死神と真人

野良

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報告

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 次の日。俺は一度報告のために霊界へ戻ることにした。
 霊界への入口を開け、白い道を通っていく。進んで行くと大きな門があるのだが、その前には死神に連れてこられた霊が行列を作っていた。
 その門では身元確認がなされ、生前罪を犯した者は悔い改める施設へ送られる。その施設のことはよく知らない。管轄が違うからだ。
 生前罪を犯さなかった者や悔い改めた者は、生まれ変われるらしい。中には俺のように死神や天使なんかになって、輪廻の環から外れる奴もいるが。
 俺は行列を作っている門の隣の、通用口から中へ入った。
 中へ入ると、更に大勢の人間が空を飛んだり、歩いたり、思い思いのことをしていた。巨大な街のようで、多くの店が並んでいる。みんな霊体なので、腹が減ることはない。なので飲食店は少なく、娯楽の店が多かった。ちなみに金はかからない。
 街の大通りを抜け、死神の事務所へ着く。報告書を作り、上司であるモリタに提出した。
「……今回は、珍しく手間取ったようだな」モリタが報告書から顔を上げて言った。
「まあ……邪魔が入ったからな」
「大庭真人まなとくん、か」
「……あいつといると、なんか調子狂う」
 結局あいつが首を突っ込んできたせいで、実の霊を回収するのに時間がかかった。
 それに自分だってやることがあるだろうに、他人の世話を焼いて、かといって見返りを求めることもなかった。
 俺には理解できない。
「初めてできた友達だろ?仲良くしなさい」モリタが立ち上がり、俺の肩を叩いて行った。
「友達なんかじゃねぇよ」
「あとは、怨霊にならないように気をつけておきな」
 彼はひらひらと手を振って、去って行った。

 報告が終わると、俺は自分の部屋へ帰る。霊体なので肉体的な疲れはないのだが、精神的な疲れはある。
 一眠りして翌朝、自分が担当する地区に戻った。
 真人がいる、あの街に。
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