【完結】貴方を愛するつもりはないは 私から

Mimi

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天使、降臨 ~クリストファー~

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帝国の留学から戻って直ぐに、リーヴァイス伯爵に手紙を書いた。

『無事に戻りましたので、グレイス嬢に会いに行きたい』と。

ところが、卒園して直ぐの夏のバカンスシーズンに中等部のお別れ合宿的な旅行が予定されていたらしく、それが終わるまで待っていて欲しい、という。


お別れ合宿?
ふざけているのかと思った。
全員がそのまま、中等部から高等部へ進学するのだ。 
誰が何と、お別れすると言うのか?

俺の中等部卒園の頃には、そんなイベントはなかった。
7年違うと、こんなにも違うのか?と少々、世代差を感じてしまった。


例の雇っている専門家に詳しく調べてもらうと、学園のイベントではなく、1人の調子に乗ってる侯爵家の息子が気に入った同級生に声をかけて集めたらしい。
旅行先は、侯爵家の山荘だ。

一瞬、旅行がなくなれば、と火をつけてやろうかと思ったが
(思っただけだ)
山荘なので、我慢した。
山火事は起こしたくない。
ダメ、ゼッタイ。


彼女が帰ってくるまでの2週間。
17歳になった妹から向けられる哀れんだ視線が辛い。
留学前の12歳の妹からはこんな目で見られたことなかったのに。
俺がいない間に、父から俺の運命の愛について面白おかしく話を聞いたらしい。


妹はグレイスのことを『天使ちゃん』と呼ぶ。


「とりあえず、正式に婚約しなくちゃね。
 天使ちゃん、山荘から無事に帰ってくるかな~?」


家庭内傷害事件は起こしたくないので、黙って王宮へ仕事に行く。
イライラと心配と不安と。
出来るだけ表情には出ないように。
いつもより慎重に仕事をこなした2週間だった。


 
──そして。
とうとう、伯爵家に正式に申し込む日がやって来たっ!


正装してシュッとした俺を、妹がツンツンとつつく。


「長年の片想い、叶ってよかったね。
 天使ちゃんに飛びかかったら駄目よ?」

「……オマエ、イツカコロス」



父とふたりで伯爵家の応接室で、ご両親と彼女を待った。

5年ぶりの彼女は、どんなに綺麗になっているだろう。
震える手を必死で押さえた。
グレイスとは3メートル圏内で、会ったことはない。

ドキドキが、止まらなかった。
動悸が胸部から頭部へ突き上げる、様な。
心臓が口から飛び出る、とはこう言う状態なんだな。
俺はそれが死因の、世界最初の人間になるかもしれない。

(あぁ、このまま会えずに死ぬのは嫌だ。
神様、もう少しだけ待ってください)


膝に置いていた両手を、胸の辺りで組んで祈りを捧げようとした……その時。

夏らしい黄色の小花が散った、涼しげな白いドレスをまとって、天使が降臨した。


無事に生き延びたが、15歳の彼女に何も言えない22歳の俺だった。



一応、正式に婚約は結ばれた。
彼女の16歳の誕生日を過ぎたら、直ぐに結婚式だ。

『学園はどうするのですか?』と天使が小首を傾げた。

その可憐さに見とれて言葉が出ない俺を、隣の父がフォローしてくれた。


「息子は王太子殿下の側近として日夜仕事に励んでいる。
 出来ることなら、次期侯爵夫人として支えてやってくれないだろうか」
 

早い話が学園を辞めてくれ、ということだ。
本当は卒園まで通ってもらっても良かった。
だが、あの侯爵家のバカ息子が居るのが判り、ちょっと……、と思い始めた。

女性を気に入っても、人妻だと諦める奴が大半だが、報告によると、あいつはそんなことはお構い無しに燃えるタイプだと知った。

そんな悪魔に俺の天使を近づけさせたくない。


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