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第04話 過去のレティツィア④-③★淡恋
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「おじさま。こんにちは。今日もお招き頂きありがとうございます」
「可愛い淑女だね。ようこそ当家にお越しくださいました」
ゲルハ伯爵家でほぼ寝泊まりをする事になったレティツィアの体からは2年もすれば傷跡はほぼ消えて見えにくくなった。
屋敷に戻る日も「これで何か美味しいものでも」とゲルハ伯爵が金を包んで渡すようになるとレティツィアの母親もレティツィアが戻る日に気分次第の折檻をする事も少なくなった。
無くなった訳ではないのが残念だが、それでも以前のように打ち据える事は無くなった。
傷跡がバレてしまえばただでは済まないと母親も理解はしているからだろう。
暖炉の火掻き棒を押し付けられた火傷だけは残ってしまったがレティツィアがもう痛みも感じる事はない古傷となったのが救いだった。
ゲルハ伯爵家にはレティツィアだけでなく、1人の少年も時折顔を見せるようになった。
少年と初めて出会ったのはレティツィアが9歳、少年は7歳だった。
初めて出会った日。レティツィアはゲルハ伯爵に隣国の書物を渡されて訳しながら読んでいた。
オドオドしながら従者と共にやって来た少年に退屈なお勉強がサボれる!!レティツィアはピョン!と椅子から飛ぶように降りると少年の元に駆け寄って手を握った。
「わたくしはレティツィアって言います。あなたのお名前は?」
「ぼ・・・僕は・・・アル…」
「アル?アルって呼んでいい?わたくしの事はレティって呼んでね」
「う、うん」
「そうだ!昨日はガルフ爺の畑にテントウムシがいたの!今日もいるかも?!行ってみる?」
「テントウムシ??やだ…僕、虫、怖い」
「何にもしないわよ。見るだけ。可愛いのよ?おじさまっ!帽子取ってくださる?」
「こら。勉強の途中だろう?」
「後でしまぁす!!こっちが先!テントウムシ逃げちゃうかもしれないもの!」
ゲルハ伯爵家に来た時は、少年のようにおどおどしていたレティツィアだったが3、4年も経てば年相応に、いやそれ以上に子供らしい子供の顔を見せるようにもなっていて、少年の手を引いて帽子も脱げかかりながら庭に走って行く。
「旦那様、宜しいのですか?」
「いいんじゃないか?殿下も教育ばかりでは息も詰まるだろう」
少年の名前はアルマンド。この国の第1王子だがゲルハ伯爵家にいる時はただの少年。
レティツィアと婚約をした頃にはもう引退をして後進に道を譲ったがゲルハ伯爵は国王の剣術指導をする師であり側近の護衛だった。
この年、第2王子が生まれたのだが懐妊中は問題が無かったのにアルマンドは奇行が目立つようになっていた。夜中に奇声をあげて走り出したり、講義の最中に窓から飛び出して池に飛び込んだこともある。
必死に勉強をしているかと思ったら本を破り紙を口に押し込んでしまったり。
その度に国王と王妃からは厳しく叱責をされる。次第に大人の顔色を伺うようになり王子としての資質を問う声も出てくる始末。
ゲルハ伯爵は国王から相談を受けてレティツィアとも年齢が近い事もあり引き受けたのだった。
ゲルハ伯爵家にいる時だけは「ただの子供」で居られた2人。
「違うよ!ここは ルォー!Rの発音が違うよ!」
「違わないもん!おじさま!これでいいんだもんね?」
子供の顔も見せるようになったアルマンドは暫く放棄していた勉強もレティツィアと机を並べて行うようになる。ゲルハ伯爵が呼んだ講師を2人で質問攻めにする事もあった。
そしていつしかアルマンドはレティツィアに恋をした。
ただ、それは子供のじゃれ合いの延長戦にあるようなものでアルマンド以外は誰も本気にはしていなかった。
「大きくなったらレティをお妃様にしてあげるよ」
「えぇーっ。やだぁ」
「なんでだよ!なんでも買ってやれるんだぞ?」
「違うわよ。そのお金は皆の税金でしょ。アルのお金じゃないわ」
「ちぇっ!でもレティの事は妃にするからな!もう決めたんだ!」
「残念でしたー。わたくしはおじさまの奥様になるの。伯爵夫人になるのはもう決まってるんだもーん」
「なんだよ!ズルいじゃないか!」
それもレティツィアが13歳、アルマンドも11歳となると直接言葉にもしなくなる。お互いを異性として見てしまった事もあるが、同時にお互いの立場も理解をしてしまったから。
立場を理解すると言葉を口にする事の重大さが2人を無口にさせた。
すっかり奇行はなりを潜め、王子と呼ぶに相応しいと言われるようになったアルマンド。ゲルハ伯爵家に来る事も少なくなった頃、ゲルハ伯爵も年齢によるものなのか体調を崩しがちになった。
「ごほっごほっ」
「おじさま。大丈夫?」
「あぁ…大丈夫だ。もう年だからな。神様も迎えの準備を始めたのかも知れん」
「そんな事を言わないで。わたくしを直ぐに寡婦にされるおつもりですの?」
「寡婦となっても困らない財は残してある。安心しなさい」
「何を仰るの。おじさまのいない生活は・・・嫌です」
「困り顔をしないでおくれ。私の可愛いレティ」
