オカマ上司の恋人【R18】

饕餮

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圭視点

Envy

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「在沢さん、コーヒーを頼む」

 目の前の光景を呆然と見ていたけれど、他人がいたからなのか苗字で呼ばれた泪の言葉に我に返る。「畏まりました」と事務所のキッチンへと向かい用意し始めると、営業担当の飯田がカップを持ってキッチンへとやって来た。飯田はクライアントヘ提出する資料の作成をしていて、泪も関わっている案件のため、私はそれを手伝っていた。

「俺にも淹れてくれないか?」
「いいですよ」

 カップを受け取り、洗って伏せる。時折女性の笑い声が聞こえるけれど、媚を売るような声なので思わず眉を潜めてしまう。

「ヤな感じの笑い方だな。……大丈夫か?」

 心の中の声を口に出してしまったのかと思って驚いたけれど、よくわからないながらも「大丈夫です」と答え、コーヒーメーカーのスイッチを入れる。

 少し奥にいるから二人の会話はあまり聞こえないけれど、飯田は聞こえるのか時々眉を潜めていた。
 コーヒーが落ちきるのを待つ間にコーヒーポーションや砂糖、カップを用意する。
 カップにコーヒーを入れてまずは飯田に手渡し、泪と女性客のためのコーヒーをお盆に乗せ、給湯室から一歩出た時だった。

「……婚約者に対して酷いじゃない!」

 一瞬動きを止めたものの、何事もなかったかのように泪のところへ行き、二人の会話を邪魔しないよう小さな声で「失礼します」と断りを入れてからコーヒーを置いて給湯室へ戻ると、私のぶんのコーヒーを入れて飯田のところへ戻る。

「……また無表情に戻ってるぞ?」
「……来客中ですから」

 飯田の問いかけにそう答えると、飯田はただ「わかった」と言っただけであとは何も言わず、「で、ここのグラフなんだけどな……」と資料を指した。二人でしていた作業を再会させ、飯田と意見交換をしながらグラフを作っていた時だった。

「……いずれ私が泪と結婚したあとは私が泪の秘書をすることになるから、その時は貴女にはここを辞めてもらうわ」

 ちょっと立ち止まったかと思うと飯田には聞こえないくらいの小さな声で彼女はそう言い、サッと歩き出す。
 よろけたのか、出口に近い机に手をついたのを目の端に捉えたけれど、それを認識することもなく目の前の画面を呆然と見つめる。

「……い、おい! 在沢、どうした? 手が止まってるぞ!」
「あ……申し訳ありません」

 飯田の呼びかけに我に返り、慌てて手を動かす。

「おっと、メール来ちまった。すまん、メールを返すまでこれも試しにグラフにしといてくれ」
「わかりました」

 渡された資料を見ながらあらゆるグラフにする作業をする。メールの返信が終わった飯田も途中で加わり、内心もやもやしながらも資料を仕上げていった。


 ***


 わけがわからないまま、日々仕事をこなして行く。
 そしてかの女性は毎日のように事務所に来ては泪と話し、その帰り際に私に何か一言言って帰って行く。
 彼女が来ると機嫌が悪くなる泪をよそに、私も彼女の一言で無表情に戻ってしまう。

 明日はクリスマス・イヴという肌寒い日だった。
 その日の夜、ソファーによりかかりながらみるとはなしにぼんやりとテレビを眺めながら、柚子茶を啜っていた。

「お圭ちゃん、寒いんだから床に直接座らないの」
「うん……」

 生返事をして動かないでいると「もう……」と言ってひょいと抱き上げ、膝に乗せられてしまった。そんな状態にも拘わらず、突然あの日の女性の言葉が甦る。どうして初対面の人にそんなことを言われなければならないのだろう。
 それに『婚約者』と『結婚』いう言葉。どうしてこんなにも気になるのだろう? どうしてこんなにも辛くて、哀しいのだろう?

