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第51話 黒歴史は染み抜きしたい
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「アリア。探したんだ。何処にいたんだよ。会いたかった」
飛び出してきた男はショーンだった。
アリアは気持ち悪さしか感じなかった。
あんなに好きだったのに。ショーンが望んだら純潔だって差し出しても良い。以前はそこまでショーンの事が大好きだった。
ショーンが下っ端の騎士だったのも知っていたので安い給料から玩具のような、屋台で売っているような、そんな指輪を渡された時は心から価格ではなく気持ちだからとアリアにとって値の付けられない思いが籠っていると信じ喜びに打ち震えた。
ショーンが大事な父の形見の工具を壊した時も。
雨の中数時間大事な用件を後回しにしてずぶ濡れになって待ちぼうけ。
「そんなところに置いておくなよ。謝ればいいんだろ」「忘れてた、ごめん」ヘラヘラと薄ら笑いすら浮かべた気持ちのない謝罪でも許してきた。
今はショーンと過ごした時間全てがアリアの黒歴史だ。
真っ黒いインクをぶっかけて塗り潰してしまいたい。出来る事ならなかった事として根気強く染み抜きをして真っ白だった頃に戻りたい。
抱きしめる腕。あの事実を知る前ならアリアは嬉しくて泣いてしまっただろう。
今は得体のしれない刺激臭に目が痛くって、涙が出てしまいそうだ。
「アリア。俺たち1から頑張ろう。アリアが頑張って働いてくれたら俺たちやっていけるよ」
――は?何言ってんの?――
「俺は仕事もないけど…家の事をするよ。家事は出来ないから一緒に頑張ろう」
――それって結局私にやれって言ってるのよね?――
「借金があっても報奨金を当てればいいし、アリアが修復師の仕事をすればやって行ける。俺たちは今まで通り、いや、今まで以上に幸せになれるんだ。あの時は直ぐに返事が出来なくてごめん。借金も俺を困らさないようにって考えてくれてたんだよな。愛しているからそう考えてたんだよな。なのに俺、驚き過ぎて考えが纏まらなかったんだ。判ってくれるだろう?」
――解りたくもないわね。なんなのその花畑思考は――
「もういいから。言い訳はそれだけ?手を放して!」
「嫌だ。聞いたよ。無理やり結婚させられるんだろう?逃げよう?俺と一緒にどこまでも逃げよう」
「無理やりなんて誰が言ったの!」
「この晩餐会は未婚の公爵子息か侯爵の相手を押し付ける場だ。アリアには俺がいる。俺が守る」
「何を訳の判らない事を言ってるのよ!離してったら!」
「あぁ。俺の事を思って言ってるんだよな。俺なら大丈夫だ。アリアが家を引き払ったあと、色んな男に弄ばれて汚されていても俺は気にしない。愛があればそんなもの取るに足らない問題だ」
――失礼ね!今でも身綺麗だわよ!一緒にしないで――
ダリウスはショーンを斬って捨てようと剣を構えたが、アリアが「離して!」とジタバタ暴れ始めたので右によろよろ、左によろよろ、くるっと回ったりするので狙いが定まらない。
うっかり剣を怒りに任せて振り下ろせばアリアを斬ってしまう可能性もある。
どうしようかと考え、ダリウスは一呼吸おいて息を大きく吸い込んだ。
「アリーッ!動くなァーッ!!」
「え?」
アリアの動きがピタリと止まる。突然の大声にショーンも動きを止めた。
刹那、アリアとショーンの顔の中間にダリウスの剣がピタリと止まる。
「あわわわ‥‥」
目を丸くしたショーンは後ろによろめき、アリアから手を離すと尻もちをついた。ダリウスは開いた手でアリアの腕を掴んで引き寄せ、胸に抱いた。
「大丈夫だったか?」
「うん。大きな声にびっくりしちゃったけど」
「すまない。後でその件はたっぷりと誠意を込めて謝罪する」
「た、たっぷりは要らないかな…」
「いいや。驚かせてしまったのは私の過失だ。許してくれるまで耳元で愛の言葉を囁くよ」
「許す!許します!はい、許した!」
「ふふっ。可愛いな。でもまだ許さないでくれ。朝まで囁きたいんだ」
――寝るし。爆睡するし――
ダリウスが優しい声でアリアに語っている間に、尻もちをついたショーンは兵士に捕縛されてしまった。
「アリア!その男から離れろ!」
喚くがダリウスがアリアを抱く手に力を入れ、アリアも離れる気がないと見るや否やペッと唾を吐いた。
「そうか、判ったぞ。その男と前からデキてたんだな?俺の愛を弄びやがって!この売女!侯爵、教えてやるよ。その女は色んな男に弄ばれたヨゴレだ。そんなのが良いなんて変わってんな?もしかして侯爵は性病持ちか?相手がいないから独り身なんて言われてただけか?アハハハ!お似合――ガハッ」
ショーンの口はダリウスの剣によって塞がれた。
