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侍女の噂話
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イデオットに相手にされなかったエンヴィーは不貞腐れながら馬車を待たせたアルコープまでを歩いていた。立場が微妙なエンヴィーは表玄関は使えない。
大きな荷を搬入する商会の馬車が荷下ろしをするための雨避けが付いた場所でいつも惨めな思いをしながら乗り降りするのだ。
少しだけ空いた扉の隙間から声が聞こえる部屋があった。
侍女やメイドの噂話は聞くのは面白いが所詮は噂。大した内容もないのでいつも聞き流していた。
それが耳に入り、エンヴィーの足を止めたのは【イデオットと自分】に対する話だったからだ。
このところ王太子宮だと言うのに、そこで働く使用人達は入れ替わったばかりなのか以前のような気品も何もあったものではない。まるで新人研修の場と思ってしまうほどなのだ。
休憩中なのか物言いも貴族の出なのか?と疑うほどに口が悪い。
エンヴィーはそっと扉に耳を近づけて盗み聞きをした。
「あ~カーメリア様の頃は良かったなぁ。ちょっとした差し入れなんかもくれたりしたし、弟が熱出した時なんかさ【本当はお金が良いのだけど、持つことは出来ないから】って薬くれたんだよ?ビックリ。3錠あったから余った1錠を買取屋に持って行ったらなんと!私の1か月分の給料より高値でしたー!感染症だったから寝具一式焼却しなきゃいけなくて助かったよ。あの1錠が無かったら家族全員冬でも上着が掛布になるところだった」
「そうだよね~。カーメリア様は薬もだけど、お古で申し訳ないって言いながら小さい頃に着ていた服とかくれたりしたもんね。ウチはそれを解いて2人分の服にしたわよ。直ぐに大きくなるからホントにありがたかった。解いた糸は刺繍店に売ればいいって…これがまた良い値が付く糸なの。神かよって祈ったわよ」
「いなくなってさ‥‥やる気ないよね。いや、モノが貰えないってんじゃなくさ。カーメリア様にありがとうって言われた時は誰に?私に?!って驚いた。上の人ってやって貰って当たり前だからお礼を言う人いたんだーって思ったし。癒しが無くなった~。返せー!私の癒し~!」
「癒しと言えばさ、殿下の癒し様。今日のあの服見た?よくあんなの着られるわよね」
「見た!見た見た!恥とか、下品とか判らないんじゃない?どこの祭りに着ていくんだ?って目を疑った」
「目もだけどさ‥‥頭の中身。本当に脳みそ詰まってんの?ヘドロじゃない?って疑っちゃうわよね」
「この前も第二王女殿下にタメで話してたでしょ?王女殿下の従者の目が怖かったぁ。あれ、かなり不味いんじゃない?」
「いいんじゃない?もう侯爵家ごと追放~!みたいなのにココの殿下も付属品で連れてってくれたら万々歳じゃない。今まで取り持ってくれてたカーメリア様はいないんだし、あいつらを庇ってくれる人なんていないって。あ~ッ!!はやく異動願い許可通知こないかなぁ」
「給料下がってもいい!私は公爵家で働きたーい!」
「そう言えば、カーメリア様、お加減が悪いみたい。第一王女殿下が懇意にしている典医を向かわせたって聞いたけど…大丈夫なのかな」
「あのバカ殿下の相手をしなくて良くなって、張りつめてた糸が切れちゃったのかな。常識を超えたバカを相手にするのって疲れるんだよね。10年以上振り回されて来てるから反動は大きいよね。心配だなぁ」
「私らじゃ、流石に公爵家‥‥お見舞いは行けないよね。あっ!いっけない。もうこんな時間じゃない。どうせ執務は終わってないんだろうけど、さっさと終わらせて定時で帰ろう!」
「残業代もらえないんだもの、残ってまでやる必要ないよね。見つかったら突然茶を淹れろなんて言い出すから定時過ぎるまで執務してくれてたらいいのに」
部屋の中で椅子を引くような音がし始めたため、エンヴィーは足早にその場を去った。
