純潔の嘘と金の愛

蜜花

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問題との対峙

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 やっとのことで家に着くと、すでに明かりがついていた。ため息をつく。幸せな結婚を語るカエデの笑顔を思い出して、胸が苦しい。


「おかえりなさい。遅かったじゃない。」

 「ハーティス……うちに勝手に上がらないで。」


 リビングのテーブルに足を投げ出し、ワインを煽るハーティス・リンド。モカの「大切な友人」で、リンディアのデザイナー兼モデル。赤い巻き毛と挑発的なドレスが、まるで絵画みたいに美しい。でも、私にはただの苛立ちの種。


「食事まだでしょ? テイクアウトあるから、食べていいわよ。」


 ハーティスの指が、くるくると髪を巻き取る。その余裕たっぷりの態度に、腹が立つ。結婚式の後、新居に入った日から、彼女はこうやって我が物顔で家にいる。モカに「大切な友人だから」と説得されて、受け入れるしかなかった。

 黙って皿やフォークを片付ける。ハーティスは何も言わず、ワイングラスを傾けるだけ。


「モカは今日、帰らないから、あなたも帰って」

 「んーっ、すぐ戻るわよ」


 その確信に満ちた口調が、胸を抉る。妻の私が言うのに、なぜ彼女がそんな顔で笑うの?


「そんなわけない」 

「どうかしら。」


 玄関の鍵がガチャリと鳴る。その音に心臓が跳ねた。


「モカっ、おかえり!」


 ハーティスがスカートの裾を翻して玄関に駆けていく。笑い声と、楽しげに話す二人が近づいてくる。


「ただいま、プラティナ!」


 モカがハーティスと腕を組んでリビングに入ってくる。魔法省のローブを着たまま、頬が上気している。金色の癖っ毛が揺れ、子犬のような瞳が私を見つける。


「こっちにきて、プラティナ。やっと会えたね」


 その無邪気な笑顔に、胸が締め付けられる。いつもなら、私も開いた腕に抱きついていたはず。そして、モカは私のダークグリーンの髪を撫でながらひとしきり褒めて、今日の出来事を聞きたがった。

 そんな彼の言葉を信じたいのに、ハーティスの存在が心をざわつかせる。


「やだー、またアタシに嫉妬してるの? こーわい顔しちゃって」 

「なんでもない」


 誰とも何も話したくない。事実を受け入れるにはまだ心の準備ができていないから。


「あ、プラティナ!」


 呼びかけるモカを無視して、私はシャワー室へ向かった。
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