私の彼は、〇〇です

饕餮

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私の彼は、空飛ぶイルカに乗っている

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 初めて来た、入間基地の航空祭。連れて来てくれたのは、高校の時の友人、狭山さやま 美沙枝みさえだった。
 周囲は人混みがすごくて、カメラやスマホを手に持っている人たちがたくさんいる。

「すごいでしょ?!」
「そ、そうだね」

 彼女はオタクと言えるほど飛行機や戦闘機が好きな人で、全く知らない私のためにこの航空祭に連れて来てくれたのだ。

「ほら、もうすぐブルーインパルスが飛んでくる時間だよ!」

 その言葉にドキドキする。朝飛び立ったときもすごかったし、ブルーインパルスというものを見たことがなかったから、初めて見たその機体が飛び上がる瞬間を綺麗だと思った。
 くるよ、と美沙枝が指差した方向の上空を見上げていると、遠くからキーンという高い音がしてきて、六機の蒼い機体が飛行機雲を作りながら上空を飛んで行く。
 時には拡散したり旋回したり、交差したり白い煙を吐き出したりと、あちこち飛び回りながら煙で形を作り、私たち観客の眼を楽しませてくれる。
 ハートに矢が刺さっているものや、星の形がとても可愛かった。ギリギリで交差したときは思わず「ぶつかる!」って叫んでしまって、美沙枝に「ぶつからないよー!」と笑われてしまったけど。

「……すごい」

 上空に広がる蒼穹と、機体の白と蒼が一体になって大空を自由自在に飛ぶその姿は、まるでイルカのようだった。楽しそうに仲間と遊んで泳ぐ、空飛ぶイルカ。
 あっという間にショーが終わり、イルカが基地の滑走路に下りてくる。
 エンジンの爆音と観客の歓声に混じって、感動した私もせいいっぱい拍手を贈った。


 ――そして機体が停まり、紺色の服を着た人たちが降りてくる。白と蒼の機体が太陽の光を反射して、キラリと光った。


 ***


「すごかった! あのハートとか、星とか、すっごく可愛かった!」」
「でしょー?! あのハートは『バーティカルキューピッド』って技で、星は『スタークロス』っていうの!」
「へぇー、そうなんだ!」
「それでね……」

 美沙枝と二人で今までのことを話していると時間はあっという間に過ぎる。質問するといろいろと説明してくれるんだけど、正直何を言っているのかわからないのもあった。でもそこは美沙枝の説明がとてもわかりやすくて、理解することはできたのは感謝だ。
 お腹が空いたね、と話してたまたま空いていたベンチを確保し、彼女が何か飲み物や食べ物を買ってきてくれるというので、そこで待っていた。けれど、混んでいるせいかなかなか戻ってこないし、スマホに連絡しても、スピーカーから流れる音楽で聞こえないのか電話にも出なかった。
 暑いせいかなんだかだるくなってきたし、かといって移動するわけにはいかない。日傘だと人混みに邪魔になるかも知れないからと持ってこなかったけど、せめて帽子くらいは持ってくるんだったと後悔する。

「どうしよう……」

 そんなことを呟いてベンチに凭れ掛かって俯き、溜息をついたときだった。

「どうした? 具合でも悪い?」

 そう声をかけられたので顔を上げると、そこにはモスグリーンのツナギを着て帽子を被った男性の二人組がいた。二人とも髪を短く切りそろえていて、私よりも少しだけ年上に見えた。この基地の関係者だろうか?

「あ、いえ。飲み物や食べ物を買いに行ったみさちゃん……友人を待っているんですけど、混んでいるのかなかなか来なくて……」
「みさちゃん? もしかして、狭山 美沙枝?」
「え……、はい、そうです」

 わざわざ屈んでくれて心配そうな顔で私を覗きこみ、声をかけてきた男性にそう笑って誤魔化したものの彼には通じなかったようで、顔をしかめていた。そして隣にいた男性は美沙枝の名前に反応しているし。

「それよりも、きみの具合が悪そうだし、熱中症かもしれないから救護のところに連れていってあげるよ」
「でも、友人が……」
「大丈夫、コイツに伝言を頼んでおくから」
「ああ。俺が伝言しといてあげるよ」
「すみません、お願いしてもいいですか?」
「いいよ」
「じゃあ行こうか。立てる?」
「あ、はい」

 そう言われて立ったものの、暑さにやられたせいかふらついてしまった。それを見た男性が顔をしかめる。

「うーん……仕方ない。……ごめんね」

 男性がそんなことを言って屈むと、私を軽々と持ち上げてしまった。しかも所謂お姫様抱っこで!

