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最終章☆それぞれの立ち位置(22話)
スザコーザ公爵家とのお食事
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架空、創作の話です。現実世界と混同しないようご注意ください。
この章は最終章となりますので第一章から第四章のインシュアの保険販売とは読んだ時の受け取り方(感じ方)が変わるかも知れません。
中間にあるライアル伯爵家日記に近いと思って頂いて構いません。
架空、創作の話です。現実世界と混同しないようご注意ください。
◇~◇~◇
※時間的にはライアル伯爵とベンジャーが署名捺印をした翌日の夕方です。
◇~◇~◇
「年を取るとこんな事ばかりね」
1人だけ柔らかめに仕上げられた肉を見て溢すのは先代スザコーザ公爵夫人。
和やかに話をしながら会員制のレストランで食事をしているのは先代スザコーザ公爵夫人とインシュア、そして現在のスザコーザ公爵とその夫人である。
先代スザコーザ公爵夫人はリンデバーグに夜会で保険販売員をしていると打ち明けるまで黙っていてくれた。今日の席にリンデバーグは遅れてくる事になっているが聊か遅れ過ぎである。
先日デヴュタントが開催されたとあって今日も、明日もどこも予約制のお店はいっぱいである。いつもなら店の中央に設けられた庭園からスズムシなどの虫の声が聞こえてくるのだが時折笑い声や子供の声が聞こえてくるのはデヴュタントをした子供を家族で祝っているのか、遠くから祝いに来た親類を王都観光がてらもてなしているのだろう。
「あなたも災難ね」
「もう慣れましたから」
そろそろ良い頃合いでもある。弟のマルクスも爵位を継いで山から天然黒鉛が出た事で付近の山も買い取ったのもあるが、スザコーザ公爵が間に立ってランス男爵家は2、3年後には飛び級で伯爵位を陞爵されるだろう。
下準備は終わった。
インシュアは数少ない夜会への出席でも結果的にライアル伯爵家が主導できるであろう事業は全て話を通した上で後は契約をするだけなのに即座に断ると言う相手にとってはプランや指針だけを提供する状況だったがこれも全てインシュアの思惑通りである。
「それで?いったいどうなっているんだ」
「どうもこうもないですわね。わたくしは自由になれる日を待つだけですから」
「最近では請求書払いはもう出来なくなったと聞きますわよ?職場にまで取り立てが来たとか来なかったとか。インシュアちゃんの所にも来たんじゃないの?」
「物を買えば支払いが生じますが、その辺りは念頭になかったんでしょうね。来ても追い返します。関係のない借金の支払いは出来ませんもの」
「しかし未だにあの水を売っているとはね。購入者がいないのが救いだが」
カバンから書類を取り出すと、インシュアの前に広げるスザコーザ公爵。
手に取ってみれば何の効能もないどころか、むしろそれで病気になるのではないかと思うほど水の中の成分だけでなく検出された生き物、生き物の残骸などが水質検査証明書に記載されていた。
「だが、この水を売っていたと言うだけでは厳重注意が限界だ」
「あなた、どうしてですの?こんなに危険そうな水ですのに」
「売り方だよ。桶などをセットにしていた時は桶の成分云々というのは口頭だから言った言わないになって立証が難しい上に、この張り紙にしたうたい文句。あの頭でよく考えたと思うよ」
【罹患する前なら予防薬として。発症したら治療薬として。あなたの気持ちを穏かにする高効能水】
パラリと古びたチラシも広げる。10年以上前なのに残っているのに感心する。
「前半の文句だけならアウトなんだが、後半があるからな。予防薬と思って飲めば、治療薬と思って飲めばとも読めなくもない。治療薬として気持ちを穏かにする…だからな。治療薬として効果があるとは書いてないのが意見の割れるところだ。基本裁判は疑わしきは罰せずだし、現在在庫である分も使用期限が過ぎてしまっているから虫が湧いたとか…まぁ製品回収の罰金刑が関の山。ここ数年1本も売れてないから罰金刑も微妙なラインだ」
