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第52話 危険を察知したけれど
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廊下のどこかで騒ぎが起きているような声がしてエレーナの兄と兄嫁が控室の扉を開けて外の様子を伺うも何も見えず終い。
早足で通り過ぎる城の従者を呼び止めて「何かあったのだろうか」と問うも「私は文書係なので」「私は清掃係なので」と欲しい答えは返してくれなかった。
兵士が3人または5人の組で目の前を去っていくけれど呼び止められる雰囲気でもなく。
「何かあれば誰かが来る。放っておけ」
ブーレ伯爵は控室にあるソファの背もたれに両手を広げて座り心地を確認しながら外の事など放っておけとまるで関心がない。
伸るか反るかの大博打。ここで委縮してしまったら何にもならないとブーレ伯爵は威勢よく、強く少々のことでは動じないと自分に言い聞かせ、鼓舞しないと気持ちを保っていられなかった。
気持ちはエレーナの妊娠は間違いないにしても、その先の行動がおかし過ぎる。
本当にエストス侯爵の子なのであれば堂々としていればいいのに、問題行動ばかりとるエレーナにまさかと思うが?と、ブーレ伯爵は2つのまさかを思い描いていた。
1つはブーレ伯爵たちが妊娠を知るずっと前にエレーナはもう妊娠に気が付いていて、エストス侯爵と関係を持ったとしてもそれはエレーナ自身が妊娠に気が付いた後なのではないか。
もう1つはエストス侯爵もエレーナの妊娠は既に知っているが、闇商会を通じ堕胎をするための金をエレーナに渡し、2人の間ではもう話が付いているのではないか。
そしてエレーナは堕胎費用としてもらった金を遊びに使ってしまい、堕胎が出来なくなった。妊娠はいずれバレてしまう。隠しても子供は生まれてしまうからだ。
我が娘エレーナは堕胎で話がついているのに、金が無くなった事で今度は子供を盾にして侯爵夫人の座を狙っているのではないか。
ブーレ伯爵としてはどっちも最悪な想定としながらも心のどこかで、後者であればごり押し出来なくもない。そう考えていた。
外の騒ぎは静まり少しした頃、王宮の従者がブーレ伯爵一家の待つ部屋にやって来た。
「会場までご案内いたします。入室は先ず当主である伯爵、続いて夫人、その後に次期伯爵ご夫妻でお願いいたします。エレーナ様におかれましては全員が揃った後、ご入室いただきます」
「承知いたしました」
ブーレ伯爵が従者に答えると夫人も兄夫婦も立ち上がったが、エレーナは立ち上がれなかった。
「どうされました?申し訳ございませんがご気分が悪くても王族の方々全員が揃っておられますので、這ってでもご入場頂きます」
余りにも冷たい物言いにブーレ伯爵もギョッとしたが、それもそうかと直ぐに思い至った。
王太子の成婚の儀ですら数人の叔父、叔母に当たる元王子、王女は出席が出来なかった。
今回は10日しか日がない。遠方に住んでいて物理的に来るのが困難な場合は日頃から命を受けて王都にあるタウンハウスを取り仕切る代行が出席をしている。
当人への連絡が届くのは晩餐会が終わって2,3か月後だとしても、国王から勅命を受けた場合と同様の措置が取られているのだ。
四肢が腐り落ちていても行かない、行けない、そんな選択肢は残されていなかった。
「こちらで御座います」
案内をされた先にある扉から、名前を呼ばれ順に入室していくが誰一人としてブーレ伯爵一家に視線を向ける者はいなかった。
頼みの綱とブーレ伯爵は王弟に視線を向けた。一瞬視線があった気がしたが氷塊のように冷たい視線で面会をした時のような気安さは一切感じられなかった。
「どうぞ」
手で席を示される。
ブーレ伯爵は「え?」小さく声が漏れた。
そこにはテーブルしかなくて、椅子は見当たらなかった。
戸惑うのも致し方ない。次期伯爵である息子が「父上、どういう事です?」と問うがブーレ伯爵にだって意味が判らずどうしていいか解らない。
そうこうしていると、数人の男性が立ち上がり、ブーレ伯爵一家と向かい合うように並んだ。その数は5人。
「ではブーレ伯爵家、エレーナ様にご入室頂きます」