――カーメリアが病気?寝込んでいるの?第一王女がそんな手配を?――
急ぎ屋敷に戻ったエンヴィーは父の侯爵に噂の真偽を確かめようと父の部屋に向かった。
大きな荷を搬入する商会の馬車が荷下ろしをするための雨避けが付いた場所でいつも惨めな思いをしながら乗り降りするのだ。
少しだけ空いた扉の隙間から声が聞こえる部屋があった。
侍女やメイドの噂話は聞くのは面白いが所詮は噂。大した内容もないのでいつも聞き流していた。
それが耳に入り、エンヴィーの足を止めたのは【イデオットと自分】に対する話だったからだ。
このところ王太子宮だと言うのに、そこで働く使用人達は入れ替わったばかりなのか以前のような気品も何もあったものではない。まるで新人研修の場と思ってしまうほどなのだ。
休憩中なのか物言いも貴族の出なのか?と疑うほどに口が悪い。
エンヴィーはそっと扉に耳を近づけて盗み聞きをした。
「あ~カーメリア様の頃は良かったなぁ。ちょっとした差し入れなんかもくれたりしたし、弟が熱出した時なんかさ【本当はお金が良いのだけど、持つことは出来ないから】って薬くれたんだよ?ビックリ。3錠あったから余った1錠を買取屋に持って行ったらなんと!私の1か月分の給料より高値でしたー!感染症だったから寝具一式焼却しなきゃいけなくて助かったよ。あの1錠が無かったら家族全員冬でも上着が掛布になるところだった」
「そうだよね~。カーメリア様は薬もだけど、お古で申し訳ないって言いながら小さい頃に着ていた服とかくれたりしたもんね。ウチはそれを解いて2人分の服にしたわよ。直ぐに大きくなるからホントにありがたかった。解いた糸は刺繍店に売ればいいって…これがまた良い値が付く糸なの。神かよって祈ったわよ」
「いなくなってさ‥‥やる気ないよね。いや、モノが貰えないってんじゃなくさ。カーメリア様にありがとうって言われた時は誰に?私に?!って驚いた。上の人ってやって貰って当たり前だからお礼を言う人いたんだーって思ったし。癒しが無くなった~。返せー!私の癒し~!」
「癒しと言えばさ、殿下の癒し様。今日のあの服見た?よくあんなの着られるわよね」
「見た!見た見た!恥とか、下品とか判らないんじゃない?どこの祭りに着ていくんだ?って目を疑った」
「目もだけどさ‥‥頭の中身。本当に脳みそ詰まってんの?ヘドロじゃない?って疑っちゃうわよね」
「この前も第二王女殿下にタメで話してたでしょ?王女殿下の従者の目が怖かったぁ。あれ、かなり不味いんじゃない?」
「いいんじゃない?もう侯爵家ごと追放~!みたいなのにココの殿下も付属品で連れてってくれたら万々歳じゃない。今まで取り持ってくれてたカーメリア様はいないんだし、あいつらを庇ってくれる人なんていないって。あ~ッ!!はやく異動願い許可通知こないかなぁ」
「給料下がってもいい!私は公爵家で働きたーい!」
「そう言えば、カーメリア様、お加減が悪いみたい。第一王女殿下が懇意にしている典医を向かわせたって聞いたけど…大丈夫なのかな」
「あのバカ殿下の相手をしなくて良くなって、張りつめてた糸が切れちゃったのかな。常識を超えたバカを相手にするのって疲れるんだよね。10年以上振り回されて来てるから反動は大きいよね。心配だなぁ」
「私らじゃ、流石に公爵家‥‥お見舞いは行けないよね。あっ!いっけない。もうこんな時間じゃない。どうせ執務は終わってないんだろうけど、さっさと終わらせて定時で帰ろう!」
「残業代もらえないんだもの、残ってまでやる必要ないよね。見つかったら突然茶を淹れろなんて言い出すから定時過ぎるまで執務してくれてたらいいのに」
部屋の中で椅子を引くような音がし始めたため、エンヴィーは足早にその場を去った。
――カーメリアが病気?寝込んでいるの?第一王女がそんな手配を?――
急ぎ屋敷に戻ったエンヴィーは父の侯爵に噂の真偽を確かめようと父の部屋に向かった。
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