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ガート帝国編
第68話 空の旅
街道を使わずにいる空の旅は、めっちゃ快適であった。なにせデカいフレスベルグが二羽飛んでいるんだよ? レベル差もあるからなのか、飛べる魔物で小さいのは襲ってくることなく、ピオとエバを見た途端に逃げ出していた。
ワイバーンもいないしね~。マジですいすい進んでいる。
遠くを見ると雪が被った山々が連なり、下を見れば森や草原、湖が点在している。これだけ湖があるってことは、かなり豊かな土地なんだろう。
雪が被っている山は万年雪なのかな? だから森も水も豊かで、穀倉地帯となっているのかもね。だからこそ、大国として君臨しているのも頷けるし、米が栽培されているのも頷ける。
気候も日本に似ているようで、北に進むにつれて刈り取られていない水田が増えてきた。黄金色に実り、頭を垂れている稲穂がたくさん連なっている。
その合間に畑や果樹園があるんだから、ある意味節操がない状態で苦笑してしまう。
そんな長閑な風景に、祖父母を思い出す。祖父母も米を作っていたからなあ。祖父母が亡くなったあとは、農業に興味を持っていた弟が跡をついだが……今ごろは元気にやっているんだろうか。
ねーちゃんは異世界で生きてるぞ。めっちゃ可愛くて賢い従魔が四匹もいるぞ。
だから悲しむんじゃない。
そんなことを伝えられればいいけれど、こればかりはしょうがない。他の兄弟たちも元気でいてくれるといいなあ……と、珍しく感傷にひたってみた。
つうかね……さすがは一直線の空の旅。王都までもう半分のところに来たんだが! 早すぎるでしょ!
まあ、本来の大きさになってるから、当たり前ではあるんだけれど。
「エバ、半分まで来たから、交代しようか」
<もう半分まで来たの? 早い!>
<次はオレだな! アリサたちを乗せて飛べるのが楽しみだ!>
「ふふ、そうね。私も楽しみよ♪」
草原になっているところを発見したので、そこに下りてもらう。ついでにお昼休憩にしてしまおう。
従魔たちに聞くと特に食べたいものはないとのことだったので大量に作ってあるおにぎりにして、あとは味噌汁とロック鳥を揚げ焼きにしてみた。そのうちアヒージョでも作ってみるかなあ。
アヒージョならワインにも合うと思うんだよね。
問題は油が大量に使えるかってことなんだけれど、どうもこの帝国ではあれこれ作っているみたいで、大豆油と米油も売っていたのだ。買ってはいないけれど、試しに買ってもいいかもしれない。
オリーブオイルがあれば一番いいが、ないならあるもので対処するしかないからね~。まあ、作ってみてからだね。
魚介類の料理は無理でも、それ以外の料理なら帝国に広めてもいいし。リュミエールからも米料理の普及を頼まれているから、どんなおかずがあるのか、そしてミショの実があるかどうかを確かめてから広めよう。
ミショの実がないとどうにもならないし。
なかったら、トマトやソースを使ったものを考えよう。マヨネーズもあるしね。
できれば、酢を見つけてマヨネーズの味を調えたい。そのためには、酒蔵を探さないとダメだろうなあ……。なかったら錬金術か料理スキルで作って、自分だけで楽しもう。そうしよう。
米が手に入るんだから、なんとかなるっしょ。それに、ミショの実だけじゃなくて自家製の味噌も作りたいしね。そのためには温度管理ができる麹蔵も作らないとなあ。
この世界にも麹があるといいな。
そんな自分の野望を抱いてニマニマしつつ、籠をピオにくくりつける。
「ピオ、苦しかったりはない?」
<大丈夫>
「わかった。じゃあ、さっきと同じように籠に入れるよ~」
<<はーい>>
元気に返事をしたノンとリコを籠の中に入れたあと、私も中へと入る。飛んでる間は、ずっとあぐらをかいていた私の足に収まっていたからね、二匹は。おかげで私も二匹も寒いなんてことはなかった。
すげえな、SSランクの素材と耐寒の付与は。全然寒くなくて、ずっとポカポカしていた。
準備ができたところでピオに声をかけると、エバと一緒に飛び立つ。オスだからなのか飛び方もエバと違い、とても力強い。
だけど飛んでいる間は優雅に飛んでいて、揺れるなんてこともなかった。
もうね……目を輝かせて空や地上を眺めているノンとリコが可愛くてね……! ずっと悶えていたよ!
