伯爵様の恋はウール100%

cyaru

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第05話   スナーチェの婚約

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スナーチェはビルボ侯爵家の次女である。

重責を背負う長女や長男と違い自由に育てられたスナーチェは歯にきぬせぬ物言いをする子。

自由奔放に育て過ぎたのか、家はビルボ侯爵家という高位貴族というのも後押しになったかも知れないが思った事は相手が誰であろうと口にしてしまう。

注意をしてもまだ10歳にもならない子供で、言われた側も「子供だから」と侯爵家に忖度し流してしまった事もその後の大失敗を誘発した要因だろう。

王妃殿下の茶会に招かれた母親と共に出席をした姉妹。
母親と姉が挨拶に回っているのに疲れてしまったスナーチェは珍しい菓子のあるテーブルに向かった。

テーブルには先客がおり、スナーチェの席はここではないと女性従者に阻まれてしまった。

「年寄りが全部食べるなんて無理よ。今更可愛いお菓子を食べたって皺だらけの顔にハリが戻ると思ってるの?」

スナーチェの声に場が凍り付いた。
年寄り、皺だらけとスナーチェが指差しまでしてしまったのは先代王妃殿下。つまり王太后だった。

「ほほほ」とだけ笑った王太后だが、現役時代から美には余念がなかった女性。
加齢と共に衰えるのは仕方がないが、同年代よりは遥かに若くは見えたけれどスナーチェはズバリと言い放ってしまった。

王太后詫びようにも早々に中座をされてしまい、夫人と姉は茫然。
流石に子供が言った事だと言い訳も出来ず、大失態を犯したスナーチェは領地で再教育をすると父親が決定をした。



月日が経ち、そのままにしておくことも出来ず、スナーチェは父親がムウトン伯爵家のフェルメルと婚約を取り付けて来た。

「嫌よ。あんな毛むくじゃらの男なんて!」

当初スナーチェは17歳になったばかり。激しくフェルメルとの婚約を嫌がった。
フェルメルはスナーチェより少し年上で婚約当時は19歳。

スナーチェが嫌がったのは、フェルメルと言えば国内で知らない者はいないと言われるほどの「醜男」であり、そんなオプション要りませんから!と声を上げたくなるほど「濃い体毛」の持ち主だったから。

ムウトン伯爵家も残念にも程度がある!と言いたくなるフェルメルの見た目に早くからお相手探しをしていたのだが、なかなか相手が見つからない。釣り書きを開く前に名を聞いて断られる始末だった。

しかし、高位貴族の子息には婚約者がおり、残っているのはスカッドを始めとしてスナーチェと従兄弟関係にある者ばかり。近親婚が問題になりつつもあり、家格を考えれば次女であるスナーチェは伯爵家に嫁いでも問題ないだろうと父親が決めたのだった。

ムウトン家は羊毛を主産業とする家で取引は自国に留まらず他国にも手を広げ、フェルメルの父の代からは海の向こうにある大陸の国々にも出荷をしていた。その資産は王家にも匹敵するといわれる大富豪。

金は腐るほどある。贅沢はし放題。
子供を2、3人産んでくれればあとは好きにしてくれて構わない。

「閨は排卵日を狙って目を閉じていればいいから」と母親。
「子供を早くに産んでしまえば愛人を囲ってもいいそうだ」と父親。

両親の説得と、嫁探しに疲れたムウトン伯爵家からの要望を聞いたスナーチェは「なら、いいか」と承諾をした。


月に数千万の散財を50年繰り返しても、それを上回る収益のあるムウトン伯爵家。子供を早くに産んでしまえば育児は丸投げでいいし、見目の良い男と世界の各国へ旅行三昧でも文句を言われる事は無い。

――結婚は貴族の務め。それ以外が自由なら最高だわ――

スナーチェの天秤は見た目よりも実益に傾いた。それだけのこと。
珍しい事でもなんでもない。愛だけでは人は生きていけないのだからスナーチェの本意を知って咎める者などいなかった。
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