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面接
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翌日。
目の前には基地のゲートがあり、緑色の迷彩服を着た人が二人立っていた。そこに近づくと一人の人が近づいてきた。何もしていないけど、ついドキドキしちゃう。
「ようこそ立川基地へ。どうされましたか?」
「あ、あの、食堂の面接に来ました。約束の時間は十時なんです」
「わかりました。ここをくぐり抜けたらそこの建物に行って用件を伝えてください」
「わかりました」
現在の時刻は九時半。ちょっと早かったかなあ……とは思うものの、遅れるよりはマシだった。
私が通れるだけのゲート開けくれて中に通されると、近くに見えた小さな建物に近づく。そこでも同じことを伝えて身分証を見せると、「これにお名前と目的を書いてください」と紙切れを渡された。そこに記入している間に連絡してくれたようだった。
「迎えにくるそうなのでここでお待ちください」
「はい。ありがとうございます」
許可証を渡されて首から提げ、言われた通りにおとなしく待っていると、「おはようございます」と声をかけられた。その人も迷彩服を着ている。
「岡崎さん、かな?」
「はい、岡崎 紫音です。あの……先日お電話でお話した金本さんでしょうか」
「ああ、僕が金本だよ。じゃあ、僕のあとについてきてね」
「はい」
面接場所であり、もしかしたら職場になるかも知れない建物まで案内してくれるというので、おとなしくついて行く。途中で聞いた話によると金本さんは糧食班の班長さんで、三等陸佐らしい。確か父が去年昇任して一等陸佐になったと言っていたから、それよりも下になる。
「あ、チヌたんだ!」
「へえ、女性なのにチヌークを知っているんだ」
「あ、申し訳ありません。小さいころに基地がある別の場所に住んでいたんですけど、そこの基地にチヌークが配備されていて、日がな一日眺めていました」
「珍しいね。チヌークが好きなのかな?」
「はい! 一度父と一緒に航空祭の搭乗体験で乗ったんですけど、そこで感動してからずっと好きなんです!」
私の力説に金本さんは「そうなんだ。ありがとう」と微笑んでくれた。
「あ、申し訳ありません……」
「いやいや。理解してくれる人がいるのは、僕としても嬉しいから気にしないで」
この基地周辺に住んでる人は理解があって助かるけどね、と言って笑った金本さん。確かにテレビや新聞で報道されているように、中には自衛隊の重要性や任務に理解がない人がいるけれど、情勢を知っていたらそんなことは言えないと私は思ってる。
最終的に防衛して私たち国民を守ってくれるのは陸海空の自衛官たちなのだ……それがわかっているのならあんなことはしないし憤ることはないと思うし、そこまで言うなら自分たちで防衛しろと言いたくなる。どうせ最後には厚顔無恥にも「できない」「助けてくれ」って言いそう! と偏見を持ってしまうけどね!
それはともかく、チヌークを横目に金本さんと歩く。十分ほど歩いたところでその建物に着いた。
外観は白い建物で、少し大きいファミレスくらいの大きさだった。
「ここが職場なるところだよ。見学してみるかい?」
「是非お願いします!」
「いいよ。でも先に面接をしようか」
「はい」
外観を見せてくれたあと、そのまま少しだけ歩く。左に曲がってすぐに扉がふたつあり、そのうちのひとつに案内された。そこを通りぬけるとまた扉があり、その扉を開けると迷彩服を着た人と制服を着た人がいた。二人とも四十台前半くらいだろうか。制服の人は横棒二本線に星? が一つだから、金本さんと同じ三等陸佐なんだろう。これは父に教わった階級の見方だった。
そこに金本さんが座る。そこで履歴書を渡すと真ん中にいた制服の人に「座って」と言われ、座る前に名前を告げた。
「岡崎 紫音です。よろしくお願いいたします」
「岡崎?」
私の苗字に、制服を着た人が反応して、じっと私を見る。
「あの……?」
「ああ、すまない。この基地にいる司令や別の自衛官と同じ苗字だったからね」
