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第03話 過去のレティツィア④-②★婚約
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運が良いのか悪いのか。
レティツィアには6歳の時に婚約者が出来た。
婚約者となった男性はゲルハ伯爵。
婚約した時、レティツィアは6歳。
ゲルハ伯爵は47歳だった。
婚約をする年齢に制限はなくても結婚は男女とも17歳の日を迎えてからとなっていたため、10年以上の婚約期間となった。
年齢差は有るものの、このような縁談は珍しい事でもく一般的だった。
現国王がまだ即位も立太子もする以前から剣術の指導を行い、引退する時は専属であり筆頭の護衛騎士を務めたゲルハ伯爵は王家からの信頼も非常に厚く、繋がりが持てれば王家と侯爵家の関係もより密になる。そんな魂胆のある婚約だった。
変わった事と言えば通常は宿泊をするような事はあまりないのだがレティツィアはほぼ生活の拠点をゲルハ伯爵家に置いているような生活形態になった。
婚約者と言えど伯爵家に住まわせることは出来ないが、数日の宿泊なら可能。
ゲルハ伯爵は3日泊まらせ、1日返すとまた3日宿泊。ほぼ同居に等しいような宿泊をさせた。
当然理由がある。
6歳の子供なので大人の、しかも祖父といってもいいくらいの男性を目の前にして怯えるのは当然だろうと暫くは「良き保護者」であろうと接してきた。
婚約を結んで3か月目。
オドオドしていたレティツィアもゲルハ伯爵を「おじさま」と呼んで笑顔を向けてくれるようになった。
なので、もう一歩踏み込んで幼い婚約者にウサギの人形をプレゼントしようと考えた。
「おじさまっ!うさぎさん。ありがとう!」
「次は何がいいかな?クマさん?リスさんかな?」
「ううん。わたくし、この子だけでいいっ!」
ぬいぐるみどころか、母親から何も贈られた経験が無いレティツィア。
他の異母兄弟姉妹が大人から贈り物を貰っている事を知っていて、それがとても羨ましかったが母親に言えばもらえるのは躾用の鞭か平手。とても言い出せなかった。
ゲルハ伯爵家に呼ばれた時だけは、パンを千切る時にパラパラとパンくずが落ちても殴られないし、カトラリーの音をさせたら食事を取り上げられる事もない。
朝も「洗い物は済んだのか」と母親に蹴り起こされる事もなく昼前まで寝てしまっても怒られない。
ゲルハ伯爵は幼いレティツィアをとことん甘やかしてくれた。
だから初めて貰ったウサギのぬいぐるみに「ラビ」と名をつけてそれはそれは喜んだ。
外に出れば貴族の子供には誘拐の危険がある上に、庶子のレティツィアに護衛をつけて金を払うのを嫌がった侯爵は外出を禁止していた。
異母兄弟姉妹も母親の違う者同士が仲良くすることを侯爵は許さなかったので、レティツィアには年齢の近しい友人と呼べる人間もいなかった。
ウサギのぬいぐるみは初めての友達だったので、とても嬉しかったのだが、初めて貰ったレティツィアはぬいぐるみの扱い方が解らなかった。
出された茶をぬいぐるみに飲ませようとして溢してしまった。
「どうしよう。ごめんなさい!ごめんなさい!」
ゲルハ伯爵は驚いた。
レティツィアの謝り方は6歳の子供にしては異常だった。
顔色は真っ青、唇を震わせ、その場にしゃがみ込んで手で頭を覆い泣きながら謝るのだ。
「いいんだよ。溢したっていいんだ。先ずは着替えよう。いいね?」
「ごめんなさい!もう汚しません!ごめんなさい!」
「レティ。良いんだよ。さぁ、マーサと着替えておいで?」
剣一筋で結婚どころか子供もいないゲルハ伯爵は使用人に知恵を借りた。
伯爵家の侍女頭であるマーサにはレティツィアと年齢が同じくらいの孫がいるため、この年齢の子供は走り回って服を汚すのが当たり前と言われ、汚す事はないだろうと思いつつもレティツィア用に服も揃えていた。
着替えを待つゲルハ伯爵の元に従者がやって来て「見てくれ」と耳打ちをする。
まだ結婚をする前だ。
6歳とは言え女性の裸を見るのは忍びなかったが、連れて行かれた先でレティツィアを見たゲルハ伯爵は声を失った。
レティツィアの小さな体は服で見えない部分にのみ、赤や青、紫になった暴行の痕が色を残していて、背中やお尻には火傷の痕まであったのだ。
「なんて事を・・・この事は侯爵は知っているのか?」
「存じないと思われます。滅多に顔も見せないそうですから」
レティツィアが庶子であるがゆえに、本宅のように使用人に囲まれた生活でない事は知っていたゲルハ伯爵は直ぐにでも保護しようと考えたが、世間は世知辛い。
苦情を言っても侯爵家と伯爵家なら爵位の高い方が優遇され、暴行はないものとされるし、なにより婚約者と言えど服で見えない部分の体にある痕跡を知っていると言えば教会の教えに背いたとこの婚約は無くなってしまう。
この傷が原因で婚約が無くなったとなればさらに酷い折檻を受けるのは考えるまでもない。
許されている範囲の中で2,3日の宿泊が許されていたのでレティツィアをほぼ同居と言って過言ではない頻度で宿泊をさせるしかなかった。
レティツィアとゲルハ伯爵との関係は良好だった。
何れは妻になるけれどゲルハ伯爵は孫娘のようなレティツィアを可愛がってくれたし、最低限の衣食住しか与えてくれない父、気分で強弱があるだけの折檻を与える母親とは違ってレティツィアに貴族令嬢がすべき教育を与えてくれた。
