この度、変態騎士の妻になりました

cyaru

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黒い影

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今日もアルベルト様はお仕事で御座います。
夕方から会議があるようで夜中にはならないけれど遅くなるそうですが、泊ってきて頂いても結構ですのに「なるべく急いで帰るから!」と念押しをされてしまいました。

先日やっと手に入った唐辛子をギルバート様が食されてしまいましたのでお食事の色どりにはトマトを利用する事になりました。これでしたら【飾り】では御座いません。

ただ、問題はアルベルト様は我儘なのです。
決してトマトが嫌い、ピーマンが嫌い、パプリカが嫌いなど好き嫌いでは御座いません。
折角甘くておいしいフルーツトマトを手に入れましてもカットをするのを嫌がるのです。
プチトマトをわたくしが手で食べさせてくれなければ嫌だと申されます。

ですのでお仕事に行かれるようになり、屋敷の庭師さんと相談をして野菜の苗を植えたのです。
折角広いお庭ですし、野菜も可愛い花をつけますから問題はないでしょう。
その上で、お野菜が採れるのですから経済的でも御座います。

食べられるような実になるまでは1,2か月はかかるでしょうけれど楽しみが出来ました。
伯爵家にいた頃は領地の収益などの帳簿整理も手伝っておりましたが、お嫁に来て収入はアルベルト様のお給金と褒賞を預金している利息で御座います。
収入と支出は税理士さんにお任せされているとの事なのでする事が御座いません。

何かする事はないかと思案して、お菓子や野菜つくりと近所にある教会へのバザーに寄付する刺繍などをしておりますがそればかりも飽きてしまいます。贅沢だとは思っているのですけども。
勿論アルベルト様にはお菓子や野菜の事は秘密で御座います。
アルベルト様ほどの秘密ではないので自己判断でよしとしております。

さて、本日はお菓子を作ろうと厨房にやってまいりました。
クリスマスも近い事ですし、ケーキも綺麗に焼きたいと思っております。
それには先ず練習あるのみ。毎回素人が綺麗に作るのは難しいのです。

小麦粉を振るったり、卵を卵黄と卵白に分けてメレンゲを作ったりと使用人の皆さんと楽しくケーキを作ります。みんなで作ってみんなで食べるというのは何のソースよりも甘く美味しいのです。

スポンジを焼く間は手持無沙汰。焼きあがれば冷ましてクリームを塗って食べるだけ。
ですので、出来るうちに片づけを致します。

ふと見ると年若い調理人さんがかなり丁寧に掃除をされておられます。

「随分丁寧にお掃除をしてくださるのですね」
「えぇ。野菜くずだけでなく炒め物などは結構小さいのが遠くまで飛んでるんです」
「まぁ。本当ですね。こんな所にまで飛ぶんですね」
「えぇ。でも炒め物などはこれくらいの位置まで飛ぶくらいにフライパンを振らないと美味しくないですから。美味しく食べてもらえるなら掃除くらいなんともないです」

――なんて健気なの!だから毎日のお食事が美味しいのね――

「あら、シンクはオレンジなんかの皮で磨くと良いのよ」
「そうなんですか?こんな水垢も落ちますかね?」
「そうですよ。その他にお魚なんかの匂いもかなり薄まりますし」
「へぇ、そうなんですね。いつも洗剤でゴシゴシしてかなりその後水で流すので井戸から汲み上げるの大変なんですよ。オレンジの皮なら手間も省けそうですね」

――まぁ!早速試してくださるのね。うわっと驚いたお顔が新鮮ですわ――

そうしているうちにスポンジも焼きあがりましたので、冷ましておいてクリームを塗りフルーツを盛りつけます。今回初回でございましたので今一つスポンジの膨らみが良くありませんが数回練習をすれば何とかなるでしょう。