「お圭ちゃんってば! 聞いてるの?」

 考えに没頭していた私は、泪の言葉に我に返り、「ごめんなさい……」と小さく謝った。

「ここ最近変だけど……今日はもっと変。どうしちゃったの?」
「……なんでもない」
「お圭ちゃん……」

 私の気のない返事にはぁと溜息をついた泪は、私をソファーに座らせるとキッチンへ行く。

「カクテルを作ってって言ったんだけど上の空だから、今日はアタシがカクテル作りに挑戦してみる。必ず味見してね?」
「……うん、いいよ」

 ローテーブルに柚子茶を置き、ソファーに足を乗せてブランケットをたぐり寄せ、膝に掛けて足を抱き込むと膝に頭を乗せる。
 液体の流れる音や何かを台に置く音、シェイカーを振っている時のシャカシャカと言う音がする。「はい、お待たせ」という声で顔を上げるとテーブルにカクテルが乗せられ、泪が隣に座ったのでブランケットを膝に掛けてあげてからカクテルを見る。

「……綺麗に出来てるね。シェイカーの練習なんていつしたの?」
「ヒ・ミ・ツ・♪ さ、どうぞ」
「……いただきます」

 そう言って香りを楽しみ、一口飲んで焦る。

「ちょっ……泪さん、これ!」
「『Between The Sheets』。意味は知ってるわよね?」

 持っていたグラスを取り上げられ、そのままソファーに押し倒され、キスをされる。

(嫌……)

 カクテルの意味はわかるし、いつもされていることだった。けれど、今日はどうしても泪に触られるのが嫌だった。

「嫌っ!」

 拒否するようにどんと泪の胸板を押すけれど、びくともしない。

「お圭ちゃん?!」

 眉を潜める泪に構わず、なぜか「あの人がいるのに!」という言葉と共に涙がこぼれ落ちた。

「どうして?」

 ――『泪は私のものよ』

「あの人と結婚するのに、どうして私を恋人にしたの?」

 ――『泪は私と結婚するの』

「葎に嘘をつかれた時みたいに、事故にあって親に罵られた時みたいに、私を捨てるの? 私はまた捨てられるの?」

 ――『私は寛大だから、多少の浮気は目を瞑るわ』

「私が好きだと……大切だと思った人に何度も捨てられるのは二度と……あ……」

 自分の口から出た言葉に気づかされる。

(私……いつの間にか泪さんを好きになってたんだ……)

 今になって気付くなんて……。でも、今更自分の気持ちに気が付いても、もう遅い。

「怪我の功名とは言え、全く……あの糞ったれ女狐が! 潰してやる……!」

 珍しく怒りをあらわにした泪が男言葉で暴言を吐いたことに驚き、泪を見上げるといきなり両胸を鷲掴んだ。

「やん……っ!」

 いきなりの刺激に、泪の愛撫に慣らされた身体はすぐに反応する。

「やっと言ったわね? この、鈍感天然娘! 自覚遅すぎんのよ!」
「あぅ……痛っ!」
「これはお仕置きよ!」

 そう言ってギュッと強く胸を掴まれたあとで手が離れ、抱き起こされた。テーブルに置いてあったカクテルをまたもや渡され「お馬鹿さんねえ……」としみじみ溜息をつかれた。……どうせ私はお馬鹿さんですよーだと内心で拗ねる。

「はい、飲んで。……アンタは一体何を聞いてたの? アタシはさんざん『アンタが好きよ』って言ったわよね?」
「……うん」
「アタシの言葉より、あの女狐の言葉を信じるなんて!」

 シンジラレナーイ! となぜか片言の日本語になり、呆れられた。泣きながらカクテルを飲んでいると、抱き寄せられて頭を押さえられ、チュッ、とこめかみにキスが落とされる。

「アタシがアンタを切望したのよ? 捨てるわけないでしょ? それに、離さないって言ったのを忘れた?」
「……っ!」

 言葉にならなくて首を横に降って否定すると、空になったグラスを取り上げられる。

「……却下とか返品は許さないわ」
「……え?」

 泪の言葉に首を捻る。

(返品?)

