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MGR
ちらりん視線
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可愛い。
なんでコーヒーじゃなくて、オレンジジュースなの?
しかも、綺咲さんが作った試作クッキーを男性店員さんと盗み食いしてるし。
やっぱり大人な男性でも男の子なんだなぁと横目で見ていると、それに気づいた男性店員さんが私にクッキーを1つくれた。
「内緒で!叶さん怒ったら怖いんで。」
私の口止め料がクッキー1つで済むと思ってるの?
そんなナメ男くんのネームバッチを見ると、『雨瑞 薫』というなんとも梅雨を感じさせる名前で驚く。
明人「…分かりました。」
雨瑞「ありがと!」
そう言って人懐っこさを見せた雨瑞くんがオアシスさんの元に戻ると、ちょうど綺咲さんがオアシスさんの社食を持ってきた。
綺咲「かーくんは本当にこれ気に入ってるんだね。」
環酉「はい。これは通年販売してもいいと思います。」
雨瑞「自分の好みじゃん。夏食べたら暑そう。」
かーくん…。
環酉 信之だから『かんどり のぶゆき』と言った名前なんだろうか。
私は時間稼ぎをしても空きっ腹には勝てずにピカイチサンドをもう食べ終わってしまって、あとはホットティー半カップ分しかない。
…綺咲さんとオアシスさんは付き合ってるんだろうか。
楽しげに話してる2人は優しげな雰囲気が似ているからきっと波長も合いそうだし、綺咲さんは小さくてふわふわでころころで、可愛い要素いっぱいだからオアシスさんが好きって思ったりするのも分かるな。
私はオアシスさんの全く知らない恋人のタイプの想像してしまい、1人傷心モードに入ってしまう。
こんな風に考えたってオアシスさんはここの店員さんで、スーパーの警備員さん。
ただそこが私の生活圏内ってだけで、オアシスさんが私のことをお客さんとしてしか見てくれないのは分かってるけど、もっと知りたいって思っちゃうのは欲張りなのかな。
そう思いながら私は冷えて全く温かくないホットティーを小さじ1杯分口に入れて少しずつ飲み進める。
こうやって一緒の空間でごはんを食べられることなんか、もうないかもだからもう少しだけ時間稼ぎしよ。
私は普段しないお腹休憩をしながら横目で幸せそうにグラタンサンドを食べるオアシスさんを見て、この気持ちに蓋をする。
あの時の優しさはみんなにする善意であって、私のためにしてくれた好意じゃないから私がこうやって1人勝手に想いを募らせるなんてバカがすること。
そう、今の成くんと同じ。
…付き合うのちゃんと考えようかな。
私は成くんが自分にしてくれたことについてふと思い返し、そう思ってしまった。
いつも私の給料では1ヶ月に1回行けたらいいごはん屋さんやラウンジBARに連れてってくれたり、私の休みに合わせて自分の仕事を休みにしてくれる。
ちゃんと働いててお給料がよくて、高学歴のイケメンで、なぜか私を好きと言ってくれる。
しかも体の相性はいい。
けど、付き合いたくないと思ってしまうのはあの会話のだるさと私と合わない価値観。
付き合っても終わりが見えてしまうからずっとあしらってるのに、なんであいつは諦めてくれないんだろう。
私がいいように扱ってるのに腹が立ったりしないんだろうか?
私はそう扱われて嫌な思いしてたくさん泣いたからなるべくしたくないのに、なんで冷たくしてる私なんかに構うんだろう。
「どうでした?」
と、私が真剣に成くんとのことを考えてるとオアシスさんが話しかけてきた。
明人「…あ、美味しかったです!エビとホタテが思ったより大きくて、食べ応えありました。」
環酉「食べにくいものですけど、そういうのって大概美味しいですよね。」
そう嬉しそうに話してくれたオアシスさんは、グラタンサンドを一滴も溢さず器用に食べていた。
私はオアシスさんが話しかけてくれたおかげでしっかりと視点をオアシスさんに合わせ、食を進めているところを見ているとその向こうのレジでなにか作業している雨瑞くんがこちらを見てニヤついていた。
…やばい。
バレた?
そんな瞬時に分かることある?
