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第一章 『それぞれの願い』
『俺は、貴方の希望になりたい』
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オーナーだけが使用を可能とする特別室は、部屋というよりは、小さな城という言葉が相応しい、堅牢な作りをしていた。中に入ると、ヴィクトリア朝時代の隆盛期を思わせる、緻密かつ豪奢な装飾と、一つ一つが歴史的かつ文化的価値を有する家具が僕を出迎え、息を呑むという表現が相応しい絢爛豪華なその場所で、僕は、本日三度目の場所見知りを発揮していた。
「客室、バスルーム、トイレ……それと、御園様は直接ご利用はされないとは思いますが、キッチンも一階に。主寝室とバルコニーは二階に御座います。予め主寝室と客室の空調は調節いたしましたが、どちらをご使用して頂いてもかまいません。如何なされますか?」
弘樹先導のもと、特別室にと案内された別棟で僕を出迎えてくれた時任さんは、ハキハキとした口調で別棟にある部屋や間取りの説明をしてくれた。どちらを使用するか、と聞かれた瞬間、どちらでも構いませんとつい言ってしまいそうになったけれど。あまりにもつっけんどんな言い方でしかなかったから、もう一度冷静になって熟考してから、おずおずと自分の意向を示した。
「あの、ゆっくり話がしたいので、できれば主寝室でお願いします」
「かしこまりました。お飲み物と軽食の準備が出来次第、お部屋にお伺い致します。では、これから二階にご案内します。建物の設計上、足元が大変暗くなっておりますので、よろしければ……」
直角90度の最敬礼をしてから、時任さんは、元より近かった互いの距離を詰め、そして。
「私の腕を、お貸しします」
中世ヨーロッパにおいて、執事や使用人が、自らの主人である邸宅の主に向けてそうするのを当然とする所作でもって。もしくは、男性が女性に対してエスコートをする際の気品ある仕草でもって。彼は、片腕を腰と胸の間の辺りで曲げ、そのままその腕を僕の前にスッと差し出した。その洗練された瀟灑な佇まいに、思わず感心してしまった僕は、一拍の間を設けてから、その申し出を有り難く受け取った。
「……ありがとうございます。ですが、出来るだけ早くこの場所に慣れて、これ以上、時任さんのお手を煩わせる事の無いように努力しますね」
この場所には、今夜一晩だけしかお世話なるつもりはない。この場所には、きっと父親とその彼女との想い出が沢山ある筈だから。その大切な場所を、僕みたいな存在が踏み荒らしてはいけないんだ。だから、慣れる前にこの場所とはさようならをするつもりでいたのだけれど。いちいちそれを否定したり、僕の心情を説明したりしていては、忙しい時任さんとお話する貴重な時間が少なくなってしまう。だったら最初から厚意は有り難く受け取って、最後に纏めて事情を説明した方がいい……そう、思ったのだけれど。
「…………と」
「はい?」
僕に向けて軽く腕を曲げたまま、文字通り低姿勢を貫く時任さんが、僕の耳に届きそうで届かない声量で、ぼそりと呟く。反射的に思わず尋ね返すと、時任さんは、今まで一度も目を逸らさずに、真っ直ぐに僕と目と目を合わせていたのをフッと止めて、視線を床へと落とした。
「時任ではなく、千秋、と。私の……俺の事は、呼び捨てにして下さい。年齢差もありますし、何より、立場が違いますから」
年齢差。立場。そんな堅苦しい言葉が、僕達の間に明確な線引きをする。言われてみればそうかもしれない。でも、僕はこの場所で、時任さんに対して下手で幼稚なマウントを取る為に、彼をここに呼び出した訳じゃないから。そこだけは最初に否定しておきたくて、彼のその発言をやんわりと訂正した。
「お気遣い、ありがとうございます。でも僕は、自分の立場を悪用して、貴方をここに呼び付けた悪い人間です。そんな人間に、必要以上に遜る必要はありません。だから、また僕と、目を合わせて話をしてくれないかな?……千秋」
僕の提案を受けて、千秋は、床の上に落としていた視線を、ゆるゆると元あった場所へと修正していった。お互いの目と目が合い、漸く安心した僕は、ほっと胸を撫で下ろし、不安げな様子の千秋を安心させるように、にこりと微笑んでみせた。
「今日、初めて君の存在を知ってから、君がどんな人なのか、ずっと知りたくて堪らなかった。でも、だからって、こうして無理矢理呼び出していいものじゃないのは分かってる。驚いたでしょう?……本当に、ごめんなさい」
