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本編 2
家族でバーベキュー 3
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「それよりも、当主のお仕事はどうですか?」
「あ、えっと、その……」
私の質問に、しどろもどろになりながらも領地のことや、やっぱり勉強が苦手なことを話してくれるカールさん。
「そうなんですね。実は私も、勉強が嫌いでした。しかも、記憶力が乏しいせいで、必要なことを覚えるのが大変だったんです」
「「えっ!? そんなふうに見えません!」」
「あはは~! よく言われるんですけど、事実なんですよね」
得意な分野が偏っているんだと言うと、カールさんもレイラさんも目を丸くして驚いた。とはいえ、二人には私が〝渡り人〟だとは伝えていないので、そういう言い方しかできなんだけどね。
「なんとか覚えられたのが、薬草と計算でした。それがあったから、薬師になれたというか」
「まあ……」
「そんな私でも、できることがあるんです。カールさんはなにが得意ですか? あるいはなにが好きですか?」
「え……?」
まさか、そんなことを聞かれるとは思わなかったんだろう。目を見開いたあと、照れたようにはにかむカールさん。そんな様子を見て、レイラさんも微笑んでいる。
「レイラもだけど、僕は本を読むのが好きなんだ」
「どんな本ですか?」
「神話とか、過去に偉業をなした人の伝記、冒険譚も」
「へえ! すごいですね。どうしてそれらの本に興味を持ったんですか?」
「もとはエアハルト兄上が読んでくれた本なんだ」
そうして語りだしたカールさんの話は、とてもほっこりする内容だった。
まだ彼らが小さかったころ、エアハルトさんが寝る前にロメオさんとマックスさんとカールさんに、心躍るような冒険譚を読んでくれたのが始まり。その冒険譚はまだこの世界が不安定な時期で戦争があちこちで起きていたのと、魔物たちも今よりも多かった時代だそうだ。
そこに現れたのが、とても強い冒険者や戦争を終結させた英雄たち。彼らは仲間たちと一緒に戦争を終わらせて国を興したり、魔物たちを殲滅して町や村を守ったりと、いろんな冒険譚や英雄譚の物語を読み聞かせてくれたんだとか。
もちろん、実話をそのまま物語にしたり、実話をベースにちょっと盛って小説にしたりと様々のものがあったが、子ども向けのような本ではなかったから、まだ文字を習い始めたカールさんたちにとっては難しく、エアハルトさんが代表して読んだらしい。
「優しいお兄さんだったんですね」
「……そう、だね。いつだって、エアハルト兄上は優しかったよ」
懐かしそうな表情と目をして微笑むカールさんの穏やかな顔に、レイラさんも目を瞠って驚いている。きっと、そんな表情をしたことがないんだろう……ずっと三人の兄たちを憎んでいるような状態だったんだろうし。
だけど。
「上と比べられるのってつらいですよね。先に勉強しているんだから、最後に教わっているカールさんと差ができるのは当然だし」
「え……」
「だって、そうでしょう? 年齢差があるんですよ? 彼らと比べられるのは、正直しんどいですよね」
「……うん」
「でも、それが嫌で楽なほうに逃げるのか、こんちくしょー! って奮起するのかはカールさん次第なんです」
「……」
「今からでも遅くないんです。勉強は、大人になってからだってできるんです」
「リン、義姉上……」
「苦手なものをやるのではなく、私のように得意なものを伸ばしてみませんか?」
「「あ……」」
私の提案に、カールさんだけではなく、レイラさんも驚いた顔をしている。そして、こっそり二人のうしろに近づき、私たちの会話を黙って聞いている義両親と三人の兄も。
つうかね、優秀すぎるんだよ、三人の兄たちは。もちろん、逃げたカールさんも悪いんだけど、能力なんて人それぞれだし、得意なものも違う。
だって、騎士の家系でありながら、マックスさんは文官になっているからね。家を継いだのは次男のロメオさんだし、エアハルトさんに至っては冒険者になった挙げ句、貴族まで辞めちゃったし。
ぶっちゃけると、みんな好きなこと、得意なことをやっているんだよね、カールさん以外の兄弟たちは。しかも、義両親ですらヒャッハーしながらダンジョンに潜るような人たちだし。
そう話したら、カールさんとレイラさんは、貴族としてはあるまじき、ポカンとした表情で固まった。
「ね? だから、カールさんも、自分の得意なことをすればいいんじゃないですか?」
「そ、れは……」
「あ、あの、お義姉様。カール様は勉強が得意では……」
「わかってます。でも、本が好きなんですよね?」
「ええ」
私の確認に、レイラさんは素直に頷く。
「ちなみに、領地の特産物ってなんですか?」
「主に製紙業ですわ。城で使われている紙は、我が領地のものなんですの」
「へえ! 絵本は作っていないんですか?」
「紙の提供はしておりますけれど、さすがに本は作っておりませんの。ついでに言えば、絵本も少ないのです」
子どもたちに読み聞かせるような、子ども向けの本は少ないと、目を伏せて話すレイラさん。あっても、シンデレラや白雪姫のような、王子様とお姫様が結ばれる御伽噺しかないという。
あ~、そういえば、エアハルトさんが子どもたちに買って来た絵本って、そんなものしかなったなあ。あとは貴族向けなのかマナーの本や、文字の勉強をするものとか。
だから私たちの息子二人は不満そうにいていたっけ。
それもあって、彼ら用に日本にいたときに読んだ桃太郎や金太郎など、男の子が喜びそうなものを思い出しながら私が文章を書き、絵は養母のミユキさんが請け負ってくれた。もちろんそのままでは意味不明なので、この世界でもわかるよう、桃太郎や金太郎を村の少年や冒険者の息子にしたりしたっけ。
あ、どうせならそれを渡して、カールさんに作り直してもらってもいいかも。そこは両親やエアハルトさんと要相談、かな?