「そうですか。ですが私のはそれほど珍しい苗字ではないと思うのですが……」
「確かに。では、面接を始めようか」
ここの司令官は岡崎っていうのか……父や私とおんなじ苗字だなあ……なんて考えてる場合じゃなかったと慌てて姿勢を正し、面接が始まった。志望動機や今までしてきた仕事などを聞かれ、正直に答えていく。いろいろ聞かれたけど、ちゃんと答えられたと思う。
「これで終わりだが、質問はあるかね?」
「はい。あの、どうして一年間限定なのでしょうか?」
「ああ、掃除は派遣の人に頼んでいるんだが、そのうちのひとりが産休で辞めてしまってね。そこの派遣業者にしばらく頼んでいたんだけど、なかなかこなくて。こちらにも事情があって、あと一年でそこと契約を切るから、どうせならそれまでバイトという形にしようと思っていたんだ」
「そうなんですね」
「他に何かあるかい?」
「えっと……」
他にどんな掃除をするのか、どこまでするのかを聞く。掃除以外にも服装の注意点や勤務時間、他に何か手伝うのかと聞けば、危ないのでズボンで来ることと掃除と食器洗いを専門にしてほしいことを言われた。勤務時間は八時から六時までの実労八時間で休憩が二時間あり、勤務は土日を含めた週四日。食事は糧食班の人や手伝いにくる自衛官が作ることになっているそうだ。
「他には?」
「特に思いつきません」
「そうか。ではこれで面接は終わりだ。中を見学したいなら、金本三佐に言うといい。合否の連絡は一週間以内にするから」
「はい、わかりました。ありがとうございました」
金本さんが席を立って促してくれたので、私も席を立って頭を下げると外に出た。
「こっちだよ」
外に出ると、隣にあった扉に入る。ここは食堂のキッチンに繋がっていて、迷彩服にエプロンをした自衛官が五、六いた。中には女性もいて、彼らは手分けしてジャガイモと玉ねぎ、ニンジンの皮むきをしていた。
「ここが食事を作るところだよ。岡崎さんはこの場所に入ることはないからね。包丁があるから気をつけて」
「はい」
私たちを見ていた自衛官に頭を下げ、金本さんのあとをついていくと、そこには大きなお鍋や食器洗浄機があった。なぜかカウンターがついている窓口がふたつある。
「ここが職場の一つになるところだよ。正面に見えるカウンターは一般の隊員、右にあるのは幹部が食事をしたあとで食器を下げる場所なんだ。忙しい時は一気に来て大変だけどね」
「そうなんですか……」
「で、掃除をするのは、一般と幹部の食堂になる。今はこんなところかな」
これ以上の詳しい仕事内容は受かってからとのことだったので、それ以上は質問しなかった。そして外に出ると、「気をつけて帰ってください」と言われ、頭を下げてゲートがあるほうへと向かう。
左側には滑走路と芝生、訓練をしているのか、カエルの口から自衛官がスルスルと下りてきていた。
「すごいなあ……。お兄ちゃんやお父さんもあんなことをしてるのかな」
立ち止まるわけにはいかないので、歩きながらその風景を見る。チヌークが飛んでいるせいか、風とプロペラ、エンジンの音がものすごい。写真を撮りたいけど勝手にとるわけにはいかないし……。
「また乗ってみたいな、チヌたんに」
ここはもうじき航空祭があると聞いているし、ゲートや最初に寄った建物にポスターが貼ってあった。いつか乗れるといいなあと思いながらその訓練風景を眺めるていると、あっという間にゲートに着いた。
最初に行った小さな建物に寄って許可証を返し、ゲートに近づく。
「ありがとうございました」
「お気をつけて」
そう返してくれたことが嬉しかった。
その日の夜。ご飯を食べている時、二番目の兄からメールが来た。明日は入間基地の航空祭だし、いつまた移動になるかわからないから、基地までくれば案内してくれるということだった。
「おー! 入間基地に行けるのかー!」
引っ越してきたばかりだから駅の周辺を散策したかったけど、それはいつでもできるからと兄の誘いに乗り、待ち合わせ場所と時間、わからないと困るからと着ていく服装を写真に撮ってメールで送った。
しばらくメールでやりとりしたあとでお風呂に入り、受からないだろうとハローワークで教えてもらったサイトで少し仕事を探し、相談するのによさそうなのをメモに書いたあと、眠りについた。