私はその場にいること自体が恥ずかしくなり、冷えたホットティーを全て飲み干してレジに向かう。
雨瑞「ご利用ありがとうございます。300万円です。」
明人「高っ…。」
私はその冗談をパニックした頭で正直に受け取ってしまい、素直な気持ちを口に出してしまった。
雨瑞「なんてね。僕、雨瑞 薫って言います。お姉さんは?」
そう言いながらレジの液晶画面に300円と表記させた雨瑞くんは目を輝かせて私の名前を聞いてきた。
明人「…采原です。」
私はこの子にこれ以上自分を知られたくなくて苗字だけを言い、お金をマネートレイに置く。
雨瑞「さっちゃんって呼んでいいですか?」
明人「え…?なんで…。」
私は接客としては気遣い皆無な雨瑞くんの発言に驚き、体が固まる。
雨瑞「お姉さん、ここよく来てくれるからもっと仲良くなりたいなぁって。」
だめ?と輝く目をクリクリさせながら少し首を傾けておねだりしてくる雨瑞くんに一瞬落ち掛ける私はやっぱり恋愛耐性が弱いらしい。
明人「…分かりました。好きに呼んでください。」
雨瑞「僕のことはういくんでも雨瑞でも薫でもなんでもいいよ。」
明人「とりあえず、雨瑞くんで。」
雨瑞「はーい。また明日も来る?」
明人「明日は朝早くから仕事だから難しいかも。」
雨瑞「そっか。ざんねーん…。」
と、雨瑞くんはなぜかオアシスさんの方に目線を送ってから私をちらっと見上げた。
明人「…ご馳走様です。」
雨瑞「はいっ。またお待ちしてます。」
私はレシートを貰い、逃げるように店を出て自分の家に向かう。
あの子はいい子そうだからベラベラと噂話するような子には感じなかったけど、今度あの店に行った時オアシスさんの様子が変だったら行くのやめよう。
私は雨瑞くんが私の話をしないように生き霊を気持ちで送り、昼から始まる仕事の準備をした。
…………
話しかけてくれた!
幸せそうにピカイチサンド食べるオアシスさん、可愛い♡\( ¨̮ )
…………
環流 虹向/エンディングノート
なんでコーヒーじゃなくて、オレンジジュースなの?
しかも、綺咲さんが作った試作クッキーを男性店員さんと盗み食いしてるし。
やっぱり大人な男性でも男の子なんだなぁと横目で見ていると、それに気づいた男性店員さんが私にクッキーを1つくれた。
「内緒で!叶さん怒ったら怖いんで。」
私の口止め料がクッキー1つで済むと思ってるの?
そんなナメ男くんのネームバッチを見ると、『雨瑞 薫』というなんとも梅雨を感じさせる名前で驚く。
明人「…分かりました。」
雨瑞「ありがと!」
そう言って人懐っこさを見せた雨瑞くんがオアシスさんの元に戻ると、ちょうど綺咲さんがオアシスさんの社食を持ってきた。
綺咲「かーくんは本当にこれ気に入ってるんだね。」
環酉「はい。これは通年販売してもいいと思います。」
雨瑞「自分の好みじゃん。夏食べたら暑そう。」
かーくん…。
環酉 信之だから『かんどり のぶゆき』と言った名前なんだろうか。
私は時間稼ぎをしても空きっ腹には勝てずにピカイチサンドをもう食べ終わってしまって、あとはホットティー半カップ分しかない。
…綺咲さんとオアシスさんは付き合ってるんだろうか。
楽しげに話してる2人は優しげな雰囲気が似ているからきっと波長も合いそうだし、綺咲さんは小さくてふわふわでころころで、可愛い要素いっぱいだからオアシスさんが好きって思ったりするのも分かるな。
私はオアシスさんの全く知らない恋人のタイプの想像してしまい、1人傷心モードに入ってしまう。
こんな風に考えたってオアシスさんはここの店員さんで、スーパーの警備員さん。
ただそこが私の生活圏内ってだけで、オアシスさんが私のことをお客さんとしてしか見てくれないのは分かってるけど、もっと知りたいって思っちゃうのは欲張りなのかな。
そう思いながら私は冷えて全く温かくないホットティーを小さじ1杯分口に入れて少しずつ飲み進める。
こうやって一緒の空間でごはんを食べられることなんか、もうないかもだからもう少しだけ時間稼ぎしよ。
私は普段しないお腹休憩をしながら横目で幸せそうにグラタンサンドを食べるオアシスさんを見て、この気持ちに蓋をする。
あの時の優しさはみんなにする善意であって、私のためにしてくれた好意じゃないから私がこうやって1人勝手に想いを募らせるなんてバカがすること。
そう、今の成くんと同じ。
…付き合うのちゃんと考えようかな。
私は成くんが自分にしてくれたことについてふと思い返し、そう思ってしまった。
いつも私の給料では1ヶ月に1回行けたらいいごはん屋さんやラウンジBARに連れてってくれたり、私の休みに合わせて自分の仕事を休みにしてくれる。
ちゃんと働いててお給料がよくて、高学歴のイケメンで、なぜか私を好きと言ってくれる。
しかも体の相性はいい。
けど、付き合いたくないと思ってしまうのはあの会話のだるさと私と合わない価値観。
付き合っても終わりが見えてしまうからずっとあしらってるのに、なんであいつは諦めてくれないんだろう。
私がいいように扱ってるのに腹が立ったりしないんだろうか?