そんな私の心の中はともかく。そろそろマップを確認しないといけないからとマップを大きくすると、あと少しで王都手前の町に着くようだった。その先には小さめの町がふたつと村が三つあり、村が切れた先には草原と森が広がっている。
その先にも町があり、そこを抜けると王都に辿り着くみたい。
さすがにフレスベルグ本来の大きさのまま町や王都まで飛んで行くと騒ぎになるだろうから、その草原で下りることを話すと、ピオとエバが頷いた。
そこから十分もしないうちに、その草原に着く。
「あ~、楽しかった! ピオ、エバ。ありがとう!」
<<ありがとう!>>
<<どういたしまして>>
自分たちも楽しかったと満足気なピオとエバ。また空の旅をしてもいいかもね。
当面の間は籠は使わないからと、籠はアイテムボックスのほうへしまう。その間にリコが元の大きさに戻り、ピオとエバはカラスサイズになった。
「今日はどこで泊まりたい?」
<<<<森!>>>>
「森なんだ。町や帝都で絡まれるのも嫌だしね」
面倒だからなあ、大きな町は。帝都ともなれば、今まで泊まってきた町以上に大きいだろうし、面倒ごとも増えるだろうし。
特に売りたい素材もないし、買いたい材料もない。まあ、ペペインで言われた通りたくさんの物資が集まっているだろうから、帝都を散策はしてみたいと思うが。
それは明日でもいいかとリコを走らせてすぐのことだった。ピオから警告が来る。
<アリサ、獣人が襲われている>
「盗賊?」
<いえ、魔物みたい。フォレストウルフの群れよ>
「また獣人かい……。人間よりはいいけど。ピオ、エバ。先行して雷を喰らわせてやって。リコ、すぐに行こう」
<<<わかった!>>>
私の言葉に肩から飛んでいくピオとエバ、そのあとを駆けていくリコ。視線の先では馬車を囲むフォレストウルフの群れと、それを必死に護っている獣人たちの姿が見えた。
すぐにピオとエバが雷を落としてフォレストウルフを何匹が倒したあと、二羽揃って結界を張っている。ナイス!
「な、なんだ⁉」
「雷⁉」
「しかも、これは結界か……?」
「そこから動かないで! 今から群れを殲滅するわ!」
「わ、わかった!」
私の姿が見えたんだろう。すぐに熊獣人の男が反応して声を出す。他の獣人たちも反応して、剣や槍、杖を構えたまま動かずにいてくれているのはありがたい。
「思いっきりやっていいわよ!」
<<<<はーい!>>>>
私の合図に、従魔たちが返事をすると同時に、魔法があちこち炸裂する。幾筋もの雷が落ち、ストーンランスが下から飛び出して首を貫き、風の刃が首を落とす。
その光景を見た獣人たちが唖然としている間に、私も槍をふるって首を斬り落としていく。あっという間にフォレストウルフを全滅させた。
しばらく警戒していたけれど追加が来ることもなく、マップを確認しても集団は見当たらない。いても遠くに赤い点があるだけで、こちらに来る様子もなかった。
すぐにピオとエバが結界を解き、私の両肩にとまる。
「大丈夫? 怪我は?」
「あ、ああ大丈夫だ」
「怪我はしているけれど、回復魔法があるから問題ないわ」
「そう、よかった」
とりあえず先に声をかけたが、問題ないようだ。すぐに杖を持った女性が回復魔法を使い、怪我をしていた彼らを治している。
「追加で魔物が寄ってきても困るから解体したいんだけど……いいかしら」
「頼む。俺たちも手伝うから」
「シスコ、馬車と旦那様たちの護衛を頼む」
「わかったわ」
「なら、一応結界を張っておくわね」
「助かる」
熊と狼の獣人男性が馬車から離れる。シスコと呼ばれた大剣を持った女性と杖を持った女性は、馬車の護衛をするようだ。危ないからと結界を張り、三人でフォレストウルフを解体することにした。
ワイバーンもいないしね~。マジですいすい進んでいる。
