私の人生に貴方はもういらない

三同もこ

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突然プロポーズされた私

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「ジョアンナ!」


 男爵になって一週間が経った頃。
 私は男爵領に何か特産品を作れないかと考えていた。
 少しでも何かのヒントになればと領地を歩き回っていた時、突然大きな声が掛かる。
 驚いて振り返れば、そこには立派な馬に乗っていた青年が、馬から飛び降りて走り寄ってくるところだった。

「レオン? 貴方、レオンよね?」
「オレの顔を忘れたのかよ、ジョアンナ! 逢いたかった…!」

 そう言って、ジョアンナを抱き上げたのは幼馴染のレオン。
 小さな頃からずっと一緒にいてくれた幼馴染だった。
 抱き上げたままギュッと抱きしめてくれる幼馴染に、胸の中が温かくなる。
 男爵領では子供は少なく、同じ年頃の子供はジョアンナとレオンだけだったので、二人はとても仲が良かった。
 レオンは裕福な商人の息子だったが、姉が跡を取る事になっていたので、彼は騎士を目指すべく、王都にある騎士学校に通っていたのだ。
 ジョアンナより二歳年上の彼は今年20になる。
 レオンの母親はジョアンナの母の侍女だった女性で、母と同じく異国の貴族の娘だったらしく、母についてこちらに来てレオンの父と恋に落ちて結婚した。
 その為、レオンの髪の色や瞳の色は貴族のように色素が薄く、顔立ちもまるで貴公子の様に整っている。
 ジョアンナが11の時に13歳で王都の騎士学校へ入学し、時々帰省する以外は、ほぼ王都にいたレオンはすっかり垢抜けて、本当の貴公子のようだった。

「レオン、本当に久しぶり。とっても素敵になっていたから驚いたわ」
「それ本当か? お前の婚約者のヴィジエールよりも?」
「元婚約者よ」
「え」

 レオンが目を丸くしているのに、ジョアンナは苦笑を浮かべる。

「ヴィジエール様とは婚約を解消したの。色々あってね」

 何でもない事のようにそう言えば、レオンは目を益々見開いた後、満面の笑顔を浮かべた。

「じゃあ、ジョアンナはアイツと結婚しないんだな!」
「しないわ…って、きゃあ!?」
「やった! どうしよう、すげぇ嬉しい!」
「ちょ、レオン、下ろして! 目、目が回るから…!」

 抱き上げたままクルクルとジョアンナを振り回したレオンは、すっかり目を回したジョアンナを地面へと下ろし、片膝をつく。

「れ、レオン、ちょっと回し過ぎよ…!」
「ジョアンナ。オレ、この前の戦で功績を上げて、正式に一級騎士になったんだ」
「ええ!? い、一級って…本当に!?」

 騎士団は実力主義で、貴族の家名など何の後ろ盾にもならない。
 一級騎士は王国騎士団の中でも精鋭中の精鋭のみが与えられる騎士の最高の栄誉だと言われており、贈られたものには一代限りだが、貴族としての権利も与えられる。

「ジョアンナ・ディンプル男爵」
「な、何? 突然改まって…」

 キョトンとすれば、レオンは恭しくジョアンナの手を取った。
 初めて見る蕩けそうな笑顔を浮かべるレオンにドギマギしていると、レオンは熱を灯した目を真っ直ぐにジョアンナに向ける。


「貴女が好きだ。ずっと好きだった。どうか、オレと結婚してほしい」
「ふへっ!?」


 突然、美男子に成長した幼馴染から求婚されました。


(『幸運』の力、半端ないんですけど! 心臓破けそう…!)
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