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不運が終了したらしい私
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「あ、あの、どういうことですか?」
オズオズと聞けば、天使はニッコリと笑って説明してくれた。
天使が言うには、人の一生は『幸福』と『不幸』が半分づつで構成されているのだという。
「でも、ジョアンナさんはずぅーっと不幸だったでしょ?」
「いいえ?」
ジョアンナは不思議そうに首を振った。
天使はビックリしたように目を瞬かせる。
「え、え、でも、ずーっと嫌な事ばっかりだったでしょ? 何もない所で転ぶ、外れ籤ばかり引く、テストの山は外れ、行事は常に土砂降り。さっきなんて、ぽっと出の女に婚約者を取られて、ゴミのように捨てられてたでしょ??」
「よ、よく知ってますね。確かにそうですが、私は不幸ではありませんよ」
「まったまたー! 少しは『あの男、ぶっ殺したる!』位は思ったでしょ?」
「? いいえ? 確かに彼に選ばれなかった事は悲しかったですけど、幸い婚約は口約束で大きな問題にはなりませんし」
「うっそだー! 普通は復讐したいって思いますよー! ちょっとは思ったでしょ? ね? ね?」
「いいえ。別に」
「本当に? 普通は怒る所だよー? 彼のやった事は理不尽だし、腹立たしいしさー! 何で私ばっかり不幸なの! って、嘆き悲しんでヒロインぶってもいいんだよー?」
「私は自分が不幸だとは思った事はありませんから。私は恵まれています」
「…ふーん」
「不運であることは否定しませんけどね」
そう言って、ジョアンナが苦笑を浮かべれば、天使はニヤリと笑った。
「――――成程。これは『お気に入り』になっても当然だな。軽度とはいえ、生まれた時から試練を与えられ続けて、こんな清らかなままの魂は滅多にいない」
ヘラヘラした顔を一転させて、天使は皮肉気な表情を浮かべる。
「おめでとう。君は確かに神に選ばれた人間だ」
「えっと…? どういう意味でしょうか?」
「詳しく話すと時間がかかるけど、僕はそれほど長くこの場には留まれない。簡潔に説明しよう」
急にキリッとした天使はジョアンナに話して聞かせてくれた。
人の人生は『幸福』と『不幸』が半分半分で作られているが、大体の魂が両方を消化していくのに対して、ほんの一部の魂はどちらかを消化しきれずに生を終える事があるのだという。
そういった魂は、次の生でそのどちらかを消化する事になる。
ジョアンナの前世がそうで、更にジョアンナの前世はその中でも滅多にない『不幸』のみを消化し、終了してしまったものだったのだ。
「そういった魂は調整が義務付けられていて、それを行うのが僕ら天使の務めなのさ」
「そうなんですか。お疲れ様です」
思わずそう言えば、天使は何だか擽ったそうな顔をした。
「そんな事を言う人間は初めてだよ。君は変わっているね」
「そうでしょうか?」
「うん。だけど、君みたいな人間、僕は好きだよ」
綺麗な顔をした天使にそう微笑まれ、ジョアンナは顔が赤くなる。
こんな裏表のない『好き』をくれたのは、家族以外では彼が初めてだった。
「天使の微笑みって本当にあるんですね…」
「まぁ、確かに天使だけどね」
天使は再び笑う。
「話を続けるよ。人の生を『幸福』と『不幸』を半分ずつで作るのは、人がとても歪みやすい生き物だからだ。半分ずつに調整していても、人は『幸福』に気が付かずに『不幸』ばかりを見つめて歪む事が多い。ましてや、幸福が多すぎたり、不幸が多すぎたりするとその歪みは驚くほど酷く醜いものになる。そうなってしまった魂は浄化できず、消滅させられることが多いんだ」
そう言って、天使はジョアンナを見つめた。
「君の魂は何色にも染まっていない。美しい虹色をしている。前世の君も『不幸』の只中に晒され続けて、それでも真っ直ぐに生きた。神は君の魂を愛し、前世の分も『幸福』を与える事を決めた。それを与えても良いか見極める為に、今世の分の『不幸』をこれまでの人生に全て詰め込んで。そして、君はその試練を乗り越えた。これからの君の人生は『幸福』に満ちたものになるだろう。――――幸せにおなり、ジョアンナ」
ふわりと天使が羽をはばたかせる。
空へと消えていく天使に、ジョアンナは慌てて声を掛けた。
「待って、天使様! 一つだけ、教えて!」
ジョアンナの叫びにも似た声に、天使が振り返る。
ジョアンナはバクバクと心臓を高鳴らせながら、天使に尋ねた。
「父と母が事故に遭ったのは――――私の『不幸』のせいなの?」
震える声で、泣きそうな顔でそう聞いたジョアンナに、天使はニッコリと微笑んだ。
「――――それは違う。人の人生の長さは生まれた時に決められている。それは神に愛されている君でも、決して変えることが出来ない。君の『不幸』は、『早くに亡くなってしまう両親の元に生まれてしまった事』だよ」
優しいその声を聴いて、ジョアンナは微笑んだ。
「………なら、それは『不幸』ではないわ。私はお父さんとお母さんの娘に生まれて、幸せだったから。ありがとう。ずっと、それだけが不安だったの。それを聞けたなら、私は変われる」
