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8 屯所までの道のり 2

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 そんな笑顔を見ることになるだなんて…沖田には受け入れることが出来ない。
 まさかそんな言葉が山南から聞かされるとは思ってもいなかった沖田は知らず知らず言葉を荒立てていた。

「そ、そんなこと」

 い、嫌だ!

 沖田の中で拒否反応を示す。あり得ないと思いつつもそれを否定出来ない心の底が自分に対しても拒絶しようとした。

「わかってるくせに…いうなよ」

 お前にこんな辛い事言わせたくないんだが…もう…無理なようだと観念する山南。
 そんな思いを知ってるかのように沖田は呟くように言葉を繋げた。

「俺、敬さんの気持ちわかります。俺は、そんな事いっちゃいけないから…」

 敬さんの真意はわからないかも知れない…先生や歳さんと揉めていたから…敬さん、居たたまれないんだ。だからってなにも言わずに行くことなんてないよ。どうして俺に相談してくれなかったの?俺では役不足なの?それでも言って欲しかったんだよ。敬さん………。

 本当のことを知らない沖田は自分が未熟だから相談されなかったんだと思い込んでいた。
 誰も事実を知ることがなくても山南はすべて抱えて去ることを決意していた。
 そう、可愛がっていた沖田にも友として腹を割って話し合った仲の永倉にもである。

「なら聞くが、総司、お前は俺がずっと逃げ続けたら…屯所に戻る事なくずっと俺を追いかけるかい?」

 山南は沖田に振り向いて態と意地悪な言い方を笑顔をもってして見せた。
 その方が沖田の気持ちが苦しくないだろうと踏んでのことである。

 嫌なことを聞くな…わかっているのに俺としたことが。

 それでも酷なことを言っている自覚がある山南は出来うる限り嘘のない笑顔を見せようとしたのである。

「俺…」

 沖田は山南の顔を見つめ、自分の目の中にある動揺を隠せずにいた。

 本当ならそうしたい!ずっとずっと追い続けていたい。そう思ってここまで来たのに、問われると心が揺らぐだなんて…。俺って卑怯だ!

 沖田の気持ちは山南がずっと見つからないで欲しいと願っていた。
 ずっとずっと幻影でもいい、追い続けて二人ともそのまま屯所に戻らなくてもいい……そんなことさえ思っていた。

 戻れば待っているもの……

 沖田にはそれが耐えられなかったのだ。
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