「あ、あの! 私、かなり重いですし! 自分で歩けますから!」

 そう言っても「嘘つけ」という言葉と視線を投げかけるだけで、一向に下ろしてくれない。そして歩くこと十分ほどで救護室に連れていかれてしまった。歩いている間も、腕や足取りが重そうに揺らぐことがなかったのはすごい。
 その男性に抱き上げられて移動している間、あちこちから視線を向けられていたし、理由はわからないけど睨まれたりもした……特に女性から。なんでだろう? 確かにカッコいい人だけど。

「失礼します。ドクター・ジョー、急患」
「おや、藤田一尉がここに女性を連れてくるなんて珍しいね」
「まあね。たまたま見つけてさ……具合悪そうだったし。ついでに俺を匿ってくださいよ」
「ははは、いいよ。さて……きみ、大丈夫? とりあえずここに座ってくれる?」
「……はい」

 私を下ろしたモスグリーンの服を着た男性と白衣を着た男性が、よくわからない会話をしている。日本人なのに、なんでジョー?
 そんなことを考えている間に白衣の人が私を診察してくれた。どうやら軽い熱中症にかかっていたみたいで、「これを飲んでいなさい」と渡されたのは、CMでやっている熱中症対策用のドリンクだった。それをちびちびと飲みながら連れてきてくれた人に視線を向けたら目があった。

「あの、すみませんでした」
「ん?」
「どこかに行く途中だったんですよね? それなのに私をここに連れ来てくれて……。ありがとうございました」

 立つのもしんどかったので、申し訳ないと思いつつベッドに座ったまま彼に頭を下げたら、驚いた顔をしたあとで笑顔を浮かべた。

「いや、構わないさ。具合悪そうにしてるのに、ほっとくわけにはいかなかったし。そうだ、キミが……。あ、俺は藤田って言うんだけど、名前を聞いてもいい?」
「え? はい。江島です」
「江島さんね。あ、ごめんな。江島さんが待ってた友達なんだけど、そろそろ俺と一緒にいたやつと一緒にくると思うから――っと。ほら、来た」

 いきなり名前を聞かれたことに驚いたけど、相手が先に名乗ってくれたからつい返してしまった。本当に伝言を頼んでくれたのかな……と思ったところでノックの音がし、藤田さんと一緒にいた人が、伝言だけじゃなく美沙枝本人も連れてきてくれたようだった。

「失礼します。ジッタ、連れてきた」
「サンキュ」
「ひばり! 具合が悪くなったってこの人から聞いて……っ、だ、大丈夫?」
「うん。心配かけてごめんね」

 焦ったように駆け寄ってきた美沙枝に笑顔を向けると、ホッとしたように笑顔を返してくれた。

「いいのいいの! 初めての航空祭なのに、帽子や日傘を持ってくるように言わなかったのは私なんだから……って…………あーーー!! 四番機のドルフィンライダーの藤田さんだ!!」
「おっと、ファンに見つかっちまった! ガック、ここを……」
「ドルフィンライダー? みさちゃん、ドルフィンライダーってなあに? 水族館にいるイルカの調教師のこと? だから二人はモスグリーンのツナギを着ているのね。ここに水族館があるの? あるならイルカを見たい!」

 美沙枝の叫び声で藤田さんが慌てだし、移動しようとしてたんだけど、私には何を言ってるのかわからなくて……。なにそれ? と首を傾げてそんなことを聞いた時だった。

「ぶふっ……!」
「イルカの調教師……っ!」
「くくっ……! イルカ……っ!」
「ある意味間違っちゃいないが……そ、そんなこと言われたの、初めてだ……っ! ぶ……っ、しかも、基地に水族館……っ!」
「確かにイルカはいるが……っ!」
「イルカ違い……っ!」
『あっははははっ!!』

 いきなり男性三人がそんなことを言い出して、思いっきり笑い出した。

「え? えぇ? なに? 私、変なこと言った?」
「ちょっ、まっ、ひ、ひばり……! そうだった……ひばりはブルーインパルスのこと、何も知らないんだった……!! それで航空祭に連れて来たのに、なんで忘れてた、私ーーー!!」