天使は満足そうに笑って消えていった。
オズオズと聞けば、天使はニッコリと笑って説明してくれた。
天使が言うには、人の一生は『幸福』と『不幸』が半分づつで構成されているのだという。
「でも、ジョアンナさんはずぅーっと不幸だったでしょ?」
「いいえ?」
ジョアンナは不思議そうに首を振った。
天使はビックリしたように目を瞬かせる。
「え、え、でも、ずーっと嫌な事ばっかりだったでしょ? 何もない所で転ぶ、外れ籤ばかり引く、テストの山は外れ、行事は常に土砂降り。さっきなんて、ぽっと出の女に婚約者を取られて、ゴミのように捨てられてたでしょ??」
「よ、よく知ってますね。確かにそうですが、私は不幸ではありませんよ」
「まったまたー! 少しは『あの男、ぶっ殺したる!』位は思ったでしょ?」
「? いいえ? 確かに彼に選ばれなかった事は悲しかったですけど、幸い婚約は口約束で大きな問題にはなりませんし」
「うっそだー! 普通は復讐したいって思いますよー! ちょっとは思ったでしょ? ね? ね?」
「いいえ。別に」
「本当に? 普通は怒る所だよー? 彼のやった事は理不尽だし、腹立たしいしさー! 何で私ばっかり不幸なの! って、嘆き悲しんでヒロインぶってもいいんだよー?」
「私は自分が不幸だとは思った事はありませんから。私は恵まれています」
「…ふーん」
「不運であることは否定しませんけどね」
そう言って、ジョアンナが苦笑を浮かべれば、天使はニヤリと笑った。
「――――成程。これは『お気に入り』になっても当然だな。軽度とはいえ、生まれた時から試練を与えられ続けて、こんな清らかなままの魂は滅多にいない」
ヘラヘラした顔を一転させて、天使は皮肉気な表情を浮かべる。
「おめでとう。君は確かに神に選ばれた人間だ」
「えっと…? どういう意味でしょうか?」
「詳しく話すと時間がかかるけど、僕はそれほど長くこの場には留まれない。簡潔に説明しよう」
急にキリッとした天使はジョアンナに話して聞かせてくれた。
人の人生は『幸福』と『不幸』が半分半分で作られているが、大体の魂が両方を消化していくのに対して、ほんの一部の魂はどちらかを消化しきれずに生を終える事があるのだという。
そういった魂は、次の生でそのどちらかを消化する事になる。
ジョアンナの前世がそうで、更にジョアンナの前世はその中でも滅多にない『不幸』のみを消化し、終了してしまったものだったのだ。
「そういった魂は調整が義務付けられていて、それを行うのが僕ら天使の務めなのさ」
「そうなんですか。お疲れ様です」
思わずそう言えば、天使は何だか擽ったそうな顔をした。
「そんな事を言う人間は初めてだよ。君は変わっているね」
「そうでしょうか?」
「うん。だけど、君みたいな人間、僕は好きだよ」
綺麗な顔をした天使にそう微笑まれ、ジョアンナは顔が赤くなる。
こんな裏表のない『好き』をくれたのは、家族以外では彼が初めてだった。
「天使の微笑みって本当にあるんですね…」
「まぁ、確かに天使だけどね」
天使は再び笑う。
「話を続けるよ。人の生を『幸福』と『不幸』を半分ずつで作るのは、人がとても歪みやすい生き物だからだ。半分ずつに調整していても、人は『幸福』に気が付かずに『不幸』ばかりを見つめて歪む事が多い。ましてや、幸福が多すぎたり、不幸が多すぎたりするとその歪みは驚くほど酷く醜いものになる。そうなってしまった魂は浄化できず、消滅させられることが多いんだ」
そう言って、天使はジョアンナを見つめた。
「君の魂は何色にも染まっていない。美しい虹色をしている。前世の君も『不幸』の只中に晒され続けて、それでも真っ直ぐに生きた。神は君の魂を愛し、前世の分も『幸福』を与える事を決めた。それを与えても良いか見極める為に、今世の分の『不幸』をこれまでの人生に全て詰め込んで。そして、君はその試練を乗り越えた。これからの君の人生は『幸福』に満ちたものになるだろう。――――幸せにおなり、ジョアンナ」
ふわりと天使が羽をはばたかせる。
空へと消えていく天使に、ジョアンナは慌てて声を掛けた。
「待って、天使様! 一つだけ、教えて!」
ジョアンナの叫びにも似た声に、天使が振り返る。
ジョアンナはバクバクと心臓を高鳴らせながら、天使に尋ねた。
「父と母が事故に遭ったのは――――私の『不幸』のせいなの?」
震える声で、泣きそうな顔でそう聞いたジョアンナに、天使はニッコリと微笑んだ。
「――――それは違う。人の人生の長さは生まれた時に決められている。それは神に愛されている君でも、決して変えることが出来ない。君の『不幸』は、『早くに亡くなってしまう両親の元に生まれてしまった事』だよ」
優しいその声を聴いて、ジョアンナは微笑んだ。
「………なら、それは『不幸』ではないわ。私はお父さんとお母さんの娘に生まれて、幸せだったから。ありがとう。ずっと、それだけが不安だったの。それを聞けたなら、私は変われる」
天使は満足そうに笑って消えていった。
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