レティツィアには6歳の時に婚約者が出来た。
婚約者となった男性はゲルハ伯爵。
婚約した時、レティツィアは6歳。
ゲルハ伯爵は47歳だった。
婚約をする年齢に制限はなくても結婚は男女とも17歳の日を迎えてからとなっていたため、10年以上の婚約期間となった。
年齢差は有るものの、このような縁談は珍しい事でもく一般的だった。
現国王がまだ即位も立太子もする以前から剣術の指導を行い、引退する時は専属であり筆頭の護衛騎士を務めたゲルハ伯爵は王家からの信頼も非常に厚く、繋がりが持てれば王家と侯爵家の関係もより密になる。そんな魂胆のある婚約だった。
変わった事と言えば通常は宿泊をするような事はあまりないのだがレティツィアはほぼ生活の拠点をゲルハ伯爵家に置いているような生活形態になった。
婚約者と言えど伯爵家に住まわせることは出来ないが、数日の宿泊なら可能。
ゲルハ伯爵は3日泊まらせ、1日返すとまた3日宿泊。ほぼ同居に等しいような宿泊をさせた。
当然理由がある。
6歳の子供なので大人の、しかも祖父といってもいいくらいの男性を目の前にして怯えるのは当然だろうと暫くは「良き保護者」であろうと接してきた。
婚約を結んで3か月目。
オドオドしていたレティツィアもゲルハ伯爵を「おじさま」と呼んで笑顔を向けてくれるようになった。
なので、もう一歩踏み込んで幼い婚約者にウサギの人形をプレゼントしようと考えた。
「おじさまっ!うさぎさん。ありがとう!」
「次は何がいいかな?クマさん?リスさんかな?」
「ううん。わたくし、この子だけでいいっ!」
ぬいぐるみどころか、母親から何も贈られた経験が無いレティツィア。
他の異母兄弟姉妹が大人から贈り物を貰っている事を知っていて、それがとても羨ましかったが母親に言えばもらえるのは躾用の鞭か平手。とても言い出せなかった。
ゲルハ伯爵家に呼ばれた時だけは、パンを千切る時にパラパラとパンくずが落ちても殴られないし、カトラリーの音をさせたら食事を取り上げられる事もない。
朝も「洗い物は済んだのか」と母親に蹴り起こされる事もなく昼前まで寝てしまっても怒られない。
ゲルハ伯爵は幼いレティツィアをとことん甘やかしてくれた。
だから初めて貰ったウサギのぬいぐるみに「ラビ」と名をつけてそれはそれは喜んだ。
外に出れば貴族の子供には誘拐の危険がある上に、庶子のレティツィアに護衛をつけて金を払うのを嫌がった侯爵は外出を禁止していた。
異母兄弟姉妹も母親の違う者同士が仲良くすることを侯爵は許さなかったので、レティツィアには年齢の近しい友人と呼べる人間もいなかった。
ウサギのぬいぐるみは初めての友達だったので、とても嬉しかったのだが、初めて貰ったレティツィアはぬいぐるみの扱い方が解らなかった。
出された茶をぬいぐるみに飲ませようとして溢してしまった。
「どうしよう。ごめんなさい!ごめんなさい!」
ゲルハ伯爵は驚いた。
レティツィアの謝り方は6歳の子供にしては異常だった。
顔色は真っ青、唇を震わせ、その場にしゃがみ込んで手で頭を覆い泣きながら謝るのだ。
「いいんだよ。溢したっていいんだ。先ずは着替えよう。いいね?」
「ごめんなさい!もう汚しません!ごめんなさい!」
「レティ。良いんだよ。さぁ、マーサと着替えておいで?」
剣一筋で結婚どころか子供もいないゲルハ伯爵は使用人に知恵を借りた。
伯爵家の侍女頭であるマーサにはレティツィアと年齢が同じくらいの孫がいるため、この年齢の子供は走り回って服を汚すのが当たり前と言われ、汚す事はないだろうと思いつつもレティツィア用に服も揃えていた。
着替えを待つゲルハ伯爵の元に従者がやって来て「見てくれ」と耳打ちをする。
まだ結婚をする前だ。
6歳とは言え女性の裸を見るのは忍びなかったが、連れて行かれた先でレティツィアを見たゲルハ伯爵は声を失った。
レティツィアの小さな体は服で見えない部分にのみ、赤や青、紫になった暴行の痕が色を残していて、背中やお尻には火傷の痕まであったのだ。
「なんて事を・・・この事は侯爵は知っているのか?」
「存じないと思われます。滅多に顔も見せないそうですから」
レティツィアが庶子であるがゆえに、本宅のように使用人に囲まれた生活でない事は知っていたゲルハ伯爵は直ぐにでも保護しようと考えたが、世間は世知辛い。
苦情を言っても侯爵家と伯爵家なら爵位の高い方が優遇され、暴行はないものとされるし、なにより婚約者と言えど服で見えない部分の体にある痕跡を知っていると言えば教会の教えに背いたとこの婚約は無くなってしまう。
この傷が原因で婚約が無くなったとなればさらに酷い折檻を受けるのは考えるまでもない。
許されている範囲の中で2,3日の宿泊が許されていたのでレティツィアをほぼ同居と言って過言ではない頻度で宿泊をさせるしかなかった。
レティツィアとゲルハ伯爵との関係は良好だった。
何れは妻になるけれどゲルハ伯爵は孫娘のようなレティツィアを可愛がってくれたし、最低限の衣食住しか与えてくれない父、気分で強弱があるだけの折檻を与える母親とは違ってレティツィアに貴族令嬢がすべき教育を与えてくれた。
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