遠くを見ると雪が被った山々が連なり、下を見れば森や草原、湖が点在している。これだけ湖があるってことは、かなり豊かな土地なんだろう。
雪が被っている山は万年雪なのかな? だから森も水も豊かで、穀倉地帯となっているのかもね。だからこそ、大国として君臨しているのも頷けるし、米が栽培されているのも頷ける。
気候も日本に似ているようで、北に進むにつれて刈り取られていない水田が増えてきた。黄金色に実り、頭を垂れている稲穂がたくさん連なっている。
その合間に畑や果樹園があるんだから、ある意味節操がない状態で苦笑してしまう。
そんな長閑な風景に、祖父母を思い出す。祖父母も米を作っていたからなあ。祖父母が亡くなったあとは、農業に興味を持っていた弟が跡をついだが……今ごろは元気にやっているんだろうか。
ねーちゃんは異世界で生きてるぞ。めっちゃ可愛くて賢い従魔が四匹もいるぞ。
だから悲しむんじゃない。
そんなことを伝えられればいいけれど、こればかりはしょうがない。他の兄弟たちも元気でいてくれるといいなあ……と、珍しく感傷にひたってみた。
つうかね……さすがは一直線の空の旅。王都までもう半分のところに来たんだが! 早すぎるでしょ!
まあ、本来の大きさになってるから、当たり前ではあるんだけれど。
「エバ、半分まで来たから、交代しようか」
<もう半分まで来たの? 早い!>
<次はオレだな! アリサたちを乗せて飛べるのが楽しみだ!>
「ふふ、そうね。私も楽しみよ♪」
草原になっているところを発見したので、そこに下りてもらう。ついでにお昼休憩にしてしまおう。
従魔たちに聞くと特に食べたいものはないとのことだったので大量に作ってあるおにぎりにして、あとは味噌汁とロック鳥を揚げ焼きにしてみた。そのうちアヒージョでも作ってみるかなあ。
アヒージョならワインにも合うと思うんだよね。
問題は油が大量に使えるかってことなんだけれど、どうもこの帝国ではあれこれ作っているみたいで、大豆油と米油も売っていたのだ。買ってはいないけれど、試しに買ってもいいかもしれない。
オリーブオイルがあれば一番いいが、ないならあるもので対処するしかないからね~。まあ、作ってみてからだね。
魚介類の料理は無理でも、それ以外の料理なら帝国に広めてもいいし。リュミエールからも米料理の普及を頼まれているから、どんなおかずがあるのか、そしてミショの実があるかどうかを確かめてから広めよう。
ミショの実がないとどうにもならないし。
なかったら、トマトやソースを使ったものを考えよう。マヨネーズもあるしね。
できれば、酢を見つけてマヨネーズの味を調えたい。そのためには、酒蔵を探さないとダメだろうなあ……。なかったら錬金術か料理スキルで作って、自分だけで楽しもう。そうしよう。
米が手に入るんだから、なんとかなるっしょ。それに、ミショの実だけじゃなくて自家製の味噌も作りたいしね。そのためには温度管理ができる麹蔵も作らないとなあ。
この世界にも麹があるといいな。
そんな自分の野望を抱いてニマニマしつつ、籠をピオにくくりつける。
「ピオ、苦しかったりはない?」
<大丈夫>
「わかった。じゃあ、さっきと同じように籠に入れるよ~」
<<はーい>>
元気に返事をしたノンとリコを籠の中に入れたあと、私も中へと入る。飛んでる間は、ずっとあぐらをかいていた私の足に収まっていたからね、二匹は。おかげで私も二匹も寒いなんてことはなかった。
すげえな、SSランクの素材と耐寒の付与は。全然寒くなくて、ずっとポカポカしていた。
準備ができたところでピオに声をかけると、エバと一緒に飛び立つ。オスだからなのか飛び方もエバと違い、とても力強い。
だけど飛んでいる間は優雅に飛んでいて、揺れるなんてこともなかった。
もうね……目を輝かせて空や地上を眺めているノンとリコが可愛くてね……! ずっと悶えていたよ!
