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伊藤実4
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真人はふたりが入っていった霊界への入口が閉じるのを見てから、またさくらの部屋へと戻った。彼女が実のことを覚えていないのが信じられなかったし、実のために何かしたいと思った。
彼女は自室で、勉強机に向かって座っていた。しかし勉強するわけでもなく、じっと下を見て、動かなかった。
「……どうして」さくらが言う。そして。「もう一度会う、って約束したのに……」
その声が潰れていく。手で顔を覆う。その目からは涙。
ーーやっぱり、忘れたわけではないんですね。
真人は思った。さっき「忘れた」と言ったのは、つらくて忘れたかったためかもしれない。
このことを、実に伝えなくては。
真人は急いで外へ出た。塀を触るが、先ほど死神が開いた霊界への入口は閉じたまま。
「死神さん!」
真人は叫んだ。死神が気づいてくれることを信じて。
「死神さん!戻ってきてください!」
力の限り叫ぶ。
そして。
「……恥ずかしいからやめろ」
死神が、空から音もなく降りてきた。
彼女は自室で、勉強机に向かって座っていた。しかし勉強するわけでもなく、じっと下を見て、動かなかった。
「……どうして」さくらが言う。そして。「もう一度会う、って約束したのに……」
その声が潰れていく。手で顔を覆う。その目からは涙。
ーーやっぱり、忘れたわけではないんですね。
真人は思った。さっき「忘れた」と言ったのは、つらくて忘れたかったためかもしれない。
このことを、実に伝えなくては。
真人は急いで外へ出た。塀を触るが、先ほど死神が開いた霊界への入口は閉じたまま。
「死神さん!」
真人は叫んだ。死神が気づいてくれることを信じて。
「死神さん!戻ってきてください!」
力の限り叫ぶ。
そして。
「……恥ずかしいからやめろ」
死神が、空から音もなく降りてきた。
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