小切手を拾っただけなのに~それは侯爵子息の溺愛の始まりでした~

cyaru

文字の大きさ
22 / 44

第22話  デリス、本気の後悔

ダリオンとデリスの父親は結婚式と続いて行われたお披露目パーティで引き受けた分の支払いを済ませた。

結婚式もだが、考えていたよりも高くつき2度目があるなら絶対にやらないと思うのがお披露目パーティ。
見栄を張って3日も行ってしまったけれど、1日だけでも相当なお値段になる。

特に今回はワインが刷新されると聞いて、慌てて来客が飲みなれているであろう従来のワインを大量に注文をしたのだが「無くなるかも?」となればお値段が釣りあがってしまっていた。

下手をすると国外に数か月旅行に行けたり、こじんまりとした庭付きの家なら買えるお値段だ。

捕らぬ狸の何とやらと言うが、式をする前双方の両親ともに「支払いは向こうの家がする」と思っていた。

ダリオンの両親は後継ぎではないけれど息子を婿養子に出すのだからと考えていたし、デリスの両親はなんだかんだで今後はこちらがダリオンの面倒も見るのだから全く金を出さないわけにはいかないが、100%のうちせいぜい20%も出せばいいだろうし、デリスとダリオンも自分たちが主役なのだから半分は出すと思っていた。

白けムードはあったものの3日も開催をすれば1.5日分を払うのに貯えだけでは足らず、へそくりを出し、借り入れまでして金をかき集め何とか支払った。

そうしないと準男爵の肩書があるとないとでは大違い。
両家の父親とも準男爵という爵位があるからこそ商会が通常より少し割増しで取引をしてくれる。

踏み倒しでもすれば恩恵が無くなるだけでなく、パーティへ料理などを納品したのは平民の経営する商会なので平民相手の詐欺行為とみなされ懲役刑。爵位は無くなり前科者になってしまうからだ。

「こちらの支払いは終わった。そっちも終わらせたんだろうな」
「勿論だ支払いは終わった。これが領収だ」

双方の父親は支払い済みの証明となる紙の束を見せ合った。
漏れがあり訴えられればとばっちりを食らってしまう。

支払いに漏れがないことを確認するとやっと一息付けた。

ダリオンの両親はもうダリオンが離縁しても迎え入れる気はない。
首の皮1枚繋がった現状だが、世間は甘くない。

借り入れをする時も白い目で見られたし、それまで仕事を貰っていた問屋全てから契約を切られた。住まいも借家だったが、大家からも出て言ってくれと言われ今月中には引っ越しをせねばならない。

「ウチはもう手を引かせてもらう。ダリオンはそちらに婿養子となったんだ。ダリオン自身は平民だから籍もないし、好きにしてくれ」
「何を言うんだ。借金があるんだぞ?娘を路頭に迷わせる気か」
「その娘が借りた金が別の形になったものをたんまりと持っているじゃないか。手切れ金変わりだよ」

デリスの父親にしてみればダリオンなんてとんだ疫病神だ。
知らなかったからデリスとの結婚を許し、平民には籍がないけれど準男爵であることを誇示するために必要もないのに婿養子の手続きまでしてしまった。今となっては悔やまれるばかり。

ダリオンの両親が帰っていくと、遅すぎる朝食を食べるためにデリスとダリオンがやってきた。

新居となるはずのアパートメントも家賃を払える見込みがないと昨日解約をし、部屋にあった家具は全て売りに出した。皮肉にもアリアが買ったテーブルセットが一番良い値で引き取ってもらえた。


「はぁ…」

デリスの父親は2人を見ると溜息しか出ない。
支払いをするために親戚にも頭を下げて金を借りた。デリスは娘だしある程度は仕方ないと思いつつもダリオンだ。

職もなくこれからの生活も成り立たないのにまるでやる気がない。
食事すら自分たちで用意できないので提供しているのに図々しくもパンが固いだの、スープが薄い、具がない、料理の品数もこれだけかと文句を言う。

