自重をやめた転生者は、異世界を楽しむ

饕餮

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ガート帝国編

第69話 商人・カッテリーニ夫妻

 獣人の護衛二人と一緒に、フォレストウルフを解体していく。彼らも解体のスキルを持っているようで、あっという間に解体していた。
 倒したのが私だからと、わざわざ持って来てくれるのが何ともかんとも……。
 それを全部預かってウエストポーチに入れると、馬車のところに行く。そこには身形のいい、狼の獣人の男女二人が立っていた。

「旦那様、奥様。彼女が助けてくれた方です」
「そうですか。ありがとうございます。わたくしどもは帝都に店を構える商人です」
「冒険者よ。四匹の魔物は従魔なの」

 まずは簡単に挨拶をしたあと、自己紹介。
 二人はカッテリーニ商会という店を経営している商人で、女性は奥様だという。名前は、男性がディエゴ、女性がサリタ。そして護衛は商会で雇っている獣人たちで、剣を扱う男性がマックスでリーダー、槍を使う男性のジョナス、大剣を扱う女性のシスコ、魔術師で女性のイレーネの四人。
 別の町まで行っていた帰りだそうで、ここでフォレストウルフに襲われたという。あと少し遅かったら、全滅していたと話す彼ら。

「そうね。かなりの数がいたもの。早く発見できてよかったわ」
「こちらこそ助かりました。できればお礼をしたいのですが……」
「気にしないで。フォレストウルフの素材をもらえれば充分よ」
「ですが……」
「なら、フォレストウルフの素材を買ってくれないかしら。あと、帝都に案内してほしいの。他国から来たから、よくわからないのよ」
「それでは心苦しいですが、仕方がありませんな」

 本当はもっと違うお礼をしたいみたいだったようだけど、そんなのはいらん。お金には困ってないが、フォレストウルフの素材はいらないのよね。
 だから買ってもらうことにしたのだ。
 こんな街道で査定するわけにはいかないし、また襲われても困るからと移動を開始する。馬車で十五分も走ると休憩所があるそうで、そこで査定してくれることになった。
 ピオとエバに先行してもらいながら街道を進んでいく。強い従魔たちがいるからなのか、マップを見た限り、弱い魔物が奥へと移動していた。
 休憩所に着くと誰もいなかったので、肉や牙、爪や毛皮などの素材を出し、ディエゴに渡す。

「ふむ……ここまでいい状態の毛皮は滅多に見ませんな」
「一撃で、しかも首を狙っていました」
「なるほど。そうすれば他は傷がつくこともないですな」

 商人だからだと思うんだけれど、かなり高いレベルの鑑定を持っていそうだ。ふむふむと言いつつ、じっと素材を見ているしね。
 群れは三十頭ほどだったことを考えると、かなり大きな群れだったに違いない。別の土地で縄張り争いをして負けたか、元々いて群れが大きくなったのかは知らないが、こんな町が近い場所であれほどの群れがいるなんて……。
 討伐し忘れたのか、ウルフが狡猾だったのか。
 どんな理由にせよ、すでに全滅しているから大丈夫だろう。
 そんなことを考えていたら査定が終わったようで、すっごくイイ笑顔になっているディエゴにちょっと引く。フォレストウルフのわりには予想よりも高く買い取ってくれたから、よしとしよう。
 ディエゴが終わったら、今度はサリタだ。はて、女性が気になるようなものってあったかな?

「アリサ様、」
「アリサと呼び捨てでお願い」
「わかりましたわ。アリサ、貴女の耳に着いている白いものは何かしら」

 おお、さすが商人の妻だ。目敏く見つけたぞ。

「これ? 真珠という宝石の一部なの。セガルラの港町で見つけて、加工してみたの」
「真珠、ですか? 知らないわ」
「見てみる?」
「ええ! 是非!」

 凄い食いつきだなあ、おい。まあいいかと斜め掛けのマジックバッグから小箱を出し、それをサリタに渡す。それと一緒に真珠の粒も。
 しげしげと眺めるサリタの目がキラキラと輝いている。これは相当気に入ったかな?

