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ANNIVERSARY
もちもち梅香
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うむっ、花粉で全く梅の香りがしない!
花粉症で鼻が詰まる私は鮮やかな梅を見ることだけを楽しむことにして、箱ティッシュをジャケットのポケットに入れてきてくれた信之から貰う。
信之「目は大丈夫そうでよかった。」
明人「目もいかれてたらお祭りどころじゃなかったね。」
私はマスクの下に鼻栓をして、鼻水を止めながらまた信之と梅を撮る。
信之は背が高いからしっかり梅と一緒に写ってくれて画角には困らないなと、信之の身長を恵んでくれた信之の親御さんに感謝していると肩を叩かれた。
「一緒に写真撮りますか?」
私はその声に聞き覚えがあり、そのまま振り向かずに信之の元へ行こうとするとそのまま肩を掴まれてしまった。
信之「こんにちは。お兄さんも来てたんですね。」
と、信之は私の元に駆け寄りその手を剥がすように私の肩を抱いて自分に引き寄せた。
「はい。デート場所にいいですよね。明人もそう思うよな?」
私は信之の腕の中で振り向き、“友達”連れの莉音と目を合わせる。
莉音「この人が明人の彼氏?」
信之「はい。お兄さんは明人とお知り合いですか?」
と、信之は全てを知っているのにも関わらず知らないフリをした。
莉音「そうですね。学生時代お世話になりました。」
…その笑顔、怖い。
もう、なんでこんなとこに来たんだよ。
もっとうるさい街の方が好きって言ってたのに、なんでこんな和やかな梅まつりなんかに来てるんだよ。
明人「…お互い“デート”楽しもうね。」
莉音「そうだな。」
私が一言話すと莉音は女連れだったからか、すぐに私の元からいなくなってくれた。
信之「…大丈夫?帰る?」
明人「ううん。もうちょっと信之とお祭り楽しみたい。」
信之「分かった。おもち食べに行く?」
明人「うん。」
私はせっかくのデートが莉音で台無しになるのが嫌で意地でここに残ることにした。
信之「きな粉って花粉みたいだね。」
明人「…たしかに。鼻ムズムズしてきた。」
私は手元にあったおもちを預けて、鼻をかみ花粉とも戦いながらおやつを食べ進めていく。
信之「夜ごはんは俺が作るけど、何食べたい?」
明人「え?いいの?」
信之「もちろん。花粉でいっぱいいっぱいな明人にごはん作らせようなんて思ってないよ。」
明人「ありがとう…。」
信之「お肉でもいいよ。何にしたい?」
…お肉。
って言われたけど、信之とお魚を毎食のように食べるようになって、お肉が食べたいって気持ちは薄れてきてるんだよな。
だから魚でもなんでもいいけど…。
明人「もう少しで春来ちゃうからお鍋にしたいな。味はスーパー行って決めよう?」
信之「いいね。具材は?」
明人「カキとエビ食べたい。」
信之「肉じゃないの?」
明人「信之と同じの食べてたら、海鮮類の方が好きになったんだ。だからお肉じゃなくていいよ。」
信之「…ありがとう。」
そう言って信之は醤油味がする唇を優しく私に触れさせた。
明人「合わせてるわけじゃないよ?私も好きだから食べたいの。」
信之「…そっか。じゃあホタテあったらつみれにしよっか。」
明人「いいね!食べたい!」
信之「分かった。」
信之は笑顔で頷いてくれたけど、私が本音を言ってもまだ届いていないっぽかった。
私はそんな信之に別の笑顔になってほしいと思い、あれの日にすることにした。
明人「私、帰る前に寄りたいとこあるんだけどいいかな?」
信之「うん?どこ?」
明人「ケーキ屋さん。」
信之「…誕生日?」
明人「かなって思って。明日からしばらく玄米になるけどいい?」
信之「うん。最近、明人の美味しいごはん食べ過ぎて太ってきてたし。」
明人「そう?そんなに変わらない気がするけど。」
信之「ベルトに少し肉乗ってきた。」
そう言って信之はニットの下にある自分のお腹を私に掴ませるけど、しっかり筋肉なんだが。
これで太ったなら私の腹はメタボだよ。
明人「けど、ケーキは食べよ。答え合わせは食べ終わったあとね。」
信之「うん。分かった。」
と、信之はしないはずの梅が香るような優しい笑顔で私の頭をそっと撫ででキスしてくれた。
その顔はどことなく嬉しそうできっと今日かもしれないと私は思い、少し奮発していいケーキを買うことにした。
…………
朝・白米 お味噌汁 漬物
昼・おもち
信之の誕生日、もしかしたら1発で当てられたかも。