目の前には基地のゲートがあり、緑色の迷彩服を着た人が二人立っていた。そこに近づくと一人の人が近づいてきた。何もしていないけど、ついドキドキしちゃう。
「ようこそ立川基地へ。どうされましたか?」
「あ、あの、食堂の面接に来ました。約束の時間は十時なんです」
「わかりました。ここをくぐり抜けたらそこの建物に行って用件を伝えてください」
「わかりました」
現在の時刻は九時半。ちょっと早かったかなあ……とは思うものの、遅れるよりはマシだった。
私が通れるだけのゲート開けくれて中に通されると、近くに見えた小さな建物に近づく。そこでも同じことを伝えて身分証を見せると、「これにお名前と目的を書いてください」と紙切れを渡された。そこに記入している間に連絡してくれたようだった。
「迎えにくるそうなのでここでお待ちください」
「はい。ありがとうございます」
許可証を渡されて首から提げ、言われた通りにおとなしく待っていると、「おはようございます」と声をかけられた。その人も迷彩服を着ている。
「岡崎さん、かな?」
「はい、岡崎 紫音です。あの……先日お電話でお話した金本さんでしょうか」
「ああ、僕が金本だよ。じゃあ、僕のあとについてきてね」
「はい」
面接場所であり、もしかしたら職場になるかも知れない建物まで案内してくれるというので、おとなしくついて行く。途中で聞いた話によると金本さんは糧食班の班長さんで、三等陸佐らしい。確か父が去年昇任して一等陸佐になったと言っていたから、それよりも下になる。
「あ、チヌたんだ!」
「へえ、女性なのにチヌークを知っているんだ」
「あ、申し訳ありません。小さいころに基地がある別の場所に住んでいたんですけど、そこの基地にチヌークが配備されていて、日がな一日眺めていました」
「珍しいね。チヌークが好きなのかな?」
「はい! 一度父と一緒に航空祭の搭乗体験で乗ったんですけど、そこで感動してからずっと好きなんです!」
私の力説に金本さんは「そうなんだ。ありがとう」と微笑んでくれた。
「あ、申し訳ありません……」
「いやいや。理解してくれる人がいるのは、僕としても嬉しいから気にしないで」
この基地周辺に住んでる人は理解があって助かるけどね、と言って笑った金本さん。確かにテレビや新聞で報道されているように、中には自衛隊の重要性や任務に理解がない人がいるけれど、情勢を知っていたらそんなことは言えないと私は思ってる。
最終的に防衛して私たち国民を守ってくれるのは陸海空の自衛官たちなのだ……それがわかっているのならあんなことはしないし憤ることはないと思うし、そこまで言うなら自分たちで防衛しろと言いたくなる。どうせ最後には厚顔無恥にも「できない」「助けてくれ」って言いそう! と偏見を持ってしまうけどね!
それはともかく、チヌークを横目に金本さんと歩く。十分ほど歩いたところでその建物に着いた。
外観は白い建物で、少し大きいファミレスくらいの大きさだった。
「ここが職場なるところだよ。見学してみるかい?」
「是非お願いします!」
「いいよ。でも先に面接をしようか」
「はい」
外観を見せてくれたあと、そのまま少しだけ歩く。左に曲がってすぐに扉がふたつあり、そのうちのひとつに案内された。そこを通りぬけるとまた扉があり、その扉を開けると迷彩服を着た人と制服を着た人がいた。二人とも四十台前半くらいだろうか。制服の人は横棒二本線に星? が一つだから、金本さんと同じ三等陸佐なんだろう。これは父に教わった階級の見方だった。
そこに金本さんが座る。そこで履歴書を渡すと真ん中にいた制服の人に「座って」と言われ、座る前に名前を告げた。
「岡崎 紫音です。よろしくお願いいたします」
「岡崎?」
私の苗字に、制服を着た人が反応して、じっと私を見る。
「あの……?」
「ああ、すまない。この基地にいる司令や別の自衛官と同じ苗字だったからね」
「そうですか。ですが私のはそれほど珍しい苗字ではないと思うのですが……」
「確かに。では、面接を始めようか」
