ある日王女になって嫁いだのですが、妾らしいです

cyaru

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第18話   仕掛けた側がサプライズで大慌て

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ご丁寧に・・・はメリルなりの返し。
イラッとしてしまったのは否めないが、700kmはゆうに離れたブートレイア王国まで1人で帰るのも今は現実的ではない。

国と国との約束もある。
そしてやはりシュバイツァーも結婚は本意ではなかったのだと思うと「悪かったなぁ」と考えた。

メリルも巻き込まれたようなものだが、シュバイツァーも同じ。
誰だって好きな人と添い遂げたいと思うのは当然だし、子供までいるならこの結婚は本当に悩んだのだろう。

もしかすると口が悪いのではなく、本気でイラついていたから気持ちが言葉になったのかも知れない。

ブートレイア王国とは遠く離れているからバレないと考えるのも、力のある辺境伯なのだから、メリルの現状をシュルタスに知らせようとする者を途中で亡き者にするなんて簡単だろうなと。
そんな考えに至るのも当然。

やり方は姑息だなぁと思う。思うのだけど「偉い人は何考えてるか判らないわね」と受け入れるしかない。



地図とトランクを手にしたメリルは順に到着する荷馬車の脇を抜け、道中顔見知りとなった兵士たちに会釈をしながら入って来た大門を今度は内から外にくぐった。


「えぇっと・・・確か地図は上が北なのよね。で‥‥」

キョロキョロと周囲を見渡し「西・・・西・・・うん!こっちだわ」1人頷いた。

この時、メリルは気が付かなかった。
手にした地図の南北が逆なら東西も逆になっているという事を。

つまり、この地図は単純かつ大きなミスがあるのに正しいと信じてしまった


が…歩けど歩けど目的の「小屋」らしきものは見当たらない。
道の脇には3階、4階建てのアパートメントがあってどう見ても「小屋」ではない。

空が赤く染まり始めた頃にやっと「農道」に出て「小屋」を見つけたが、水路から水を汲み上げる水車小屋で使用用途が違う。

「ここじゃないわ。もっと先かな。でももう日が暮れるわ。急がなきゃ」

メリルは小走りになって農道が続く先にある森の中に入ってしまったのだった。


★~★

その頃、フェデリカとカレドア、そして使用人達は本宅から「東」に少し行った場所にある屋敷にいた。

そこはシュバイツァーとメリルが新生活を始めるための屋敷。
カレドアは確かに妊娠をしているが、ちゃんと夫はいて、腹の子は間違いなく夫の子。間違ってもシュバイツァーの子供ではない。

王女様という堅苦しい生き方をしてきたであろうメリルに「びっくり箱」のような驚きと、辺境伯家と言っても肩を張る事は無いよという気さくさ、そしてサプライズを感じて欲しくて考えた「悪戯」だった。

『妾はやり過ぎじゃないでしょうか?』

フェデリカに従者は問うたが、モーセット王国の辺境では今、正妻と妾を軸に置いた見世物芝居が流行っていて、原作はブートレイア王国の作家によるもの。

このくらいの「ジョーク」は判ってくれるだろうと安易に思ってしまったのだ。


最初は普通に迎え入れるつもりだった。
シュバイツァーはフェデリカにとって可愛い甥っ子であり、カレドアにも可愛い従兄。
ブートレイア王国に向かう前までは舌打ちするほど面倒臭がって居たのに、道中の様子は逐一屋敷にも報告される。

『バルも恋するんだ~面白~い』


意地悪をして、新居にやって来たメリルを「実は大歓迎!!」驚かそうと思っただけ。
シュバイツァーが受け入れたのなら、こんなにうれしい事は無い。祝う気持ちしかなかったのに・・・。


「来ないわね…もう日が暮れるわ」


カァーカァー。
カラスも巣に戻っていく。

従者は何度も屋敷の玄関と外門を行き来するがメリルが到着したという知らせをフェデリカ達に持ち帰る事は出来なかった。

「貴女、地図はちゃんと描いたんでしょうね?」
「書いたわよ。もう一度だって描けるわ。何度も練習したんだもの」

カレドアは従者からペンを借りると、ついでに手帳も借りてメリルに渡した地図と同じようにサラサラと順路を描いた。

「奥様、これは‥‥逆ではないでしょうか」
「逆?」
「はい、地図は通常 ”北” を上に描きます。用紙の大きさにより方位を変えて描く場合はこちらが北だと方位マークを入れます」
「え…もしかして南北が逆?」
「南北が逆の場合は東西も逆になりますね」

<< まさか!! >>


慌てて捜索隊を出した頃には空は真っ暗。
ここで、捜索をするのに遅れを取った原因にもフェデリカは気が付かなかった。

王族や貴族の女性は基本として歩いての移動はしない。せいぜい部屋から部屋、もしくは庭を散策という超短距離しか歩かない。だから目と鼻の先にある新居も直ぐに解るし歩ける距離だと思ったのに。

なので、探すと言ってもメインが屋敷の敷地の中。
歩き疲れて植え込みに入り込んでいないかと捜索の重点を置いた。

メリルは意外とかなりの距離を自分で歩くという事が判ったのはもう深夜に近い頃。

「そうね…歩くと言ってたわ」
「歩いて国までって意味だけじゃないのね…え?国?」

<< まさか!? >>

本当に歩いてブートレイア王国まで帰ってしまったのか!!
その場にいた者は全身の血が凍りついた。

慌てたフェデリカは門番を呼んだ。
門番の目の前をメリルはトランクと地図を持って通って行ったと思われるが、屋敷に入る時は馬車の中。門番はメリルがどんな服を着ていたのか、そもそもでメリルの顔など知らなかった。

兵士たちも旅の道中で手伝いを自主的に行っていたメリルなので、トランクを持って入り口の方向に歩いていく様子を「先に持って入りたい荷物でもあったのかな?」と考え、まさか出て行ったとは思ってもいなかった。

捜索の範囲を広げ探し回ったがメリルは見つからなかった。
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