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第34話 メリル、レッツ・ア・ヘブン
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辺境伯の元に無事であるという姿を見せるために屋敷に向かう事になったメリル。
早朝小屋に迎えに来たシュバイツァーはメリルをかの日のように馬に乗せ、手綱を持つ手を柵のようにして馬を走らせる。
屋敷に向かう途中、森を抜けた農村で馬を休憩させている時、シュバイツァーはメリルに1つ頼みごとをした。
「気乗りはしないかも知れないが新居に寄ってもいいか?」
「構わないけど・・・どうして?」
「皆が会いたがってるんだ。新居の使用人達はあの企みには加担していなくてさ」
「いいんだけど、時間には間に合うの?」
「あぁ、父上には午後からと言ってあるから」
「午後っ?!ちょっと待って。今朝の7時過ぎよ?会うのは午前中じゃないの?」
「いや?父上には13時過ぎと言ってある」
「じゅ!13時?!午前中じゃないの!?」
「隠さなきゃ・・・だろ?」
シュバイツァーは自身の首筋をトントンと指で示し、メリルは「うっ」自分の首を手で隠した。そう。昨日散々にシュバイツァーにマーキングをされてしまっていた。
「それに湯も浴びたいだろ?用意させてる」
――朝湯殿・・・嬉しいけどなんか嬉しくない――
と、思ったはずなのに!!
カコーン♪ パシャ♡「ハァァ♡気持ちいぃぃ~」
単純だなとメリルは自身を素直に評価した。
それほどまでに湯を浴びる!体を洗う!湯船に浸かる!という行為は魅惑的で実際の体の汚れ以上に心が洗われ・・・「魂の浄化よぅ♡」
ただ、ショックな事実も目の当たりにする事になった。
「え・・・何・・・この色・・・てっ!くっさい!!」
出来るだけ清潔でいよう。
そう思い清拭は欠かさないように気を付けていたし、雪が降る前日までは朝の沢の水がどんなに冷たくても顔と首回り、そして手足と入念に洗ってはいたが慣れとは恐ろしい。
頑固な汚れと悪臭に全く気が付かなかったなんて!!
知りたくなかった!知らないままでいたかった!!
桶の湯を被ると髪がまず湯を弾く。
絶望に近い感情の喪失を味わう。
2杯目を肩からザザーっと流すと不気味な香りに周囲を見回し、3杯目、4杯目で足元を流れる湯に色がある事に気が付き、その中にさっきまでメリル自身を覆っていた「鎧のカケラ」が剥がれ流れている事に現実逃避。
髪もゴシゴシと洗ったのだが、「どうぞお使いください」と手渡された洗髪液が泡立ったのが4回目の洗髪時。その前、特に初回、2回目に流れた泡の色は思い出したくもない色で「人間やめてもいいですか」と髪に懇願した。
「私、こんなに汚かっ‥‥ん?それで吸われたの?!」
シュバイツァーをどう褒めたらいいのか判らない。
もしかするととんでもない雑食家なのかも知れないと思うのは仕方がないだろう。
しかし、汚れを洗い取り肌もキュッキュとなって湯船に浸ると全てがどうでも良くなる。流れて行った汚れはもう見えないのでなかったも同然。
「ほぇ~天国~イッツ・ア・ヘブゥン♡」
メリルの製作する人間用湯桶は縦に座るタイプだが、新居にある湯殿はヘリに手を添えて足を伸ばすタイプ。
「こっちもいいわぁ♡こっちの方が作りやすいかしら」
これは技術を盗まねばと角の部分や継ぎ目を観察していると声がする。本来なら髪や体を使用人に洗ったりされるのだがシュバイツァーが「1人で入りたい」とのメリルの願いを使用人に伝えてくれてここでもオールセルフだった事を思い出す。
何だろうと外に意識を向けるとあまりに長い湯の時間なので心配する使用人の声だった。
「若奥様、大丈夫ですか?」
「は、はい!もう湯から出ますね」
「承知致しました。準備も整っております」
――ん?準備?整う?謎かけしてたっけ?――
新居は広い屋敷。宴会場も常設で流行りの芸人ね〇っちでも呼んでるのかな?と思えば違った。
湯殿からでたメリルを待ち受けていたのはメリル付となるメイドに侍女たち。
新居の使用人はシュバイツァーとメリルが生活をする為に雇い入れられた者達。
やっと仕事ができる!とメリルが湯殿から出てくると「さぁさぁこちらへ」と台に裸のままでうつ伏せにされてしまった。
「ニャハァーッ!!ヒャァァーウッ」
滑りの良い香油を垂らされて始まったのはマッサージ。最初は痛みを感じたのだが「私って順応するの早っ」メリルが自身を分析する速さに比例してどんどん気持ち良くなってくる。
肩から背中にチュルルと走る手に思わず「エ・ビ・ゾルゥ~」っと声は出してしまったが、グルグルと手のひらを回しながら肩から腰にマッサージをされると極上で起床してまだ3時間ほどなのに睡魔すら襲ってくる。
最後にふくらはぎを解されている間は「もしかして鼾かいてた?」と知らぬ間に意識が何処かに飛んでしまったのか気持ち良さに飲み込まれて記憶がない。
直ぐに口元の粗相を確かめてしまったではないか!