「いえ……確かに驚きはしましたが、不快には思っていません」
気遣いができて、本当に人が出来ている。こうして彼の人となりに触れているだけで、彼のお母さんが……父親に愛されてきた彼女が一体どんな女性で、母親としてどれだけ気遣いに溢れた人だったのかが透けて見えてくる気がした。
愛されて然るべき存在だからこそ、彼女はきっと、僕達の父親に、愛されてきたのだろう。
妬ましさ、恨み、憎々しさ……そんな感情は、今ではもう、不思議と湧いてこない。それは、きっと目の前にいてくれる彼が、どこまでも瑞々しく、清涼な存在だからかもしれない。
二人の愛の結晶は、こんなにも美しく、光り輝いている。
「食事の時も、あんなに手厚い待遇をしてくれたのに、幼稚な真似ばかりして、君を困らせてしまったよね……でも、どうやっても、今日この日の時間は、取り戻すことはできないから。何か、埋め合わせが出来ることがあれば言って欲しいんだ。僕の出来ることなら、何でもするよ」
これでいい。これが言いたかった。寧ろ、この為にここにやって来た。そんな確信に満ちた感覚が、僕の中に芽生えていた。
時間は巻き戻したりはできない。だからこそ人は、自分自身をいつも振り返りながら、身の振り方を考えて生きていくしかない。大切にしてくれる人を大切にしていく、たったそれだけを意識して生きていくだけでも、驚く程にその難易度は高い。
でも、向き合って、手と手を取り合って、笑い合っていきたいと思える相手と出会えたならば、どれだけ難易度が高い問題であっても、誠意をもって取り組まなくちゃいけないんだ。
いま、この時のように。
「分かりました。でしたら、一つお願いしたい事があります」
「うん、どうぞ」
「春翔兄さんと、お呼びしても良いですか?」
意外な申し出に、キョトンと目を丸くする。
兄さん。
春翔兄さん。
成る程、でも。
それって、つまり。
「貴方にずっとお会いしたかった。小さな頃から、父から良く話を聞いていたので。お前には、二つ年上の家族がいるんだよ、と」
つまり、君は、僕と。
「だから、いつか大きくなった、その時は、その人の助けになってあげて欲しいと言われて、育ちました」
『家族』になりたいと。
そう思ってくれているの?
「春翔兄さん」
涙で、前が見えない。
違う、君しか視界に入らない。
なんてこと。
本当に、これは現実なんだろうか。
「俺は、貴方の希望になりたい」
オーナーだけが使用を可能とする特別室は、部屋というよりは、小さな城という言葉が相応しい、堅牢な作りをしていた。中に入ると、ヴィクトリア朝時代の隆盛期を思わせる、緻密かつ豪奢な装飾と、一つ一つが歴史的かつ文化的価値を有する家具が僕を出迎え、息を呑むという表現が相応しい絢爛豪華なその場所で、僕は、本日三度目の場所見知りを発揮していた。
「客室、バスルーム、トイレ……それと、御園様は直接ご利用はされないとは思いますが、キッチンも一階に。主寝室とバルコニーは二階に御座います。予め主寝室と客室の空調は調節いたしましたが、どちらをご使用して頂いてもかまいません。如何なされますか?」
弘樹先導のもと、特別室にと案内された別棟で僕を出迎えてくれた時任さんは、ハキハキとした口調で別棟にある部屋や間取りの説明をしてくれた。どちらを使用するか、と聞かれた瞬間、どちらでも構いませんとつい言ってしまいそうになったけれど。あまりにもつっけんどんな言い方でしかなかったから、もう一度冷静になって熟考してから、おずおずと自分の意向を示した。
「あの、ゆっくり話がしたいので、できれば主寝室でお願いします」
「かしこまりました。お飲み物と軽食の準備が出来次第、お部屋にお伺い致します。では、これから二階にご案内します。建物の設計上、足元が大変暗くなっておりますので、よろしければ……」
直角90度の最敬礼をしてから、時任さんは、元より近かった互いの距離を詰め、そして。
「私の腕を、お貸しします」
中世ヨーロッパにおいて、執事や使用人が、自らの主人である邸宅の主に向けてそうするのを当然とする所作でもって。もしくは、男性が女性に対してエスコートをする際の気品ある仕草でもって。彼は、片腕を腰と胸の間の辺りで曲げ、そのままその腕を僕の前にスッと差し出した。その洗練された瀟灑な佇まいに、思わず感心してしまった僕は、一拍の間を設けてから、その申し出を有り難く受け取った。
「……ありがとうございます。ですが、出来るだけ早くこの場所に慣れて、これ以上、時任さんのお手を煩わせる事の無いように努力しますね」