「石とは違う輝きですのね」
「そうね。貝から取れるものだと聞いているわ。あと、扱いには注意が必要なの」

 真珠は汗に弱い。それを説明したうえで、使ったあとは丁寧に布で汗を拭いてからしまうことを話すと、ディエゴと一緒に驚いた顔をしたあと、二人揃って気を引き締め、真顔になった。
 嫌な予感がするぞ……。

「あなた、これは……」
「ああ。貴族にも人気が出るだろうな」

 やっぱりかー!
 帝都に店を構えているって話だったから多分貴族とも取引をしているだろうとは思っていたけれど……予定よりも随分と早い出会いだったなあ……。
 まあ、いいや。どのみち、アクセを普及しないといけないし。他の石に関しては、店がどんなものを売っているのかを見てから決めよう。
 恐らく、装飾品も扱っているとは思うけれど、今のところそういった情報もなければ信用していいかどうかもわからない。商人は腹黒な人が多いからね、人となりを把握してからじゃないと、貴族には売れんがな。

「アリサ、どれくらいの頻度で作れるのかしら」
「材料がある限り、いくつでも。そしてすぐに作れるわ」
「「え……?」」
「錬金術が使えるの。そのおかげね」
「「なるほど」」

 何やら考え込む二人だけれど、溜息をついて顔を上げた。

「店に戻ったら商談してくださいませんか?」
「構わないけど、卸すにしても、せめて家ができてからにしてほしいわ」
「どうしてですかな?」
「宿で作りたくないというのが一番の理由かしら。いくら錬金術を使って作るといっても、金属を使っている以上、宿では作れないわ。誰が見ているかわからない場所で作りたくないというのもあるし」
「確かにそうですな」

 納得の表情をする二人。金属の破片が出ることはないけれど、泊まる場所によっては、窓から丸見えになってしまう。
 面倒なことに巻き込まれたくないし、人が大勢いるところになんて住みたくない。貴族に絡まれるのも面倒だし、囲われるのも嫌だしね。
 私は辺鄙のところに住みたいんだってば。のんびりとスローライフがしたいんだよ。
 そんなことを話すと、苦笑されてしまった。
 いずれにせよ今すぐどうこうという話ではないし、商談だけはしたいというので頷く。それから町まで移動しようかという話になったけれど、今から行ったらとっぷりと日が暮れることが予想されるし、また魔物に襲われても困る。
 なので結局このまま休憩所に泊まることになった。
 見張りについては心配いらないと話し、ダンジョンで見つけた雷魔法を結界に這わせる方法を話したうえで実際に見せると、全員顔が引きつっていた。なんでよ! 画期的な悪人撃退方法じゃないか!
 イレーネが試してみたいと小さな結界を張ったあとで雷魔法を這わせると、彼女もしっかりできた。

「これはいいですわ! これなら、休憩所のない森や草原で泊まることもできますわね」
「確かにな」
「今日は結界石と一緒にこっちで結界の用意をするから、安心して寝てくれていいわ」
「助かる。なら、食事はこちらが用意しましょう」

 食事は任せてくれというのでお願いし、従魔たちの分を含めた食材を渡した。肉はさっき解体した、フォレストウルフを使うようだ。
 彼らが食事の準備をしている間に私は結界石を使って結界を張り、その外側に結界を張ったあと、ピオとエバに雷魔法を這わせてもらう。そのあとでテントの用意をして、彼らの作業を見ていた。
 味付けは塩みたい。まあ、これは仕方がないか。様子を見て、ミショの実の使い方を教えてもいいかもしれない。
 人数が多いことから串焼きにしたようで、焚火の周りにたくさんの串が刺さっている。別のところにある竈には鍋が置かれ、こっちはスープを用意しているみたい。
 旅慣れているのか、全員手際がいいから、ハラハライライラしなくてすんだ。
 そうこうするうちに出来上がったので、全員でいただきます。

「美味しいわ」
「それはよかった」

 串はハーブ塩を使ったようで、爽やかな味になっている。スープは塩味だけれど、こっちにも肉を入れたのか、野菜と肉の出汁がしっかりと出ていた。
 玉ねぎの甘さとキャベツの甘さ、トマトの酸味がいい味になっている。ミネストローネとまではいかないけれど、それに近い味になっていたのには驚きだ。
 これなら、すぐにトマト料理が広まるかもしれない。
 そこは追々でいいかと、彼らと雑談をしながら、食事を楽しんだ。

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