 そして親友の美沙枝は、私の言葉にそんなことを言って頭を抱えたのだった。


 ――これが私こと江島えじま ひばりと、ブルーインパルスの四番機パイロット、藤田ふじた 章吾しょうごさんとの出合いだった。


 ***


「ふふっ……」
「なんだ、急に笑い出して」
「ああ、この写真を見て、章吾さんと出会った時のことを思い出したの」
「どれ……。ああ、入間基地の航空祭の時のか」
「うん」

 写真には私と章吾さん、美沙枝と藤堂さんが写っている。写真を撮ってくれたのは、私を診察してくれたお医者さんだ。そして藤堂さんとは彼と一緒にいた男性で、なんと美沙枝がずっと片思いをしていた年上の幼馴染だったそうだ。

 あれから二年。なんだかんだ言いながら私と章吾さんは今日、結婚式をあげた。まさか、私と章吾さんが一回り以上も歳が離れてるとは思わなかったけどね。それでもこの人と一緒にいたいと思ったのは私だ。

「ひばり、そろそろベッドに行こうか」
「……うん」

 章吾さんにそう言われて鼓動が跳ねる。
 章吾さんに抱かれた数はそんなに多くない。それでも、短い時間であっても会えた時は、まるで私を貪るように抱いたっけ。

 私の手を引いて寝室に移動すると、あっという間に私を裸にし、彼も裸になる。誘われてベッドに横たわれば、章吾さんが覆い被さってきて、彼の右手が私の顎を持ち上げる。あっという間に彼の顔が近づいてきて唇が重なると私の唇を擽るように舌が動き、左手が這い上がってきて、乳房全体を撫でたあとで掴まれた。

「んっ……、ぁっ」

 掴まれた拍子に口を開けてしまい、唇を擽るように舐めていた章吾さんの舌が中へと入り込むと、上顎や頬の内側を舐めながら、掴んでいた乳房をゆっくりと揉み始める。それだけで快感が背中を這い上がり、彼の腕をギュッと掴むと更に激しく乳房を揉まれた。

「ふうっ、んぅっ、ぁんっ、ぁっ」
「ふ……ひばりの乳首、尖ってきたな」
「あ……っ、ん……っ」

 柔らかい唇が――そしてその息づかいが私の耳と首筋を這う。乳房を揉んでいた指先が止まり、硬くなり始めた乳首を擦られて、また背中に甘い痺れが走る。

「ふ……、あ……ん」
「もっとしてほしいのか?」
「んんん……っ、ぁっ、ん……っ、は、んたいも……、ぁん」

 低くて艶のある少し掠れた声でそんなことを聞いてきた章吾さんに、素直にそう返すと「よくできました」と言って同じことを繰り返した。
 唇が首筋と鎖骨を掠め、胸に届くと乳首を口に含まれて吸われ、舐められた。また快感が這い上がってきてゾクリとしたけど、舌と歯と指先で乳首を擦られたら、喘ぐことしかできなかった。
 とりあえず満足したのか顔が近づいてきて、キスをされる。入り込んできた舌が口腔を舐め回し、舌を絡めてくる。それと同時に乳房を揉まれながら乳首を擦られ、子宮のあたりから痺れが這い上がってきた。身体が震えて思わず章吾さんの腕を掴むと、キスと乳房を揉んでいた手が激しくなる。

「んーーっ、ふっ、ぅ……、んっ、ぁん……っ、はぅ」

 チュッ、とリップ音を立ててキスをやめた章吾さんは、私の顔を見ながら両手で乳房を揉んでは乳首を撫で回す。それを何度も何度も繰り返し、私に声をあげさせる。章吾さんの顔を見れば彼は私を見つめていて……でもその目は獰猛な光を見せていた。

「あ……っ」
「ひばりったら真っ赤になっちゃって……相変わらず可愛い反応するなぁ……」

 俺のせいか、とクスリと笑った彼は、また愛撫を再開する。乳房を愛撫しながら足に掌を這わせ、太股を撫でると秘部を弄りはじめる。クチクチと鳴るその音が恥ずかしくて、彼の腕をきつく掴んだ。

「あっ、やっ、あっ」
「……濡れてきたね。でも、これじゃまだ足りない。びしょびしょになるくらいに濡らさないと、俺のをココに挿れられない」

 知ってるだろ? と言われて頬が熱くなる。秘部を撫でるように触っていたのに、いきなり胎内に指が入り込んできて動かし始めた。節くれだった長くて綺麗な指が私の胎内に入っていると思うと恥ずかしくなるし、未だに慣れない。

