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天使と結婚できた ~クリストファー~
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とうとう結婚式当日になった。
空は何処までも青く澄みわたり、綿菓子の様な白い雲が浮かんでいる。
そして、俺の隣には愛しい愛しい天使、グレイス。
◇◇◇
やっとここまで来れた、と教会の控え室でイーサンを前に俺は泣いた。
宿願のこの日までの1週間、俺の涙腺はおかしかった。
朝日を見ても、太陽の下でも、夕焼けを眺めても、月を仰いでも、泣けた。
全俺が泣いた。
「お前な、いい加減にしろ」
俺は3枚ハンカチを持っていたが、全て嬉し涙でぐっしょりだったので、イーサンから借りた。
濡れてしまったハンカチを返そうとすると、要らないと受け取り拒否された。
「もう身体中の水分がなくなって死ぬかも……」
「今死んだら幼妻どうすんの、誰かのモンになってもいいの」
それは絶対に許さない!
俺は涙を拭いて立ち上がった!
「それからさっき、お前のお母上から伝言預かった。
『部屋の事を早く言え』って。
何の事か、わかってる?」
そうだ、しばらく客室で我慢して貰う事を、グレイスに言わなくてはならない。
妹からはもう俺は壁紙は勿論の事、家具や照明、果てはベッドシーツに至るまで手出しせず、グレイスに選んで貰う様に厳命されている。
「あと、俺が言った事忘れてないな?」
「し、白い結婚?」
「……そうだけど、俺はお前が心配だ。
お前はグレイス嬢に関すると、途端にポンコツになる」
「……」
「まず話し合えよ?その言葉は一番最後だ。
私はその日まで白い結婚で構いません、とかそんな感じ」
「うまく言えるかな……」
「うまく言えなくていい。
お前の誠意を見せて、大切にしたいから、って。
それだけはちゃんと言えよ」
イーサンがまた俺を泣かせる……
◇◇◇
花嫁姿のグレイスがあまりに眩しくて、俺は正面から彼女を見ることが出来なかった。
その分、彼女が他の客と話したり微笑んだりしてるのを、横目でチラチラ見てしまった。
相変わらず家族の視線も生温かったが、何故か彼女の親族席の老婦人から物凄く見られている気がした。
グレイスの大叔母上だと、式の前に義父上からご紹介いただいた女性だ。
リーヴァイスの義父上は酒に酔い始めて、周囲の客に
『最初の婚約の申し込みは…』等と言い出したので、俺の父が側に付きに行った。
要らない事を言い出さない様に脅し……、いや釘を刺しに行ったのだろう。
王太子殿下は御祝いのお言葉をくださった。
こちらの警備が大変なので、正直来ないでくれたのは助かった。
先にお言葉を読ませていただくと、グレイスの一輪車の乗りっぷりを絶賛されていたので、そこの箇所は塗りつぶした。
殿下には時間が出来たら、グレイスを王宮に連れてくるように言われていたが、事前に打ち合わせをしないと、何を言い出されるか判らない。
「泣いた分、水分補給だ」
イーサンが酒を注いでくれた。
隣のグレイスにもお祝いを述べてくれていて、愛するひとと信じられる友の姿に
『こんなに幸せなことはないな』と、俺は幸福感に包まれていた。
俺は俺の事で精一杯で、隣に居るグレイスが何も口にしていないとは気付けてなかった。
母から念押しされた客室の話も、まだしていなかった。
ようやく結婚出来た、それだけで満足して。
不覚というか、馬鹿だった。
空は何処までも青く澄みわたり、綿菓子の様な白い雲が浮かんでいる。
そして、俺の隣には愛しい愛しい天使、グレイス。
◇◇◇
やっとここまで来れた、と教会の控え室でイーサンを前に俺は泣いた。
宿願のこの日までの1週間、俺の涙腺はおかしかった。
朝日を見ても、太陽の下でも、夕焼けを眺めても、月を仰いでも、泣けた。
全俺が泣いた。
「お前な、いい加減にしろ」
俺は3枚ハンカチを持っていたが、全て嬉し涙でぐっしょりだったので、イーサンから借りた。
濡れてしまったハンカチを返そうとすると、要らないと受け取り拒否された。
「もう身体中の水分がなくなって死ぬかも……」
「今死んだら幼妻どうすんの、誰かのモンになってもいいの」
それは絶対に許さない!
俺は涙を拭いて立ち上がった!
「それからさっき、お前のお母上から伝言預かった。
『部屋の事を早く言え』って。
何の事か、わかってる?」
そうだ、しばらく客室で我慢して貰う事を、グレイスに言わなくてはならない。
妹からはもう俺は壁紙は勿論の事、家具や照明、果てはベッドシーツに至るまで手出しせず、グレイスに選んで貰う様に厳命されている。
「あと、俺が言った事忘れてないな?」
「し、白い結婚?」
「……そうだけど、俺はお前が心配だ。
お前はグレイス嬢に関すると、途端にポンコツになる」
「……」
「まず話し合えよ?その言葉は一番最後だ。
私はその日まで白い結婚で構いません、とかそんな感じ」
「うまく言えるかな……」
「うまく言えなくていい。
お前の誠意を見せて、大切にしたいから、って。
それだけはちゃんと言えよ」
イーサンがまた俺を泣かせる……
◇◇◇
花嫁姿のグレイスがあまりに眩しくて、俺は正面から彼女を見ることが出来なかった。
その分、彼女が他の客と話したり微笑んだりしてるのを、横目でチラチラ見てしまった。
相変わらず家族の視線も生温かったが、何故か彼女の親族席の老婦人から物凄く見られている気がした。
グレイスの大叔母上だと、式の前に義父上からご紹介いただいた女性だ。
リーヴァイスの義父上は酒に酔い始めて、周囲の客に
『最初の婚約の申し込みは…』等と言い出したので、俺の父が側に付きに行った。
要らない事を言い出さない様に脅し……、いや釘を刺しに行ったのだろう。
王太子殿下は御祝いのお言葉をくださった。
こちらの警備が大変なので、正直来ないでくれたのは助かった。
先にお言葉を読ませていただくと、グレイスの一輪車の乗りっぷりを絶賛されていたので、そこの箇所は塗りつぶした。
殿下には時間が出来たら、グレイスを王宮に連れてくるように言われていたが、事前に打ち合わせをしないと、何を言い出されるか判らない。
「泣いた分、水分補給だ」
イーサンが酒を注いでくれた。
隣のグレイスにもお祝いを述べてくれていて、愛するひとと信じられる友の姿に
『こんなに幸せなことはないな』と、俺は幸福感に包まれていた。
俺は俺の事で精一杯で、隣に居るグレイスが何も口にしていないとは気付けてなかった。
母から念押しされた客室の話も、まだしていなかった。
ようやく結婚出来た、それだけで満足して。
不覚というか、馬鹿だった。
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