この場所には、今夜一晩だけしかお世話なるつもりはない。この場所には、きっと父親とその彼女との想い出が沢山ある筈だから。その大切な場所を、僕みたいな存在が踏み荒らしてはいけないんだ。だから、慣れる前にこの場所とはさようならをするつもりでいたのだけれど。いちいちそれを否定したり、僕の心情を説明したりしていては、忙しい時任さんとお話する貴重な時間が少なくなってしまう。だったら最初から厚意は有り難く受け取って、最後に纏めて事情を説明した方がいい……そう、思ったのだけれど。
「…………と」
「はい?」
僕に向けて軽く腕を曲げたまま、文字通り低姿勢を貫く時任さんが、僕の耳に届きそうで届かない声量で、ぼそりと呟く。反射的に思わず尋ね返すと、時任さんは、今まで一度も目を逸らさずに、真っ直ぐに僕と目と目を合わせていたのをフッと止めて、視線を床へと落とした。
「時任ではなく、千秋、と。私の……俺の事は、呼び捨てにして下さい。年齢差もありますし、何より、立場が違いますから」
年齢差。立場。そんな堅苦しい言葉が、僕達の間に明確な線引きをする。言われてみればそうかもしれない。でも、僕はこの場所で、時任さんに対して下手で幼稚なマウントを取る為に、彼をここに呼び出した訳じゃないから。そこだけは最初に否定しておきたくて、彼のその発言をやんわりと訂正した。
「お気遣い、ありがとうございます。でも僕は、自分の立場を悪用して、貴方をここに呼び付けた悪い人間です。そんな人間に、必要以上に遜る必要はありません。だから、また僕と、目を合わせて話をしてくれないかな?……千秋」
僕の提案を受けて、千秋は、床の上に落としていた視線を、ゆるゆると元あった場所へと修正していった。お互いの目と目が合い、漸く安心した僕は、ほっと胸を撫で下ろし、不安げな様子の千秋を安心させるように、にこりと微笑んでみせた。
「今日、初めて君の存在を知ってから、君がどんな人なのか、ずっと知りたくて堪らなかった。でも、だからって、こうして無理矢理呼び出していいものじゃないのは分かってる。驚いたでしょう?……本当に、ごめんなさい」
「いえ……確かに驚きはしましたが、不快には思っていません」
気遣いができて、本当に人が出来ている。こうして彼の人となりに触れているだけで、彼のお母さんが……父親に愛されてきた彼女が一体どんな女性で、母親としてどれだけ気遣いに溢れた人だったのかが透けて見えてくる気がした。
愛されて然るべき存在だからこそ、彼女はきっと、僕達の父親に、愛されてきたのだろう。
妬ましさ、恨み、憎々しさ……そんな感情は、今ではもう、不思議と湧いてこない。それは、きっと目の前にいてくれる彼が、どこまでも瑞々しく、清涼な存在だからかもしれない。
二人の愛の結晶は、こんなにも美しく、光り輝いている。
「食事の時も、あんなに手厚い待遇をしてくれたのに、幼稚な真似ばかりして、君を困らせてしまったよね……でも、どうやっても、今日この日の時間は、取り戻すことはできないから。何か、埋め合わせが出来ることがあれば言って欲しいんだ。僕の出来ることなら、何でもするよ」
これでいい。これが言いたかった。寧ろ、この為にここにやって来た。そんな確信に満ちた感覚が、僕の中に芽生えていた。
時間は巻き戻したりはできない。だからこそ人は、自分自身をいつも振り返りながら、身の振り方を考えて生きていくしかない。大切にしてくれる人を大切にしていく、たったそれだけを意識して生きていくだけでも、驚く程にその難易度は高い。
でも、向き合って、手と手を取り合って、笑い合っていきたいと思える相手と出会えたならば、どれだけ難易度が高い問題であっても、誠意をもって取り組まなくちゃいけないんだ。
いま、この時のように。
「分かりました。でしたら、一つお願いしたい事があります」
「うん、どうぞ」
「春翔兄さんと、お呼びしても良いですか?」
意外な申し出に、キョトンと目を丸くする。
兄さん。
春翔兄さん。
成る程、でも。
それって、つまり。
「貴方にずっとお会いしたかった。小さな頃から、父から良く話を聞いていたので。お前には、二つ年上の家族がいるんだよ、と」
つまり、君は、僕と。
「だから、いつか大きくなった、その時は、その人の助けになってあげて欲しいと言われて、育ちました」
『家族』になりたいと。
そう思ってくれているの?
「春翔兄さん」
涙で、前が見えない。
違う、君しか視界に入らない。
なんてこと。
本当に、これは現実なんだろうか。
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