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第6話♡騎士たちの必要であろう不用品
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団長室は常日頃から扉はOPEN状態となっている。
前任の騎士団長はCLOSE派だったようだが、ガウルテリオは基本が常開。有事の際だけ閉じていればいいという学園や学院の階段部分にある防火扉のような考え方だ。
その為なのか、団長室には騎士達が特に用は無くてもやって来る。
田舎から家族が来たので…っと特産物の果物などを持って来る事もあるが、中には「クサヤ」という魚の干物を差し入れしてくる騎士もいる。
間違ってはいけない。悪気は全くない。
ただ「お裾分け」しようと言う純粋な善意で持って来るのだ。
決して「クサヤ」の匂いを換気するために扉を開けているのではない。
マリーが着任をして間もなく3か月になろうとしていた。
「過日片付けをした際に回収をした持ち主不明の品、保管期限が過ぎましたので廃棄いたします」
団長室に入って直ぐの場所に置かれた箱。
箱の上には壁に貼り紙をしてあり、どんな品が「預かり」となっているのかを書き出している。
持ち主が現れたのは3分の1くらい。
残り3分の2には持ち主が現れていない。
箱を片付けようとするマリーの元にガウルテリオはやって来てしゃがみ込んだ。箱の中から品を1つ手に取ると一番近くのデスクにいたイグナシオ広報担当がサッと顔を背けた。
「こんな書物を持ち込むヤツの気が知れないな」
手にしたのはセクシーなお姉さんが色々なポーズを取っている世間では【エ〇本】と呼ばれる逸品である。これを「書物」と言うかどうか。鑑賞だけではないかと思うものもいるが木板に下書きの絵を掘り、1枚1枚版画のようにしたものをまとめているので、書物と言えば書物だろう。
隣りにマリーがいるのにパラパラとページを捲るガウルテリオ。
間違ってはいけない。悪気は全くない。
ただ「確認」をしているだけなのだ。
――あぁ…団長ぅ~秘書官の目からさらに温度が消えてますよぅ~
ラウール副団長はハラハラしながら心でガウルテリオに注意を促す。
心の声は当然聞こえていない。
「ん?こっちは11号?これは12号…定期購読なのか」
手に取った書物をパラパラと捲っていくガウルテリオ。
ファルコンはもう窓の外に意識を飛ばし、耳を塞いでいる。
「これですね」
「何がだ?」
イグナシオとラウール、ファルコンは事も無げに声を出し、ガウルテリオのページを捲る手を止めたマリーに「信じられない」と視線を向けた。
ガウルテリオの隣にしゃがみ込んだかと思うと、開いたページをマリーがトントンと指差している。
――っっっ!!――
開かれたページはお姉さんがM字開脚全開の見開きページ。
3人は冷や汗をダラダラと流し、足は膝を合わせて閉じているが耳の鼓膜は全開。
「ここです。切り取られておりますでしょう?」
「本当だ。なんでこんなページの端を切り取っているんだ」
「この部分に応募券があるのです。3冊分を集めて刊行している商会に持って行くと繁華街にあるいくつかの酒場で使用できるエール1杯無料券や特別号の綴込み付録が先行してもらえたりするのです」
――秘書官!何故知ってるんですか?!――
「秘書官は物知りだな。集めているのか?」
――団長!そんなわけないでしょう!!――
「警護団にいた頃に回収したこの手の本ばかりを念入りにチェックする団員がおりましたので」
王都近郊を警備する警護団は空き瓶や古紙を回収し、業者に引き取ってもらった金で武具などを購入している。これは規則でも定められていて違法ではない。
「警護団の団員も給料は知れているからな。お得となれば――」
「除名を隊長に進言し、結果は減給となりました」
「へっ?じょ…除名?減給って厳しくないか?」
「市民Aが持ち込んだ資源ごみは回収場に持って来るまでは所有権は市民Aにありますが、回収場に置いた瞬間に国に所有権が移ります。無断で持ち去ったり破損させれば条例違反となります」