「若奥様、御着替えに参りましょう」
「ん…んにゃ・・・(ハッ!寝てた?!)はいっ!」
「気持ち良かったですか?」
「はい、とっても。うわぁ…凄く体が軽い‥」
「良かった。若奥様の為にと鍛錬を重ねた甲斐が御座いました」
っと、手のひらをひろげ赤ちゃんに「ばぁ♡」とするような仕草のメイドをみてメリルは心で叫んだ。
――ハンドパワーです!――
下着を身につけると化粧台の前に座らされて、シュッシュと香りのよいミストを振ると優しく髪をとかして貰い、見る間にくすんだ髪が輝きを取り戻した。
「若奥様はオレンジや黄色と言ったお色よりも緑や青、それも深い色がお好きと伺いました。ご自身に似合うお色をよくご存じですわぁ」
――そんなこと一度も言った事ないんですが――
出来上がっていくメリルの装いに凄く違和感を感じるのは気のせいなのだろうか。
緑系統のドレスに深い緑色のサファイア?と思ったがさらに濃緑の石がついたネックレスが首元にキラキラ。メイド達は「お似合いです!綺麗な輝き!」というのだがメリルには「妖光」にしか見えない。
どこかで見た事のある色だなと思っていたが、「出来たか?」とやって来たシュバイツァーを見て嵌められた事をまた悟ったのだった。
早朝小屋に迎えに来たシュバイツァーはメリルをかの日のように馬に乗せ、手綱を持つ手を柵のようにして馬を走らせる。
屋敷に向かう途中、森を抜けた農村で馬を休憩させている時、シュバイツァーはメリルに1つ頼みごとをした。
「気乗りはしないかも知れないが新居に寄ってもいいか?」
「構わないけど・・・どうして?」
「皆が会いたがってるんだ。新居の使用人達はあの企みには加担していなくてさ」
「いいんだけど、時間には間に合うの?」
「あぁ、父上には午後からと言ってあるから」
「午後っ?!ちょっと待って。今朝の7時過ぎよ?会うのは午前中じゃないの?」
「いや?父上には13時過ぎと言ってある」
「じゅ!13時?!午前中じゃないの!?」
「隠さなきゃ・・・だろ?」
シュバイツァーは自身の首筋をトントンと指で示し、メリルは「うっ」自分の首を手で隠した。そう。昨日散々にシュバイツァーにマーキングをされてしまっていた。
「それに湯も浴びたいだろ?用意させてる」
――朝湯殿・・・嬉しいけどなんか嬉しくない――
と、思ったはずなのに!!
カコーン♪ パシャ♡「ハァァ♡気持ちいぃぃ~」
単純だなとメリルは自身を素直に評価した。
それほどまでに湯を浴びる!体を洗う!湯船に浸かる!という行為は魅惑的で実際の体の汚れ以上に心が洗われ・・・「魂の浄化よぅ♡」
ただ、ショックな事実も目の当たりにする事になった。
「え・・・何・・・この色・・・てっ!くっさい!!」
出来るだけ清潔でいよう。
そう思い清拭は欠かさないように気を付けていたし、雪が降る前日までは朝の沢の水がどんなに冷たくても顔と首回り、そして手足と入念に洗ってはいたが慣れとは恐ろしい。
頑固な汚れと悪臭に全く気が付かなかったなんて!!
知りたくなかった!知らないままでいたかった!!