「悪知恵だけは回るのよ。ライアル伯爵は。昔からそう」
先代スザコーザ公爵夫人がぼやき気味に吐き捨てる。
インシュアとしてはライアル伯爵家がどうなろうと問題はない。
弟には投資をしたが、家を借りて生活する分は残っているし保険販売員をあと3年は辞めるつもりがない。
「ところであの家――」
スザコーザ公爵が言いかけた時、ドアが開きリンデバーグが入ってきた。
既に皿が進んでいる事に額を押さえ、給仕にまとめてでもいいから追いつくように持ってきてくれと頼んでいる事に先代スザコーザ公爵夫人が「食いしん坊は大人になっても治らない」とまたぼやいた。
ドカリと座るとリンデバーグはムッとしている。
少し乱暴気味に書類をテーブルの空いた部分に置くと、兄のスザコーザ公爵が手に取った。
隣で夫人がオホホと笑いながら行儀が悪いのを承知で覗き込む。
「インシュア。ヨハンって子はなんだ?調べたがランス男爵家にそんな子はいないだろう」
先代スザコーザ公爵夫人が肉を切るナイフを止めた。
インシュアもナイフとフォークの手を止めた。
「お父様のいとこの子供の子供…という事で、わたくしがあの男に泣いて縋って学院に通わせてくれ、学費の援助をしてくれと頼んだ子・・・・・だそうですわ。情報がやっと回りましたわね。大変に僥倖ですわ」
「違うんだろう?他人だろうが!いくら田舎者でもこの成績を取るなんて神業だ」
先代スザコーザ公爵夫人だけは知っているのだが、他の3人はヨハンがどういう立ち位置なのかを知らない。インシュアはちらりとリンデバーグを見て「ふふっ」っと笑った。
「その子の父親はお飾り夫のベンジャー、母親は10年来いえ、もう15年来と言った方が良いかしら。使用人のメイサという女よ。その子に爵位を譲るための養子縁組。そのためにわたくしと結婚をしたそうよ」
「なっ!なんだって!お前それを了承したのかっ!」
「あの当時はまだライアル伯爵家に資産がありましたし、父とマルクスを人質に取られたようなものでしたから。わたくしも離れに追いやられ行動を監視されてましたし、手紙すら検閲。なのに伯爵夫人の仕事はしろと夜会の参加。ですからそれを利用させてもらう事にしましたの」
「利用って…スザコーザ公爵家は全面的に支援したぞ」
「そうだ。言ってくれればなんだって手助けをした」
「いいえ。公爵家の傘下では弟が義を感じてしまいます。運よく天然黒鉛が出たからよかったもののそうでなければマルクスがランス男爵家を継いでもずっと監視下に置かれますから先ずは資金を蓄えようと思いましたのよ。10年働けばマルクスを少し助ける分は稼げると踏みましたから。
それに伯爵夫人としての仕事もちゃんとしましたの。夜会で各貴族にライアル伯爵家を介してランス男爵家の名を売る。貸しだけになった貴族の幾つかは弟に力を貸してくれるでしょう。現に発掘調査の際はスザコーザ公爵家との共同事業ですが、資金として4つの家から融資を無利子、無担保でして頂いておりますもの」
「なるほどな。保険販売員として鳴かず飛ばすでも弟の経営は軌道に乗せるという事か」
「結果的に双方が上手く行っただけですわ。そしてヨハンはランス男爵家となんの関係もない子。ですがライアル伯爵家が自らランス男爵家の遠戚の子だと宣伝をしてくれているのです。そりゃわたくしの子には出来ませんものね。今だって結婚7年目なのに10歳の子だなんて。学院の初等科に本当に入った事を知った時はお飾り夫の頭は本物のお飾りだったのか、音がするのではと思いましたわ」
「お前まさか…」
「ふふっ‥まさに棚から牡丹餅ってこの事ね」
「終わってるのか。黒すぎるだろ‥‥だから嫁に行けないんだ」
「あら?一応人妻ですけど?この立場が大事なのよ。失礼ね」
「しかし…こんな成績の子をどうする?爆弾抱えるようなもんだ。孤児院も断るレベルだぞ」