今日は信之の好きなフルーツがいっぱい乗ったケーキにしよう。
…………
環流 虹向/エンディングノート
花粉症で鼻が詰まる私は鮮やかな梅を見ることだけを楽しむことにして、箱ティッシュをジャケットのポケットに入れてきてくれた信之から貰う。
信之「目は大丈夫そうでよかった。」
明人「目もいかれてたらお祭りどころじゃなかったね。」
私はマスクの下に鼻栓をして、鼻水を止めながらまた信之と梅を撮る。
信之は背が高いからしっかり梅と一緒に写ってくれて画角には困らないなと、信之の身長を恵んでくれた信之の親御さんに感謝していると肩を叩かれた。
「一緒に写真撮りますか?」
私はその声に聞き覚えがあり、そのまま振り向かずに信之の元へ行こうとするとそのまま肩を掴まれてしまった。
信之「こんにちは。お兄さんも来てたんですね。」
と、信之は私の元に駆け寄りその手を剥がすように私の肩を抱いて自分に引き寄せた。
「はい。デート場所にいいですよね。明人もそう思うよな?」
私は信之の腕の中で振り向き、“友達”連れの莉音と目を合わせる。
莉音「この人が明人の彼氏?」
信之「はい。お兄さんは明人とお知り合いですか?」
と、信之は全てを知っているのにも関わらず知らないフリをした。
莉音「そうですね。学生時代お世話になりました。」
…その笑顔、怖い。
もう、なんでこんなとこに来たんだよ。
もっとうるさい街の方が好きって言ってたのに、なんでこんな和やかな梅まつりなんかに来てるんだよ。
明人「…お互い“デート”楽しもうね。」
莉音「そうだな。」
私が一言話すと莉音は女連れだったからか、すぐに私の元からいなくなってくれた。
信之「…大丈夫?帰る?」
明人「ううん。もうちょっと信之とお祭り楽しみたい。」
信之「分かった。おもち食べに行く?」
明人「うん。」
私はせっかくのデートが莉音で台無しになるのが嫌で意地でここに残ることにした。
信之「きな粉って花粉みたいだね。」
明人「…たしかに。鼻ムズムズしてきた。」
私は手元にあったおもちを預けて、鼻をかみ花粉とも戦いながらおやつを食べ進めていく。
信之「夜ごはんは俺が作るけど、何食べたい?」
明人「え?いいの?」
信之「もちろん。花粉でいっぱいいっぱいな明人にごはん作らせようなんて思ってないよ。」
明人「ありがとう…。」
信之「お肉でもいいよ。何にしたい?」
…お肉。
って言われたけど、信之とお魚を毎食のように食べるようになって、お肉が食べたいって気持ちは薄れてきてるんだよな。
だから魚でもなんでもいいけど…。
明人「もう少しで春来ちゃうからお鍋にしたいな。味はスーパー行って決めよう?」
信之「いいね。具材は?」
明人「カキとエビ食べたい。」
信之「肉じゃないの?」
明人「信之と同じの食べてたら、海鮮類の方が好きになったんだ。だからお肉じゃなくていいよ。」
信之「…ありがとう。」
そう言って信之は醤油味がする唇を優しく私に触れさせた。
明人「合わせてるわけじゃないよ?私も好きだから食べたいの。」
信之「…そっか。じゃあホタテあったらつみれにしよっか。」
明人「いいね!食べたい!」
信之「分かった。」
信之は笑顔で頷いてくれたけど、私が本音を言ってもまだ届いていないっぽかった。
私はそんな信之に別の笑顔になってほしいと思い、あれの日にすることにした。
明人「私、帰る前に寄りたいとこあるんだけどいいかな?」
信之「うん?どこ?」
明人「ケーキ屋さん。」
信之「…誕生日?」
明人「かなって思って。明日からしばらく玄米になるけどいい?」
信之「うん。最近、明人の美味しいごはん食べ過ぎて太ってきてたし。」
明人「そう?そんなに変わらない気がするけど。」
信之「ベルトに少し肉乗ってきた。」
そう言って信之はニットの下にある自分のお腹を私に掴ませるけど、しっかり筋肉なんだが。
これで太ったなら私の腹はメタボだよ。
明人「けど、ケーキは食べよ。答え合わせは食べ終わったあとね。」
信之「うん。分かった。」
と、信之はしないはずの梅が香るような優しい笑顔で私の頭をそっと撫ででキスしてくれた。
その顔はどことなく嬉しそうできっと今日かもしれないと私は思い、少し奮発していいケーキを買うことにした。
…………
朝・白米 お味噌汁 漬物
昼・おもち
信之の誕生日、もしかしたら1発で当てられたかも。
今日は信之の好きなフルーツがいっぱい乗ったケーキにしよう。
…………
環流 虹向/エンディングノート
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