表情なくダリウスはショーンを見下ろし問う。
「突きか左右への払い。どっちがいい?」
飛び出してきた男はショーンだった。
アリアは気持ち悪さしか感じなかった。
あんなに好きだったのに。ショーンが望んだら純潔だって差し出しても良い。以前はそこまでショーンの事が大好きだった。
ショーンが下っ端の騎士だったのも知っていたので安い給料から玩具のような、屋台で売っているような、そんな指輪を渡された時は心から価格ではなく気持ちだからとアリアにとって値の付けられない思いが籠っていると信じ喜びに打ち震えた。
ショーンが大事な父の形見の工具を壊した時も。
雨の中数時間大事な用件を後回しにしてずぶ濡れになって待ちぼうけ。
「そんなところに置いておくなよ。謝ればいいんだろ」「忘れてた、ごめん」ヘラヘラと薄ら笑いすら浮かべた気持ちのない謝罪でも許してきた。
今はショーンと過ごした時間全てがアリアの黒歴史だ。
真っ黒いインクをぶっかけて塗り潰してしまいたい。出来る事ならなかった事として根気強く染み抜きをして真っ白だった頃に戻りたい。
抱きしめる腕。あの事実を知る前ならアリアは嬉しくて泣いてしまっただろう。
今は得体のしれない刺激臭に目が痛くって、涙が出てしまいそうだ。
「アリア。俺たち1から頑張ろう。アリアが頑張って働いてくれたら俺たちやっていけるよ」
――は?何言ってんの?――
「俺は仕事もないけど…家の事をするよ。家事は出来ないから一緒に頑張ろう」
――それって結局私にやれって言ってるのよね?――
「借金があっても報奨金を当てればいいし、アリアが修復師の仕事をすればやって行ける。俺たちは今まで通り、いや、今まで以上に幸せになれるんだ。あの時は直ぐに返事が出来なくてごめん。借金も俺を困らさないようにって考えてくれてたんだよな。愛しているからそう考えてたんだよな。なのに俺、驚き過ぎて考えが纏まらなかったんだ。判ってくれるだろう?」
――解りたくもないわね。なんなのその花畑思考は――
「もういいから。言い訳はそれだけ?手を放して!」
「嫌だ。聞いたよ。無理やり結婚させられるんだろう?逃げよう?俺と一緒にどこまでも逃げよう」
「無理やりなんて誰が言ったの!」
「この晩餐会は未婚の公爵子息か侯爵の相手を押し付ける場だ。アリアには俺がいる。俺が守る」
「何を訳の判らない事を言ってるのよ!離してったら!」
「あぁ。俺の事を思って言ってるんだよな。俺なら大丈夫だ。アリアが家を引き払ったあと、色んな男に弄ばれて汚されていても俺は気にしない。愛があればそんなもの取るに足らない問題だ」
――失礼ね!今でも身綺麗だわよ!一緒にしないで――
ダリウスはショーンを斬って捨てようと剣を構えたが、アリアが「離して!」とジタバタ暴れ始めたので右によろよろ、左によろよろ、くるっと回ったりするので狙いが定まらない。
うっかり剣を怒りに任せて振り下ろせばアリアを斬ってしまう可能性もある。
どうしようかと考え、ダリウスは一呼吸おいて息を大きく吸い込んだ。
「アリーッ!動くなァーッ!!」
「え?」
アリアの動きがピタリと止まる。突然の大声にショーンも動きを止めた。
刹那、アリアとショーンの顔の中間にダリウスの剣がピタリと止まる。
「あわわわ‥‥」
目を丸くしたショーンは後ろによろめき、アリアから手を離すと尻もちをついた。ダリウスは開いた手でアリアの腕を掴んで引き寄せ、胸に抱いた。
「大丈夫だったか?」
「うん。大きな声にびっくりしちゃったけど」
「すまない。後でその件はたっぷりと誠意を込めて謝罪する」
「た、たっぷりは要らないかな…」
「いいや。驚かせてしまったのは私の過失だ。許してくれるまで耳元で愛の言葉を囁くよ」
「許す!許します!はい、許した!」
「ふふっ。可愛いな。でもまだ許さないでくれ。朝まで囁きたいんだ」
――寝るし。爆睡するし――
ダリウスが優しい声でアリアに語っている間に、尻もちをついたショーンは兵士に捕縛されてしまった。
「アリア!その男から離れろ!」
喚くがダリウスがアリアを抱く手に力を入れ、アリアも離れる気がないと見るや否やペッと唾を吐いた。
「そうか、判ったぞ。その男と前からデキてたんだな?俺の愛を弄びやがって!この売女!侯爵、教えてやるよ。その女は色んな男に弄ばれたヨゴレだ。そんなのが良いなんて変わってんな?もしかして侯爵は性病持ちか?相手がいないから独り身なんて言われてただけか?アハハハ!お似合――ガハッ」
ショーンの口はダリウスの剣によって塞がれた。
表情なくダリウスはショーンを見下ろし問う。
「突きか左右への払い。どっちがいい?」
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