「先日2回目になるけどその子を見たの。どうかなぁと思ったけど切り離しは何時でも出来るから予定通りで行くつもり。その前にライアル伯爵家が飛ぶような事になればもっと早く自由になれるんだけど最短であと1週間は何事もなく大人しくしてほしいわね。でもその時はリンデバーグ、よろしくね」
「えっ?俺?マジか‥‥断る選択肢は――」
「断る?わたくしが言ってるのはライアル伯爵家が飛んだらよろしくねという事よ。リンデバーグはあの子にとってのセーフティネットをしてくれればいいだけよ」
「はいはい。また書類の山かぁ。もう介抱してくれぇ」
「そこまで隠すという事はメイサという女は平民なんだろう?あの顔だけ男が平民との間に子を作ってるならその時点で顔だけ男は平民だ。ライアル伯爵家から籍を抜かねばならん。結婚そのものが白紙になるだろう。ライアル伯爵家に後継ぎがいなくなるだけの話だ。
あと、不味い事に足を突っ込んでるな。こちらとしては根から枯らす絶好の機会を作ってくれた感もある」
「ケルベロスお兄様、間違ってますわ。ライアル伯爵家はちゃんとお飾り夫が継いでますわ。それに…やられっ放しは嫌じゃない?何をするにしても順番があるんですわ。
さっさとメイサと子供の事をどこかでちょっと囁くだけで薄い氷は割れてドボーン!だけどそうなると、やられ損じゃない。そんなの真っ平ごめんだもの。
ケルベロスお兄様もあと1週間は様子を見て欲しいわ。静かに過ごすのも大事じゃない?静かにしてれば獲物は誰もいないと罠にガッツリ嵌るものよ。気配がすると逃げちゃうから」
「まぁ調査を始めた所だから2、3か月はかかるだろうな」
「良かった。それだけあれば先代伯爵の引っ越しも終わりそうね。メイサって人にうんざりしてるからさっさと出て行くでしょうけど荷物が多そう。新居の床が抜けなければいいんだけど。お飾り夫も退職願を出さないと両立は無理でしょうしね。みんな身軽になって万々歳ね」
「お飾り夫には情すらないのか?」
「それを無にしたのは向こう。1週間後ならいつ飛んでくれてもいいんだけど。ふふっ」
<< 怖っ!! >>
ケルベロスは悪い微笑のインシュアと美味しそうにデザートを頬張る妻を見比べてホッとするのだった。
この章は最終章となりますので第一章から第四章のインシュアの保険販売とは読んだ時の受け取り方(感じ方)が変わるかも知れません。
中間にあるライアル伯爵家日記に近いと思って頂いて構いません。
架空、創作の話です。現実世界と混同しないようご注意ください。
◇~◇~◇
※時間的にはライアル伯爵とベンジャーが署名捺印をした翌日の夕方です。
◇~◇~◇
「年を取るとこんな事ばかりね」
1人だけ柔らかめに仕上げられた肉を見て溢すのは先代スザコーザ公爵夫人。
和やかに話をしながら会員制のレストランで食事をしているのは先代スザコーザ公爵夫人とインシュア、そして現在のスザコーザ公爵とその夫人である。
先代スザコーザ公爵夫人はリンデバーグに夜会で保険販売員をしていると打ち明けるまで黙っていてくれた。今日の席にリンデバーグは遅れてくる事になっているが聊か遅れ過ぎである。
先日デヴュタントが開催されたとあって今日も、明日もどこも予約制のお店はいっぱいである。いつもなら店の中央に設けられた庭園からスズムシなどの虫の声が聞こえてくるのだが時折笑い声や子供の声が聞こえてくるのはデヴュタントをした子供を家族で祝っているのか、遠くから祝いに来た親類を王都観光がてらもてなしているのだろう。
「あなたも災難ね」
「もう慣れましたから」
そろそろ良い頃合いでもある。弟のマルクスも爵位を継いで山から天然黒鉛が出た事で付近の山も買い取ったのもあるが、スザコーザ公爵が間に立ってランス男爵家は2、3年後には飛び級で伯爵位を陞爵されるだろう。
下準備は終わった。
インシュアは数少ない夜会への出席でも結果的にライアル伯爵家が主導できるであろう事業は全て話を通した上で後は契約をするだけなのに即座に断ると言う相手にとってはプランや指針だけを提供する状況だったがこれも全てインシュアの思惑通りである。
