6 / 10
伊藤実4
しおりを挟む
真人はふたりが入っていった霊界への入口が閉じるのを見てから、またさくらの部屋へと戻った。彼女が実のことを覚えていないのが信じられなかったし、実のために何かしたいと思った。
彼女は自室で、勉強机に向かって座っていた。しかし勉強するわけでもなく、じっと下を見て、動かなかった。
「……どうして」さくらが言う。そして。「もう一度会う、って約束したのに……」
その声が潰れていく。手で顔を覆う。その目からは涙。
ーーやっぱり、忘れたわけではないんですね。
真人は思った。さっき「忘れた」と言ったのは、つらくて忘れたかったためかもしれない。
このことを、実に伝えなくては。
真人は急いで外へ出た。塀を触るが、先ほど死神が開いた霊界への入口は閉じたまま。
「死神さん!」
真人は叫んだ。死神が気づいてくれることを信じて。
「死神さん!戻ってきてください!」
力の限り叫ぶ。
そして。
「……恥ずかしいからやめろ」
死神が、空から音もなく降りてきた。
彼女は自室で、勉強机に向かって座っていた。しかし勉強するわけでもなく、じっと下を見て、動かなかった。
「……どうして」さくらが言う。そして。「もう一度会う、って約束したのに……」
その声が潰れていく。手で顔を覆う。その目からは涙。
ーーやっぱり、忘れたわけではないんですね。
真人は思った。さっき「忘れた」と言ったのは、つらくて忘れたかったためかもしれない。
このことを、実に伝えなくては。
真人は急いで外へ出た。塀を触るが、先ほど死神が開いた霊界への入口は閉じたまま。
「死神さん!」
真人は叫んだ。死神が気づいてくれることを信じて。
「死神さん!戻ってきてください!」
力の限り叫ぶ。
そして。
「……恥ずかしいからやめろ」
死神が、空から音もなく降りてきた。
0
あなたにおすすめの小説
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
〖完結〗旦那様が私を殺そうとしました。
藍川みいな
恋愛
私は今、この世でたった一人の愛する旦那様に殺されそうになっている。いや……もう私は殺されるだろう。
どうして、こんなことになってしまったんだろう……。
私はただ、旦那様を愛していただけなのに……。
そして私は旦那様の手で、首を絞められ意識を手放した……
はずだった。
目を覚ますと、何故か15歳の姿に戻っていた。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全11話で完結になります。
〈完結〉八年間、音沙汰のなかった貴方はどちら様ですか?
詩海猫(8/29書籍発売)
恋愛
私の家は子爵家だった。
高位貴族ではなかったけれど、ちゃんと裕福な貴族としての暮らしは約束されていた。
泣き虫だった私に「リーアを守りたいんだ」と婚約してくれた侯爵家の彼は、私に黙って戦争に言ってしまい、いなくなった。
私も泣き虫の子爵令嬢をやめた。
八年後帰国した彼は、もういない私を探してるらしい。
*文字数的に「短編か?」という量になりましたが10万文字以下なので短編です。この後各自のアフターストーリーとか書けたら書きます。そしたら10万文字超えちゃうかもしれないけど短編です。こんなにかかると思わず、「転生王子〜」が大幅に滞ってしまいましたが、次はあちらに集中予定(あくまで予定)です、あちらもよろしくお願いします*
カメリア――彷徨う夫の恋心
来住野つかさ
恋愛
ロジャーとイリーナは和やかとはいえない雰囲気の中で話をしていた。結婚して子供もいる二人だが、学生時代にロジャーが恋をした『彼女』をいつまでも忘れていないことが、夫婦に亀裂を生んでいるのだ。その『彼女』はカメリア(椿)がよく似合う娘で、多くの男性の初恋の人だったが、なせが卒業式の後から行方不明になっているのだ。ロジャーにとっては不毛な会話が続くと思われたその時、イリーナが言った。「『彼女』が初恋だった人がまた一人いなくなった」と――。
※この作品は他サイト様にも掲載しています。
妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?
木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。
彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。
公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。
しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。
だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。
二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。
彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。
※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる