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本編 2
カルティス領へ行こう 2
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翌日、お昼ご飯のとき一緒に食べている両親に、この世界でも絵本になりそうなものを聞いてみた。今回は販売を目的としているので、以前自作したものを含めたものを一緒に吟味してもらうことに。
「そうだなあ……大きなかぶやおむすびころりんも面白そうだね」
「冒険譚ならRPGの一部分を、物語にするとかもいいんじゃないかしら」
「著作権……」
「異世界だし、全部じゃないから、問題ないんじゃないか?」
とんでもないことを言い出した両親に頭を抱える。たしかに、RPGなら冒険に適した話はたくさんあるし、この世界でも通用しそうなものはあるけど、それはあくまでも児童文学として成立しそうなものであって、絵本には向かない気がする。そう言うと、両親も「たしかに」と頷いた。
とはいえ、いずれはそういった分野のものに着手しそうな雰囲気なんだよね、カールさんたち。
「とりあえず提案はしてみますが、あくまでも絵本を優先ですからね?」
「わかっているさ。絵本は、子どもたちの情緒を育てたり、情操教育のためでもあるからね」
「優しさなら手袋をかいにとかもいいんじゃないかしら」
「冒険ならオズの魔法使いもいいかもね」
「お~、いろいろありますね」
ほんと、いろいろあるなあ。日本昔ばなしだけじゃなく、世界にある絵本もとなると膨大な数になるしね。
他にも、『アーミーズ』のみなさんやドラールにいる仲間たちにも聞いてみると言ってくれた両親に感謝し、お昼ご飯を終えた。
私の子どもたちはお昼寝の時間なので、両親と一緒に小屋へ運び、リョウくんと従魔たちや眷属たちの誰かが監視をする。その間に私とラズで薬草のお手入れだ。
<リン、ドクダミの増え方が尋常じゃないよー>
「ありゃ。これは半分抜かないとダメだね」
<やっぱり? なら間引くように抜けばいい?>
「うん。お願いしてもいい?」
<もちろん!>
そこに、父が会話に入ってくる。
「ああ、ラズ。その抜いたものを私にくれるかな? 医師の薬で作りたいものがあるんだ」
<いいよ! なんなら、苗ごと少し持って行く? ダンジョン産のだから、効能は高いよ>
「おや、ラズのお墨付きなら安心だな。少しもらっていこう」
<うん!>
お~、半分父が『アーミーズ』の拠点に持っていってくれるみたい。もともと拠点にドクダミは植えておらず、私からもらうか、ダンジョンから採取してくることが多い。ドクダミは胃腸薬を作るときに必要な薬草なんだって。
それもあって常に採取している薬草のひとつではあるんだけど、最近父が開発や研究しているお薬の中に高血圧と動脈硬化用のものがあり、その主成分のひとつがドクダミなんだとか。動脈硬化はまだうまく作れていないけど、高血圧用のお薬が完成したらしく、父の実家やマルクさんに手伝ってもらいながら、治験を開始したばかりだそうだ。
「いい具合に効果が表れているらしくてね。もっとほしいと言われているんだ」
「そうなんですね。よかったですね、パパ」
「ああ。あとは吹き出物や皮膚病用の軟膏を開発できれば……」
「ポーションがあるのに?」
「ポーションばかり飲んでいられないだろう? それもあって、ミユキが作ったドクダミの化粧水は、貴族のご婦人方に人気なんだ」
「あ~、なるほど!」
たしかに、母が作ったドクダミの化粧水は、肌が荒れているときに塗ると効果抜群だったなあと思い出す。ただ、化粧水だと炎症は抑えられないらしく、どうしても炎症を抑える効果のある液体や軟膏があれば、今後も便利になると父はいう。
「すまん、話が逸れたな。とにかく、ドクダミは助かる」
さっそく抜いてきたドクダミをラズからもらい、ご機嫌な様子の父に、ラズもまたご機嫌な様子でドクダミの間引きを再開するのだった。
そしてあっという間に雨季の長期休みがくる。今回は一週間だけど、カルティス領に行くこともあり、私たちは二週間のお休みをもらった。
といっても、店自体は一週間の休みで、休暇が終わったあとは母に留守番を頼んだ。その間ポーション作りができないため、在庫を作るべく一日だけの定休日にはせっせとダンジョンに通い、薬草や必要な素材を採取&狩りまくった。
他にも、母とマドカさん、ライゾウさんとサトシさんとセイジさんに手伝ってもらいながら、読み聞かせ用の道具や絵を作ってもらったりもした。意外なことにサトシさんとセイジさんが上手だったの!
エアハルトさんとアレクさんとナディさんがなにを作ったのか聞いてきたけど、行ってのお楽しみと教えていない。
そんなこんなで準備を終え、東門へと向かう。門を出てしばらく歩くと、飛べる子たちに跨ったり、飛べない子たちを籠に入れたりと用意。
「忘れ物はないか?」
「「「ありません」」」
「じゃあ、出発!」
エアハルトさんの合図で一斉に飛び立つ私たち。
カールさんとレイラさんの領地はどんなところなのかな? 楽しみ!