「それで?いったいどうなっているんだ」
「どうもこうもないですわね。わたくしは自由になれる日を待つだけですから」
「最近では請求書払いはもう出来なくなったと聞きますわよ?職場にまで取り立てが来たとか来なかったとか。インシュアちゃんの所にも来たんじゃないの?」
「物を買えば支払いが生じますが、その辺りは念頭になかったんでしょうね。来ても追い返します。関係のない借金の支払いは出来ませんもの」
「しかし未だにあの水を売っているとはね。購入者がいないのが救いだが」
カバンから書類を取り出すと、インシュアの前に広げるスザコーザ公爵。
手に取ってみれば何の効能もないどころか、むしろそれで病気になるのではないかと思うほど水の中の成分だけでなく検出された生き物、生き物の残骸などが水質検査証明書に記載されていた。
「だが、この水を売っていたと言うだけでは厳重注意が限界だ」
「あなた、どうしてですの?こんなに危険そうな水ですのに」
「売り方だよ。桶などをセットにしていた時は桶の成分云々というのは口頭だから言った言わないになって立証が難しい上に、この張り紙にしたうたい文句。あの頭でよく考えたと思うよ」
【罹患する前なら予防薬として。発症したら治療薬として。あなたの気持ちを穏かにする高効能水】
パラリと古びたチラシも広げる。10年以上前なのに残っているのに感心する。
「前半の文句だけならアウトなんだが、後半があるからな。予防薬と思って飲めば、治療薬と思って飲めばとも読めなくもない。治療薬として気持ちを穏かにする…だからな。治療薬として効果があるとは書いてないのが意見の割れるところだ。基本裁判は疑わしきは罰せずだし、現在在庫である分も使用期限が過ぎてしまっているから虫が湧いたとか…まぁ製品回収の罰金刑が関の山。ここ数年1本も売れてないから罰金刑も微妙なラインだ」
「悪知恵だけは回るのよ。ライアル伯爵は。昔からそう」
先代スザコーザ公爵夫人がぼやき気味に吐き捨てる。
インシュアとしてはライアル伯爵家がどうなろうと問題はない。
弟には投資をしたが、家を借りて生活する分は残っているし保険販売員をあと3年は辞めるつもりがない。
「ところであの家――」
スザコーザ公爵が言いかけた時、ドアが開きリンデバーグが入ってきた。
既に皿が進んでいる事に額を押さえ、給仕にまとめてでもいいから追いつくように持ってきてくれと頼んでいる事に先代スザコーザ公爵夫人が「食いしん坊は大人になっても治らない」とまたぼやいた。
ドカリと座るとリンデバーグはムッとしている。
少し乱暴気味に書類をテーブルの空いた部分に置くと、兄のスザコーザ公爵が手に取った。
隣で夫人がオホホと笑いながら行儀が悪いのを承知で覗き込む。
「インシュア。ヨハンって子はなんだ?調べたがランス男爵家にそんな子はいないだろう」
先代スザコーザ公爵夫人が肉を切るナイフを止めた。
インシュアもナイフとフォークの手を止めた。
「お父様のいとこの子供の子供…という事で、わたくしがあの男に泣いて縋って学院に通わせてくれ、学費の援助をしてくれと頼んだ子・・・・・だそうですわ。情報がやっと回りましたわね。大変に僥倖ですわ」
「違うんだろう?他人だろうが!いくら田舎者でもこの成績を取るなんて神業だ」
先代スザコーザ公爵夫人だけは知っているのだが、他の3人はヨハンがどういう立ち位置なのかを知らない。インシュアはちらりとリンデバーグを見て「ふふっ」っと笑った。
「その子の父親はお飾り夫のベンジャー、母親は10年来いえ、もう15年来と言った方が良いかしら。使用人のメイサという女よ。その子に爵位を譲るための養子縁組。そのためにわたくしと結婚をしたそうよ」
「なっ!なんだって!お前それを了承したのかっ!」
「あの当時はまだライアル伯爵家に資産がありましたし、父とマルクスを人質に取られたようなものでしたから。わたくしも離れに追いやられ行動を監視されてましたし、手紙すら検閲。なのに伯爵夫人の仕事はしろと夜会の参加。ですからそれを利用させてもらう事にしましたの」