 カクテルのことならもう飲んでしまったし……なんて考えていたら、頬にキスが落とされた。

「こっちの事務所は海外専門みたいな部署だからね……クリスマスまで休めるの」
「……え?」
「中身飲んじゃったし、言質もとったからね。ふふ」
「うぅ……」

 そのまま抱き上げられて泪の寝室に連れて行かれ、ベッドに下ろされて押し倒される。

「あと数時間で日付も変わることだし……お圭ちゃん、アンタを抱くわ。どんなに嫌がっても」
「泪……んっ」
「お圭ちゃん……ううん、圭、覚悟しなさいね」

 覆い被さって来た泪に、まるで貪るようなキスをされ息があがる。着ていたものを全て剥ぎ取られ、泪の手と愛撫に翻弄されて何度もイカされた。

「圭……っ」
「あんっ……はう……ああっ!」

 熱い塊がぐぐっと私の胎内に入り込む。痛いような熱いような、よくわからない感じがする。

「く……っ、あれから何度も解したのに……、まだ狭くてキツイなんて……っ」
「やあっ! ああっ!」

 浅いところで熱い塊が蠢き、止まったかと思うと覆い被さり、キスをされながら胸を愛撫される。愛撫されながらまた熱い塊が奥に入り込んでは蠢く。

「いあっ……やめ……っ!」
「まだ半分も入ってないのに、気持ち、よすぎ……っ」

 さらに中に入り込んだかと思うと、いきなり背中にゾクゾクしたものが走る。

「ひああぁっ!」
「ふふ……また一つ、見つけ、たっ!」
「やあっ! ああっ!」

 その場所を何度も擦られ、またイッてしまった。

「は……っ、ったく、そんなに締め付けて、アタシを煽るなんて……っ、しょうがないコ、ね!」
「いぁ……っ?! あああっ!」

 中でつぷりと裂けるような感覚と痛みが広がると同時に、熱い塊が奥まで入り込む。その状態のまま乳首を愛撫され、舐められながら、熱い塊が中を愛撫するように動く。

「圭……っ、これで……俺の、ものだ……っ」
「あうっ、やあんっ、はうっ、泪さんっ、……ああっ」
「圭……っ、圭っ!」

 室内に響くなは私たちが抱き合う音と声だった。そして泪のなすがままされるがままに、何度も泪と抱き合った。強引に抱かれたのに、抱かれる前とは違って心と身体がとても満たされている気がする。だけど……。
 日付が変わった深夜。

「あー……ごめん……ホントにごめん」

 動けなくなってしまった私をお風呂に連れて行ってくれたものの、私の身体を洗いながら火が点いたのか、またもや泪に貫かれた。その後は湯船に浸かり、泪に後ろから抱き締められたので頭を凭れかけ、背中を預ける。
 湯船に入ってはいるものの、性懲りもなく泪の分身は私の股間を擦っていたはずなのに、いつの間にか中に入り込み、時折胸をゆっくりと揉んでは揺する。

「あ……見て。見える?」
「うん」

 泪に窓の方を指差されると、フワリ、フワリ、と大粒で白いもの――雪が舞い落ちて来ていた。

「道理で寒いわけよね」
「積もる、かな……」
「さあ……。でも、まるでアタシと圭を祝福してるみたいで、ちょっと嬉しいかも」

 クスリと笑った泪に「こっち向いて」と言われて振り向くと、チュッとキスを落とされる。

「全く……やっと落ち着いたっていうのに……何でアンタはアタシを煽るの?」
「え……? ああっ! やんっ、あんっ」

 意味のわからないことを言われたあとで胸を掴まれて乳首を擦られながらゆっくり揉まれるけれど、下で繋がった部分は激しく擦られ、揺すられた。
 愛撫と快感に悶えながらも、やはり早まったかも……と三度みたび考えてしまった。この時は嬉しさのあまりに重大な事実を確認することもなく、すっかり見過ごしてしまった。


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