「そうだなあ……大きなかぶやおむすびころりんも面白そうだね」
「冒険譚ならRPGの一部分を、物語にするとかもいいんじゃないかしら」
「著作権……」
「異世界だし、全部じゃないから、問題ないんじゃないか?」
とんでもないことを言い出した両親に頭を抱える。たしかに、RPGなら冒険に適した話はたくさんあるし、この世界でも通用しそうなものはあるけど、それはあくまでも児童文学として成立しそうなものであって、絵本には向かない気がする。そう言うと、両親も「たしかに」と頷いた。
とはいえ、いずれはそういった分野のものに着手しそうな雰囲気なんだよね、カールさんたち。
「とりあえず提案はしてみますが、あくまでも絵本を優先ですからね?」
「わかっているさ。絵本は、子どもたちの情緒を育てたり、情操教育のためでもあるからね」
「優しさなら手袋をかいにとかもいいんじゃないかしら」
「冒険ならオズの魔法使いもいいかもね」
「お~、いろいろありますね」
ほんと、いろいろあるなあ。日本昔ばなしだけじゃなく、世界にある絵本もとなると膨大な数になるしね。
他にも、『アーミーズ』のみなさんやドラールにいる仲間たちにも聞いてみると言ってくれた両親に感謝し、お昼ご飯を終えた。
私の子どもたちはお昼寝の時間なので、両親と一緒に小屋へ運び、リョウくんと従魔たちや眷属たちの誰かが監視をする。その間に私とラズで薬草のお手入れだ。
<リン、ドクダミの増え方が尋常じゃないよー>
「ありゃ。これは半分抜かないとダメだね」
<やっぱり? なら間引くように抜けばいい?>
「うん。お願いしてもいい?」
<もちろん!>
そこに、父が会話に入ってくる。
「ああ、ラズ。その抜いたものを私にくれるかな? 医師の薬で作りたいものがあるんだ」
<いいよ! なんなら、苗ごと少し持って行く? ダンジョン産のだから、効能は高いよ>
「おや、ラズのお墨付きなら安心だな。少しもらっていこう」
<うん!>
お~、半分父が『アーミーズ』の拠点に持っていってくれるみたい。もともと拠点にドクダミは植えておらず、私からもらうか、ダンジョンから採取してくることが多い。ドクダミは胃腸薬を作るときに必要な薬草なんだって。
それもあって常に採取している薬草のひとつではあるんだけど、最近父が開発や研究しているお薬の中に高血圧と動脈硬化用のものがあり、その主成分のひとつがドクダミなんだとか。動脈硬化はまだうまく作れていないけど、高血圧用のお薬が完成したらしく、父の実家やマルクさんに手伝ってもらいながら、治験を開始したばかりだそうだ。
「いい具合に効果が表れているらしくてね。もっとほしいと言われているんだ」
「そうなんですね。よかったですね、パパ」
「ああ。あとは吹き出物や皮膚病用の軟膏を開発できれば……」
「ポーションがあるのに?」
「ポーションばかり飲んでいられないだろう? それもあって、ミユキが作ったドクダミの化粧水は、貴族のご婦人方に人気なんだ」
「あ~、なるほど!」
たしかに、母が作ったドクダミの化粧水は、肌が荒れているときに塗ると効果抜群だったなあと思い出す。ただ、化粧水だと炎症は抑えられないらしく、どうしても炎症を抑える効果のある液体や軟膏があれば、今後も便利になると父はいう。
「すまん、話が逸れたな。とにかく、ドクダミは助かる」
さっそく抜いてきたドクダミをラズからもらい、ご機嫌な様子の父に、ラズもまたご機嫌な様子でドクダミの間引きを再開するのだった。
そしてあっという間に雨季の長期休みがくる。今回は一週間だけど、カルティス領に行くこともあり、私たちは二週間のお休みをもらった。
といっても、店自体は一週間の休みで、休暇が終わったあとは母に留守番を頼んだ。その間ポーション作りができないため、在庫を作るべく一日だけの定休日にはせっせとダンジョンに通い、薬草や必要な素材を採取&狩りまくった。
他にも、母とマドカさん、ライゾウさんとサトシさんとセイジさんに手伝ってもらいながら、読み聞かせ用の道具や絵を作ってもらったりもした。意外なことにサトシさんとセイジさんが上手だったの!
エアハルトさんとアレクさんとナディさんがなにを作ったのか聞いてきたけど、行ってのお楽しみと教えていない。
そんなこんなで準備を終え、東門へと向かう。門を出てしばらく歩くと、飛べる子たちに跨ったり、飛べない子たちを籠に入れたりと用意。
「忘れ物はないか?」
「「「ありません」」」
「じゃあ、出発!」
エアハルトさんの合図で一斉に飛び立つ私たち。
カールさんとレイラさんの領地はどんなところなのかな? 楽しみ!
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