1番じゃない方が幸せですから

cyaru

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第12話  実は仲はそこまで良くない

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コハマ侯爵家で過ごしていると気が付くことがある。

この家族、仲が良さそうで実はそうでもない。
末っ子のエミリアは確かに可愛がられているけれど、それは侯爵夫妻にであって5人の兄たちは話に聞いているほどエミリアの事を可愛がってはいない。

エミリアの友人などが来ている時は仲が良さそうな妹思いの兄、お兄様大好き妹を演じているが、家人と使用人だけになるとさっぱりしたものである。

むしろ、ルビーの方が干渉されている気がするくらいだ。


「来たよ。流行の菓子なんだって」

「サーディスさん。お菓子は要らないと言いましたよね?」

「そういうなよ。可愛い妹のために買って来たんだ」

「エミリアさんにも買ったのですか?また機嫌が悪くなりますよ?」

「放っておけばいいさ」


サーディスはルビーのご機嫌を取るためにあれやこれやと買ってくるが、離縁後に世話になるエルヴィーはと言えば変わり者だと聞いていたが本当に変わり者だった。

その人は突然音もなく現れる。


「食べるか?」

「うわぁぁーっ!!」

「そんなに驚かなくても。今日も持ってきた」

「そ、そうですね。夕食に出してもらうように頼んでおきますね」


ヌっと顔を出し、籠を突き出してくるのはエルヴィーである。
自称で「人が苦手」と言っているが間違いではないので公言してもいいんじゃないかとルビーは思っている。

エルヴィーは「菌学」に傾倒していて、部屋は世間でいう汚部屋。至る所にわざわざ廃棄した残飯を持ち込んで黴を繁殖させている。

――はっきり言って変わり者の次元を超えてるのよね――


申し訳ないのだがルビーは籠の中の食材を食べたことがない。

籠の中には「部屋で採れたんだ」というキノコ類が入っている。

一番最初は「うわぁ!」と驚いた。田舎でも時期になると収穫してきたシメジやマイタケは夕食によく食べたので、王都にもあるんだなと嬉しくなったがナナから収穫する場所を聞いてドン引きしたのだ。

それでもまさか部屋でと笑ったら「見せてあげます」とナナに連れて行かれて庭の窓からエルヴィーの部屋の中を見て驚いた。

窓ガラスに苔ならぬ黴が内側にびっしりと生えていたのだ。
隙間から覗いた部屋。目に映るもの全てがリアルホラーで、生まれて初めて「息を飲む」という行為を実感した。


それでもエルヴィーとは比較的話が出来る方だ。
サーディスは下心が透けて見えるようで警戒してしまうし、プライムやセカンダリはルビーの事はガン無視。ハデスは田舎者と言うだけでルビーの事を見下してくる。

エミリアはルビーの事を「可哀想な子」扱いするのでルビーから距離を置いている。

話の切欠は令嬢らしからぬ「鶏糞」だった。

領地ではガーデンバードを飼育して卵を売っていたことを話をするとエルヴィーが食いついた。

ここ2,3年エルヴィーは動物の糞から採取できる黴にご執心。

「コレクションしてるんだ。見せてあげるよ」

「え、遠慮しておきますわ」

「そういうなよ。知ってるか?時間を置くとだな」

「き、き、今日は遠慮しておきますわ。また今度!」

間もなく食事の時間であってもエルヴィーには遠慮と言うものがない。
しかし、コレクションは別としてエルヴィーの話を聞いているとルビーも「なるほど~」と思う事が多かった。

鶏糞よりも牛糞などが畑にはよく使われていて農夫からは不人気だったのだが、果樹園を営む者からは「分けてくれ」と言われることが増えた。

「きっとミカンとか柑橘系の皮を餌に混ぜ込んでいるからじゃないかと思うんだが興味深いね」

「香りがね、卵にもほんのりあるの。だから良くないかと思ったんですけど」

「いや、いい方法だと思う。隣国では魚を養殖してるんだけど餌に混ぜ込むと病気になる率が減ったのとやはり食べる時に切り身からほんのり香るそうだ。ガーデンバードも病気はあまりしなかったんじゃないか?」

「そうなんですよ。で、乾燥の状態とかで湿り気があると黴がついてしまうので苦労しました」

「湿り気は黴が大好きなんだ。色によって危険度も違うんだ」

「そういえば黴に色がありました。緑とか白とか‥赤も!」

「うんうん。実はこの色がね――」

奇妙な会話だが盛り上がってしまう。
サーディスが来ると「早く帰れ」と思ってしまうがエルヴィーは手土産は要らないので来ないかな~と待っていたりもした。


それが気に入らないのかエミリアはルビーにはキツく当たる事が多かった。

兄たちとは言うほど仲が良くなくても、ポっと出に取られたような気がして気に入らないのか、ルビーの食べるパンを床に落としたり、スープの中に埃を入れたりで使用人の手間を増やすだけ。

ルビーの顔を見ると不機嫌になって使用人に当たり散らすのでルビーはエミリアを避けるように生活をするしかなかった。

――もう少ししたら貴女の代わりに嫁ぐのに――

ルビーはそう思ってもエミリアは違う。
自分の代わりに嫁ぐというよりも、嫁ぎ先を世話してやったくらいの思いなので、エクセとの話が出ると「エミリアのおかげ」と周囲が持ち上げないと兎に角不機嫌をまき散らすのだ。

――なんでこんなに面倒くさい性格してるのかな――

アジメストも性格は良い方ではなかったが、不機嫌を巻き散らす事はなかった。
アジメストはいつも自分がルビーよりも優先される事を知っているので、常に優越感に満たされていたし、家でルビーが優先されるのは「家事をしなさい」だったのでアジメストも文句を言わなかった。

なので、期間限定の上、ルビーがここにいる原因を作ったのはエミリアなのにそこまで不機嫌になる理由がルビーには理解できなかった。
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