でも、提案だけはしてみる価値はあるよね。その前に、カールさんがやる気になってくれないと困るんだけど。そんなわけで、提案してみることに。
「カールさん。もし、子ども向けの本があるとしたら、出版してみたいですか?」
「し、してみたい! 僕は、文章を書くのは上手ではないけど、絵を描くのは好きなんだ」
「それはよかった! エアハルトさんや私の両親と相談してからになりますけど……絵本の出版をしてみませんか?」
「「えっ!?」」
「もちろん、レイラさんと一緒に」
そう提案すると、カールさんとレイラさんは目を丸くしながらあんぐりと口を開けた。そして二人揃って頬を上気させ、「是非!」とその麗しい顔を輝かせる。
「あちこちに相談しないといけないと思うので、後日また会いましょう」
「「はい!」」
領地経営も頑張ってくださいと言うと、カールさんもレイラさんも顔を見合わせたあと、頷いた。
それを皮切りに、エアハルトさんがカールさんに声をかけ、続いてロメオさんとマックスさんも話に加わって……
ふと義両親を見ると、二人揃って目を潤ませていた。
よかったなあとほっこりしつつ、そっと離れて食材を焼き始めたんだけど……
「優衣……また余計なことをやったな?」
「え? ……あーーーっ!」
とても小さな声でエアハルトさんに突っ込まれ、自分がやらかしたと自覚してしまったのだった。
「あ、えっと、その……」
私の質問に、しどろもどろになりながらも領地のことや、やっぱり勉強が苦手なことを話してくれるカールさん。
「そうなんですね。実は私も、勉強が嫌いでした。しかも、記憶力が乏しいせいで、必要なことを覚えるのが大変だったんです」
「「えっ!? そんなふうに見えません!」」
「あはは~! よく言われるんですけど、事実なんですよね」
得意な分野が偏っているんだと言うと、カールさんもレイラさんも目を丸くして驚いた。とはいえ、二人には私が〝渡り人〟だとは伝えていないので、そういう言い方しかできなんだけどね。
「なんとか覚えられたのが、薬草と計算でした。それがあったから、薬師になれたというか」
「まあ……」
「そんな私でも、できることがあるんです。カールさんはなにが得意ですか? あるいはなにが好きですか?」
「え……?」
まさか、そんなことを聞かれるとは思わなかったんだろう。目を見開いたあと、照れたようにはにかむカールさん。そんな様子を見て、レイラさんも微笑んでいる。
「レイラもだけど、僕は本を読むのが好きなんだ」
「どんな本ですか?」
「神話とか、過去に偉業をなした人の伝記、冒険譚も」
「へえ! すごいですね。どうしてそれらの本に興味を持ったんですか?」
「もとはエアハルト兄上が読んでくれた本なんだ」
そうして語りだしたカールさんの話は、とてもほっこりする内容だった。
まだ彼らが小さかったころ、エアハルトさんが寝る前にロメオさんとマックスさんとカールさんに、心躍るような冒険譚を読んでくれたのが始まり。その冒険譚はまだこの世界が不安定な時期で戦争があちこちで起きていたのと、魔物たちも今よりも多かった時代だそうだ。
そこに現れたのが、とても強い冒険者や戦争を終結させた英雄たち。彼らは仲間たちと一緒に戦争を終わらせて国を興したり、魔物たちを殲滅して町や村を守ったりと、いろんな冒険譚や英雄譚の物語を読み聞かせてくれたんだとか。
もちろん、実話をそのまま物語にしたり、実話をベースにちょっと盛って小説にしたりと様々のものがあったが、子ども向けのような本ではなかったから、まだ文字を習い始めたカールさんたちにとっては難しく、エアハルトさんが代表して読んだらしい。
「優しいお兄さんだったんですね」
「……そう、だね。いつだって、エアハルト兄上は優しかったよ」
懐かしそうな表情と目をして微笑むカールさんの穏やかな顔に、レイラさんも目を瞠って驚いている。きっと、そんな表情をしたことがないんだろう……ずっと三人の兄たちを憎んでいるような状態だったんだろうし。
だけど。
「上と比べられるのってつらいですよね。先に勉強しているんだから、最後に教わっているカールさんと差ができるのは当然だし」
「え……」