デリスの父親はデリスは可愛いけれど自分の蒔いた種だと突き放す時が来たと腹を括った。


「デリス、ダリオン。予定が狂ったんだ、この先の面倒は見れない。判っているな」
「そりゃおかしいでしょ。親なら子の面倒は最後まで見るべきだ」
「貴様は私の子ではない」
「あっれぇ?おかしいな。デリスの婿ではない。私の息子だと思って甘えてくれって言ったよねぇ?」
「面倒はもう見た。結婚式と披露目の金は払ったんだ。もう叩いたって埃も出やしないがな!」

ダリオンはパンをポンポンとお手玉のように弄ぶと、ふんぞり返ってトンデモナイ要求をし始めた。

「ま、払ったって言われても頼んだわけでもないし、そっちの勝手っすよね。恩着せがましいこと言うなっつぅの。それで…今月の生活費だけどさ、とりま…30万でヨロ」
「な、なにを言ってるんだ!」
「何って生活費くれないと生活出来ねぇし?俺、騎士団追い出されて無職だし仕事見つかるまで面倒ヨロシクっす♡パパさん」

デリスの父親は気を飛ばしそうになるほどに顔を真っ赤にし激高したがダリオンはどこ吹く風。

確かにダリオンに「お願いします」と頼まれたわけではないけれど借り入れをしてまで支払いを終わらせた。

少しは感謝するべきだし、無職の間よろしくと頭を下げるべきじゃないか。
そう思ったけれど、ダリオンは「話はそれだけなら」と着替えをするために部屋に戻ろうとした。

「何処に行くんだ!」

声を荒げるデリスの父にダリオンは小馬鹿にしたように答えた。

「何処って、ダーツバーだけど?」
「ダーツバー?!頭ワイてんの?そんなところに行くくらいなら仕事探しなさいよ」
「そのうち探すって」
「そのうちって!!」
「ギャンギャン五月蠅いなぁ。結婚休暇みたいなもんだろ。それにデリスが言ったんだぜ?しばらくは親が面倒見てくれるし遊んで暮らせるって」
「デリスッ!そんなことを言ったのか!」

デリスは金回りのいいダリオンと結婚をした後は、自分に甘い父親に甘えてしばらく面倒を見てもらえるとダリオンに言ったことがあった。

(それを今、この状況で持ち出す?!)

デリスは本気でダリオンと結婚したことを後悔した。
感想 19

あなたにおすすめの小説

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

事情があってメイドとして働いていますが、実は公爵家の令嬢です。

木山楽斗
恋愛
ラナリアが仕えるバルドリュー伯爵家では、子爵家の令嬢であるメイドが幅を利かせていた。 彼女は貴族の地位を誇示して、平民のメイドを虐げていた。その毒牙は、平民のメイドを庇ったラナリアにも及んだ。 しかし彼女は知らなかった。ラナリアは事情があって伯爵家に仕えている公爵令嬢だったのである。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

蝋梅
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?

山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、 飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、 気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、 まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、 推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、 思ってたらなぜか主人公を押し退け、 攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・ ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

公爵令嬢になった私は、魔法学園の学園長である義兄に溺愛されているようです。

木山楽斗
恋愛
弱小貴族で、平民同然の暮らしをしていたルリアは、両親の死によって、遠縁の公爵家であるフォリシス家に引き取られることになった。位の高い貴族に引き取られることになり、怯えるルリアだったが、フォリシス家の人々はとても良くしてくれ、そんな家族をルリアは深く愛し、尊敬するようになっていた。その中でも、義兄であるリクルド・フォリシスには、特別である。気高く強い彼に、ルリアは強い憧れを抱いていくようになっていたのだ。 時は流れ、ルリアは十六歳になっていた。彼女の暮らす国では、その年で魔法学校に通うようになっている。そこで、ルリアは、兄の学園に通いたいと願っていた。しかし、リクルドはそれを認めてくれないのだ。なんとか理由を聞き、納得したルリアだったが、そこで義妹のレティが口を挟んできた。 「お兄様は、お姉様を共学の学園に通わせたくないだけです!」 「ほう?」 これは、ルリアと義理の家族の物語。 ※基本的に主人公の視点で進みますが、時々視点が変わります。視点が変わる話には、()で誰視点かを記しています。 ※同じ話を別視点でしている場合があります。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!