自重をやめた転生者は、異世界を楽しむ

饕餮

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ガート帝国編

第67話 商業都市ペペイン

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 森を出て歩くこと一時間。町に着いた。

「商業都市ペペインにようこそ!」

 にこやかに対応する門番に若干引きつつ、白水晶を触って中へと入る。そのまま連れ立って冒険者ギルドに行き、二人は中へ、私は外で待っていることにした。
 レッドベアの素材? 売るわけないじゃん。売るなら別のところで売る。ここでは売らない。
 従魔たちと話しているうちに二人が来たので、案内されながら通りを歩く。そこかしこに屋台と露店があり、いろんなものが売られている。
 屋台は串焼きの他にスープやパン、リゾットやジュースまで売られていた。

「へえ……賑やかなのね」
「だろう? 帝国内や他国から来た者たちがあれこれ売っているんだ」
「飲み物はジュースって言うんだけど……アリサ、飲む?」
「そうね……みんなはどうする?」
<ノンは飲みたい!>
<俺はいらない>
<あたしもいらないわ>
<オレも>
「そう。ひとつでいいわ。にゃんすら以外はいらないそうよ。私も大丈夫」
「そ、そう……。なら、ひとつだけ買ってくる」

 ウィルフレッドががっかりしたように肩を落とすと、ジュースがある屋台に行って注文している。どうやら桃のジュースみたい。
 桃があるなら、自分でジュースやシロップ漬け、コンポートにしたい。今のところ見かけないから、じっくり探してみよう。

「はい、どうぞ」
<ありがとうなのー>

 ウィルフレッドに手渡されたノンは、触手を出してジュースを受け取る。そのまま木のコップに口をつけると波打つように震え、美味しそうに飲んだ。

<甘いの! とっても美味しい!>
「よかったわね、ノン」
<うん!>
「にゃんすら様が気に入ってくれてよかった。あ、飲んだコップは僕にくれる? 返してくるから」
<はーい>

 よっぽど気に入ったのか、ノンは桃のジュースを一気飲みすると、カップをウィルフレッドに渡す。それを返しに行ったウィルフレッドを待ち、また通りを歩く。
 お昼用に串焼きとパンをおごってもらい、果物を売っていた店に桃があったので、それを一籠分買う。それもおごってくれた。

「飯はいいのか?」
「屋台ので充分よ。ありがとう」

 通りが終わったところで立ち止まる。私はもう一回通りを見たいけれど、二人がいるとゆっくり見れない。
 きっぱり断らないと、いつまでもついてきそうなんだよね……特にウィルフレッドが。鬱陶しいこと、このうえないっての。
 社交辞令で護衛依頼を頑張ってと伝え、二人から離れるとまた通りを歩く。今度は商店の中にも入ってみようと、近くにあった店に入る。

「いらっしゃいませ」

 この商店は野菜や果物が中心のようで、いろんなものが並んでいる。他にも米と麦、豆もある。
 豆は枝豆と大豆の両方あった。そして赤や赤紫色をした、大小三種類の豆も。
 どう見ても赤紫は花豆で小さいのが小豆、中くらいのがレッドキドニービーンなんだけれど……この世界だと小豆以外はどんな名前なんだろうと思い、店員に聞いてみることに。

「この赤い豆はなんていう名前?」
「大きいものがハナマメ、小さいのがアズキ、その中間のがレッドキドニーです」
「そうなのね」

 おおう……見たまんまの名前なんかーい!
 リュミエールさんや……どういう名前の付け方をしているんだい? フランス語があるかと思いきや他の国の言葉もあるし……。まあいっか! どれも探していた豆類だしね!

「大きな麻袋で買うことはできる?」
「できますよ」
「じゃあ、ここにある豆類を全種類、大きな麻袋で買うわ」
「ありがとうございます!」

 それならばと豆類をそれぞれ大きな麻袋で買い、ホクホク顔で店を出る。枝豆は獣人の村でもらったり買ったりもしたけれど、大豆単体は初めてだからね~。
 大豆があるなら、きっと苗もあるはずだ。時期じゃないから、あるとは限らないが。
 他にも桃を箱ごと買って唖然とされたが、ノン以外にもジュースで飲ませたいし、そのまま食べさせたいからね。森にあるのとどう違うのか、食べ比べてもいいかも。
 あっちへふらふら、こっちへふらふらと彷徨いながら野菜と果物を中心に買い込むと、そのまま別の通りに行く。そっちには道具屋や花屋があるみたい。花屋で種か苗を探してみるつもりだ。
 花屋を見つけたので中へと入り、どんな種があるのか確認する。薬草の種もあるし、切り花用の種もある。そしてなぜか米ともち米の種籾も売られていた。
 ……さすが異世界、なんでもアリだなあ。
 とりあえず、薬草になる花や持っていない薬草の種、夏野菜と秋野菜の種をいくつか買うと、店を出る。店員によると、帝都に行けば、もっと種類があるとのことだった。