ブーレ伯爵は何が起きるのか、そして何故テーブルだけで椅子が無い場に並ばされているのかを察知し足が震えた。
早足で通り過ぎる城の従者を呼び止めて「何かあったのだろうか」と問うも「私は文書係なので」「私は清掃係なので」と欲しい答えは返してくれなかった。
兵士が3人または5人の組で目の前を去っていくけれど呼び止められる雰囲気でもなく。
「何かあれば誰かが来る。放っておけ」
ブーレ伯爵は控室にあるソファの背もたれに両手を広げて座り心地を確認しながら外の事など放っておけとまるで関心がない。
伸るか反るかの大博打。ここで委縮してしまったら何にもならないとブーレ伯爵は威勢よく、強く少々のことでは動じないと自分に言い聞かせ、鼓舞しないと気持ちを保っていられなかった。
気持ちはエレーナの妊娠は間違いないにしても、その先の行動がおかし過ぎる。
本当にエストス侯爵の子なのであれば堂々としていればいいのに、問題行動ばかりとるエレーナにまさかと思うが?と、ブーレ伯爵は2つのまさかを思い描いていた。
1つはブーレ伯爵たちが妊娠を知るずっと前にエレーナはもう妊娠に気が付いていて、エストス侯爵と関係を持ったとしてもそれはエレーナ自身が妊娠に気が付いた後なのではないか。
もう1つはエストス侯爵もエレーナの妊娠は既に知っているが、闇商会を通じ堕胎をするための金をエレーナに渡し、2人の間ではもう話が付いているのではないか。
そしてエレーナは堕胎費用としてもらった金を遊びに使ってしまい、堕胎が出来なくなった。妊娠はいずれバレてしまう。隠しても子供は生まれてしまうからだ。
我が娘エレーナは堕胎で話がついているのに、金が無くなった事で今度は子供を盾にして侯爵夫人の座を狙っているのではないか。
ブーレ伯爵としてはどっちも最悪な想定としながらも心のどこかで、後者であればごり押し出来なくもない。そう考えていた。
外の騒ぎは静まり少しした頃、王宮の従者がブーレ伯爵一家の待つ部屋にやって来た。
「会場までご案内いたします。入室は先ず当主である伯爵、続いて夫人、その後に次期伯爵ご夫妻でお願いいたします。エレーナ様におかれましては全員が揃った後、ご入室いただきます」
「承知いたしました」
ブーレ伯爵が従者に答えると夫人も兄夫婦も立ち上がったが、エレーナは立ち上がれなかった。
「どうされました?申し訳ございませんがご気分が悪くても王族の方々全員が揃っておられますので、這ってでもご入場頂きます」
余りにも冷たい物言いにブーレ伯爵もギョッとしたが、それもそうかと直ぐに思い至った。
王太子の成婚の儀ですら数人の叔父、叔母に当たる元王子、王女は出席が出来なかった。
今回は10日しか日がない。遠方に住んでいて物理的に来るのが困難な場合は日頃から命を受けて王都にあるタウンハウスを取り仕切る代行が出席をしている。
当人への連絡が届くのは晩餐会が終わって2,3か月後だとしても、国王から勅命を受けた場合と同様の措置が取られているのだ。
四肢が腐り落ちていても行かない、行けない、そんな選択肢は残されていなかった。
「こちらで御座います」
案内をされた先にある扉から、名前を呼ばれ順に入室していくが誰一人としてブーレ伯爵一家に視線を向ける者はいなかった。
頼みの綱とブーレ伯爵は王弟に視線を向けた。一瞬視線があった気がしたが氷塊のように冷たい視線で面会をした時のような気安さは一切感じられなかった。
「どうぞ」
手で席を示される。
ブーレ伯爵は「え?」小さく声が漏れた。
そこにはテーブルしかなくて、椅子は見当たらなかった。
戸惑うのも致し方ない。次期伯爵である息子が「父上、どういう事です?」と問うがブーレ伯爵にだって意味が判らずどうしていいか解らない。
そうこうしていると、数人の男性が立ち上がり、ブーレ伯爵一家と向かい合うように並んだ。その数は5人。
「ではブーレ伯爵家、エレーナ様にご入室頂きます」
ブーレ伯爵は何が起きるのか、そして何故テーブルだけで椅子が無い場に並ばされているのかを察知し足が震えた。
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