「利用って…スザコーザ公爵家は全面的に支援したぞ」
「そうだ。言ってくれればなんだって手助けをした」
「いいえ。公爵家の傘下では弟が義を感じてしまいます。運よく天然黒鉛が出たからよかったもののそうでなければマルクスがランス男爵家を継いでもずっと監視下に置かれますから先ずは資金を蓄えようと思いましたのよ。10年働けばマルクスを少し助ける分は稼げると踏みましたから。
それに伯爵夫人としての仕事もちゃんとしましたの。夜会で各貴族にライアル伯爵家を介してランス男爵家の名を売る。貸しだけになった貴族の幾つかは弟に力を貸してくれるでしょう。現に発掘調査の際はスザコーザ公爵家との共同事業ですが、資金として4つの家から融資を無利子、無担保でして頂いておりますもの」
「なるほどな。保険販売員として鳴かず飛ばすでも弟の経営は軌道に乗せるという事か」
「結果的に双方が上手く行っただけですわ。そしてヨハンはランス男爵家となんの関係もない子。ですがライアル伯爵家が自らランス男爵家の遠戚の子だと宣伝をしてくれているのです。そりゃわたくしの子には出来ませんものね。今だって結婚7年目なのに10歳の子だなんて。学院の初等科に本当に入った事を知った時はお飾り夫の頭は本物のお飾りだったのか、音がするのではと思いましたわ」
「お前まさか…」
「ふふっ‥まさに棚から牡丹餅ってこの事ね」
「終わってるのか。黒すぎるだろ‥‥だから嫁に行けないんだ」
「あら?一応人妻ですけど?この立場が大事なのよ。失礼ね」
「しかし…こんな成績の子をどうする?爆弾抱えるようなもんだ。孤児院も断るレベルだぞ」
「先日2回目になるけどその子を見たの。どうかなぁと思ったけど切り離しは何時でも出来るから予定通りで行くつもり。その前にライアル伯爵家が飛ぶような事になればもっと早く自由になれるんだけど最短であと1週間は何事もなく大人しくしてほしいわね。でもその時はリンデバーグ、よろしくね」
「えっ?俺?マジか‥‥断る選択肢は――」
「断る?わたくしが言ってるのはライアル伯爵家が飛んだらよろしくねという事よ。リンデバーグはあの子にとってのセーフティネットをしてくれればいいだけよ」
「はいはい。また書類の山かぁ。もう介抱してくれぇ」
「そこまで隠すという事はメイサという女は平民なんだろう?あの顔だけ男が平民との間に子を作ってるならその時点で顔だけ男は平民だ。ライアル伯爵家から籍を抜かねばならん。結婚そのものが白紙になるだろう。ライアル伯爵家に後継ぎがいなくなるだけの話だ。
あと、不味い事に足を突っ込んでるな。こちらとしては根から枯らす絶好の機会を作ってくれた感もある」
「ケルベロスお兄様、間違ってますわ。ライアル伯爵家はちゃんとお飾り夫が継いでますわ。それに…やられっ放しは嫌じゃない?何をするにしても順番があるんですわ。
さっさとメイサと子供の事をどこかでちょっと囁くだけで薄い氷は割れてドボーン!だけどそうなると、やられ損じゃない。そんなの真っ平ごめんだもの。
ケルベロスお兄様もあと1週間は様子を見て欲しいわ。静かに過ごすのも大事じゃない?静かにしてれば獲物は誰もいないと罠にガッツリ嵌るものよ。気配がすると逃げちゃうから」
「まぁ調査を始めた所だから2、3か月はかかるだろうな」
「良かった。それだけあれば先代伯爵の引っ越しも終わりそうね。メイサって人にうんざりしてるからさっさと出て行くでしょうけど荷物が多そう。新居の床が抜けなければいいんだけど。お飾り夫も退職願を出さないと両立は無理でしょうしね。みんな身軽になって万々歳ね」
「お飾り夫には情すらないのか?」
「それを無にしたのは向こう。1週間後ならいつ飛んでくれてもいいんだけど。ふふっ」
<< 怖っ!! >>
ケルベロスは悪い微笑のインシュアと美味しそうにデザートを頬張る妻を見比べてホッとするのだった。
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