ガウルテリオはそう言えば‥‥と報告書を思い出す。
昨年1年でマリーが着任した警護団は武具の充実が図られている。
「そう言えば警護団は武具が色々と揃ったと聞くが…」
「責任者である団長に許可を得て、この手の割引券は回収業者に渡す前に切り取り、格安で販売と致しました。意外と好評で売り上げがありましたので武具を揃えました」
――どんだけエ〇本貯め込んでいるんだよっ!!――
「そうだったのか。よし判った」
――団長?何が判ったのぉ?怖いんですけど?――
「では秘書官。分離して売り上げになるのならそうしてくれ」
――まさかそのエ〇本を秘書官に確認して切り取れと?!――
ないない!っと3人は首を振りたいが、その前にマリーが返事を返した。
「承知致しました。規定枚数に足らない分は保管してよろしいでしょうか」
「あぁ、そうしてくれ。君に任せておけば安心だ」
――やるんだ?ってか、保管までさせる?!――
その後チョキチョキと応募券を切り取りはじめるマリー。
「イグナシオ担当官、すみませんが切り取った物を一旦デスクの端で良いのですが、置かせて頂いても宜しいでしょうか?」
「う、うん…構わないけど」
「ありがとうございます」
先に切り取った20冊分の応募券をデスクの上に無造作に置くマリー。
イグナシオは気付いてはいけない事実に気が付いてしまった。
応募券。3号分の裏側を並べると「わぁお♡」な部分になるという事に。ちらりとマリーを見れば無表情で淡々と応募券を切り取っている。
「あ・・・」
小さくマリーが声を出した。近くにいるイグナシオだけに聞こえるくらいの声。
「どうしましたか?」
努めて冷静にイグナシオはマリーに問いかけた。
マリーは一冊の書物を差し出した。
「ページが張り付いているんです」
理由が言われずとも判ってしまうイグナシオ広報担当。
「預かりましょう。廃棄します」
「廃棄?ですが――」
「秘書官、廃棄です」
拒否はさせないとばかりに、にこやかに答えるイグナシオ広報担当。
翌日騎士たちの更衣室には何カ所かに貼り紙がされたのは言うまでもない。
「紙製品での後始末厳禁」
第3騎士団に新たな約束事が追加されたのだった。
前任の騎士団長はCLOSE派だったようだが、ガウルテリオは基本が常開。有事の際だけ閉じていればいいという学園や学院の階段部分にある防火扉のような考え方だ。
その為なのか、団長室には騎士達が特に用は無くてもやって来る。
田舎から家族が来たので…っと特産物の果物などを持って来る事もあるが、中には「クサヤ」という魚の干物を差し入れしてくる騎士もいる。
間違ってはいけない。悪気は全くない。
ただ「お裾分け」しようと言う純粋な善意で持って来るのだ。
決して「クサヤ」の匂いを換気するために扉を開けているのではない。
マリーが着任をして間もなく3か月になろうとしていた。
「過日片付けをした際に回収をした持ち主不明の品、保管期限が過ぎましたので廃棄いたします」
団長室に入って直ぐの場所に置かれた箱。
箱の上には壁に貼り紙をしてあり、どんな品が「預かり」となっているのかを書き出している。
持ち主が現れたのは3分の1くらい。
残り3分の2には持ち主が現れていない。
箱を片付けようとするマリーの元にガウルテリオはやって来てしゃがみ込んだ。箱の中から品を1つ手に取ると一番近くのデスクにいたイグナシオ広報担当がサッと顔を背けた。
「こんな書物を持ち込むヤツの気が知れないな」
手にしたのはセクシーなお姉さんが色々なポーズを取っている世間では【エ〇本】と呼ばれる逸品である。これを「書物」と言うかどうか。鑑賞だけではないかと思うものもいるが木板に下書きの絵を掘り、1枚1枚版画のようにしたものをまとめているので、書物と言えば書物だろう。
隣りにマリーがいるのにパラパラとページを捲るガウルテリオ。
間違ってはいけない。悪気は全くない。
ただ「確認」をしているだけなのだ。
――あぁ…団長ぅ~秘書官の目からさらに温度が消えてますよぅ~
ラウール副団長はハラハラしながら心でガウルテリオに注意を促す。