「帝都かあ……。どうする? とりあえず行ってみる?」
<<<<行きたい!>>>
「わかった。なら、一回行ってみようか、帝都はここからさらに北東にあるみたいだし」

 脇道に入り、マップの確認をする。帝都はどこだと街道を追っていくと、さらに北東にあることがわかった。しかも近くには山も森林もあり、その奥にとても小さな村がある。
 なんだろう、この小さな村は。近くに湖もあるから、もしかしたら開拓途中の村、とか?
 周囲には村もないし、一番近い町が帝都。距離的に、徒歩で三日以上かかるような場所にあるのだ。
 開拓途中の村なのか、それとも隠れ里的な村なのか――。
 なんだかとても気になる。よそ者を受け入れてくれるような村だといいなあ……と思いつつ、また通りを歩く。
 この町に泊まってもいいけれど、従魔たちは興味がないようで、早く帝都に行きたいとはしゃいでいる。ペペインから帝都までかなりあるんだよなあ。
 恐らく、リコが全力で走っても、一週間以上かかりそうな距離だ。しかも、あちこちの分岐になるような場所にはペペインのような大きな町がある。
 今日は森か休憩所で一泊か……と内心で溜息をつくと、ペペインから出た。
 のんびりと走るリコと、楽しそうに話す従魔たち。珍しくピオとエバは私の両肩にいる。四匹が話しているのは帝都のことと、どこに住みたいかということだった。
 私がマップを確認している時、みんなも興味深げに覗いていたからね~。同じように私が気になった村を気にしているみたい。

<アリサ、あの村に行ってみようよー>
<村にいられなくても、奥に行けばいいしな>
<あそこなら、あたしも大きくなれそう>
<湖で魚を捕るのも面白そうだし>
「ふふっ! そうね、行ってみようか。リコの言う通り、村の中に入れなくても、奥のほうに行けばいいものね」

 ノンが真っ先に村に行きたいと言い出して、リコとエバ、ピオがそれぞれやりたいことを話してくれる。うんうん、みんなの好きなようにすればいいよ。私はそれに答えて家を作ればいいんだから。
 そうと決まれば、まずは帝都に向かって走る。
 帝都までは西回りと東回りがあるようで、この先の町がその分岐になっている。どっちから回ろうと帝都まで行く距離は変わらないみたい。

「うーん……西と東、どっち回りで行きたい?」
<真っ直ぐ空を飛ぶのがいいー>
「げっ!」

 まさかの直線がきました!

「ノン、空を飛びたいの?」
<うん!>
<俺も飛んでみたい!>
「リコもなのか……。ピオ、エバ。私たちを乗せて飛べる?」
<<楽勝!>>
「そ、そう。なら交代して乗せてもらって、空の旅をしようか」
<<<<やったー!>>>>

 元気いっぱいに喜ぶ従魔たち。私たちが乗るにしても、リコを乗せるための籠が必要だ。近くにあった平原で止まってもらい、手持ちの倒木でリコが乗れるような籠を作る。
 もちろん、ピオとエバにくくりつけられるよう、ベルトも作った。あとは私とリコ、ノンが寒くないようコートや毛布を作る。

「よし、準備完了。まずはエバからにしようか」
<はーい!>

 まずはエバに大きくなってもらい、上に籠を設置し、飛ぶ時に邪魔にならないような感じでベルトで絞める。伸縮自在をかけてあるから、ずり落ちることもないだろう。
 準備が整ったらリコに小さくなってもらい、ノンと一緒に籠の中に入れる。それから毛布をかけ、顔だけ出してもらった。
 私のコートも表面はダウン、中にシルバーウルフの毛皮を使ったリバーシブルになるコートにしたうえ、耐寒をしっかりつけてあるから大丈夫だろう。もし寒かったら、その時はまた防寒具を作ればいいし。
 帽子をしっかりと被り、エバに乗ってから籠の中へ。二羽なら問題ないだろうけれど、念のため槍を出しておく。

「じゃあしゅっぱーつ!」

 私の合図でエバとピオが舞い上がる。羽を羽ばたかせ、一気に大空へと飛び立った。

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