桶の湯を被ると髪がまず湯を弾く。
絶望に近い感情の喪失を味わう。
2杯目を肩からザザーっと流すと不気味な香りに周囲を見回し、3杯目、4杯目で足元を流れる湯に色がある事に気が付き、その中にさっきまでメリル自身を覆っていた「鎧のカケラ」が剥がれ流れている事に現実逃避。
髪もゴシゴシと洗ったのだが、「どうぞお使いください」と手渡された洗髪液が泡立ったのが4回目の洗髪時。その前、特に初回、2回目に流れた泡の色は思い出したくもない色で「人間やめてもいいですか」と髪に懇願した。
「私、こんなに汚かっ‥‥ん?それで吸われたの?!」
シュバイツァーをどう褒めたらいいのか判らない。
もしかするととんでもない雑食家なのかも知れないと思うのは仕方がないだろう。
しかし、汚れを洗い取り肌もキュッキュとなって湯船に浸ると全てがどうでも良くなる。流れて行った汚れはもう見えないのでなかったも同然。
「ほぇ~天国~イッツ・ア・ヘブゥン♡」
メリルの製作する人間用湯桶は縦に座るタイプだが、新居にある湯殿はヘリに手を添えて足を伸ばすタイプ。
「こっちもいいわぁ♡こっちの方が作りやすいかしら」
これは技術を盗まねばと角の部分や継ぎ目を観察していると声がする。本来なら髪や体を使用人に洗ったりされるのだがシュバイツァーが「1人で入りたい」とのメリルの願いを使用人に伝えてくれてここでもオールセルフだった事を思い出す。
何だろうと外に意識を向けるとあまりに長い湯の時間なので心配する使用人の声だった。
「若奥様、大丈夫ですか?」
「は、はい!もう湯から出ますね」
「承知致しました。準備も整っております」
――ん?準備?整う?謎かけしてたっけ?――
新居は広い屋敷。宴会場も常設で流行りの芸人ね〇っちでも呼んでるのかな?と思えば違った。
湯殿からでたメリルを待ち受けていたのはメリル付となるメイドに侍女たち。
新居の使用人はシュバイツァーとメリルが生活をする為に雇い入れられた者達。
やっと仕事ができる!とメリルが湯殿から出てくると「さぁさぁこちらへ」と台に裸のままでうつ伏せにされてしまった。
「ニャハァーッ!!ヒャァァーウッ」
滑りの良い香油を垂らされて始まったのはマッサージ。最初は痛みを感じたのだが「私って順応するの早っ」メリルが自身を分析する速さに比例してどんどん気持ち良くなってくる。
肩から背中にチュルルと走る手に思わず「エ・ビ・ゾルゥ~」っと声は出してしまったが、グルグルと手のひらを回しながら肩から腰にマッサージをされると極上で起床してまだ3時間ほどなのに睡魔すら襲ってくる。
最後にふくらはぎを解されている間は「もしかして鼾かいてた?」と知らぬ間に意識が何処かに飛んでしまったのか気持ち良さに飲み込まれて記憶がない。
直ぐに口元の粗相を確かめてしまったではないか!
「若奥様、御着替えに参りましょう」
「ん…んにゃ・・・(ハッ!寝てた?!)はいっ!」
「気持ち良かったですか?」
「はい、とっても。うわぁ…凄く体が軽い‥」
「良かった。若奥様の為にと鍛錬を重ねた甲斐が御座いました」
っと、手のひらをひろげ赤ちゃんに「ばぁ♡」とするような仕草のメイドをみてメリルは心で叫んだ。
――ハンドパワーです!――
下着を身につけると化粧台の前に座らされて、シュッシュと香りのよいミストを振ると優しく髪をとかして貰い、見る間にくすんだ髪が輝きを取り戻した。
「若奥様はオレンジや黄色と言ったお色よりも緑や青、それも深い色がお好きと伺いました。ご自身に似合うお色をよくご存じですわぁ」
――そんなこと一度も言った事ないんですが――
出来上がっていくメリルの装いに凄く違和感を感じるのは気のせいなのだろうか。
緑系統のドレスに深い緑色のサファイア?と思ったがさらに濃緑の石がついたネックレスが首元にキラキラ。メイド達は「お似合いです!綺麗な輝き!」というのだがメリルには「妖光」にしか見えない。
どこかで見た事のある色だなと思っていたが、「出来たか?」とやって来たシュバイツァーを見て嵌められた事をまた悟ったのだった。
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