心の声は当然聞こえていない。
「ん?こっちは11号?これは12号…定期購読なのか」
手に取った書物をパラパラと捲っていくガウルテリオ。
ファルコンはもう窓の外に意識を飛ばし、耳を塞いでいる。
「これですね」
「何がだ?」
イグナシオとラウール、ファルコンは事も無げに声を出し、ガウルテリオのページを捲る手を止めたマリーに「信じられない」と視線を向けた。
ガウルテリオの隣にしゃがみ込んだかと思うと、開いたページをマリーがトントンと指差している。
――っっっ!!――
開かれたページはお姉さんがM字開脚全開の見開きページ。
3人は冷や汗をダラダラと流し、足は膝を合わせて閉じているが耳の鼓膜は全開。
「ここです。切り取られておりますでしょう?」
「本当だ。なんでこんなページの端を切り取っているんだ」
「この部分に応募券があるのです。3冊分を集めて刊行している商会に持って行くと繁華街にあるいくつかの酒場で使用できるエール1杯無料券や特別号の綴込み付録が先行してもらえたりするのです」
――秘書官!何故知ってるんですか?!――
「秘書官は物知りだな。集めているのか?」
――団長!そんなわけないでしょう!!――
「警護団にいた頃に回収したこの手の本ばかりを念入りにチェックする団員がおりましたので」
王都近郊を警備する警護団は空き瓶や古紙を回収し、業者に引き取ってもらった金で武具などを購入している。これは規則でも定められていて違法ではない。
「警護団の団員も給料は知れているからな。お得となれば――」
「除名を隊長に進言し、結果は減給となりました」
「へっ?じょ…除名?減給って厳しくないか?」
「市民Aが持ち込んだ資源ごみは回収場に持って来るまでは所有権は市民Aにありますが、回収場に置いた瞬間に国に所有権が移ります。無断で持ち去ったり破損させれば条例違反となります」
ガウルテリオはそう言えば‥‥と報告書を思い出す。
昨年1年でマリーが着任した警護団は武具の充実が図られている。
「そう言えば警護団は武具が色々と揃ったと聞くが…」
「責任者である団長に許可を得て、この手の割引券は回収業者に渡す前に切り取り、格安で販売と致しました。意外と好評で売り上げがありましたので武具を揃えました」
――どんだけエ〇本貯め込んでいるんだよっ!!――
「そうだったのか。よし判った」
――団長?何が判ったのぉ?怖いんですけど?――
「では秘書官。分離して売り上げになるのならそうしてくれ」
――まさかそのエ〇本を秘書官に確認して切り取れと?!――
ないない!っと3人は首を振りたいが、その前にマリーが返事を返した。
「承知致しました。規定枚数に足らない分は保管してよろしいでしょうか」
「あぁ、そうしてくれ。君に任せておけば安心だ」
――やるんだ?ってか、保管までさせる?!――
その後チョキチョキと応募券を切り取りはじめるマリー。
「イグナシオ担当官、すみませんが切り取った物を一旦デスクの端で良いのですが、置かせて頂いても宜しいでしょうか?」
「う、うん…構わないけど」
「ありがとうございます」
先に切り取った20冊分の応募券をデスクの上に無造作に置くマリー。
イグナシオは気付いてはいけない事実に気が付いてしまった。
応募券。3号分の裏側を並べると「わぁお♡」な部分になるという事に。ちらりとマリーを見れば無表情で淡々と応募券を切り取っている。
「あ・・・」
小さくマリーが声を出した。近くにいるイグナシオだけに聞こえるくらいの声。
「どうしましたか?」
努めて冷静にイグナシオはマリーに問いかけた。
マリーは一冊の書物を差し出した。
「ページが張り付いているんです」
理由が言われずとも判ってしまうイグナシオ広報担当。
「預かりましょう。廃棄します」
「廃棄?ですが――」
「秘書官、廃棄です」
拒否はさせないとばかりに、にこやかに答えるイグナシオ広報担当。
翌日騎士たちの更衣室には何カ所かに貼り紙がされたのは言うまでもない。
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