5 / 10
伊藤実3
しおりを挟む
こうして俺たちは瀬戸さくらの家へ着いた。一軒家で、塀や庭もあった。中にはさくらの母親がいたが、さくらの姿はなかった。今日は平日。しかし、もう夕方になろうとしているのでもしかしたら学校から帰ってくるかもしれない。
とりあえず、俺たちは待ってみることにした。真人と実は玄関の前にしゃがんでいる。俺は少し離れたところで立って、タバコを吸っていた。
「実くん……大丈夫ですか?」真人が隣に座る実に声をかけた。
「……緊張します。心臓はないのに、ドキドキする……」
「ところで、さくらさん、ってどんな女の子だったんですか?」
「……さくらとおれは、団地で隣同士の家に住んでたんです。子供の頃はよく一緒に遊んで……で、さくらはよく男の子にからかわれたりいじめられたりしたから、おれがかばったり守ったりしてたんですよね。そして……結婚しようね、って言い合ったり……」実は恥ずかしそうに下を向いた。
「へぇー、素敵ですね」
「いや、でも子供の頃の話ですから……そして、引っ越す時に、また会おうね、って約束したんです」
「会えるといいですね」
「……誰か来たぞ」俺が言った。
道の向こうから、女子高校生が歩いてくる。髪の色は黒で、背中まで届く長さのストレート。優等生のような雰囲気。
彼女は門扉を開け、ふたりの横を通りすぎ家の中へ入った。
それが本当に瀬戸さくらかわからなかったが、瀬戸家に入っていくところを見ると間違いないだろう。
「さくらさん、ですか?」真人が聞く。
「多分……」
「中に入ってみましょう」
俺たちは中へ入る。さくらは母親とともにリビングにいた。
「ねえ、さくら。実くんのお墓参りいきましょ」母親が言った。
「……だから、実なんて覚えてないってば。覚えてないのに行く必要ないでしょ」さくらが言う。
隣で実が息を飲んだのがわかった。
「あんたは覚えてないかもしれないけど……あっ、ちょっと待ちなさい!」
母親が言い終わる前に、さくらはリビングを出て、階段を上っていった。
「実くん……」真人が隣の実を見る。
「……いいんです。わかってたことだから……」そう言って実は走っていこうとした。
その腕を、俺は掴む。
「これで諦めがついたな。霊界に行くぞ」
俺が言うと、実は黙って頷いた。
いったん俺たちは外へ出る。そして、死神が持っている霊界へ繋がる入口を開けるための鍵を取り出した。その鍵は乳白色で、光輝いていた。
それを塀の手前で空中に差し込み、右に回す。
すると、何もなかった空間に、霊界へと続くまっすぐな道が現れた。道はアスファルトのように固くなく、しかも白いので雲のようだった。また周りも白く輝いた霧だったので、余計にそう思う。
「綺麗……」真人が驚いて、言った。
「一緒に行くか?」
真人は慌てたように首を横に振る。
「じゃあ……真人さん、ありがとうございました」
「元気で、っていうのも変かな。でも、元気出して」
実は力なく笑うと、俺の後を黙って歩き出した。
「本当にふわふわなんですね。でも歩きやすくて……不思議です」実が言った。
霊界へと続く道をふたりで歩く。そのうちに、右側に実のこれまでの人生が映し出される。これが、走馬灯だ。
「あ、さくら……」実が泣き出す。「さくらは、おれのこと、忘れてしまったんですね……」
「……人間なんて、裏切るものだろ」俺は言う。
そうやって歩いて、ようやく霊界が見え始めた時。
「死神さん!」
真人の声が聞こえた。
とりあえず、俺たちは待ってみることにした。真人と実は玄関の前にしゃがんでいる。俺は少し離れたところで立って、タバコを吸っていた。
「実くん……大丈夫ですか?」真人が隣に座る実に声をかけた。
「……緊張します。心臓はないのに、ドキドキする……」
「ところで、さくらさん、ってどんな女の子だったんですか?」
「……さくらとおれは、団地で隣同士の家に住んでたんです。子供の頃はよく一緒に遊んで……で、さくらはよく男の子にからかわれたりいじめられたりしたから、おれがかばったり守ったりしてたんですよね。そして……結婚しようね、って言い合ったり……」実は恥ずかしそうに下を向いた。
「へぇー、素敵ですね」
「いや、でも子供の頃の話ですから……そして、引っ越す時に、また会おうね、って約束したんです」
「会えるといいですね」
「……誰か来たぞ」俺が言った。
道の向こうから、女子高校生が歩いてくる。髪の色は黒で、背中まで届く長さのストレート。優等生のような雰囲気。
彼女は門扉を開け、ふたりの横を通りすぎ家の中へ入った。
それが本当に瀬戸さくらかわからなかったが、瀬戸家に入っていくところを見ると間違いないだろう。
「さくらさん、ですか?」真人が聞く。
「多分……」
「中に入ってみましょう」
俺たちは中へ入る。さくらは母親とともにリビングにいた。
「ねえ、さくら。実くんのお墓参りいきましょ」母親が言った。
「……だから、実なんて覚えてないってば。覚えてないのに行く必要ないでしょ」さくらが言う。
隣で実が息を飲んだのがわかった。
「あんたは覚えてないかもしれないけど……あっ、ちょっと待ちなさい!」
母親が言い終わる前に、さくらはリビングを出て、階段を上っていった。
「実くん……」真人が隣の実を見る。
「……いいんです。わかってたことだから……」そう言って実は走っていこうとした。
その腕を、俺は掴む。
「これで諦めがついたな。霊界に行くぞ」
俺が言うと、実は黙って頷いた。
いったん俺たちは外へ出る。そして、死神が持っている霊界へ繋がる入口を開けるための鍵を取り出した。その鍵は乳白色で、光輝いていた。
それを塀の手前で空中に差し込み、右に回す。
すると、何もなかった空間に、霊界へと続くまっすぐな道が現れた。道はアスファルトのように固くなく、しかも白いので雲のようだった。また周りも白く輝いた霧だったので、余計にそう思う。
「綺麗……」真人が驚いて、言った。
「一緒に行くか?」
真人は慌てたように首を横に振る。
「じゃあ……真人さん、ありがとうございました」
「元気で、っていうのも変かな。でも、元気出して」
実は力なく笑うと、俺の後を黙って歩き出した。
「本当にふわふわなんですね。でも歩きやすくて……不思議です」実が言った。
霊界へと続く道をふたりで歩く。そのうちに、右側に実のこれまでの人生が映し出される。これが、走馬灯だ。
「あ、さくら……」実が泣き出す。「さくらは、おれのこと、忘れてしまったんですね……」
「……人間なんて、裏切るものだろ」俺は言う。
そうやって歩いて、ようやく霊界が見え始めた時。
「死神さん!」
真人の声が聞こえた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる