一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。

青花美来

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翌朝、カーテンの隙間から見える日曜日の空は、とてもどんよりとした天気。

まだまだ春と呼ぶには寒さが身に染みる三月上旬。

空からは雪がとめどなく降り続いていた。

時間を確認しようとして、そういえばスマホの電源を切っていたのだと思い出す。

時間を見るためだけに電源を付けるのも面倒になり、テーブルの上から腕時計を取った。


「もう昼前だ。こんなに寝たの久しぶり……」


ふわあ、と独り言と共に欠伸が溢れる。

そして喉がカラカラなことに気が付いて、冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターを飲んだ。

空腹を通り過ぎた胃は、逆に何も感じない。


「でもお腹に栄養あげないとだから、何か食べないとな……」


でもまた吐くのも嫌だし。

どうしよう。考えてみるものの何も思い付かない。

ネットで調べたら、悪阻の時は無理をしなくていいと読んだ。食べられるものを食べられるだけ食べれば良いのだと。足りない分は体に元々蓄えている栄養がそのままお腹に届くらしい。嘘か本当かはわからないものの、今はそれを信用するしかない。

悩んでいてもお腹に悪いから、諦めてスマホでゲームでもして気を紛らわせよう。

そう思ってのっそりとベッドに戻ってスマホの電源をつける。

明るくなった画面。まず一番に飛び込んできたのは不在着信の件数だった。


……十件。


確認すると全て登録されていない同じ番号。思い出して再び名刺を確かめると、それは全て副社長からの折り返しだった。

昨日の二十二時以降は特に連絡が来ていない様子。

そして静香からのメッセージも来ていて、それにとりあえず返信しておいた。

そのまま適当にアプリでゲームをすること三十分。

それにも飽きてスマホをベッドにポイっと投げる。

そんなタイミングで、バイブレーションが着信を知らせた。


「っ!」


画面を見るとそれは不在着信と同じ番号。

副社長だ。

一晩無視してしまったため、手が中々スマホに伸びない。

しかし電源が入ったからか、向こうもコール音が鳴っているのだろう。ここぞとばかりにずっとコールしてくる。

もう何回鳴っているかもわからないコール音が一度途切れて、再び鳴り始めた時。

ごくりと一度唾を飲み込み、ゆっくりと手を伸ばした。


「……はい、もしもし」


通話をタップして耳に当てると、向こうから安堵の声が聞こえた。


"……鮎原さん!?良かった。やっと出てくれた……!"


思っていた反応と違って、少し拍子抜けした。


"急に電話切れてるし、掛け直しても電源入ってないって言われるし、心配してたんです。話の途中でしたし"

「……すみません」

"あ、いえ。謝って欲しいわけではないのです。何かあったのかと思っただけなので。鮎原さんが無事ならそれで良いです。……それよりも、昨日は僕に他にも何か言いかけていましたよね?何か用があったのでは?"


ドキリとしながらも、スマホを持つ手に力を込めた。


「えっと……。ちょっと、お話がありまして」

"話、ですか?"

「はい。大切なお話が。なのでどこかで一度お会いできないかとご相談したくて、ご連絡しました」


やっぱり、電話で話して良い内容ではない。直接話すべきだ。

なるべく早く。そう思うものの。


"そうでしたか。……けど困ったな、今出張で地方に来ているんですが、少し長引きそうで戻るのは来週の頭になってしまいそうなんです"


なかなかうまい具合に事は進んでくれない。

スケジュール帳を鞄から取り出した。来週頭……か。病院は来週末だから、多分大丈夫だろう。


「わかりました。それでしたらお戻りになった後で大丈夫ですので、少しだけお時間いただけますか?」


"はい。必ず。何時間でも。お約束します"


それは大袈裟だと、少しだけ笑えた。

悩んでばかりだったから、久しぶりに笑った気がしてなんだか心がぽかぽかした。

副社長との電話はそれで一旦終了した。

電話を切った時、ドクドクと心臓の鼓動が頭の中に響き渡っていて、緊張から解放されたからかそれは徐々に落ち着きを取り戻していった。

静香に副社長に連絡したことを伝え、その後はどこにも出掛ける気は起きず、一日のんびりと過ごしていた。

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