使用人さんの中にはお家にお子様がいて持って帰る方もいらっしゃいます。
持ち帰る分にはフルーツ盛り盛りに致しましょう。

――うふっ…キャバクラのお姉さんの頭みたい――

午後のティータイムも使用人さんと一緒で御座います。
アルベルト様が御不在の時、限定で御座います。出来るならずっとお仕事でもよろしいのに。
そんな事を考え出すと、悪妻と言われるようですが気にいたしません。
きっと、悪妻バージョンもハウハウと喜んでくださるはずです。

「そう言えば奥様、夜は注意されてくださいね」
「なにをですの?」
「出るんです‥‥夜は特に出るんですよ」

――アルベルト様の放射器から出される白い液体かしら?――

「とにかく、逃げるのが一番です」

――難しいですわ。ホールドされてしまいますもの――

「絶対に手を出してはいけませんよ。飛びますからね」

――いえ、手を出す前にいつも飛ばしてますのよ――

女同士でも夫婦の閨事は使用人さんには相談が出来ないのが残念です。
こうやって遠回しなアドバイスを頂くのが精一杯。貴族とはかた苦しいものです。
苦笑いでアドバイスを受け止めるわたくしで御座います。

18時にまだ少し時間が御座いますが、雪が酷くなる前に使用人さんには上がって頂きました。
日の落ちる時間も早いですし、雪道は何かと危険です。
家に帰るまでが遠足と同じで御座います。

皆さんがお帰りになり、夕食は会議中に王宮で出るそうなのでわたくしの分はこのケーキ。
晩御飯にケーキというのは背徳感もあってとても美味しゅう御座います。
そしてアルベルト様が毎日購読しておられる騎士新聞も広げてちょっとだけ悪い子な気分。

スポーツ新聞のように、エッチィ部分も御座いますがわたくしは4コマ漫画が楽しみなのです。あとは株価の欄を少々拝見したりしております。

カサッ…

何でございましょう?どこからか音が聞こえます。
そっと音のする方に歩いていきますと…

「闇の帝王!!」

念入りに掃除をしてもどこからか屋敷に侵入し、あっという間に大家族になる闇の帝王。
いえ、帝王と呼んでおりますがもしかすると女帝の可能性も御座います。
細かい事は別として、闇の帝王は睨み合いの後、飛び上がり攻撃を仕掛けてくるのです。

わたくしは騎士新聞を丸め、棒状にすると見た事は御座いませんが気分は宮本武蔵。
そうです。決闘の場所に遅刻をしなかったのが事実のようですけれど、70代の小次郎さまに20代の若者。それは老人虐待ではないでしょうかと思いつつ、わたくしは帝王と対峙致します。

カサッ…カササ…

「卑怯者!逃がしませんわ!」

カサッ…カサササ‥‥カササ

「うわっ!こっちに来てはなりませんっ!」

(じぃぃ)バッ!!

「きゃぁぁぁぁぁ!!来ないで!来ないでくださいましぃぃ!」

「どうしたんだ!!何があった!エトランゼッ!!」

アルベルト様の声で御座います!しかし!その声に顔をあげると目の前の壁に闇の帝王が!
思いっきり丸めた新聞をバシー!

「ハグアァッ!」

――え…闇の帝王って声を出すの?――

違いました。慌てて駆け込んで来たアルベルト様の股間を思い切り叩いてしまっておりました。
良かった。お顔でなくて。いえいえ。何処であろうといけません。何という事を!

「ア、アル様!あれが…あれが…」
「なんだ。ゴキ●リじゃ…ないか。ックゥ…ちょっと待て…」

そう言いながら、腰がかなり引けておりますが氷魔法で瞬間冷却を一瞬でされてしまわれます。

そのお姿はまさに エビ !!

「大丈夫だったか?」

ピョンピョンとジャンプをされていたり、腰をトントンと叩いておりますがニコリと微笑むアルベルト様。やはり国一番の騎士様でございます。仕留めた後の動きも大事なのですね。

この方が旦那様である事がとても嬉しく思えたのです。
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