50歳を過ぎて儚くなれば大往生と言われる時代。
ゲルハ伯爵もレティツィアも別れの日が刻一刻と迫っている事は感じていた。
「可愛い淑女だね。ようこそ当家にお越しくださいました」
ゲルハ伯爵家でほぼ寝泊まりをする事になったレティツィアの体からは2年もすれば傷跡はほぼ消えて見えにくくなった。
屋敷に戻る日も「これで何か美味しいものでも」とゲルハ伯爵が金を包んで渡すようになるとレティツィアの母親もレティツィアが戻る日に気分次第の折檻をする事も少なくなった。
無くなった訳ではないのが残念だが、それでも以前のように打ち据える事は無くなった。
傷跡がバレてしまえばただでは済まないと母親も理解はしているからだろう。
暖炉の火掻き棒を押し付けられた火傷だけは残ってしまったがレティツィアがもう痛みも感じる事はない古傷となったのが救いだった。
ゲルハ伯爵家にはレティツィアだけでなく、1人の少年も時折顔を見せるようになった。
少年と初めて出会ったのはレティツィアが9歳、少年は7歳だった。
初めて出会った日。レティツィアはゲルハ伯爵に隣国の書物を渡されて訳しながら読んでいた。
オドオドしながら従者と共にやって来た少年に退屈なお勉強がサボれる!!レティツィアはピョン!と椅子から飛ぶように降りると少年の元に駆け寄って手を握った。
「わたくしはレティツィアって言います。あなたのお名前は?」
「ぼ・・・僕は・・・アル…」
「アル?アルって呼んでいい?わたくしの事はレティって呼んでね」
「う、うん」
「そうだ!昨日はガルフ爺の畑にテントウムシがいたの!今日もいるかも?!行ってみる?」
「テントウムシ??やだ…僕、虫、怖い」
「何にもしないわよ。見るだけ。可愛いのよ?おじさまっ!帽子取ってくださる?」
「こら。勉強の途中だろう?」
「後でしまぁす!!こっちが先!テントウムシ逃げちゃうかもしれないもの!」
ゲルハ伯爵家に来た時は、少年のようにおどおどしていたレティツィアだったが3、4年も経てば年相応に、いやそれ以上に子供らしい子供の顔を見せるようにもなっていて、少年の手を引いて帽子も脱げかかりながら庭に走って行く。
「旦那様、宜しいのですか?」
「いいんじゃないか?殿下も教育ばかりでは息も詰まるだろう」
少年の名前はアルマンド。この国の第1王子だがゲルハ伯爵家にいる時はただの少年。
レティツィアと婚約をした頃にはもう引退をして後進に道を譲ったがゲルハ伯爵は国王の剣術指導をする師であり側近の護衛だった。
この年、第2王子が生まれたのだが懐妊中は問題が無かったのにアルマンドは奇行が目立つようになっていた。夜中に奇声をあげて走り出したり、講義の最中に窓から飛び出して池に飛び込んだこともある。
必死に勉強をしているかと思ったら本を破り紙を口に押し込んでしまったり。
その度に国王と王妃からは厳しく叱責をされる。次第に大人の顔色を伺うようになり王子としての資質を問う声も出てくる始末。
ゲルハ伯爵は国王から相談を受けてレティツィアとも年齢が近い事もあり引き受けたのだった。
ゲルハ伯爵家にいる時だけは「ただの子供」で居られた2人。
「違うよ!ここは ルォー!Rの発音が違うよ!」
「違わないもん!おじさま!これでいいんだもんね?」
子供の顔も見せるようになったアルマンドは暫く放棄していた勉強もレティツィアと机を並べて行うようになる。ゲルハ伯爵が呼んだ講師を2人で質問攻めにする事もあった。
そしていつしかアルマンドはレティツィアに恋をした。
ただ、それは子供のじゃれ合いの延長戦にあるようなものでアルマンド以外は誰も本気にはしていなかった。
「大きくなったらレティをお妃様にしてあげるよ」
「えぇーっ。やだぁ」
「なんでだよ!なんでも買ってやれるんだぞ?」
「違うわよ。そのお金は皆の税金でしょ。アルのお金じゃないわ」
「ちぇっ!でもレティの事は妃にするからな!もう決めたんだ!」
「残念でしたー。わたくしはおじさまの奥様になるの。伯爵夫人になるのはもう決まってるんだもーん」
「なんだよ!ズルいじゃないか!」
それもレティツィアが13歳、アルマンドも11歳となると直接言葉にもしなくなる。お互いを異性として見てしまった事もあるが、同時にお互いの立場も理解をしてしまったから。
立場を理解すると言葉を口にする事の重大さが2人を無口にさせた。
すっかり奇行はなりを潜め、王子と呼ぶに相応しいと言われるようになったアルマンド。ゲルハ伯爵家に来る事も少なくなった頃、ゲルハ伯爵も年齢によるものなのか体調を崩しがちになった。
「ごほっごほっ」
「おじさま。大丈夫?」
「あぁ…大丈夫だ。もう年だからな。神様も迎えの準備を始めたのかも知れん」
「そんな事を言わないで。わたくしを直ぐに寡婦にされるおつもりですの?」
「寡婦となっても困らない財は残してある。安心しなさい」
「何を仰るの。おじさまのいない生活は・・・嫌です」
「困り顔をしないでおくれ。私の可愛いレティ」
50歳を過ぎて儚くなれば大往生と言われる時代。
ゲルハ伯爵もレティツィアも別れの日が刻一刻と迫っている事は感じていた。
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