ここの司令官は岡崎っていうのか……父や私とおんなじ苗字だなあ……なんて考えてる場合じゃなかったと慌てて姿勢を正し、面接が始まった。志望動機や今までしてきた仕事などを聞かれ、正直に答えていく。いろいろ聞かれたけど、ちゃんと答えられたと思う。
「これで終わりだが、質問はあるかね?」
「はい。あの、どうして一年間限定なのでしょうか?」
「ああ、掃除は派遣の人に頼んでいるんだが、そのうちのひとりが産休で辞めてしまってね。そこの派遣業者にしばらく頼んでいたんだけど、なかなかこなくて。こちらにも事情があって、あと一年でそこと契約を切るから、どうせならそれまでバイトという形にしようと思っていたんだ」
「そうなんですね」
「他に何かあるかい?」
「えっと……」
他にどんな掃除をするのか、どこまでするのかを聞く。掃除以外にも服装の注意点や勤務時間、他に何か手伝うのかと聞けば、危ないのでズボンで来ることと掃除と食器洗いを専門にしてほしいことを言われた。勤務時間は八時から六時までの実労八時間で休憩が二時間あり、勤務は土日を含めた週四日。食事は糧食班の人や手伝いにくる自衛官が作ることになっているそうだ。
「他には?」
「特に思いつきません」
「そうか。ではこれで面接は終わりだ。中を見学したいなら、金本三佐に言うといい。合否の連絡は一週間以内にするから」
「はい、わかりました。ありがとうございました」
金本さんが席を立って促してくれたので、私も席を立って頭を下げると外に出た。
「こっちだよ」
外に出ると、隣にあった扉に入る。ここは食堂のキッチンに繋がっていて、迷彩服にエプロンをした自衛官が五、六いた。中には女性もいて、彼らは手分けしてジャガイモと玉ねぎ、ニンジンの皮むきをしていた。
「ここが食事を作るところだよ。岡崎さんはこの場所に入ることはないからね。包丁があるから気をつけて」
「はい」
私たちを見ていた自衛官に頭を下げ、金本さんのあとをついていくと、そこには大きなお鍋や食器洗浄機があった。なぜかカウンターがついている窓口がふたつある。
「ここが職場の一つになるところだよ。正面に見えるカウンターは一般の隊員、右にあるのは幹部が食事をしたあとで食器を下げる場所なんだ。忙しい時は一気に来て大変だけどね」
「そうなんですか……」
「で、掃除をするのは、一般と幹部の食堂になる。今はこんなところかな」
これ以上の詳しい仕事内容は受かってからとのことだったので、それ以上は質問しなかった。そして外に出ると、「気をつけて帰ってください」と言われ、頭を下げてゲートがあるほうへと向かう。
左側には滑走路と芝生、訓練をしているのか、カエルの口から自衛官がスルスルと下りてきていた。
「すごいなあ……。お兄ちゃんやお父さんもあんなことをしてるのかな」
立ち止まるわけにはいかないので、歩きながらその風景を見る。チヌークが飛んでいるせいか、風とプロペラ、エンジンの音がものすごい。写真を撮りたいけど勝手にとるわけにはいかないし……。
「また乗ってみたいな、チヌたんに」
ここはもうじき航空祭があると聞いているし、ゲートや最初に寄った建物にポスターが貼ってあった。いつか乗れるといいなあと思いながらその訓練風景を眺めるていると、あっという間にゲートに着いた。
最初に行った小さな建物に寄って許可証を返し、ゲートに近づく。
「ありがとうございました」
「お気をつけて」
そう返してくれたことが嬉しかった。
その日の夜。ご飯を食べている時、二番目の兄からメールが来た。明日は入間基地の航空祭だし、いつまた移動になるかわからないから、基地までくれば案内してくれるということだった。
「おー! 入間基地に行けるのかー!」
引っ越してきたばかりだから駅の周辺を散策したかったけど、それはいつでもできるからと兄の誘いに乗り、待ち合わせ場所と時間、わからないと困るからと着ていく服装を写真に撮ってメールで送った。
しばらくメールでやりとりしたあとでお風呂に入り、受からないだろうとハローワークで教えてもらったサイトで少し仕事を探し、相談するのによさそうなのをメモに書いたあと、眠りについた。
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