我が家の猫は王様である

饕餮

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引っ越し

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 ある日、大家さんから通達が来た。
 住宅が古く、屋根などの修理が追いつかないことや、壁の修理がままならないことから、この界隈に住んでいる人に引っ越してほしいと言って来たのだ。
 急に言われても、私たち住人はすぐに引っ越すことなんてできない。それも踏まえて、一年の期間を設けてくれた。

 で、我が家は龍が来る前から団地の申し込みをしていて、それが当たらなかったら別のところを探さなければならない。どうしようか、と思っていた矢先、大家さんから通達が来る前に申し込んでいた団地が当たったのだ。
 手続きや書類を掻き集めるのは大変だったけど、なんとか申請が通り、早い段階での引っ越しができるようになった。
 その団地とは今住んでいるところ。場所や内部を確認する日にちは一日だけだったし、引っ越しする日にちもきちん決まっていたから、業者を探すのも大変だったけどなんとかそれもクリアーし、それまでに箱詰めやらいらないものを捨てたり、粗大ゴミの引き取りの連絡などこなしていった。
 その中で邪魔しまくっていたのが龍だ。

 ダンボールをもらってきたので、その中に季節的に使わない洋服を入れていると、その中に入って寝転がる。
 食器を包むのに新聞紙を広げると、バリバリと爪とぎをしてボロボロにする。
 挙げ句の果てに、ダンボールに入ったまま出て来ない。出ても、顔を出すだけ。




 まあ、ダンボールさえ与えておけばおとなしかったので、そのまま放置し、引っ越し作業をした。

 引っ越し当日は雨だった。
 引っ越し業者が来た時は逃げないよう猫用のリードを付けて私が持ち、掃除をする時は押入れに入れて隔離。先発隊で弟が先に行ってくれたので、その間に纏まっていない荷物をまとめ、掃除をした。二回で荷物の全てを持って行ってくれたので、あとは私が自転車の籠に龍を乗せ、歩いて行くだけになった。
 三月とはいえ、雨が降っていると寒い。キャリーバッグにお気に入りのフリースと龍を入れ、入口以外を毛布で巻いた。そしてそのまま毛布ごとゴミ袋の中にいれて自転車の籠に固定すると、私が見えるようにしながら移動をした。
 袋の口は閉めていない。
 途中、どこに連れていかれるかわからないからなのか、龍がしきりに鳴く。そのたびに声をかけ、ようやく新居に着いた。
 家具の設置なども終わらせてくれたようで、すぐに使う食器を出したり、洋服を箪笥などに詰めれば終わりの状態になっていた。
 ここまでくればあとは大丈夫なので、龍をバッグから出して探検させる。
 前の家よりも広いからなのか、龍はあっちでうろうろ、こっちでうろうろと、真新しい畳の匂いを嗅ぎながら各部屋を探検しまくった。
 それでも三日くらいは、落ち着かないみたいでずとうろうろしていたけど、今ではふてぶてしいまでに、自分のお気に入りの場所で寝ている。


 お気に入りの場所、その1。テレビ台の裏や横。ダンボールの爪とぎを枕にゴロン。お腹に乗っているのは保冷剤を包んだタオル。



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