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第一話 1
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池田屋事件から数日後、とある遊郭の一室にて宴会が行われていた。
それは密かな宴会で幹部達や平隊士等の者には一切公言されずに行われた、云わば私的な試衛館の門下生のみの限られた宴会であった。
「今日は内々だけで祝杯じゃ!気兼ねすることなくじゃんじゃん飲んでくれ!」
近藤勇が音頭をとる。色気も何もない、男だけの宴会。遊郭の一室でも一番広い部屋を借りきっての遊女を侍らせていない宴会である。
「わー!嬉しいな!有り難く頂戴しますね!」
酒にめっぽう目がない沖田総司がお銚子から杯にお酒を並々と注ぐ。
「調子に乗るなよ、総司。ザルだからってちゃんと何か食べもって呑めよ、ったく……」
土方歳三が総司の身を案じる。弟のように可愛がっている総司に歳三はめっぽう弱い。
「わかってますって。歳さんって、相変わらず口うるさいんだからー。過保護ですよ」
うざったい口調で文句を言いつつ、顔の表情は嬉しそうだ。総司にとって歳三に心配してもらえてるのがいたく心地よかったりするのだ。甘えられる数少ない存在……その一人が歳三であった。
「近藤さん、私がこのような宴に居てもいいのでしょうか?場違いのような気がしてならないのだ。池田屋の討ち入りに同行することも叶わず、別段、お役に立った訳でもない。此処に居るのが心苦しくて仕方がないのです……」
杯にも料理にも一切手を触れることなく、山南敬助は恐縮して座布団の上に座ったまま縮こまっているように見える。戦いの場では豪快に剣を振るう勇姿は此処にはなく、なんとも言いがたい悲愴さを漂わせていた。
勇が敬助の態度を見てその辛気くさい場を一蹴する。
「屯所を守ってくれたのは山南さん達だ。屯所は俺達の要。あんたが屯所に居てくれたからこそ俺達は思う存分闘えたんだ。だから案ずることはない」
豪快に笑いながら、敬助の背中を叩く。
席次は近藤勇を正面に上手に山南敬助、下手に土方歳三、次に沖田総司と相成っていた。
「そうですよ!山南さん!」
「気にすることねーぜ」
総司と歳三が次々と賛同する。
「そう言われると、有り難いのだが……」
それに対して敬助は恥じらいながらまだこの場に慣れようとしない固さで答える。
なかなかうんと言わない敬助に二人はまだまだ畳み掛ける。
「いいじゃないですか。今日ぐらいゆっくり一緒に呑んで楽しみましょうよ!」
「山南さんよう……そういうこった」
最後にもう一度、局長であり同門の師となった近藤がおおらかに敬助にいい放った。
「ああ、気にすることなく呑んでくれ!」
何度もそのように言われて請われると無下に出来る筈はなかった。
敬助は嬉し涙をこらえつつ、折れた。
それは密かな宴会で幹部達や平隊士等の者には一切公言されずに行われた、云わば私的な試衛館の門下生のみの限られた宴会であった。
「今日は内々だけで祝杯じゃ!気兼ねすることなくじゃんじゃん飲んでくれ!」
近藤勇が音頭をとる。色気も何もない、男だけの宴会。遊郭の一室でも一番広い部屋を借りきっての遊女を侍らせていない宴会である。
「わー!嬉しいな!有り難く頂戴しますね!」
酒にめっぽう目がない沖田総司がお銚子から杯にお酒を並々と注ぐ。
「調子に乗るなよ、総司。ザルだからってちゃんと何か食べもって呑めよ、ったく……」
土方歳三が総司の身を案じる。弟のように可愛がっている総司に歳三はめっぽう弱い。
「わかってますって。歳さんって、相変わらず口うるさいんだからー。過保護ですよ」
うざったい口調で文句を言いつつ、顔の表情は嬉しそうだ。総司にとって歳三に心配してもらえてるのがいたく心地よかったりするのだ。甘えられる数少ない存在……その一人が歳三であった。
「近藤さん、私がこのような宴に居てもいいのでしょうか?場違いのような気がしてならないのだ。池田屋の討ち入りに同行することも叶わず、別段、お役に立った訳でもない。此処に居るのが心苦しくて仕方がないのです……」
杯にも料理にも一切手を触れることなく、山南敬助は恐縮して座布団の上に座ったまま縮こまっているように見える。戦いの場では豪快に剣を振るう勇姿は此処にはなく、なんとも言いがたい悲愴さを漂わせていた。
勇が敬助の態度を見てその辛気くさい場を一蹴する。
「屯所を守ってくれたのは山南さん達だ。屯所は俺達の要。あんたが屯所に居てくれたからこそ俺達は思う存分闘えたんだ。だから案ずることはない」
豪快に笑いながら、敬助の背中を叩く。
席次は近藤勇を正面に上手に山南敬助、下手に土方歳三、次に沖田総司と相成っていた。
「そうですよ!山南さん!」
「気にすることねーぜ」
総司と歳三が次々と賛同する。
「そう言われると、有り難いのだが……」
それに対して敬助は恥じらいながらまだこの場に慣れようとしない固さで答える。
なかなかうんと言わない敬助に二人はまだまだ畳み掛ける。
「いいじゃないですか。今日ぐらいゆっくり一緒に呑んで楽しみましょうよ!」
「山南さんよう……そういうこった」
最後にもう一度、局長であり同門の師となった近藤がおおらかに敬助にいい放った。
「ああ、気にすることなく呑んでくれ!」
何度もそのように言われて請われると無下に出来る筈はなかった。
敬助は嬉し涙をこらえつつ、折れた。
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