるものではない。2週間外牢で周知の上、斬首刑とする」
「ま、待ってください!私はなにも!何もしていません!したとすればアリスだけです!」
「往生際が悪い。王族なら何をしても許されると思ったか。突き飛ばし、足払い、王女殿下は負傷されてしまった。お前の極刑ごときで侘びになると思うな」
「そんな・・・あれはカルボス男爵家の・・・」
「男爵家であれば何をしても良いと?愚の骨頂だな。例え平民であろうと横暴な振る舞いが許されると思うな」
従者がステラの元にメガネとウィッグを持って来る。ステラは銀髪を後ろに靡かせるとウィッグを簡単にかぶり、眼鏡をかけた。アドリアンの顔色から色が失われていく。
隣のアリスに至ってはそれだけではなく、会場入りする前にも暴行を働こうとした。兵士の目の前でもあり言い逃れは出来なかった。
たとえそれがエスコートをしてきたリヴァイヴァールに向けてのものだとしても、吐いた言葉は飲み込めない。アリスはもう抵抗する気力も失っていた。
「それからもう1人。コールはおるか!」
「は、はい。陛下。ここにおります」
まさかあの野暮ったい少女が王女だなんて思いもしなかった。こうなればアリスを切り捨てて逃げ切るしかないと踏んだコール侯爵は国王の前に人を掻き分けて出てくるといの一番に告げた。
「この女は当家とはなんの関りも御座いません。ですが、事情があり王女殿下を当家で預かれなかったこと、ここに深くお詫びをする所存に御座います」
「うむ。解った。娘を籍から外す。つまり婚約も無かった事になるという事だ。速やかに婚約を確約として融資された金はトレサリー子爵家に返金をするように」
「へ、返金?!いえ、あの・・・」
「婚約がないのだ。それとも娘がいると嘘をついてまだ婚約を続けるとでも?」
「そう言う事では・・・しかしですね…返金を‥」
「そうかそうか。一両日中に行うか。良い心掛けだ。それはそうとそなたの子息。この度第1王子のサイオスが近衛として抱えるそうだ。近衛は城に住まいを与える。弟もおったな。弟は地方文官として功績を認め子爵家を授けた。侯爵家と子爵家、相容れぬ中となるが、この先は夫婦水入らず。仲良く、末永く2人で暮らすが良い」
「そんな‥‥お待ちください!陛下!話を!」
「もう終わった。そなたに割く時間はないのだ。決定を伝えたのだから速やかに実行するよう。誰か!侯爵は住み家も変わらねばならぬ忙しい身だ。直ぐに屋敷に送り届けるよう」
妻と2人だけで暮らす事は構わない。愛する女性なのだ。願ったり叶ったりと言えよう。
しかし、この先は宝飾品どころか食べるものすら買う金も無い。住み家も追われ住む場所も無い。「陛下!今一度猶予を!」叫ぶ侯爵だったが、会場の外に抓みだされてしまった。
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