私はそう扱われて嫌な思いしてたくさん泣いたからなるべくしたくないのに、なんで冷たくしてる私なんかに構うんだろう。
「どうでした?」
と、私が真剣に成くんとのことを考えてるとオアシスさんが話しかけてきた。
明人「…あ、美味しかったです!エビとホタテが思ったより大きくて、食べ応えありました。」
環酉「食べにくいものですけど、そういうのって大概美味しいですよね。」
そう嬉しそうに話してくれたオアシスさんは、グラタンサンドを一滴も溢さず器用に食べていた。
私はオアシスさんが話しかけてくれたおかげでしっかりと視点をオアシスさんに合わせ、食を進めているところを見ているとその向こうのレジでなにか作業している雨瑞くんがこちらを見てニヤついていた。
…やばい。
バレた?
そんな瞬時に分かることある?
私はその場にいること自体が恥ずかしくなり、冷えたホットティーを全て飲み干してレジに向かう。
雨瑞「ご利用ありがとうございます。300万円です。」
明人「高っ…。」
私はその冗談をパニックした頭で正直に受け取ってしまい、素直な気持ちを口に出してしまった。
雨瑞「なんてね。僕、雨瑞 薫って言います。お姉さんは?」
そう言いながらレジの液晶画面に300円と表記させた雨瑞くんは目を輝かせて私の名前を聞いてきた。
明人「…采原です。」
私はこの子にこれ以上自分を知られたくなくて苗字だけを言い、お金をマネートレイに置く。
雨瑞「さっちゃんって呼んでいいですか?」
明人「え…?なんで…。」
私は接客としては気遣い皆無な雨瑞くんの発言に驚き、体が固まる。
雨瑞「お姉さん、ここよく来てくれるからもっと仲良くなりたいなぁって。」
だめ?と輝く目をクリクリさせながら少し首を傾けておねだりしてくる雨瑞くんに一瞬落ち掛ける私はやっぱり恋愛耐性が弱いらしい。
明人「…分かりました。好きに呼んでください。」
雨瑞「僕のことはういくんでも雨瑞でも薫でもなんでもいいよ。」
明人「とりあえず、雨瑞くんで。」
雨瑞「はーい。また明日も来る?」
明人「明日は朝早くから仕事だから難しいかも。」
雨瑞「そっか。ざんねーん…。」
と、雨瑞くんはなぜかオアシスさんの方に目線を送ってから私をちらっと見上げた。
明人「…ご馳走様です。」
雨瑞「はいっ。またお待ちしてます。」
私はレシートを貰い、逃げるように店を出て自分の家に向かう。
あの子はいい子そうだからベラベラと噂話するような子には感じなかったけど、今度あの店に行った時オアシスさんの様子が変だったら行くのやめよう。
私は雨瑞くんが私の話をしないように生き霊を気持ちで送り、昼から始まる仕事の準備をした。
…………
話しかけてくれた!
幸せそうにピカイチサンド食べるオアシスさん、可愛い♡\( ¨̮ )
…………
環流 虹向/エンディングノート
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