「あっ、あぅ……っ、ひゃあっ!」
「名前の通り、相変わらず可愛い声で囀ずるよな、ひばりは……」
「ばかぁっ、ああんっ!」

 動かす指はそのままに、秘部に顔を埋めて舐める章吾さん。いつもはそんなことをしないのに、今日は興奮しているのか、いつも以上に攻められて、身体から力が抜けてしまう。彼の指がゆっくりと動くたびに、クチュ、チュプと卑猥な音が室内に響く。

「ああんっ、やっ、あっ、ああっ」
「ひばり……可愛いね」
「あんっ、はっ、章吾さ……っ、やぁっ、だめっ! イっちゃ……っ、ああぁぁぁっ!!」

 胎内の壁を擦られ、粒を吸われ、乳首を摘まれてイってしまった。それでも章吾さんの指と舌は止まることなく、私を愛撫して攻めたてる。いつも以上に感じてしまって、いやいやと頭を左右に振って喘いでも章吾さんは止めるどころか更に愛撫を重ね、一向にやめてくれない。

「やあっ! ああんっ! またっ、くるのっ、ああぁぁぁっ!」
「何度でもイって、ひばり……ほら、もう一度だ」

 何度もイかされて、身体がどんどん敏感になって、ちょっとしたことで反応してしまう。

「ああっ、ああんっ! ああぁぁぁっ!」
「ん……、そろそろいいかな……。ひばり、挿れるよ」

 私のそんな身体の状態を待っていたんだろう。章吾さんは自分の身体を起こすと私の足を広げ、秘部にアレを擦りつけたあと、いつもはスキンをつけるのに今日はつけず、その太くて固くて熱いモノを胎内へと入れてきた。

「あうっ、あ、あ、い……っ! ああぁぁぁっ!」
「く……っ、相変わらず狭いな、ひばりのナカは……っ」
「ああっ! 苦しっ、章吾さっ、ああっ!」
「痛いのは、今だけだ、あとは気持ちよくなるだけだっていっつも言ってんだろが……っく、……ほら、奥まで入ったし動くぞ」
「ひぁっ、あうっ……、はぁ……んっ、あっ、あっ」

 彼が腰を動かす度に、子宮から這い上がった快感が私の意識を朦朧とさせ、身体を支配していく。
 左腕で自分の身体を支え、右手で左の乳房を揉んでは乳首を捏ね回し、右は乳首を口に含んで舐める。硬い乳首を転がし、歯と舌先で擦っては吸ったりもしている。いつもはそんなことしないし、してもキスくらいだった。なのに今日は結婚式だったせいか、まるで「俺のものだ」と謂わんばかりに私を攻める。それが嬉しいと感じた時だった。

「あんっ、ひゃあっ?! ああぁぁぁっ!」
「ひばりはココを擦ると、すっごいイイ声で啼くよな……っ、こら、そんなに締め付けんな」
「わかんな、あうっ、ひゃあんっ! あああんっ!」

 そこを擦られたらあまりにも気持ちよくて、背中を仰け反らせると、彼のモノが胎内でその存在を主張しているのがわかってしまった。

「ひばり……っ、愛してる……」
「あっ、はっ、しょうご、さっ、私も愛し、て、ああっ、ぁーーーっ!」

 ゆっくりだった彼の動きが早くなる。お互いに愛を叫ぶと、彼は私の胎内にその白濁を吐き出した。そしてしばらくそのままでいたし、いつもはここで止めて、ピロートークになるんだけど、今日は違った。

「え……ちょ、しょ、章吾、さん……?」
「うん……ごめんな、ひばり……。今まで抑えてきてたぶん、結婚したら箍が外れた」
「…………はあっ?! ちょっ、あっ、やんっ、あっ、あっ、ああん!」
「ひばりを抱くのは半年ぶりだし、今日は寝かせないからな……そのつもりでいろよ?」
「無理無理無理ーーーー! やっ、ひゃあっ、あああんっ!」

 彼の「寝かせません」宣言に戦慄して抗議するものの、彼のモノは私の胎内に入り込んだままだ。動こうにも動けず、宣言した途端に章吾さんの手や口や腰が動くのだから、私にはどうにもできない。
 とはいえ、私も章吾さんに会うのも抱き合うのも久しぶりなわけで……。



 ――結局深夜までしたもののお互い結婚式で疲れていたのもあり、彼の「寝かせません」宣言はこの二回で終了し、眠りについたのだった。


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