「だって、そうでしょう? 年齢差があるんですよ? 彼らと比べられるのは、正直しんどいですよね」
「……うん」
「でも、それが嫌で楽なほうに逃げるのか、こんちくしょー! って奮起するのかはカールさん次第なんです」
「……」
「今からでも遅くないんです。勉強は、大人になってからだってできるんです」
「リン、義姉上……」
「苦手なものをやるのではなく、私のように得意なものを伸ばしてみませんか?」
「「あ……」」
私の提案に、カールさんだけではなく、レイラさんも驚いた顔をしている。そして、こっそり二人のうしろに近づき、私たちの会話を黙って聞いている義両親と三人の兄も。
つうかね、優秀すぎるんだよ、三人の兄たちは。もちろん、逃げたカールさんも悪いんだけど、能力なんて人それぞれだし、得意なものも違う。
だって、騎士の家系でありながら、マックスさんは文官になっているからね。家を継いだのは次男のロメオさんだし、エアハルトさんに至っては冒険者になった挙げ句、貴族まで辞めちゃったし。
ぶっちゃけると、みんな好きなこと、得意なことをやっているんだよね、カールさん以外の兄弟たちは。しかも、義両親ですらヒャッハーしながらダンジョンに潜るような人たちだし。
そう話したら、カールさんとレイラさんは、貴族としてはあるまじき、ポカンとした表情で固まった。
「ね? だから、カールさんも、自分の得意なことをすればいいんじゃないですか?」
「そ、れは……」
「あ、あの、お義姉様。カール様は勉強が得意では……」
「わかってます。でも、本が好きなんですよね?」
「ええ」
私の確認に、レイラさんは素直に頷く。
「ちなみに、領地の特産物ってなんですか?」
「主に製紙業ですわ。城で使われている紙は、我が領地のものなんですの」
「へえ! 絵本は作っていないんですか?」
「紙の提供はしておりますけれど、さすがに本は作っておりませんの。ついでに言えば、絵本も少ないのです」
子どもたちに読み聞かせるような、子ども向けの本は少ないと、目を伏せて話すレイラさん。あっても、シンデレラや白雪姫のような、王子様とお姫様が結ばれる御伽噺しかないという。
あ~、そういえば、エアハルトさんが子どもたちに買って来た絵本って、そんなものしかなったなあ。あとは貴族向けなのかマナーの本や、文字の勉強をするものとか。
だから私たちの息子二人は不満そうにいていたっけ。
それもあって、彼ら用に日本にいたときに読んだ桃太郎や金太郎など、男の子が喜びそうなものを思い出しながら私が文章を書き、絵は養母のミユキさんが請け負ってくれた。もちろんそのままでは意味不明なので、この世界でもわかるよう、桃太郎や金太郎を村の少年や冒険者の息子にしたりしたっけ。
あ、どうせならそれを渡して、カールさんに作り直してもらってもいいかも。そこは両親やエアハルトさんと要相談、かな?
でも、提案だけはしてみる価値はあるよね。その前に、カールさんがやる気になってくれないと困るんだけど。そんなわけで、提案してみることに。
「カールさん。もし、子ども向けの本があるとしたら、出版してみたいですか?」
「し、してみたい! 僕は、文章を書くのは上手ではないけど、絵を描くのは好きなんだ」
「それはよかった! エアハルトさんや私の両親と相談してからになりますけど……絵本の出版をしてみませんか?」
「「えっ!?」」
「もちろん、レイラさんと一緒に」
そう提案すると、カールさんとレイラさんは目を丸くしながらあんぐりと口を開けた。そして二人揃って頬を上気させ、「是非!」とその麗しい顔を輝かせる。
「あちこちに相談しないといけないと思うので、後日また会いましょう」
「「はい!」」
領地経営も頑張ってくださいと言うと、カールさんもレイラさんも顔を見合わせたあと、頷いた。
それを皮切りに、エアハルトさんがカールさんに声をかけ、続いてロメオさんとマックスさんも話に加わって……
ふと義両親を見ると、二人揃って目を潤ませていた。
よかったなあとほっこりしつつ、そっと離れて食材を焼き始めたんだけど……
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