そんな私の心の中はともかく。そろそろマップを確認しないといけないからとマップを大きくすると、あと少しで王都手前の町に着くようだった。その先には小さめの町がふたつと村が三つあり、村が切れた先には草原と森が広がっている。
その先にも町があり、そこを抜けると王都に辿り着くみたい。
さすがにフレスベルグ本来の大きさのまま町や王都まで飛んで行くと騒ぎになるだろうから、その草原で下りることを話すと、ピオとエバが頷いた。
そこから十分もしないうちに、その草原に着く。
「あ~、楽しかった! ピオ、エバ。ありがとう!」
<<ありがとう!>>
<<どういたしまして>>
自分たちも楽しかったと満足気なピオとエバ。また空の旅をしてもいいかもね。
当面の間は籠は使わないからと、籠はアイテムボックスのほうへしまう。その間にリコが元の大きさに戻り、ピオとエバはカラスサイズになった。
「今日はどこで泊まりたい?」
<<<<森!>>>>
「森なんだ。町や帝都で絡まれるのも嫌だしね」
面倒だからなあ、大きな町は。帝都ともなれば、今まで泊まってきた町以上に大きいだろうし、面倒ごとも増えるだろうし。
特に売りたい素材もないし、買いたい材料もない。まあ、ペペインで言われた通りたくさんの物資が集まっているだろうから、帝都を散策はしてみたいと思うが。
それは明日でもいいかとリコを走らせてすぐのことだった。ピオから警告が来る。
<アリサ、獣人が襲われている>
「盗賊?」
<いえ、魔物みたい。フォレストウルフの群れよ>
「また獣人かい……。人間よりはいいけど。ピオ、エバ。先行して雷を喰らわせてやって。リコ、すぐに行こう」
<<<わかった!>>>
私の言葉に肩から飛んでいくピオとエバ、そのあとを駆けていくリコ。視線の先では馬車を囲むフォレストウルフの群れと、それを必死に護っている獣人たちの姿が見えた。
すぐにピオとエバが雷を落としてフォレストウルフを何匹が倒したあと、二羽揃って結界を張っている。ナイス!
「な、なんだ⁉」
「雷⁉」
「しかも、これは結界か……?」
「そこから動かないで! 今から群れを殲滅するわ!」
「わ、わかった!」
私の姿が見えたんだろう。すぐに熊獣人の男が反応して声を出す。他の獣人たちも反応して、剣や槍、杖を構えたまま動かずにいてくれているのはありがたい。
「思いっきりやっていいわよ!」
<<<<はーい!>>>>
私の合図に、従魔たちが返事をすると同時に、魔法があちこち炸裂する。幾筋もの雷が落ち、ストーンランスが下から飛び出して首を貫き、風の刃が首を落とす。
その光景を見た獣人たちが唖然としている間に、私も槍をふるって首を斬り落としていく。あっという間にフォレストウルフを全滅させた。
しばらく警戒していたけれど追加が来ることもなく、マップを確認しても集団は見当たらない。いても遠くに赤い点があるだけで、こちらに来る様子もなかった。
すぐにピオとエバが結界を解き、私の両肩にとまる。
「大丈夫? 怪我は?」
「あ、ああ大丈夫だ」
「怪我はしているけれど、回復魔法があるから問題ないわ」
「そう、よかった」
とりあえず先に声をかけたが、問題ないようだ。すぐに杖を持った女性が回復魔法を使い、怪我をしていた彼らを治している。
「追加で魔物が寄ってきても困るから解体したいんだけど……いいかしら」
「頼む。俺たちも手伝うから」
「シスコ、馬車と旦那様たちの護衛を頼む」
「わかったわ」
「なら、一応結界を張っておくわね」
「助かる」
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